1トン超の霜と「モンスター氷」ができる理由
『相葉ヒロミのお困りですカー?(三崎のマグロを守れ!マイナス60℃の冷凍庫の大掃除!モンスター氷とバトル)(2026年8月27日)』で強烈なのが、三崎のマグロ冷凍庫から取り除かれる1トンを超える霜と、天井を覆う巨大な氷です。冷凍庫なのに、なぜこれほど大量の氷が増えてしまうのでしょうか。ポイントは外から入る湿気と、冷却・除霜を繰り返す巨大な冷凍設備の構造にあります。家庭の冷凍庫にもつながる霜の仕組みまで掘り下げます。
この記事でわかること
- 冷凍庫に1トンを超える霜ができる理由
- 天井に巨大な「モンスター氷」が育つ仕組み
- 霜を放置すると冷凍設備に起きる問題
- 家庭の冷凍庫で安全に霜取りする方法
1トン超の霜の正体は外から入った「空気中の水分」
巨大な冷凍庫に降り積もる霜の大部分は、冷凍庫そのものから生み出される水ではありません。
原因になるのは、
扉を開けたときに外から入り込む暖かく湿った空気です。
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(出典:三菱電機「冷蔵庫内に露や霜がつく場合」)
扉が開いたときに外気が入り込むと、空気中に含まれる水蒸気が非常に冷たい壁や冷却器に触れます。そこで水分が凍結し、少しずつ霜として付着していきます。
冷凍設備では、高湿度の外気の侵入や保管物から出る水分によって冷却器表面に着霜することが知られています。三菱電機の低温機器資料でも、外気侵入などによる着霜量を計算し、霜取り運転を行う必要性が説明されています。
三崎のような大型施設では、マグロの搬入や搬出、人の出入りなどで扉を開く機会があります。
1回に入る水分はわずかでも、
外気が入る → 水分が凍る → 霜になる
という現象が長期間繰り返されれば、家庭用冷凍庫とは比較にならない量になります。
今回の大掃除で取り除かれる霜が合計1トン以上というスケールになるのも、大型冷凍倉庫ならではです。
天井の「モンスター氷」は霜取りでも成長する
さらに興味深いのが、冷凍庫の天井を覆う巨大な氷です。
外気から入る湿気だけでなく、冷却器の霜取り時に発生する水分や蒸気も、天井の着霜につながる場合があります。
冷却器に付いた霜を溶かすと、その周囲では一時的に温度や湿度が上昇します。その水分が再び冷たい天井面へ達すると、そこで凍結します。
実際に三菱電機が紹介する冷凍保管倉庫の事例では、前室を設けられず外気侵入が多い環境で、
- 冷却器への激しい霜付き
- 霜取りに時間がかかる
- 霜取り時の蒸気による天井全面への着霜
- 溶けた霜や水滴の床・商品への落下
といった問題が発生していました。
つまり「霜を取れば、それだけですべて解決」という単純な話ではありません。
冷やす、霜が付く、霜を溶かす、水分が移動する、別の場所で再び凍る
という現象が冷凍庫内で起こり得ます。
天井一面に成長した氷が「モンスター」のような姿になる背景には、超低温の冷凍庫ならではの水分との戦いがあります。
霜を放置すると冷やす力まで落ちてしまう
霜は「邪魔だから掃除する」だけではありません。
冷却器に厚く霜が付着すると、冷却能力そのものが低下します。
三菱電機の技術資料では、機種や条件によるものの、冷却器に0.4~0.7kg程度着霜すると冷却能力が10~30%程度低下する例が示されています。だからこそ低温設備にはデフロストと呼ばれる霜取り運転が必要になります。
冷蔵倉庫は大量の食品を一定の低温で保管するため、多くの電力を使う施設でもあります。日本冷蔵倉庫協会も、冷蔵倉庫で使用電力削減に取り組んでいることを紹介しています。
冷却器が霜に覆われて効率が落ちれば、設定温度を維持するための負担も増えます。
そのため霜取りは、美観を整える掃除というより、
食品を守り、設備を正常に働かせるためのメンテナンス
という意味合いが強い作業です。
業務用冷凍庫には自動で霜を溶かす仕組みもある
業務用冷凍設備には、人が毎回氷を削らなくても済むように、さまざまな除霜方式があります。
