家族で始めれば終活は重くなりすぎない
エンディングノートを親に勧めたいものの、「縁起でもない」と嫌がられそうで切り出せない人もいるでしょう。そんなときは、親だけに書いてもらうのではなく、子ども世代も一緒に取り組む方法があります。『明日から使える あかるい終活(1)家族でエンディングノート(2026年8月3日放送)』でも、家族で書き始める方法やスマホのパスワードの重要性が取り上げられます。大切なのは、すべてを完成させることより、家族で話すきっかけを作ることです。
この記事でわかること
- 家族でエンディングノートを書くメリット
- 親が嫌がりにくい話の切り出し方
- 最初に書いておきたい7つの項目
- スマホのパスワードを安全に残す方法
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エンディングノートは家族全員で書くと始めやすい
結論からいうと、親にエンディングノートを書いてもらいたいときは、子ども側も自分のノートを書くのがおすすめです。
「お父さんも書いて」「お母さんも準備して」と親だけに求めると、年齢や死を意識させられたように感じ、抵抗されることがあります。
そこで、次のように家族全員の備えとして提案します。
「災害や入院のときに困らないように、私も連絡先や保険のことをまとめてみるね」
「スマホを急に使えなくなったときのために、家族みんなで必要な情報を整理しない?」
このような言い方なら、終活という重い話だけではなく、入院・災害・事故などの緊急時に備える情報整理として始められます。
エンディングノートは、本人に何かあった際、家族が判断や手続きを進めるために必要な情報を残すものです。高齢者だけに必要なものではなく、病気や事故で一時的に意思を伝えられなくなる可能性を考えれば、子ども世代が書いても無駄にはなりません。
個人的には、「終活を始めよう」と正面から切り出すよりも、「家族の連絡帳を作ろう」くらいの感覚で始める方が自然だと感じます。
最初から葬儀や財産の話に入る必要はありません。まずは緊急連絡先や持病、スマホの契約状況など、日常生活に近い項目から書けば十分です。
親が嫌がるときは目的を「死後」ではなく「今の安心」に変える
親がエンディングノートを嫌がる背景には、「死ぬ準備をさせられているようで嫌だ」という気持ちがあると考えられます。
そのため、最初から相続や葬儀の話を持ち出すより、今の暮らしに役立つ目的から話す方が進めやすくなります。
たとえば、次のような場面をきっかけにできます。
- 入院したときの連絡先を確認したい
- 飲んでいる薬や持病を家族で共有したい
- 保険証券がどこにあるか知っておきたい
- スマホを紛失したときの連絡方法を決めたい
- 災害時の集合場所を確認したい
「亡くなった後に困るから」ではなく、急な入院や災害のときに家族が困らないためと説明するのがポイントです。
また、一度の話し合いですべて聞き出そうとしないことも大切です。
「銀行口座を全部教えて」
「財産はいくらあるの?」
「葬儀はどうしてほしい?」
このような質問を立て続けにすると、親が警戒してしまう可能性があります。
たしかに家族としては早く確認したくなりますが、最初は本人が話しやすい内容からで問題ありません。
好きな食べ物、よく連絡する友人、かかりつけ医、緊急時に連絡してほしい人などを書くだけでも、エンディングノートを開くきっかけになります。
最初に書きたいのは緊急時に必要な7項目
エンディングノートには多くの記入欄がありますが、最初から全部埋める必要はありません。
まずは、家族が急に対応しなければならなくなったときに必要な情報から書きます。
1.本人の基本情報
氏名、生年月日、住所、本籍、血液型などを記入します。
運転免許証、マイナンバーカード、健康保険に関する書類などが、どこに保管されているかも残しておくと探す手間を減らせます。
ただし、重要な番号をすべてノートに書くと、紛失した際の危険が高まります。
番号そのものではなく、「寝室の鍵付き引き出しに保管」など、書類の保管場所を記録する方法もあります。
2.緊急連絡先
家族や親族だけでなく、本人が普段から頼りにしている友人、近所の人、勤務先なども記入します。
