能登ミルクは「牛乳を売る店」から能登へ人を呼ぶ目的地になった
『あさイチ 愛(め)でたいnippon 能登(能登半島・ご当地ソフトを巡る旅〜震災復興を目指す人々が生む絶品)(2026年8月27日)』から、もう1つ掘り下げたいのが和倉温泉の能登ミルクです。地元の牛乳販売から始まり、生乳のブランド化、娘・堀川宙さんのジェラート修業、直営店開業、そして能登半島地震からの再開へ。1杯の牛乳とジェラートの裏には、親子と酪農家が長年つないできた物語があります。
この記事でわかること
- 能登ミルクが誕生した理由
- 代表・堀川昇吾さんと娘・堀川宙さんの関係
- 能登ミルクジェラートがおいしい理由
- 震災後の営業再開と現在の店舗情報
能登ミルクは和倉温泉で飲める能登生まれの牛乳
能登ミルクは、石川県七尾市の和倉温泉を拠点に展開されている牛乳ブランドです。
特徴は、単に「能登産」と名前を付けていることではありません。
奥能登の酪農家が自家製完熟堆肥を使って牧草を育て、牛にストレスをかけにくい飼育環境を整えています。
さらに、搾った生乳がほかの地域の生乳と混ざらないよう、専用タンクや専用タンクローリーまで用意してきました。
牛乳はスーパーに並ぶと、どこでどのように作られたのかが見えにくくなります。
能登ミルクは逆に、「この牛乳は能登の酪農家が作っている」と分かること自体を価値にしたブランドです。
誕生のきっかけは牛乳が安く扱われることへの疑問
能登ミルクを立ち上げたのが堀川昇吾さんです。
堀川さんは七尾市出身で、28歳のころに実家の牛乳卸会社を継ぎました。
そこで感じたのが、手間をかけて質を高めた牛乳でも、価格だけで比較されてしまうことへの疑問でした。
良い牛乳を作るには、牛の餌や環境にもコストがかかります。
それでも商品になった瞬間に安売りされてしまえば、酪農家が品質を高め続けるのは難しくなります。
そこで堀川さんは、品質に見合った価格で販売できる独自ブランドの牛乳を作ろうと動き始めました。
そして2006年、酪農家とともに能登ミルクが誕生します。
「昔飲んだ牛乳の味」を目指した
能登ミルクが掲げているのは、特別に濃くしたり甘くしたりした牛乳ではありません。
目指しているのは健康な牛から搾った自然な牛乳の味です。
牛乳の脂肪分は年間を通して一定ではなく、牛の状態や季節によって変化します。
夏は比較的すっきりし、冬には濃厚さを感じやすくなるため、ワインや野菜のように季節による違いを楽しめるのも牛乳本来の特徴です。
いつ飲んでもまったく同じ味へ調整するのではなく、牛や季節まで含めて味わう。
そこに能登ミルクらしさがあります。
転機を作ったのは娘・堀川宙さんの「アイスを作りたい」
牛乳ブランドとして歩んでいた能登ミルクに、新しい転機をもたらしたのが堀川さんの娘、堀川宙(そら)さんです。
宙さんは能登ミルクを営む家庭で育ち、高校卒業後に東京へ。
ジェラート界で知られる「ダ ルチアーノ」の植木耕太シェフのもとで修業しました。
さらにイタリア・ボローニャへ渡り、ジェラートマエストロ・マイスターを取得しています。
父親が作ってきた牛乳を、そのまま販売するだけではなく、ジェラートという新しい形で届ける。
能登ミルクの2つ目の物語は、ここから始まりました。
2018年に和倉温泉へ直営店が誕生
能登ミルクはもともと卸売りを中心に展開していました。
そこから2018年、和倉温泉に直営カフェをオープンします。
大きなきっかけとなったのが、宙さんが父の仕事をジェラートで手伝いたいと考えたことでした。
牛乳屋として生乳を届けてきた父。
その牛乳をジェラートへ変える技術を身につけた娘。
親子の仕事が1つの店でつながったのです。
直営店ができたことで、能登ミルクは「旅館や店で使われる地元の牛乳」から、わざわざ食べに行きたい和倉温泉の目的地へと変わっていきました。
ジェラートは牛乳だけでなく能登の味を組み合わせる
能登ミルクのジェラートには、看板となるミルク以外にも地域の素材が使われています。
展開されてきた代表的なフレーバーには、
- 能登ミルク
- 揚げ浜塩
- 能登ブルーベリー
- 中島菜
- ヨーグルト
- 加賀棒茶
- チョコレート
- 抹茶
などがあります。
なかでも「揚げ浜塩」や「能登ブルーベリー」「中島菜」は、石川・能登らしさを感じやすい組み合わせです。
