食べ物と身近な品から考える「時間」の重み
戦争の記憶を伝える人が少なくなるなか、当時の暮らしを身近に感じる手がかりになるのが、毎日の食べ物です。一方、洗面台や化粧ポーチには、いつ買ったのかわからない化粧品が残っていることもあります。『あさイチ 戦後81年「食」からたどる戦争の記憶▼古い化粧品にご用心!(2026年7月29日)』では、一見異なる2つのテーマを通じて、記憶や物を年月とともにどう受け継ぎ、どう扱うかが取り上げられます。
この記事でわかること
- 加藤登紀子さんを支えた食の記憶
- 小林まさるさんが一杯の料理を再現する意味
- 戦争中と終戦直後の食生活
- 古い化粧品の期限、劣化、保管方法
※放送後詳しい内容が分かり次第追記します。
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加藤登紀子さんと小林まさるさんが伝える「忘れられない味」とは
最初に知っておきたいのは、2人が語る食べ物は、単なる懐かしい料理ではないということです。
加藤登紀子さんは、1943年に当時の満州・ハルビンで生まれ、終戦後に家族と日本へ引き揚げました。本人は幼かったため当時の記憶がはっきり残っていない部分もありますが、母親から繰り返し聞いた体験を通して、戦争と引き揚げの記憶を受け継いできました。
料理研究家の小林まさるさんも、戦争とその後の厳しい時代を経験しています。番組では、小林まさるさんにとって忘れられない「一杯」が再現されますが、放送前の案内では具体的な料理名や材料までは明らかにされていません。
そのため、現時点で料理名を決めつけることはできません。ただ、食料が十分に手に入らなかった時代に口にした一杯が、長い年月を経ても忘れられないという点に大きな意味があります。
味の豪華さではなく、「その日を生きるために食べた」「家族が用意してくれた」「ようやく口にできた」といった状況と結びついているのでしょう。
たしかに、現在なら質素に見える料理でも、食べ物が不足していた時代には、それが命をつなぐ大切な一食でした。個人的には、料理の名前だけでなく、誰と、どこで、どのような気持ちで食べたのかまで知ることが大切だと感じます。
食べ物の記憶から戦争をたどる意味
戦争について知ろうとすると、戦闘や兵器、被害者数などの大きな話に目が向きがちです。しかし、そこで暮らしていた人たちにとっては、「今日何を食べるか」という問題が毎日続いていました。
食べ物を入り口にすると、戦争が家庭の暮らしにどのような影響を及ぼしたのかが見えやすくなります。
例えば、次のような変化です。
- 米や砂糖、肉などが自由に買えなくなる
- 配給される量だけでは足りなくなる
- 畑を作り、食べられるものを自分で確保する
- 本来は食材にしなかったものまで利用する
- 家族の中でも子どもに食べ物を譲る
- 貴重品や衣類を食料と交換する
戦争中の食生活は、全国どこでも同じだったわけではありません。都市と農村、家族構成、経済状況、住んでいた地域によって、手に入る食べ物には大きな差がありました。
また、「戦時中」と「終戦直後」を同じものとして考えないことも大切です。
1945年8月に戦争が終わったからといって、翌日から食料が十分に供給されたわけではありません。生産や流通が混乱し、住む場所や仕事を失った人も多く、食料不足は戦後もしばらく続きました。
初めて知ると少し驚きますが、終戦は苦しい暮らしがすぐに終わる境目ではなかったのです。
戦争中は何を食べていた?配給と代用食の実情
戦争中には、限られた物資を国民に分配するため、米や砂糖などの食品に配給制度が導入されました。
ただし、配給券があれば必ず十分な食料を受け取れたわけではありません。物資そのものが不足すれば、配給の遅れや量の減少も起こります。そのため、人々は配給以外の方法でも食べ物を確保しなければなりませんでした。
家庭では、米の量を増やすために、イモや豆、野菜などを混ぜた食事が作られました。小麦粉や雑穀を使った汁物、雑炊、すいとんのような料理も、限られた材料で空腹を満たす方法の1つでした。
ただし、現在家庭で作る具だくさんのすいとんと、食料不足のなかで作られたものは同じではありません。
現在のすいとんは、肉や野菜、だしを使って栄養や味を整えられます。一方、当時は小麦粉や調味料さえ十分ではなく、具材がほとんど入らない場合もありました。
「昔の人は工夫して質素な食事を楽しんでいた」と美化してしまうと、実際の苦しさが伝わりにくくなります。工夫の背景には、選べる食材がなかったことや、十分に食べられなかった事情がありました。
