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アレッサンドロ・グリッロ夫妻の魚のスープ|リグーリアで野村友里が出会った家族の味【スープをあなたに届けたいで紹介】

海外文化

リグーリアの魚のスープに受け継がれてきた家族の味

『スープをあなたに届けたい(イタリア 地中海 魚のスープ)(2026年8月18日)』で料理人の野村友里さんが訪ねたのは、地中海に面したイタリア北西部のリグーリア州です。そこで出会ったのが、スープ作りの名人アレッサンドロ・グリッロさんとフランカ・オクシリアさん夫妻。魚介と畑の野菜を使い、半日かけて仕込むスープには、アレッサンドロさんが両親から受け継いだ思い出と、娘ジョバンナさんへつなぐ家族の物語がありました。

この記事でわかること

  • アレッサンドロ・グリッロ夫妻が作る魚のスープの特徴
  • アレッサンドロさんが両親から受け継いだ家族の味
  • 娘ジョバンナさんへスープを届けた理由
  • 野村友里さんとリグーリアの食文化とのつながり

アレッサンドロ・グリッロ夫妻の魚のスープは家族で食べるごちそう

今回、野村友里さんに魚のスープを教えたのが、リグーリア州に暮らすアレッサンドロ・グリッロさんとフランカ・オクシリアさん夫妻です。

使うのは畑で採れた野菜に、魚、エビ、ムール貝など地中海の海の幸。魚介をたくさん入れるだけではなく、半日ほどかけてじっくりだしを取るのが大きな特徴です。

リグーリアの家庭では、こうした魚介のスープは子どものころから親しんできた料理であり、家族や親せきが集まる食卓にも登場するごちそうとして受け継がれています。

豪華な魚介料理というより、「家族が集まる日に大きな鍋でたっぷり作る料理」と考えると、このスープの存在が分かりやすくなります。

魚介だけではなく畑の野菜からスープ作りが始まる

野村友里さんが最初に案内されたのは厨房ではなく、夫妻の畑でした。

そこでスープに使う野菜を収穫し、海から届いた魚介と一緒に料理していきます。

海の幸だけで完結しないところが、この料理の面白さです。

リグーリア州は細長い海岸線を持つ一方、海のすぐ後ろまで山や丘陵地が迫る土地。郷土料理にも魚介だけでなく、オリーブオイル、ハーブ、野菜、バジルなどが幅広く登場します。イタリアの観光情報でも、リグーリア料理には魚のスープ「ciuppin(チュッピン)」や魚の煮込み料理「buridda(ブリッダ)」など、多様な魚料理があることが紹介されています。