能登ミルクを土台に、地域で作られている食材をジェラートへ取り込むことで、1つの店にいながら能登の味をいくつも知ることができます。
堀川宙さんは牛乳の個性を消さないジェラートを作る
ジェラートでは、チョコレートや果物など素材の味を強くすれば、それだけで印象的になります。
しかし能登ミルクの中心にあるのは、あくまでも牛乳です。
宙さんは能登の生乳へのこだわりを大切にしながら、素材に向き合い、新しいジェラートを作り続けています。
ここが一般的な観光地のソフトクリームとの大きな違いです。
「牛乳がおいしいからアイスにした」というだけではなく、
牛乳をどうすれば一番おいしく食べてもらえるかを専門的に学んだ人が作っている
という背景があります。
父親が生乳をブランドにし、娘がジェラートとして価値を広げた親子2代の流れも、能登ミルクを知るうえで外せません。
2024年の能登半島地震で和倉温泉の店も営業停止
2024年1月1日の能登半島地震では、和倉温泉も大きな被害を受けました。
能登ミルクファクトリー本店も営業を停止します。
影響は店舗だけではありません。
牛乳を作るためには酪農家、牛、餌、水、搾乳設備、道路、集乳など、多くの環境が必要です。
どれか1つが止まっても、いつも通り牛乳を届けるのは難しくなります。
それでも能登ミルクは営業再開へ向けて動きました。
本店は2024年4月26日に営業再開
地震から約4か月後の2024年4月26日、和倉温泉の能登ミルクファクトリー本店が営業を再開しました。
再開時に掲げられた言葉は、「変わらないまま変わっていく」というもの。
これまで作ってきた能登ミルクの味や酪農家への思いは変えない。
一方で、震災後の能登で店を続けるためには、新しい方法にも挑戦する。
その姿勢が表れています。
2026年に入っても和倉温泉を訪れる人の中には、能登ミルクを目的地の1つとして足を運ぶ人がいます。
震災後の観光では、「復旧した場所を見る」だけでなく、今も営業している店で普通に食べたり買ったりすることが地域の日常を支える行動にもなっています。
本店は和倉温泉街を歩きながら立ち寄れる
能登ミルク本店は、
石川県七尾市和倉町ワ部13-6
にあります。
営業時間は9時から17時、ラストオーダーは16時40分。
定休日は水曜日と木曜日です。
和倉温泉街の中にあるため、ジェラートだけを目的に車で立ち寄るというより、
総湯
温泉街散策
湯っ足りパーク
能登ミルク
といった形で歩いて巡るのにも向いています。
ジェラートだけでなく牛乳やトーストも楽しめる
能登ミルクは「ジェラート専門店」というより、牛乳そのものを楽しむ店です。
メニューには、
能登ミルク
ホットミルク
カフェラテ
能登ミルクトースト
なども用意されてきました。
初めて訪れるならジェラートが分かりやすいですが、「能登ミルクそのものはどんな味なのか」を知りたいなら瓶牛乳を選ぶのも面白いでしょう。
ジェラートを食べたあとに牛乳を飲むと、どの味がベースになっているのかも分かります。
牛乳やジェラートの通販は現在休止中
注意したいのが通販です。
能登ミルクのグッズはオンラインで扱われていますが、牛乳・のむヨーグルト・ジェラートなど食品のオンライン注文は一時停止されています。
食品を購入したい場合は店舗を利用することになります。
「テレビで見たからジェラートをネット注文したい」と考える人は、グッズ通販と食品販売を混同しないよう注意したいところです。
逆に言えば、現地へ足を運ぶ理由が残っている商品でもあります。
「能登ミルクを食べに行く」が和倉温泉を訪れる理由になる
能登ミルクの歩みを見ると、最初から有名な観光スイーツだったわけではありません。
牛乳卸を継いだ堀川昇吾さんが、酪農家の手間に見合った牛乳を作りたいと考える。
2006年に能登ミルクをブランド化する。
娘の宙さんがジェラートを学ぶ。
2018年に直営店を作る。
そして2024年の震災を経て、再び和倉温泉で店を開く。
20年近い時間をかけ、牛乳からジェラート、店、観光へとつながってきました。
「能登へ行ったついでに食べる」のではなく、能登ミルクを食べるために和倉温泉へ行く。
そう思わせる店が存在すること自体が、復興を進める観光地にとって大きな力になっています。
参考リンク
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