食べ物を残さないことの大切さは現在にも通じますが、当時の代用食を健康法や節約料理と同じ感覚で見るのは避けたいところです。
なぜ一杯の料理が81年たっても忘れられないのか
食べ物の記憶は、味や香りだけで保存されるものではありません。そのときの場所、家族の姿、安心した気持ち、空腹のつらさなどと一緒に残ります。
特に食べ物が少ない状況では、1杯の汁や1個のイモが、現在とは比べられないほど大きな意味を持ちます。
おなかを満たすだけでなく、
- 今日を生き延びられるという安心
- 家族が自分を守ってくれた記憶
- 長い移動や避難の途中で得た休息
- 故郷や家族との結びつき
- 平穏だった暮らしへの思い
などが、味と一緒に記憶されるからです。
加藤登紀子さんのように、幼くて自分の記憶が少ない場合でも、家族から何度も聞いた話が自分の人生の一部になることがあります。
一方、小林まさるさんのような体験者が料理を再現することには、言葉だけでは伝えにくい記憶を、形や香り、味として残す意味があります。
もちろん、現在手に入る食材と調理器具を使って作れば、当時とまったく同じ味にはなりません。それでも、料理を通じて「なぜこの一杯が忘れられなかったのか」を考えることはできます。
個人的には、豪華な再現料理に仕上げるよりも、当時使えた材料や量の少なさを知る方が、その人の記憶に近づけるように思います。
古い化粧品はいつまで使える?期限が書かれていない理由
ここからは、もう1つのテーマである古い化粧品について見ていきます。
結論からいうと、使用期限が書かれていない化粧品を「何年たっても使える」と考えるのは危険です。
日本では、適切な保存条件のもとで製造後3年を超えて品質が安定している化粧品は、原則として使用期限を表示する必要がありません。反対に、製造後3年以内に品質が変化する可能性があるものには、使用期限の表示が必要です。
ここで注意したいのは、表示がない化粧品について保証されているのは、基本的に未開封で適切に保管された状態だという点です。
一度開封すると、空気や湿気に触れ、指、ブラシ、スポンジなどから汚れが入りやすくなります。保管する場所や使い方によっても状態が変わるため、「未開封なら3年」という考えを、そのまま開封後の商品に当てはめることはできません。
また、「3年たった瞬間に危険になる」という意味でもありません。3年という数字だけで機械的に判断するのではなく、次の順番で確認することが大切です。
- 容器や外箱に使用期限が表示されていないか
- いつ購入し、いつ開封したか
- メーカーが開封後の目安を案内していないか
- 高温多湿や直射日光を避けて保管していたか
- 色、におい、質感に変化がないか
実際に選ぶなら、ここは確認したいところです。購入日や開封日を思い出せず、見た目にも少し不安があるものは、「もったいないから使う」より、使用を控える方が安心です。
におい・変色・分離は要注意!捨てた方がよい変化
化粧品は、食品のようにわかりやすく腐敗するとは限りません。
見た目に大きな変化がなくても品質が変わっている可能性があるため、使用前には次のような点を確認します。
- 購入時とは違うにおいがする
- 油っぽいにおいや酸化したようなにおいがする
- 色が濃くなった、薄くなった、まだらになった
- 液体と油分が分離し、振っても戻らない
- クリームが固くなった、または水っぽくなった
- 表面に粒、濁り、カビのようなものが見える
- 塗ったときの伸びや感触が以前と違う
- 容器が膨らんでいる、液漏れしている
1つでも明らかな変化があれば、使用を中止した方がよいでしょう。
特に注意したいのが、目元や口元に使う化粧品です。
マスカラやリキッドアイライナーは、使用するたびにブラシや先端を容器へ戻します。目の近くで使うため、古くなったものを「少しくらいなら」と使い続けるのは避けたいところです。
口紅やリップ用品も唇へ直接触れるため、表面を拭けば必ず安全になるとは限りません。においや質感が変わったものは使用しない方が安心です。
パウダー状のアイシャドウやチークは、液状の商品より変化がわかりにくいことがあります。しかし、長期間使用していると、ブラシや指を通して皮脂や水分が付着することがあります。
期限内であっても、使ったときに赤み、かゆみ、刺激、腫れなどが出た場合は、すぐに使用を中止してください。症状が続く場合や強い症状がある場合は、自己判断で別の化粧品を重ねず、医療機関へ相談することが大切です。
去年の日焼け止めやファンデーションは使える?
