空港で「現金のにおい」を探す犬が本当にいる
『突破ファイル(空港税関VS悪徳ゲーマーカップル▼夏から急増&大雨に注意!水難事故)(2026年9月3日)』の空港税関パートでもう1つ気になるのが「探知犬」です。税関では麻薬だけでなく、**大量の紙幣を嗅ぎ分ける「紙幣探知犬(カレンシードッグ)」**まで導入されています。なぜ現金を犬が探すのか、ライラックス号とトリ号の役割、100万円を超える現金を海外へ持って行く場合のルールまで掘り下げます。
この記事でわかること
- 紙幣探知犬が何を見つける犬なのか
- ライラックス号とトリ号が導入された背景
- 犬が紙幣を見つけられる仕組みと訓練
- 海外へ100万円超の現金を持って行くときのルール
紙幣探知犬は大量の現金を嗅ぎ分ける税関の新戦力
(出典:Macao News「Cash-detector dogs now patrol Narita Airport」)
空港の探知犬と聞くと「麻薬を探す犬」を思い浮かべますが、現在の日本には**紙幣探知犬(カレンシードッグ)**もいます。
目的は、大量の現金が申告されないまま国境を越えることを防ぎ、犯罪収益の移動やマネーロンダリングへの対策を強化することです。
日本では2024年8月、税関が紙幣探知犬を新たに導入しました。国際的にマネーロンダリング対策の重要性が高まり、国境を越えて現金を運ぶ「キャッシュクーリエ」への対策強化が求められていることが背景にあります。
つまり、「紙幣を持っている人を捕まえる犬」ではありません。
重要なのは申告が必要な多額の現金を適切に申告しているかという点です。正当に申告して持ち運ぶことまで禁止されているわけではありません。
この違いは知っておきたいところです。
ライラックス号とトリ号は紙幣探知犬として登場した2頭
紙幣探知犬の導入時に紹介されたのが、ライラックス号とトリ号です。
2頭はラブラドール・レトリバーで、紙幣探知犬として成田空港などで多額の現金を発見する役割を担うことになりました。税関資料にも2頭の名前と、2024年8月に紙幣探知犬を導入したことが記載されています。
興味深いのは、まったく新しい種類の犬をゼロから育成したのではないことです。
2頭はもともと麻薬探知犬として活動していた経験があり、紙幣のにおいを探すための追加訓練を受けています。紙幣探知犬向けの訓練期間は約1か月とされ、すでに探知犬として身につけていた能力を生かす形になっています。
「麻薬を探していた犬が、今度はお札を探す」という経歴まで知ると、かなり印象に残る2頭です。
犬はどうやって紙幣のにおいを覚えるのか
(出典:税関「麻薬探知犬」)
探知犬の訓練というと、厳しく命令して覚えさせる姿を想像するかもしれません。
実際には**「においを発見すると大好きな遊びができる」ことを犬に覚えてもらう**方法が使われています。
税関の探知犬では、タオルを巻いた「ダミー」と呼ばれる道具を使います。ハンドラーと呼ばれる担当職員がダミーで犬と遊び、発見すると褒めることを繰り返します。
その後、探したい対象のにおいとダミーを結びつけて覚えさせます。
紙幣探知犬でも同じ考え方が使われ、紙幣に関連するにおいを付けたダミーを使って訓練します。犬にとっては犯罪捜査をしているというより、**「大好きなダミーを見つけるゲーム」**に近いわけです。
探知犬とハンドラーの信頼関係が重要になる理由もここにあります。
麻薬探知犬は約4か月の訓練と認定試験を受ける
紙幣探知犬のベースになった麻薬探知犬には、かなりしっかりした選抜と訓練があります。
税関では麻薬探知犬になるために約4か月の訓練を受け、認定試験への合格が必要です。
向いている犬にも特徴があります。
- 動く物への関心が強い
- 投げた物をくわえて持って来る
- 活発に行動する
- 知らない場所を怖がりにくい
- 人に対して攻撃的ではない
主に使われている犬種はラブラドール・レトリバーとジャーマン・シェパードです。
ラブラドールというと家庭犬として穏やかな印象がありますが、探知犬では旺盛な好奇心や物を探す意欲、人と一緒に働きやすい性格が生かされています。
紙幣を発見すると犬はどう知らせるのか
探知犬が対象のにおいを感じても、吠え続けたり、旅行者に飛びかかったりするわけではありません。