家族が知らない交友関係がある場合、本人に何かあっても連絡先が分からないことがあります。
氏名と電話番号だけでなく、「元同僚」「学生時代の友人」など、本人との関係も添えておくと判断しやすくなります。
3.医療や介護に関する希望
持病、アレルギー、服用中の薬、かかりつけ医、利用している介護サービスなどを書きます。
本人が意思を伝えられない状態になった場合に備え、治療や介護について話し合っておくことも大切です。
ただし、一度決めた希望が将来も変わらないとは限りません。
体調や考え方の変化に合わせて、定期的に見直す必要があります。
4.保険や年金の情報
生命保険、医療保険、火災保険、自動車保険など、加入している保険の種類を整理します。
ここでも証券番号やログイン情報をすべて書くのではなく、保険会社名、担当窓口、証券の保管場所を中心にまとめる方法があります。
家族が存在を知らなければ請求手続きに進めないため、どのような契約があるかだけでも共有しておきたいところです。
5.預貯金や不動産などの財産
銀行、信用金庫、証券会社、不動産、貸金庫など、財産の種類と取引先を整理します。
暗証番号まで同じノートに書く必要はありません。
家族が知るべきなのは、まず「どこに何があるか」です。
なお、借入金、住宅ローン、クレジットカードの未払いなど、マイナスの財産についても残しておく必要があります。
財産だけ記載して借入先を書かないと、家族が契約の全体像を把握できません。
6.葬儀やお墓についての希望
希望する葬儀の規模、連絡してほしい人、宗教や菩提寺、お墓の場所などを記入します。
ただし、費用や家族の状況によって、本人の希望をすべて実現できない場合もあります。
「必ずこうする」と命令するように書くより、本人が何を大切にしているのかが伝わる書き方の方が、家族も判断しやすくなります。
7.スマホやインターネットの情報
現在の終活で忘れやすいのが、デジタル情報です。
スマホの中には、ネット銀行、電子マネー、通販、SNS、写真、メール、動画配信など、多くの情報や契約が集まっています。
次の項目を一覧にしておくと確認しやすくなります。
- 使用しているスマホの機種
- 契約している携帯電話会社
- 主に使っているメールアドレス
- ネット銀行や証券口座の有無
- 毎月料金を支払っているサービス
- SNSやブログの有無
- 残したい写真やデータ
- 削除してほしいデータ
- ロック解除情報の保管場所
初めて考えると、スマホの中にこれほど多くの契約や資産があることに少し驚きます。
紙の通帳や請求書が残らないサービスも多いため、家族が契約の存在そのものに気づけない可能性があります。
スマホのパスワードはそのまま書かず安全に残す
スマホのパスワードは家族に残しておきたい情報ですが、エンディングノートの目立つ場所にそのまま書くのはおすすめできません。
ノートを紛失したり、第三者に見られたりすると、スマホだけでなく、銀行口座やメール、SNSなどに不正アクセスされる危険があります。
一方で、家族がパスワードを知らないまま本人が亡くなると、スマホのロックを解除できないことがあります。
実際に、故人のスマホを開けずネット銀行の取引先が分からない、契約中のサブスクを解約できないといった相談が寄せられています。スマホやパソコンのロック解除は、第三者には難しい場合があります。
そこで考えたいのが、スマホのスペアキーを作る方法です。
名刺ほどの大きさの紙にパスワードを書き、その上を修正テープなどで覆って見えないようにします。
普段は誰にも見られない場所へ保管し、万一の際に家族が見つけられるよう、保管場所だけを伝えておきます。
たとえば、エンディングノートには次のように書きます。
「緊急時に必要なスマホ情報は、書斎の鍵付き引き出しに保管」
この方法なら、ノートだけを見てもパスワードは分かりません。
実際に選ぶなら、パスワードそのものよりも、必要なときに家族がどうやって確認するかを決めておくことが大切です。
また、スマホのパスワードを変更したら、スペアキーの情報も更新しなければなりません。
古いパスワードのままでは意味がないため、誕生日や年末年始など、年に1回は確認する日を決めておくと忘れにくくなります。
サブスクやネット銀行はサービス名だけでも一覧にする
