大須賀彩が受け継ぐ有松絞りの仕事
浴衣の仕上がりとあわせて知っておきたいのが、ロケ地の工房を営む大須賀彩さんの歩みです。『ララLIFE(加藤ローサ、名古屋・有松絞りでオリジナル浴衣を作る)(2026年8月28日)』の舞台となる有松で、学生時代に絞り染めと出会い、約10年の修業を経て独立。伝統技法を守りながら、若い世代にも届くものづくりを続ける仕事をたどります。
この記事でわかること
- 大須賀彩さんが現在している仕事
- 学生時代に有松絞りと出会ってから独立するまで
- 10年間の修業で身につけた技術
- 彩 Aya Irodoriに込めた若い世代への思い
大須賀彩は有松・鳴海絞を手がける括り職人
(出典:彩 Aya Irodori 公式サイト)
大須賀彩さんは、名古屋市緑区有松で「彩 Aya Irodori」を営む有松・鳴海絞の職人です。
肩書として特に分かりやすいのが「括り職人」。絞り染めでは、布を糸で括ったり、折ったり、縫ったりして染料が入らない部分を作り、その差によって模様を生み出します。
現在は括りだけを担当するのではなく、自ら絞り・染色・デザインまで手がけています。
有松・鳴海絞はもともと分業によって発展してきた産業です。それだけに、技法を身につけながらデザインや商品づくりまで一貫して行う大須賀さんの活動は、昔ながらの産地を現在の暮らしへつなげる仕事ともいえます。
学生時代の有松絞りとの出会いが職人への入口だった
大須賀さんは1986年、愛知県碧南市生まれです。
職人の家に生まれてそのまま家業を継いだのではなく、学生時代に有松絞りと出会ったことが大きな転機になりました。
大学3年・4年のころには有松絞りを使った作品を発表。大学4年時には、絞り染めを使った作品で最優秀賞を受賞しています。
400年以上続く伝統工芸というと、幼いころから技を教わった人が継承するイメージもあります。
しかし大須賀さんの場合は、外から有松へ入り、技術そのものにひかれて職人の道へ進みました。
この経歴は、有松絞りが家業として受け継がれるだけでなく、技術に魅了された新しい担い手によっても支えられていることを伝えています。
20歳でSUZUSANに弟子入りし約10年間修業した
職人への本格的な一歩を踏み出したのは20歳でした。
大須賀さんは有松をルーツとする「SUZUSAN」に弟子入りします。
SUZUSANも、有松・鳴海絞の技術を浴衣だけにとどめず、カシミヤやアルパカなどさまざまな素材へ展開し、洋服やインテリアとして世界へ発信してきたブランドです。
大須賀さんはそこで約8年間修業した後、さらに山上商店で約2年間技術を磨きました。
そして2017年に独立しています。
約10年間という修業期間を見ると、絞りが「布を縛って染めれば完成」という単純な技術ではないことも分かります。
糸の締め方ひとつでも染料の入り方が変わり、布の素材、折り方、染色との組み合わせによって仕上がる模様も変化します。
長い時間をかけて手の感覚を身につけるところに、職人技としての難しさがあります。
独立後に自分のブランド「彩 Aya Irodori」を立ち上げた
大須賀さんは独立後、自身のブランド彩 Aya Irodoriを立ち上げました。
大きな節目になったのが2020年8月7日。長年の夢だった自身のアトリエを、有松の西町にオープンしました。
場所は愛知県名古屋市緑区有松807-1。
名鉄名古屋本線・有松駅から徒歩約5分、歴史的な町並みが続く旧東海道沿いにあります。現在の公式案内では営業時間は11:00~16:00、定休日は水曜・木曜です。
アトリエには有松絞りを使った手ぬぐいだけでなく、
- ワンピース
- ボレロ
- バッグ
- ストール
- ヘアバンド
- 帽子
- アクセサリー
なども並びます。
「有松絞り=浴衣」という固定されたイメージから一歩広げ、普段の生活に取り入れられる商品へ展開しているのが特徴です。
有松を初めて訪れたとき若い人の少なさが気になった
大須賀さんの活動を知るうえで興味深いのが、初めて有松を訪れたころに抱いた疑問です。
当時、大須賀さんは若い人が少ないことや、若者が欲しくなる商品が少ないことに疑問を感じたと振り返っています。
また、修業を続ける中では、若手職人が自分の作品を発表する場所が少ないことも感じていました。
だからこそ自分の工房を、単なる販売店だけにはしていません。
学生や若い作り手と商品を開発したり、有松の技術に触れてもらったりする場所として使うことも目指してきました。
「昔からあるものだから守る」というだけではなく、若い世代が欲しくなるものを作り、技術そのものに興味を持ってもらう。
そこが大須賀さんの活動を理解する大切なポイントです。
自作の絞台にも「本格的な手の動きを伝えたい」という考えが表れている
工房では一般向けの絞り体験も行っています。
その体験で使われている道具の中には、大須賀さん自身が作った机上用の絞台もあります。
理由は、参加者にも本格的な職人の手の動きを学んでもらうためです。
単に完成品を持ち帰れる観光体験にするのではなく、「どうやってこの模様が作られているのか」を手を動かしながら理解できるよう工夫されています。
絞った状態の布は、完成模様がほとんど見えません。
染めて糸を外した瞬間に初めて模様が現れるため、自分の手で作ると完成品を見る以上に絞りの仕組みを実感できます。
加藤ローサさんが挑戦する浴衣作りも、完成した柄だけではなく、布に模様が現れるまでの工程を見ると有松絞りの面白さが分かりやすくなります。
1人から参加できる有松絞り体験も用意されている
彩 Aya Irodoriでは、一般の人でも参加できる絞り体験があります。
有松の体験ガイドでは1人から参加可能で、雪花絞りと手筋絞りを体験できます。
主な内容は、
- 和紙B4:500円
- ハンカチ:1,800円
- 手拭いストール160cm:4,900円
- 所要時間:15分~1時間
となっています。
有松には複数の絞り体験施設がありますが、1人でも申し込めるのは、1人旅や有松散策の途中で体験したい人にも利用しやすいポイントです。
浴衣1着を作るのは大きな挑戦でも、まずハンカチやストールから体験すれば、同じ「括る→染める→開く」という面白さを味わえます。
伝統を変えずに残すのではなく使われ続ける形へつないでいる
有松・鳴海絞には非常に多くの技法が生み出されてきましたが、産業の縮小とともに失われた技法もあります。
SUZUSANでも、分業の中で職人が1つの技法を受け継いできたため、担い手がいなくなることで多くの技法が姿を消した歴史を伝えています。
そこで重要になるのが、職人を育てるだけでなく、その技術を使いたいと思う人を増やすことです。
浴衣だけでなく洋服やバッグ、ストールへ広げること。
体験を通じて作る側の面白さを伝えること。
若い作り手が発表できる場所を作ること。
大須賀さんの仕事には、その3つが重なっています。
400年前とまったく同じ商品を作り続けるのではなく、昔から伝わる「技」を残しながら、使われる物は時代に合わせて変えていく。その姿勢が、彩 Aya Irodoriの大きな特徴です。
参考リンク
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