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浜岡原発のデータ不正とは|基準地震動の代表波を操作した方法と再稼働への影響【クローズアップ現代で紹介】

事件・事故

浜岡原発のデータ不正で揺らいだ安全審査の信頼

『クローズアップ現代(揺らぐ信頼 浜岡原発・データ不正の深層)(2026年8月24日)』で焦点となるのが、中部電力の浜岡原子力発電所3・4号機をめぐる基準地震動のデータ不正です。原発の耐震設計の土台となる地震の揺れを評価する過程で、審査機関に説明した方法とは異なる代表波の選定が行われていました。何が操作され、なぜ安全審査そのものへの信頼が問われているのか、経緯から再稼働への影響まで整理します。

この記事でわかること

  • 浜岡原発で行われたデータ不正の具体的な方法
  • 基準地震動と「代表波」が原発の安全に重要な理由
  • 2012年頃から続いた問題と社内での指摘
  • 浜岡原発3・4号機の審査や再稼働への影響

データ不正の核心は「代表波」の選び方を変えていたこと

今回の問題で最も重要なのは、単純な計算間違いやデータ入力ミスではありません。

浜岡原子力発電所3号機・4号機の新規制基準適合性審査で、中部電力が原子力規制委員会に説明していた方法とは異なる方法で、地震動評価に使う代表波を選定していたことです。

中部電力は2019年1月の審査会合で、「統計的グリーン関数法」と呼ばれる方法による地震動評価について、乱数を変えて20組の地震動を計算し、その20組の平均に最も近い波を代表波として選ぶと説明していました。

ところが実際には、選定された225ケースの中に、説明とは異なる方法が使われていたケースが含まれていました。中部電力が2026年3月に整理した資料では、少なくとも108ケースで2種類の不適切な方法が確認されています。

ここが、この問題を理解する最大のポイントです。

「計算した結果をそのまま評価した」のではなく、評価に使う波をどのように選ぶかという工程そのものが、説明と違っていたのです。

2つの方法で地震動の代表波を選定していた

確認された方法は大きく2つあります。

1つ目は、20組の地震動と代表波のセットを1つだけ作るのではなく、多数のセットを作成し、その中から代表波を選ぶ方法です。

この方法は遅くとも2012年頃以降に使われ、2012年度から2021年度までの225ケースのうち、少なくとも105ケースで行われていました。

2つ目は、さらに問題の意味が分かりやすい方法です。

本来は20組の中から平均に最も近い波を選ぶところ、先に平均に最も近い波ではない波を代表波として選択します。

その後、その代表波が平均に最も近くなるように、残り19組の波を組み合わせていました。

つまり、

20組を作る → 平均を求める → 平均に最も近い波を選ぶ

という説明ではなく、

代表波を先に決める → その波に合わせて残り19組を選ぶ

という逆方向の選定が行われていたことになります。

この方法は2018年度に少なくとも3ケースで確認されています。

基準地震動は原発の耐震設計を決める重要な数字

なぜ代表波の選定方法がこれほど大きな問題になるのでしょうか。

背景にあるのが基準地震動です。

基準地震動とは、その原子力発電所で安全上考慮しなければならない地震の揺れを設定したもので、原子炉建屋や安全設備などの耐震設計を検討する際の重要な前提になります。

浜岡原発3・4号機では地震や断層などを分析し、さまざまな条件の地震動を計算してきました。

その計算結果から、設備への影響を評価するために使われるのが代表波です。

つまり代表波の選び方は、単なる資料作成上の手続きではありません。

原発がどの程度の揺れに耐える必要があるのかを確認する審査の土台に位置する作業です。

浜岡3号機と4号機は現在も停止中で、新規制基準への適合性について設置変更許可申請の審査段階にあります。

厳しい地震条件への対応の中で方法が変わった

2つ目の選定方法が使われるようになった経緯には、2018年の審査があります。

審査では、A-17断層による地震を検討用地震として追加することや、地震が発生する層の上端を従来の8kmから5kmとするなど、より厳しい条件を考慮するよう求められました。

そのため地震動を改めて計算する必要が生じました。

中部電力の報告では、複数セットを作る方法でも適当な代表波を選べなかったケースで、多数の波の中から一定の条件に収まる波を先に選び、その後で残り19波を組み合わせる方法が採られたとされています。