デジタル情報を整理するときは、すべてのIDとパスワードを書き出すことより、最初に利用しているサービスの存在を見えるようにすることが重要です。
特に確認しておきたいのは次の項目です。
- ネット銀行
- ネット証券
- 暗号資産
- コード決済
- 電子マネー
- クレジットカード
- 携帯電話料金
- 動画や音楽の定額サービス
- ネット通販の会員サービス
- クラウドの有料保存サービス
- オンラインゲーム
- SNS
- ブログやホームページ
毎月支払いが発生するサービスは、解約しない限り請求が続く場合があります。紙の明細が届かない契約では、家族が請求に気づくまで時間がかかることもあります。
ノートには、サービス名、利用目的、料金の支払方法、問い合わせ先などを書きます。
IDやパスワードを直接書かない場合は、「ログイン情報は別の場所に保管」と記録します。
また、SNSや写真については、残すか削除するかも決めておきたいところです。
家族に残してほしい写真がある一方で、見られたくない個人的なデータもあるでしょう。
データを確認する人を指定し、どこまで見てよいかを書いておくと、家族の迷いを減らせます。
個人的には、金銭に関わる契約だけでなく、写真やSNSをどうしてほしいかも早めに伝えておく方がよいと感じます。家族にとっては、削除してよいかどうかを決めること自体が大きな負担になるからです。
エンディングノートと遺言書は役割が違う
エンディングノートと遺言書は、同じものではありません。
エンディングノートは、医療や介護、葬儀、連絡先、契約情報など、家族に伝えたいことを自由に書けます。
決められた形式はなく、途中に空欄があっても、パソコンで作成しても問題ありません。
一方、財産を誰にどのように引き継がせるかなど、相続に関する意思を法的に残したい場合は、法律上の要件を満たした遺言書を検討する必要があります。
自筆証書遺言では、原則として本人が全文、日付、氏名を書き、押印するなどの形式が定められています。財産目録については、一定の条件のもとでパソコンなどを利用できます。
つまり、エンディングノートに、
「長男に自宅を渡したい」
「預金は長女と次女で分けてほしい」
と書くだけでは、希望どおりの相続を確実に実現できるとは限りません。
エンディングノートは、家族に気持ちや情報を伝えるためのものです。
遺言書は、財産の引き継ぎに関する意思を、定められた形式で残すものです。
この違いは、家族で書き始める前に確認しておきたいところです。
相続関係が複雑な場合、不動産が複数ある場合、家族以外に財産を渡したい場合などは、弁護士、司法書士、行政書士などへの相談も検討しましょう。
自筆証書遺言書は法務局で保管できる
自分で書いた遺言書を自宅に置いておくと、紛失、破棄、改ざんなどの心配があります。
そのような不安を減らす仕組みとして、自筆証書遺言書保管制度があります。
この制度を利用すると、自筆証書遺言書の原本と画像データが法務局で管理されます。保管申請時には、遺言書の形式について外形的な確認も行われます。また、法務局に保管された遺言書は、相続開始後の家庭裁判所による検認が不要です。
ただし、法務局が遺言の内容について相談に乗ったり、遺言書の法的な有効性を保証したりする制度ではありません。
形式が整っていても、内容に問題があれば争いになる可能性はあります。
遺言書を作る目的がはっきりしている場合は、保管申請の前に専門家へ内容を確認してもらうと安心です。
無料のエンディングノートも利用できる
エンディングノートは書店や通販で購入できますが、最初から市販品を買わなくても始められます。
法務局や自治体などが、無料でダウンロードできるエンディングノートを公開している場合があります。
公的機関が作成したものには、次のような項目が含まれています。
- 自分自身について
- 家族や親族
- 財産や負債
- 保険や年金
- 医療や介護
- 相続や遺言
- 成年後見
- 葬儀やお墓
- 家族へのメッセージ
相続、遺言、後見などの基本情報も一緒に確認できるものがあります。
まず無料版を印刷し、書けそうな項目だけ試してから、自分に合う市販品を選ぶ方法もよいでしょう。