代表的なのが「電気ヒーター除霜」です。
冷凍機とファンを止め、ヒーターを使って冷却器に付いた霜を溶かします。
一方、比較的温度が高い冷蔵用途では、冷凍機を止めてファンだけを動かし、庫内の空気で霜を溶かす「オフサイクル除霜」も使われます。
さらに大型設備では、温めた冷媒ガスを利用するホットガス方式などもあります。
ただし、自動除霜があれば庫内のどこにも霜が付かないわけではありません。
冷却器以外の壁や天井、扉周辺などに水分が移動して凍ることもあります。
今回のような大規模な掃除は、通常運転の除霜だけでは対処しきれない部分まで取り除く作業だと考えると、その大変さがよく分かります。
マイナス60℃の大掃除が普通の掃除と違う理由
さらに厳しい条件が**マイナス60℃**です。
寒冷な場所での作業は、単に「すごく寒い」というだけではありません。
厚生労働省は、冷凍庫・冷蔵庫内での作業を「寒冷な場所における業務」の例として挙げ、寒冷環境や低温物体による凍傷を職業上起こり得る疾病として位置づけています。
番組ではまずマイナス30℃の冷凍庫から作業を始め、出演者が交代しながら霜を取り除き、さらにマイナス60℃の世界へ入ります。
ここまで温度が下がれば、大量の霜を削る力仕事に加えて、低温環境そのものへの対応が必要です。撮影カメラにもトラブルが起きるという過酷さです。
巨大な氷を相手にした掃除が大仕事になる理由は、
氷の量 × 極端な寒さ × 作業できる時間の制約
が重なるからです。
家庭の冷凍庫にも霜が増える原因は共通している
スケールはまったく違いますが、家庭の冷凍庫でも原理は同じです。
特に霜が増えやすくなるのは、
- 扉を長時間開けている
- 扉の開閉回数が多い
- ドアパッキンが傷んでいる
- 冷気の吹出口を食品でふさいでいる
といった状態です。
パナソニックの業務用冷凍・冷蔵庫の案内でも、扉が開いたままになっていること、パッキンの破損、頻繁な開閉などが庫内の霜付きの確認ポイントとして挙げられています。
霜対策で大切なのは、まず湿った空気を必要以上に入れないことです。
「開けたら早めに閉める」という何気ない使い方も、霜の発生を抑えることにつながっています。
家庭で巨大な霜を無理に削るのは危険
冷凍庫に厚い氷ができると、アイスピックや包丁などで割りたくなりますが、これは避けたほうが安全です。
シャープは冷凍庫の霜取りについて、きり、ナイフ、金属製のヘラ、ドライバーなどを使用しないよう注意しています。
冷却用のパイプを傷つけると、故障するだけでなく冷媒が漏れる危険があります。また、ドライヤーなどの熱器具を使う方法も、冷凍庫の変形や故障につながるため推奨されていません。
手動霜取り式の冷凍庫では、取扱説明書に従って電源を切り、食品を移動させ、霜が自然に緩んでから付属のプラスチック製ヘラなどで取り除くのが基本です。
三崎の巨大冷凍庫と家庭用冷凍庫ではサイズこそ違いますが、霜を無理やり壊すのではなく、設備に合った方法で安全に除去するという考え方は共通しています。
「1トンの霜」を取ることがマグロを守ることにつながる
迫力だけを見ると、1トンを超える霜や巨大なモンスター氷との格闘に目を奪われます。
しかし、その奥にあるのは冷凍設備を正常な状態に保つ仕事です。
冷蔵倉庫は、水産物や畜産物、農産物、冷凍食品などを低温で保管し、産地から消費地まで品質をつなぐコールドチェーンの重要なインフラです。
三崎のマグロも、捕れた瞬間から食卓へ届くまで冷凍状態を維持することで商品価値が守られています。
だからこそ、巨大な霜を取り除く作業は単なる「大掃除」ではありません。
冷却能力や庫内環境を維持し、保管されているマグロを守るための裏方仕事です。
普段スーパーで見ているマグロの向こう側には、マイナス60℃の設備だけでなく、そこに付く氷や霜と向き合うメンテナンスの仕事まで存在しています。
参考リンク
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