85坪22万円の土地と、9人家族が快適に暮らす家に共通する「子育てと住まい」の工夫
『見取り図の間取り図ミステリー!(大家族&激安移住スペシャル)(2026年8月27日)』では、北海道南幌町で約85坪の土地を実質22万円で取得した宗万さん一家と、群馬県前橋市で子ども7人を育てる井野優一さん一家の住宅が登場しました。この2つは別の家族ですが、どちらも「子育てしやすい住まい」を考えるうえで興味深い実例です。土地が22万円になった仕組みと、大家族住宅の間取りを詳しく見ていきます。
この記事でわかること
- 南幌町の約85坪の土地が実質22万円になった理由
- 50%割引と最大200万円の住宅建築費助成の仕組み
- 宗万さん一家が南幌町へ移住した理由と家の工夫
- 子ども7人・9人家族が暮らす井野優一さんの家
南幌町の85坪が22万円になった理由は「50%割引+最大200万円助成」
(出典:南幌町「みどり野きた住まいるヴィレッジ」 掲載ページ)
宗万さん一家が暮らすのは、北海道空知郡南幌町です。
家を建てた土地は約85坪。番組で紹介された取得負担は、なんと22万円でした。
ただし、南幌町で85坪の土地が最初から22万円で販売されているわけではありません。
ポイントは2段階の支援です。
まず、北海道住宅供給公社が所有する「南幌ニュータウンみどり野」の対象宅地では、南幌町の子育て世代住宅建築費助成の条件を満たす世帯が住宅を新築すると、宅地価格が定価から50%割引になります。
宗万さんの土地は定価約440万円と紹介されました。
そこから50%割引を利用すると約220万円。さらに住宅を新築することで受けられる最大200万円の住宅建築費助成を組み合わせた結果、土地取得に対する実質的な負担が22万円になったという仕組みです。
つまり、
約440万円の土地
→対象宅地の50%割引
→約220万円
→住宅建築費助成最大200万円
→実質22万円
という考え方です。
ここで大事なのは、200万円は「土地をさらに200万円値引きする制度」ではなく、あくまで住宅建築費への助成金だという点です。
南幌町自身も、住宅建築助成金を宅地購入費に置き換えて考えた場合の「価格参考例」として案内しています。
隣の85坪は22万円ではなく約220万円だった
この仕組みが分かりやすく表れていたのが、宗万さん宅の隣にある土地です。
宗万さん一家は、自宅の隣にも約85坪の土地を所有し、畑として利用しています。
こちらも自宅用地と同じように22万円なのかと思いきや、購入額は約220万円でした。
違いは、その土地に住宅を建てていないことです。
対象となる住宅を新築することで受けられる最大200万円の助成を、畑として使う2区画目には適用できません。
そのため、
自宅を建てる区画:約22万円相当
畑として使う区画:約220万円
という大きな差が生まれました。
「南幌町なら土地が85坪22万円」というわけではないことが、この2区画を比較するとよく分かります。
2026年度も最大200万円の住宅建築費助成がある
南幌町の子育て世代住宅建築費助成は2016年に始まり、2026年度までの事業として2027年3月まで延長されています。
対象となるのは、主に次の世帯です。
- 中学生以下の子どもがいる世帯
- または夫婦ともに40歳未満の世帯
- 南幌町に5年以上定住する意思がある
- 町内に自ら住む新築住宅を建てる
- 住宅部分の床面積が50㎡以上
助成額は建築場所や転入者・既住民によって異なります。
特に「みどり野団地」の美園や「みどり野きた住まいるヴィレッジ」などでは、町外から転入して条件を満たす世帯に200万円、町内にすでに住んでいる対象世帯には100万円が設定されています。
さらに2026年度の案内でも、みどり野団地の対象宅地について住宅建築費助成と連動した宅地価格50%OFFが示されています。
購入を考える場合は、土地を契約して家を建ててから制度を調べるのではなく、最初に対象区画と助成条件を確認することが重要です。
認定申請に必要な書類は建築工事の着工前に提出する必要があります。
宗万博之さんが南幌町を選んだきっかけは子どもの誕生
宗万さん一家が南幌町へ移住した背景には、単に土地の安さだけではなく、子どもが生まれたことがありました。
宗万博之さんは以前の取材で、子どもの誕生をきっかけに広いところで暮らしたいと考えたことを話しています。
札幌市内で広い土地を取得するのではなく、札幌近郊で土地価格を抑えながら戸建てを建てられる場所として南幌町を選びました。
南幌町は札幌から車で約50分。北側には江別市、南側には北広島市があり、農業地帯でありながら札幌圏へ車で移動できる位置にあります。
宗万さんも札幌方面へ車で通勤し、休日にはまとめ買いをする生活を送っていました。
家を建てる段階で大型冷凍庫を置く場所まで確保していたのも特徴です。
「土地を広くしたから便利」というだけではなく、都市部とは違う買い物頻度や車移動を想定し、移住後の生活に合わせて家そのものを設計しているところが興味深い点です。
洗濯・干す・収納・寝室が一直線につながる家事動線
宗万さん宅で特に参考になるのがランドリースペースです。
