雪深い模渕で受け継がれる暮らし
秋田県由利本荘市にある模渕集落。初めて地名を見て、「何と読むのだろう」「どこにあるのだろう」と気になった人も多いのではないでしょうか。
『限界集落住んでみた たっぷり43分版 秋田 由利本荘 模渕編(2026年8月2日)』では、ディレクターが約1か月暮らしながら、豪雪地帯の日常や住民の人生に触れます。雪国の不便さだけでは語れない、模渕で暮らし続ける人たちの明るさや地域のつながりを見ていきましょう。
この記事でわかること
- 模渕集落の読み方と場所
- 雪深い地域で続く暮らし
- 通学や移動で確認したいこと
- 登山や集落訪問時の注意点
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模渕集落は秋田県由利本荘市鳥海町上笹子にある
模渕は「ぶなぶち」と読む集落です。
住所では、秋田県由利本荘市鳥海町上笹子に含まれます。由利本荘市の資料にも「鳥海町上笹子字模渕」という地名や、模渕町内会が管理する地域施設の記録が残っています。
模渕がある笹子地域は、秋田県と山形県の県境に近い山間部です。笹子は文字だけを見ると「ささご」と読みたくなりますが、地域名としては「じねご」と読みます。
つまり、模渕の所在地を読むときは、次のようになります。
- 模渕:ぶなぶち
- 笹子:じねご
- 所在地:秋田県由利本荘市鳥海町上笹子字模渕
「模渕」も「笹子」も読み方が難しく、初めて知ると少し驚きます。住所を地図やカーナビへ入力するときは、読み方ではなく漢字の住所を使ったほうが見つけやすいでしょう。
笹子地域の周囲には1,000m級の山々が連なる丁山地が広がり、ブナの天然林や豊かな山の恵みに支えられてきました。都市部の住宅地とは異なり、山と雪を切り離して暮らすことが難しい地域です。
豪雪地帯でも笑顔が絶えないのは住民同士の距離が近いから
模渕を知るうえで印象に残るのが、雪の多さと住民の明るさの対比です。
冬の山間集落では、雪かきや屋根の雪下ろし、道路状況の確認など、雪が少ない地域にはない作業が増えます。買い物や通院、通学も天候の影響を受けやすく、車を運転できない人にとっては移動手段の確保が大きな課題になります。
それでも集落から笑い声が絶えない背景には、住民同士が日常的に声をかけ合う関係があります。
人口の多い地域では、隣に住んでいる人の顔を知らないことも珍しくありません。一方、小さな集落では、誰がどこに住み、誰が手助けを必要としているのかを住民同士が把握しやすくなります。
雪による不便さが大きいほど、次のような助け合いも重要になります。
- 除雪や雪下ろしの声かけ
- 高齢者の安否確認
- 車を運転できない人の移動支援
- 食料や生活用品の分け合い
- 行事や集会を通じた交流
もちろん、少人数の集落だから必ず関係が良好になるとは限りません。それでも、厳しい自然環境の中で暮らすには、個人だけで何もかも解決するのが難しいことは確かです。
個人的には、模渕の「明るさ」は雪国の苦労を感じていないからではなく、苦労を知っている人同士が支え合ってきた結果ではないかと感じます。
午前5時起きのバス通学が示す山間部の現実
模渕の暮らしを考えるとき、見落とせないのが子どもたちの通学です。
山間部では、学校までの距離が長くなりやすく、高校進学をきっかけに生活時間が大きく変わることがあります。自宅近くに鉄道駅や高校がなければ、路線バスやコミュニティバス、家族による送迎を組み合わせなければなりません。
番組では、中学校を卒業した生徒が、高校へ通うために午前5時に起きる生活が紹介されます。
都市部であれば、電車やバスが短い間隔で走り、乗り遅れても次の便を待てる場合があります。しかし、山間部では1本を逃したときの影響が大きくなります。
由利本荘市の鳥海地域では、市のコミュニティバスやデマンド交通が運行されています。2026年4月改正の時刻表にも模渕の停留地点が掲載されていますが、路線や便によっては事前予約が必要です。
地域の公共交通は、単なる移動手段ではありません。
通学だけでなく、買い物、診療所への通院、行政手続きなど、暮らしそのものを支える役割があります。利用者が少ないからといって簡単になくせない一方、運転手不足や維持費の問題も抱えやすいのが実情です。