プレート間地震についても、もともと地震動が大きくなることが見込まれたケースでは、最初から同様の方法が使われていました。

安全審査で条件が厳しくなった際、本来なら評価方法について審査側に説明し、必要な検討を行うことが重要です。

しかし実際の解析方法と審査資料の説明との間に違いが生じたことで、結果だけでなく審査資料そのものを信用できるのかという問題につながりました。

2018年以降に社内から繰り返し問題を指摘されていた

今回の問題で見逃せないのが、社内で以前から疑問の声が出ていたことです。

2018年8月には、代表波の選定方法が審査資料に記載されておらず、「算定プロセスが明確になっていない」という趣旨の指摘がありました。

その後も、

  • 審査資料の記載に問題がある
  • 代表波の選定方法に疑義がある
  • 実際に行っている方法を審査資料へ記載すべき

といった意見が、原子力土建部内で複数回出されていました。

しかし、審査資料がそれに合わせて改められることはありませんでした。

不正が起きたことだけでなく、内部で問題が指摘されながら修正につながらなかった組織の仕組みも大きな焦点になります。

代表波を選ぶ根拠が十分に文書化されていなかった

中部電力自身の調査からは、業務管理上の問題も浮かび上がっています。

基準地震動を策定する際、要求事項や体制、手順などを具体的に定めた個別業務計画が十分に整備されていませんでした。

解析を委託する際にも、詳細な条件を書いた業務委託仕様書や承認文書を作らず、打ち合わせやメールなどで指示するケースがありました。

さらに代表波の選定を確認するレビューは少人数で行われ、なぜその代表波を選んだのかという根拠も十分に文書化されていませんでした。

品質保証部門も、本来期待されるチェックや牽制の機能を十分に発揮できていなかったと整理されています。

高度な専門技術を扱う原子力発電所では、担当者個人の判断だけで安全性を支えることはできません。

誰が計算しても、誰が確認しても、後から同じ判断過程を追える仕組みが必要です。

今回の問題は、数字だけではなく計算条件・選定理由・確認手順を記録し、別の立場の人がチェックできる体制の重要性を示しています。

発端は原子力施設安全情報申告制度への情報提供だった

問題が表面化するきっかけになったのは、中部電力自身の自主公表ではありませんでした。

2025年2月、原子力施設の安全に関する情報を受け付ける制度を通じて情報提供があり、原子力規制庁が調査の準備を開始しました。

2025年5月から中部電力との面談などを行い、不正行為の有無を確認していきます。

その後、委託先が作成した報告書などの原本確認が求められ、2025年12月に2つの方法が行われていたことが中部電力側でも確認されました。

2026年1月5日に問題が公表され、原子力規制委員会は1月14日、中部電力に報告を求めるとともに、浜岡3・4号機について審査会合、ヒアリング、面談などを実施しない方針を決めています。

これは今回の問題が、個別データだけでなく審査資料全体の信頼性に影響したことを意味します。

浜岡3・4号機の再稼働にも関わる重大な問題

浜岡原子力発電所は静岡県御前崎市にあり、1号機と2号機は廃止措置中、3号機・4号機・5号機は停止しています。

このうち新規制基準への適合性審査を受けているのが3号機と4号機です。

3号機は1987年、4号機は1993年に運転を開始しました。

浜岡では2023年9月までに基準地震動に関する審査が進み、2024年12月からは原子炉設備側の審査が始まっていました。

しかし今回の不正によって、その前提となった資料の信頼性が問われることになりました。

設備を新しくしたり防波壁を高くしたりするだけでは、原発の安全性は証明できません。

安全評価に使われるデータと、そのデータを作る過程が正しいことも同じように重要です。

そのため再稼働を考える上では、不適切な代表波選定の影響を検証することに加え、審査に提出される資料を再び信用できる状態にできるかが大きな課題になります。

アメリカでは安全上の懸念を規制機関へ直接伝えられる

再発防止を考える際に参考になるのが、原子力施設で働く人が安全上の問題を指摘できる仕組みです。

アメリカでは、原子力産業の従業員や一般市民が安全上の懸念を規制機関へ直接伝えられる制度が設けられています。

原子力施設の事業者にも、従業員が報復や不利益を恐れず安全上の問題を指摘できるSafety Conscious Work Environment(安全を意識した職場環境)をつくることが求められています。

重要なのは、内部通報窓口を置くだけではありません。

上司への相談、品質保証部門、独立した相談ルートなど複数の経路を用意し、問題を指摘した人が不利益を受けない環境を作るという考え方です。

浜岡の問題でも、2018年以降に内部から繰り返し疑問が示されていました。

問題を見つける制度だけではなく、指摘された内容が実際に資料の修正や再検証につながる仕組みまで機能しているかが問われています。

再発防止では組織風土とチェック体制の両方が焦点になる

中部電力は再発防止に向けて、大きく3つの方向で改善を進める方針を示しています。

1つは、経営層を含めた意識・行動の変革

2つ目は、外部の視点や人事交流などを取り入れる組織・組織風土の変革

3つ目は、品質保証組織や内部監査、業務プロセスを強化するルール・仕組みの強化です。

特に原子力本部長直属の品質保証組織を設けることや、外部の目を入れた業務プロセスを整備する方向が示されています。

原発の安全性を考えるとき、巨大な設備や地震対策が目立ちます。

しかし今回明らかになったのは、その前段階にある人がデータをどう扱い、誰がチェックし、異論が出たときに組織がどう動くかという問題でした。

浜岡原発の安全審査への信頼を回復するには、不正を行った方法を止めるだけでなく、同じような判断が再び組織の中で見過ごされない仕組みを作れるかが重要になります。

参考リンク


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