洗濯機のすぐ隣に洗濯物を干せるスペースがあり、その先にクローゼット、さらにその奥に寝室があります。
つまり、
洗う→干す→収納する→着る
までがほぼ一直線です。
洗濯物を干した後、別の階や家の反対側にあるクローゼットへ運ぶ必要がありません。
家事動線というと、キッチンと洗面所を近づける方法がよく知られていますが、宗万さん宅では「洗濯した衣類が最終的にどこへ戻るのか」まで考えられています。
毎日繰り返す家事だからこそ、数歩の違いでも長く暮らすほど負担に差が出ます。
南幌町は人口減少から増加へ転じた
(出典:南幌町「子ども室内遊戯施設 はれっぱ」 掲載ページ)
南幌町が興味深いのは、住宅取得支援が実際の人口の動きにも表れていることです。
南幌町は札幌市のベッドタウンとして1990年代に人口が増え、1998年には1万人を超えました。
しかし、その後は人口減少が続きます。
流れが変わったのは2022年。子育て世代の移住環境整備などが進み、2022年5月から人口が増加へ転じました。
その後、日本人人口増加率で2年連続全国1位となるなど、若い世帯の転入が続いています。
2026年8月の人口は8,371人で、前年同月より266人増えています。
住宅支援だけでなく、中学生までの子ども1人につき南幌町産「ゆめぴりか」10kgを支給する子育て支援米や、高校生までの医療費助成なども用意されています。
さらに、冬でも子どもが遊べる室内遊戯施設「はれっぱ」もあります。
北海道への子育て移住では、土地価格だけでなく「雪の時期に子どもがどこで遊べるか」も生活のしやすさに直結します。
町内移動にはオンデマンド交通「あいるーと」がある
地方移住で気になるのが車を使えないときの移動です。
南幌町ではオンデマンド交通「あいるーと」が運行されています。
一般的な路線バスのように決まったルートだけを走るのではなく、事前に予約すると町内の乗車場所から目的地まで移動できる仕組みです。
複数の予約がある場合は乗り合いとなり、AIを使った配車システムでルートが決められます。
広い北海道では自家用車が便利なのは間違いありませんが、家族全員がいつでも車を使えるとは限りません。
高齢になって運転が難しくなったときまで考えると、こうした町内交通が用意されていることも移住先を選ぶ材料になります。
子ども7人・9人家族の家は南幌町ではなく群馬県前橋市
(出典:群栄建築舎|IECOCORO「峻嶺の家」 掲載ページ)
今回の中でもう1つ大きく扱われた子ども7人・9人家族は、南幌町の宗万さん一家とは別の家族です。
暮らしているのは群馬県前橋市の井野優一さん一家。
夫婦と子ども7人の計9人で暮らしています。
父親の井野優一さんは一級建築士で、自宅の「峻嶺の家」を自ら設計しました。
敷地面積は約175坪、延床面積は約65.8坪。中庭を囲むコートハウス形式の大きな平屋です。
9人家族となれば「9人分の部屋をつくる」と考えそうですが、この住宅で特に面白いのは逆の発想です。
子ども7人なのに子ども部屋は4室
井野さん夫妻には7人の子どもがいますが、子ども部屋は4室しかありません。
その代わり、家の中にさまざまな居場所をつくっています。
中庭、小下がりのテレビスペース、赤城山を望めるダイニング、広い廊下など、子どもが個室以外でも自分の好きな場所を選んで過ごせるようになっています。
子ども部屋にも工夫があります。
本棚の下をカウンターテーブルにして勉強机として使うことで、大きな机を別に置かずに学習スペースを確保しています。
大家族だから部屋を増やすのではなく、家全体に居場所を増やすという考え方です。
9人家族では洗面台も洗濯動線も普通の家とは違う
井野さん宅の洗面台は約180cm。
7人きょうだいが並んで身支度できる大きさです。
洗濯機を回す回数は1日約6回。
脱衣所とランドリースペースを壁越しにつなぎ、脱いだ衣類をそのままランドリー側のカゴへ入れられるようにしています。
バスタオルも脱衣所側からボックスティッシュのように引き出せ、隣のランドリールーム側から補充できる仕組みです。
洗濯物を畳んでしまう作業や食卓の準備は、子どもたちも担当します。
「母親が9人分の家事を効率よくこなせる家」というより、家族9人が生活に参加しやすい家になっている点が特徴です。
南幌町と9人家族の家に共通するのは「広さをどう使うか」
南幌町の宗万さん宅と、井野優一さんの9人家族住宅は、場所も家族構成もまったく違います。
ただ、共通しているのは、単に広い土地や大きな家を手に入れることを目的にしていないところです。
南幌町では、住宅支援によって土地取得費を抑え、その分を住宅そのものや子育て環境へ回しやすくしています。
井野さん宅では、約66坪の大きな平屋を子どもの個室で埋めるのではなく、中庭やランドリー、共有空間へ面積を使っています。
土地85坪22万円という数字も、子ども7人で子ども部屋4室という間取りも、一見すると驚く数字です。
その背景まで見ると、どちらも「家族がそこで長く暮らすために、お金と空間をどこへ使うか」を考えた結果だと分かります。
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