高校進学は喜ばしい出来事ですが、毎朝の早起きや長時間移動が続く本人と家族の負担もあります。たしかにこれは、学校まで歩いて行ける地域では気づきにくい問題です。
模渕の暮らしは車だけでなく地域交通にも支えられている
模渕を訪れる場合や、この地域での生活を考える場合は、地図上の距離だけで判断しないことが大切です。
山間部では、同じ移動距離でも季節によって所要時間や危険度が変わります。特に冬は、積雪、路面凍結、吹雪、除雪状況などによって、普段通れる道でも慎重な運転が必要です。
公共交通を利用するときは、少なくとも次の点を事前に確認したいところです。
- 利用する便の運行日
- 土日や祝日の運行状況
- 予約が必要な区間
- 予約の締め切り時刻
- 帰りに利用できる最終便
- 大雪による運休や遅れ
- 乗降場所から目的地までの距離
鳥海地域の交通には、予約に応じて運行するデマンド方式が含まれます。一般的な路線バスのように、停留所へ行けば必ず乗れるとは限りません。
実際に利用するなら、ここは特に確認したいところです。行きの便だけを調べて出かけると、帰りの交通手段がなくなる可能性があります。
車で向かう場合も、カーナビだけに頼らず、当日の道路情報と天候を確認してください。冬季はスタッドレスタイヤが必要になるだけでなく、状況によっては不要不急の移動を控える判断も必要です。
残雪の山を片道3時間歩くことは通常の観光とは異なる
番組では、3月中旬に残雪を踏みながら、片道約3時間かけて山頂の神社へ向かう様子が紹介されます。
ここで注意したいのは、春が近づく3月であっても、山の上では冬の環境が残っていることです。
平地で雪が解け始めていても、標高の高い場所では深い積雪や凍結が続きます。天候が急変すれば、視界が悪くなったり、来た道が分からなくなったりする危険もあります。
残雪期の登山では、一般的に次のような判断が必要です。
- 当日までの積雪状況
- 登山道や林道の通行状況
- 雪上を歩くための装備
- 防寒着と予備の衣類
- 日没までに戻れる行程
- 天候が悪化した場合の引き返し地点
- 地域や山に詳しい人への確認
鳥海山の山頂部には鳥海山大物忌神社御本社があります。公式の登山案内では、通常期の登山口から山頂まででも数時間を要するルートが示されています。
ただし、番組概要に記された「千年以上の歴史がある山頂の神社」がどの神社なのかは、公開されている概要だけでは確認できません。そのため、鳥海山大物忌神社と同一だと断定するのは避けたほうがよいでしょう。
番組と同じ時期や行程をまねて、個人で安易に入山するのも危険です。個人的には、美しい雪景色より先に「安全に戻れる準備があるか」を考えることがいちばん大事だと感じます。
缶コーヒー20本の思い出から見える山村の恋愛
模渕編では、デートで缶コーヒーを20本用意したという夫婦の思い出が語られます。
「全部飲み終わるまで帰らないでほしい」という気持ちが込められていたとされ、少し不器用ながらも、相手と長く一緒にいたいという思いが伝わるエピソードです。
今なら、カフェへ行ったり、スマートフォンで次の約束をしたりすることも簡単です。しかし、店や娯楽施設が少なく、移動にも時間がかかる地域では、車内で話す時間や缶コーヒーを飲む時間そのものがデートになります。
大切なのは、缶コーヒーを20本飲んだかどうかだけではありません。
限られた場所と時間の中で、どうすれば相手と少しでも長く過ごせるかを考えたことが、長く記憶に残る物語になっています。
華やかな観光地や高価な贈り物がなくても、相手を思った行動は何年たっても忘れられません。たしかにこれは、便利さだけでは生まれにくい温かさがあります。
なお、夫婦の氏名や詳しい経緯など、番組概要で公表されていない情報については、推測で補わないことが大切です。
90歳の女性が続ける手仕事は暮らしの張り合いにもなる
模渕では、ベッドの上で過ごす90歳の女性が、キラキラしたビーズを使った折り紙飾りを作る様子も紹介されます。
体を自由に動かすことが難しくなっても、手元で続けられる作業はあります。紙を折り、飾りを組み合わせ、完成形を考える時間は、単なる暇つぶしではありません。