市販品を選ぶ場合は、ページ数の多さだけで判断せず、文字の大きさ、記入欄の広さ、項目の分かりやすさを確認します。
細かい項目が多すぎるノートは、途中で負担に感じることもあります。
個人的には、最初の1冊は詳しすぎないものを選び、足りない情報を別紙で追加する方が続けやすいと思います。
家族で書くときに避けたい5つの失敗
エンディングノートは便利ですが、書き方や保管方法によっては、かえって家族を迷わせることがあります。
一度に全部書かせようとする
項目が多いノートを1日で完成させるのは大変です。
まずは緊急連絡先やかかりつけ医など、書きやすい1ページから始めます。
親の考えを否定する
葬儀や医療について、家族と本人の考えが違うこともあります。
その場で正そうとせず、まずは「なぜそう思うのか」を聞くことが大切です。
パスワードを丸見えで書く
銀行やメールのパスワードを同じノートに並べると、盗難や紛失時の危険が高まります。
秘密情報は別に管理し、ノートには保管場所や確認方法を書く方が安全です。
保管場所を誰にも伝えない
詳しいノートを作っても、家族が存在や保管場所を知らなければ使えません。
少なくとも、信頼できる家族1人にはノートの存在を伝えておきます。
一度書いたまま見直さない
住所、電話番号、保険、銀行口座、スマホのパスワードなどは変わることがあります。
年に1回程度は内容を確認し、古い情報を更新しましょう。
保管場所は「見つけられるが簡単には見られない場所」にする
エンディングノートには、家族構成、財産、医療、保険などの個人情報が集まります。
リビングの本棚など、誰でも手に取れる場所に置くのは避けたいところです。
一方、貸金庫など家族が存在を知らない場所に保管すると、必要なときに見つけられない可能性があります。
保管場所は、次の条件を満たす場所が向いています。
- 日常的に他人の目に触れない
- 災害や水ぬれの影響を受けにくい
- 家族が緊急時に取り出せる
- 本人が定期的に更新できる
鍵付きの引き出しや耐火性のある保管ケースなどを使い、信頼できる家族に場所を伝えておく方法があります。
銀行の暗証番号、スマホのパスワード、実印など、特に重要なものはノートと分けて保管しましょう。
「エンディングノートは机の鍵付き引き出し」「パスワード情報は別の封筒」と分けるだけでも、情報が一度に漏れる危険を抑えられます。
空欄があっても家族で話せたことに意味がある
エンディングノートは、すべてのページを埋めて完成させることが目的ではありません。
書きながら、
「入院したら誰に連絡してほしい?」
「大切な写真はどこにある?」
「毎月払っているサービスは何?」
と家族で話せたことに大きな意味があります。
本人の考えは、年齢、健康状態、家族構成によって変わります。
一度決めた内容を絶対のものとせず、必要に応じて書き直せることもエンディングノートのよさです。
最初は名前と緊急連絡先だけでも構いません。
次に保険、医療、スマホ、財産と、少しずつ項目を増やしていけば負担を減らせます。
個人的には、最初の目標を「完成」ではなく、家族で10分話すことにするのがいちばん続けやすいと感じます。
親に準備を求める前に、自分自身のスマホや契約情報を整理してみると、何を残すべきかも見えてきます。
エンディングノートは人生の終わりだけを考えるものではありません。
今の暮らしを整理し、大切な情報や思いを家族に伝えるためのノートとして、書けるところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考リンク
- 国民生活センター「今から考えておきたいデジタル終活」
- 国民生活センター「始めましょう!デジタル終活」
- 函館地方法務局「エンディングノート~あなたに届け、わたしの想い~」
- 長野地方法務局「エンディングノート」
- 法務省「遺言書の様式等についての注意事項」
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度とは?」
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」
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