実家を「負動産」にしないために知っておきたいこと
『明日から使える あかるい終活(4 不動産を“負動産”にしない)(2026年8月24日)』で考えたいのが、親の家や土地を誰が、どう引き継ぐのかという問題です。思い出のある実家でも、使う予定がないまま相続すると、税金や管理、修繕などの負担が続くことがあります。売却や活用だけでなく、国に土地を引き渡す制度や空き家売却の税制まで知っておくと、家族が判断しやすくなります。
この記事でわかること
- 「負動産」と呼ばれる不動産が生まれる理由
- 実家を相続する前に整理しておきたい情報
- 相続土地国庫帰属制度の条件と費用
- 相続登記や空き家売却で注意したい期限
負動産とは持っているだけで負担が続く不動産
「負動産」は法律上の正式な名称ではありません。一般には、利用する予定や十分な資産価値がない一方で、固定資産税や管理費、修繕費などを負担し続けなければならない不動産を表す言葉として使われています。
実家を相続したからといって、必ず価値のある財産になるとは限りません。
特に注意したいのは、
- 遠方にあり定期的な管理が難しい
- 建物が古く、大規模な修繕が必要
- 売却しようとしても買い手が見つかりにくい
- 相続人の誰も住む予定がない
- 土地の境界や権利関係が分かりにくい
- 山林や農地など利用方法が限られている
といった不動産です。
建物を使わなくなっても所有者としての管理は続きます。草木の繁茂や建物の傷み、近隣への影響なども考えなければなりません。
そのため「家を残すかどうか」だけではなく、誰が、何のために、どのくらいの期間所有するのかまで考えておくことが大切になります。
実家を相続する前に確認しておきたい5つのこと
負動産化を防ぐうえで役立つのが、親が元気なうちに不動産の状態を整理しておくことです。
まず確認したいのは次の5項目です。
- 土地と建物の名義
- 土地の場所と地番
- 固定資産税など年間の維持費
- 売却した場合のおおよその価格
- 将来その家を使いたい家族がいるか
実家だけを確認して終わらせないことも重要です。
家族が把握していない山林、農地、原野、昔購入した土地などが残っているケースもあります。固定資産税の通知書や登記事項を確認すると、所有している不動産を整理しやすくなります。
さらに「長男に任せる」「子どもたちで相談してほしい」といった曖昧な伝え方だけでは、相続後に判断が難しくなります。
住んでほしいのか、売ってよいのか、残したいのかまで本人の考えを家族で共有しておくと、その後の選択がしやすくなります。
相続した実家は売却・活用・解体などを早めに比較する
誰も住まない実家を相続する場合、「とりあえず残しておく」という選択が必ずしも安全とは限りません。
主な選択肢として考えられるのは、売却、賃貸などでの活用、建物の解体、土地の譲渡などです。
売却する場合も、建物を残したまま売る方法と、解体して土地として売る方法があります。
どちらが有利になるかは、建物の状態や立地、解体費用、土地の需要などによって変わります。解体してから買い手を探すより、まず不動産会社などに「建物付きならいくら」「更地ならいくら」と相談して比較したほうが判断しやすくなります。
特に地方の実家では、売却価格だけを見るのではなく、
売却価格-解体費・片付け費・仲介費用など
まで考える必要があります。
家財道具が大量に残っていると処分にも費用がかかるため、生前整理は不動産の整理とも深く関係しています。
相続土地国庫帰属制度なら不要な土地を国に引き渡せる場合がある
相続した土地を手放す方法の1つとして、2023年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度があります。
相続や遺贈によって土地を取得した人が一定の条件を満たした場合、土地の所有権を国に移すことができる制度です。制度開始以前に相続した土地も対象になります。
ただし、「使わない土地なら何でも国が引き取ってくれる」という仕組みではありません。
例えば、
- 建物が残っている土地
- 境界が明らかでない土地
- 所有権をめぐる争いがある土地
- 担保権などが設定されている土地
- 土壌汚染がある土地
- 管理に過大な費用や労力がかかる土地
などは、申請できなかったり承認されなかったりする場合があります。
つまり、古い実家をそのまま国に渡すことはできません。建物がある土地は対象外になるため、土地の状態を整える必要が生じることがあります。
国庫帰属には1筆1万4000円の手数料と負担金がかかる
相続土地国庫帰属制度は無料ではありません。
申請時には、土地1筆につき1万4000円の審査手数料が必要です。申請を取り下げたり、審査で却下・不承認になったりしても、この手数料は返還されません。
さらに承認された場合には負担金を納めます。
負担金は20万円が基本で、市街化区域などにある宅地・農地や森林では、場所や面積によって20万円を超える場合があります。国が土地を管理する費用の一部を所有者が負担する仕組みです。
そのため、
「売れないから国に渡せばいい」
ではなく、
「売却できるか」
「隣接地の所有者に譲れるか」
「自治体などで活用できないか」
「国庫帰属の条件を満たせるか」
という順番で複数の方法を比較することが大切です。
相続登記には期限がある
実家を相続したあと、そのまま名義を変更せず放置することにも注意が必要です。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
正当な理由なく申請しなかった場合、10万円以下の過料の対象になることがあります。
制度開始前に発生していた相続も対象です。
2024年4月1日より前に相続したまま登記していない不動産については、原則として2027年3月31日までという期限にも注意が必要です。
親や祖父母名義のままになっている土地がある家庭では、一度登記状況を確認しておく価値があります。
世代をまたいで放置すると相続人の人数が増え、売却や処分をするときの話し合いがさらに複雑になりやすいためです。
相続した空き家の売却では最大3000万円の特別控除も確認する
一定の条件を満たす相続空き家を売った場合には、譲渡所得から最高3000万円を控除できる特例があります。
対象となる家屋には、1981年5月31日以前に建築されたことや区分所有建物ではないことなど、細かな条件があります。
さらに、原則として相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、売却代金が1億円以下であることなどの条件があります。制度の対象となる売却期間は2027年12月31日までです。
相続人が3人以上の場合は、2024年1月1日以後の譲渡について控除額の上限が2000万円となります。
古い実家の場合、「いつか売ろう」と何年間も空き家にしてしまうと、こうした期限に影響することがあります。
売却する可能性があるなら、相続後できるだけ早い段階で税理士や不動産会社などに条件を確認しておくほうが動きやすくなります。
エンディングノートには不動産の「希望」だけでなく情報も残す
不動産についてエンディングノートに書くなら、「この家を残してほしい」といった希望だけでは十分ではありません。
家族が実際に手続きを進められるように、
- 不動産の所在地
- 土地・建物の名義
- 登記関係書類の保管場所
- 固定資産税関係の書類
- ローンや抵当権の有無
- 利用している不動産会社
- 売却してよいかどうか
- 家族の誰かに使ってほしいか
といった情報を整理しておくと役立ちます。
特に大切なのは、「価値があるから残す」のではなく、受け取る人がその不動産を必要としているかまで考えることです。
実家は家族の思い出が詰まった場所だからこそ、相続が起きてから慌てて処分を決めるのは難しいものです。
元気なうちに所有している土地を洗い出し、売る、使う、残すという方向性を家族で共有しておくことが、「不動産」を「負動産」にしないための大きな準備になります。
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