税関の麻薬探知犬では、対象を発見するとその場に座ることでハンドラーへ知らせる方法が使われています。
こうした探知犬のメリットは、荷物を1つずつ機械へ通す方法とは違い、人や多くの荷物が行き交う場所を移動しながら、においを探せることです。
担当者は、犬には広い範囲にある多数の対象を短時間で調べられる利点があると説明しています。
空港のように大量の人と荷物が動き続ける場所では、この機動力が大きな意味を持ちます。
100万円を超える現金は海外に持って行けないわけではない
ここは誤解されやすいところです。
日本から海外へ100万円相当額を超える現金を持ち出すこと自体に、一律の金額上限が設定されているわけではありません。
ただし、合計額が100万円相当額を超える場合には、税関への申告が必要です。入国時も同様です。
対象は日本円の現金だけではありません。
- 日本円・外国通貨の現金
- 小切手
- トラベラーズチェック
- 約束手形
- 株券や国債などの有価証券
これらの合計額が100万円相当額を超える場合が対象になります。
例えば日本円50万円と外貨60万円相当を持っている場合、現金を別々に考えるのではなく合計額を見る必要があります。
海外旅行で多額の現金を持ち歩く予定がある人には、紙幣探知犬そのもの以上に重要なポイントです。
100万円ちょうどではなく「100万円を超える」が基準
もう1つ細かいですが、覚えておきたい違いがあります。
表現は「100万円以上」ではなく、100万円相当額を超える場合です。
また、外国通貨を含む場合は日本円へ換算して判断します。
申告が必要な場合は「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を税関へ提出します。
「100万円を超えたら海外旅行に持って行けない」という制度ではなく、多額の資金が国境を移動することを税関が把握できるようにする制度と考えると分かりやすいでしょう。
金の地金にも別の申告基準がある
現金と一緒に覚えておきたいのが金です。
純度90%以上の金の地金が1kgを超える場合も申告対象になります。
これは現金100万円という基準とは別です。
海外旅行で普通に現金を持ち歩く人にはあまり縁がない話ですが、税関がチェックしているものが「麻薬や危険物だけではない」と分かる例でもあります。
税関では不正薬物、金地金、知的財産を侵害する物品など非常に幅広い対象を取り締まっています。
税関の探知犬は紙幣だけではない
日本の税関で探知犬が使われ始めたのは紙幣探知犬よりずっと前です。
麻薬探知犬は1979年に米国税関の協力を得て2頭が導入され、現在は全国の税関に約130頭が配置されています。
その後、役割は広がっています。
税関の沿革では、
- 1979年 麻薬探知犬を導入
- 2002年 爆発物探知犬を導入
- 2009年 銃器探知犬を導入
- 2024年 紙幣探知犬を導入
という流れになっています。
空港で犬を見かけても、必ずしも麻薬を探しているとは限らない時代になったわけです。
検査機器だけではなく人・犬を組み合わせて密輸を防いでいる
空港税関というと、X線検査装置などの機械が密輸品を自動的に発見しているような印象があります。
しかし、水際対策は1種類の装置だけで完結するものではありません。
旅客の申告、税関職員による確認や携帯品検査、各種検査機器、探知犬などを組み合わせることで、不正な持ち込みや持ち出しを防いでいます。
2025年には全国の税関による不正薬物の押収量が約3,211kgに達し、6年ぶりに3トンを超えました。航空機旅客による不正薬物の摘発件数も前年から29%増加しています。
旅行者が戻り国際的な人の移動が活発になる中、水際での検査が今も重要であることが分かります。
紙幣探知犬の登場は、「犬の鼻」という昔ながらの能力を、新しい犯罪対策へ応用した例ともいえます。
しかもライラックス号とトリ号は、麻薬探知犬として培った能力を生かして紙幣を探す仕事へ進んだ2頭です。
空港税関を扱う企画を見るときは「何が隠されていたか」だけでなく、「税関はどうやって見つけているのか」という側を見ると、かなり面白くなります。
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