畑と海から集めた食材を1つの鍋にまとめていく今回のスープは、まさにリグーリアの「海と土地の両方を食べる料理」といえます。

リグーリアには「チュッピン」と呼ばれる伝統的な魚のスープもある

リグーリアの魚のスープを調べるとよく登場するのが、ciuppin(チュッピン)です。

チュッピンは小魚などを香味野菜とともに煮込み、魚のうまみを凝縮させて作るリグーリアの伝統的な魚介スープです。魚を煮込んで濾し、パンと合わせるタイプもあります。

今回アレッサンドロさんが作ったスープについては「チュッピン」という料理名では紹介されていません。

ただ、地元で手に入る魚介を使い、時間をかけてうまみを引き出し、家族で食べるという点には、リグーリアに根付く魚スープ文化との共通点があります。

「決まった魚を使わなければ作れない料理」ではなく、その日に手に入った海の幸を生かしてきた土地だからこそ生まれた食べ方なのです。

アレッサンドロが魚のスープを作る原点は両親との思い出

アレッサンドロさんにとって、このスープは単なる得意料理ではありません。

原点にあるのは幼いころの両親との時間でした。

子どものころから両親がスープを作ってくれ、夜には魚釣りへ連れて行ってくれたといいます。そして月に1度ほど、家族で魚のスープを作っていました。

魚を釣るところから始まり、それを家へ持ち帰り、時間をかけて料理して家族で食べる。

その経験そのものが、アレッサンドロさんに受け継がれています。

だからこそ今回のスープも、「昔食べた味を再現する料理」だけではありません。

両親から自分へ、自分たち夫婦から次の世代へと家族の記憶を運ぶ料理になっています。

レシピだけを受け継ぐのではなく、「誰と食べたのか」「誰のために作ったのか」まで一緒に残っているところが、このスープの大きな魅力です。

娘ジョバンナへスープを届けたのは親から子への愛情

完成したスープをアレッサンドロさんが届けたいと考えた相手が、娘のジョバンナ・グリッロさんでした。

ジョバンナさん夫妻はともに医師として働いており、数年前に両親の近くへ引っ越してきました。

アレッサンドロさんが娘へスープを届ける理由は、とてもシンプルです。

娘はこのスープが好き。しかし、忙しくて自分で時間をかけて作るのは難しい。だから自分たちが作って届ける。

半日かける料理だからこそ、その行動自体が愛情になります。

おいしいものを買って届けるのとは少し違い、畑から野菜を採り、魚介を仕込み、大きな鍋で時間をかけて煮込む。その時間まで含めて娘への贈り物になっているのでしょう。

結婚式を間近に控えていたジョバンナさんは、式で母フランカさんのドレスを着ることも決めていました。

料理だけでなく、母のドレスも娘へ。

この家族では、古いものをそのまま保存するのではなく、次の世代が自分の暮らしの中で使うことで受け継いでいます。

魚のスープも、それとよく似ています。

ジェノベーゼソースもリグーリアを代表する家庭の味

夫妻から野村友里さんがもう1つ教わったのが、ジェノベーゼソースです。

日本でもパスタソースとしておなじみですが、本場リグーリアの代表的な食文化の1つです。

伝統的なジェノベーゼには、ジェノバ産バジル、ニンニク、松の実、パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ、オリーブオイル、塩などを使います。大理石の乳鉢と木製のすりこぎを使って仕上げる方法も受け継がれています。

野村さんも夫妻に教わりながらジェノベーゼソースを作り、パスタと合わせました。

魚のスープとジェノベーゼ。一見すると別々の料理ですが、どちらも共通しているのは、遠くから特別な材料を集めるのではなく、自分たちの土地にあるものを生かす料理だということです。

海から魚を取り、畑から野菜やハーブを採る。

リグーリアの食卓が豊かに見える理由は、豪華な食材の数ではなく、身近な食材をおいしく食べる方法が長い時間をかけて蓄積されていることにあります。

野村友里がリグーリアを旅する意味

今回この家族を訪ねた野村友里さんは、料理人であり「eatrip」を主宰しています。

長年おもてなし教室を開いていた母親の影響で料理の道へ進み、カリフォルニア州バークレーのレストラン「Chez Panisse」で食と土地との関係を学びました。その後、2012年に東京・原宿でrestaurant eatripを開き、2019年には表参道にeatrip soil、2024年には祐天寺にbabajiji house / eatrip kitchenを開いています。

野村さんが大切にしている言葉が、「人生は食べる旅」です。

料理そのものだけを見るのではなく、その食材を誰が育て、どんな土地で生まれ、誰と食べられてきたのかまでたどっていく。

アレッサンドロさん夫妻のスープは、まさに野村さんが続けてきた「eatrip」という活動と重なる料理です。

レシピを日本へ持ち帰ること以上に、「なぜこの家族がこのスープを作り続けているのか」を知ることが、今回の旅の大きな意味だったのでしょう。

家庭でリグーリアの魚のスープを楽しむときのポイント

今回の魚のスープから家庭料理として取り入れやすいのは、「珍しい魚をそろえること」ではなく、魚介のうまみを時間をかけて引き出す考え方です。

リグーリアの伝統的なチュッピンでも、小魚、タマネギ、ニンジン、セロリ、ニンニク、トマト、白ワイン、オリーブオイルなどを組み合わせ、魚のうまみを十分に引き出して作る方法があります。

今回の料理では魚に加えてエビやムール貝も使われ、野菜とともに半日かけてだしを取りました。

大切なのは魚介をたくさん入れること以上に、その土地で手に入るものを無駄なく使い、時間をかけて味を重ねていくことです。

そして何より印象的なのは、完成した鍋を自分だけで食べる料理ではないこと。

両親から教わり、夫婦で作り、娘へ届ける。

アレッサンドロ・グリッロさんの魚のスープのおいしさを支えていた最大の材料は、家族に食べてもらうために料理する時間そのものだったのかもしれません。

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