手仕事には、次のような意味があります。
- 好きなことに集中する時間を持てる
- 作品が完成する達成感を得られる
- 家族や訪問者との話題が生まれる
- 贈り物として人とつながれる
- 自分らしさを表現できる
番組で使われる「女子高生マインド」という言葉も、年齢に関係なく、きれいなものやかわいいものを楽しむ気持ちを表しているのでしょう。
高齢になると、周囲が健康や介護の話ばかりに注目しがちです。しかし本人には、好きな色や作りたいもの、誰かに見せたいという気持ちがあります。
初めて知ると少し驚きますが、年齢だけで趣味や感性を決めつけないことは、とても大切です。
ご利益があるおひな様は地域の記憶を受け継ぐ存在
番組には「ご利益があるおひな様」も登場します。
ただし、公開されている番組概要では、おひな様の所有者、由来、ご利益の内容までは明らかにされていません。詳しい意味を確認するには、番組内で語られる説明を見る必要があります。
一般に、家庭や集落で長く大切にされてきた人形には、持ち主の家族史や地域の記憶が重なっています。
いつ、誰が用意したのか。
どのような願いを込めて飾ってきたのか。
世代が変わっても、なぜ手放さずに残しているのか。
こうした背景まで知ると、人形は単なる古い飾りではなくなります。災いを避けたい、子どもに健やかに育ってほしい、家族が幸せに暮らしてほしいという願いを託す存在として受け継がれてきた可能性があります。
一方で、具体的なご利益を事実として紹介するには、所有者や地域の伝承を確認する必要があります。「このおひな様を拝めば必ず願いがかなう」といった書き方は避け、地域でどのように語り継がれているのかを大切にしたいところです。
模渕を訪れるなら生活の場であることを忘れない
模渕は、人が日々暮らしている集落です。一般的な観光施設のように、駐車場、案内所、見学コース、土産店が整備されているとは限りません。
番組を見て行ってみたいと思っても、住民の家や私有地へ無断で入ったり、個人を探して訪ね歩いたりすることは控えましょう。
訪問前には、次の点を確認してください。
- 一般の立ち入りが認められている場所か
- 道路や駐車場所に問題がないか
- 冬季の通行規制がないか
- 公共交通で往復できるか
- 私有地に入っていないか
- 住民の生活や農作業を妨げないか
集落内の細い道路に長時間駐車すると、住民の車や除雪車、緊急車両の通行を妨げることがあります。写真撮影をするときも、住宅、車のナンバー、人の顔が写らないよう配慮が必要です。
模渕の魅力は、作られた観光地にはない日常にあります。だからこそ、その日常を壊さない距離感が欠かせません。
模渕の暮らしが教えてくれるのは不便さだけではない
「限界集落」と聞くと、人口減少、高齢化、空き家、交通の不便さといった暗い面を思い浮かべるかもしれません。
実際、山間部には簡単に解決できない課題があります。
学校の統合や長距離通学、除雪の担い手不足、公共交通の維持、医療機関までの移動など、住民の努力だけでは補いきれない問題もあります。
一方で、数字や課題だけを見ていると、そこで暮らす人の人生が見えなくなります。
模渕には、雪の中で助け合う住民がいて、卒業を迎える子どもがいて、若いころの恋愛を笑って振り返る夫婦がいます。ベッドの上でも好きな作品を作り続ける高齢者や、大切に守られてきた人形もあります。
個人的には、集落を理解するときに大切なのは、「なぜ出ていかないのか」と外から問うことではなく、なぜここで暮らしたいと思えるのかに耳を傾けることだと感じます。
模渕の暮らしから見えてくるのは、雪国の厳しさだけではありません。便利さとは異なる豊かさや、人とのつながりが生活を支える力も伝わってきます。
参考リンク
- 由利本荘市「模渕ため池決壊ハザードマップ」
- 秋田県「あきた元気ムラ・由利本荘市笹子」
- 由利本荘市「市コミュニティバス鳥海地域時刻表」
- 由利本荘市「指定管理者制度導入施設一覧」
- 鳥海山登山ガイド「鳥海山の山小屋・宿泊施設」
- 鳥海山登山ガイド「吹浦口・大平ルート」
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