毎年迷いやすいのが、前のシーズンに開封した日焼け止めです。
昨年の商品だから必ず使えないとは限りませんが、商品ごとの表示やメーカーの案内、保管状態を確認する必要があります。
特に、次のような保管をしていた場合は慎重に判断してください。
- 夏の車内に置いていた
- 窓際や直射日光の当たる場所に置いていた
- 浴室や洗面所など湿気の多い場所に置いていた
- 海やプールで容器に水や砂が付着した
- キャップを十分に閉めていなかった
- 直接肌に触れるタイプを長期間使用した
高温になりやすい車内は、化粧品の保管場所として適していません。容器に異常がなくても、中身が温度変化の影響を受けている可能性があります。
ファンデーションも同様です。
リキッドやクッションタイプは、指やスポンジが中身に触れやすいため、清潔な状態を保つことが重要です。パウダーファンデーションは水分が少ないものの、スポンジに付いた汗や皮脂が表面へ移ることがあります。
保存状態に問題がなく、メーカーが使用可能と案内している場合でも、腕の内側など狭い範囲で状態を確認してから使う方法があります。ただし、これは安全を保証する試験ではありません。以前使えた商品でも、現在の肌状態によって刺激を感じることがあります。
個人的には、顔全体に使う前に「においは同じか」「分離していないか」「保管場所は適切だったか」を落ち着いて振り返ることがいちばん大事だと感じます。
冷蔵庫に入れれば長持ちする?正しい保管方法
化粧品を長持ちさせようとして、何でも冷蔵庫へ入れるのはおすすめできません。
商品によっては、低温によって中身が固まったり、成分が分離したりする可能性があります。また、冷蔵庫から出し入れするたびに温度が変わり、容器に結露が生じることもあります。
メーカーから冷蔵保存の指示がある商品を除き、基本的には次のような場所で保管します。
- 直射日光が当たらない
- 高温多湿にならない
- 急激な温度変化が少ない
- 子どもの手が届かない
- 容器を安定して置ける
使用後は、容器の口元やふたを清潔にし、きちんと閉めます。
指を直接入れるジャータイプの商品は、清潔なスパチュラを使うと中身へ汚れが入りにくくなります。ブラシやスポンジ、パフも定期的に洗い、十分に乾燥させてから使用しましょう。
化粧品を浴室に置く人もいますが、浴室は湿度と温度の変化が大きい場所です。毎日使いやすい一方で、保管環境として適しているとは限りません。
翌年も使いたい季節商品は、高温多湿や温度変化の大きい場所を避け、日の当たらない場所で保管することが勧められています。ただし、適切に保管したからといって、開封後も長期間の品質が保証されるわけではありません。
期限がわからない化粧品を使う前の確認手順
いつ購入したのかわからない化粧品が出てきたら、すぐに肌へ塗らず、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
まず、容器の底、側面、外箱を見て、使用期限や開封後の使用目安がないか確認します。
海外製品などでは、ふたが開いた容器のようなマークと「6M」「12M」などの表示が使われる場合があります。これは一般に、開封後6か月、12か月といった目安を表す表示です。ただし、すべての化粧品に表示されているわけではありません。
次に、商品名、メーカー名、容器に印字された番号を確認します。製造時期を知りたい場合は、メーカーのお客様相談窓口へ問い合わせる方法があります。
ただし、容器の番号だけをインターネット上の非公式な計算サイトに入力し、製造日を断定するのは注意が必要です。番号の付け方はメーカーごとに異なり、同じ形式が継続して使われているとも限りません。
最後に、中身の状態と保管環境を確認します。
購入時期も開封時期もわからず、メーカーにも確認できない場合は、目元や口元、荒れている肌への使用は避けた方が安心です。
化粧品は残っていると捨てにくく感じます。高価な商品なら、なおさら迷うでしょう。しかし、肌トラブルが起きれば、化粧品の購入価格以上に通院や回復へ時間がかかることがあります。
「まだ残っているか」ではなく、今も安心して使える状態かを基準に判断することが、失敗を減らすポイントです。
食べ物も化粧品も、年月だけでなく背景を確かめることが大切
戦争中の食べ物と古い化粧品は、まったく別の話に見えます。
しかし、どちらも年月がたったものを、現在の感覚だけで判断しないことが大切です。
戦争中の一杯の料理は、材料や味だけでは意味を理解できません。食料不足、避難、引き揚げ、家族との記憶まで知ることで、その重みが見えてきます。
古い化粧品も、「3年」という数字だけでは判断できません。未開封か開封後か、どこに保管していたか、見た目やにおいに変化がないかを確認する必要があります。
食の記憶は、体験者の言葉を聞き、次の世代へ伝えていくことが重要です。
化粧品は、購入日や開封日を容器へ小さく記録しておくと、後から迷いにくくなります。新しく化粧品を開封した日をスマートフォンのメモやカレンダーに残しておくのも、無理なく続けやすい方法です。
過去を知ることも、身近な物を安全に使うことも、まずは「いつ、どのような状況だったのか」を確かめるところから始まります。
参考リンク
- あさイチ「戦後81年 食からたどる戦争の記憶・古い化粧品にご用心!」番組内容
- 日本化粧品工業会「化粧品には使用期限が書いてありません。なぜですか?」
- 厚生労働省「使用の期限を記載しなければならない医薬品等」
- 厚生労働省「化粧品・医薬部外品等ホームページ」
- 加藤登紀子さんが語るハルビンでの戦争と引き揚げの記憶
- 小林まさるさんが語る戦争と食料不足の体験
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