スペインの長寿を支える「食べる・動く・つながる」生活
『世界で開け!ひみつのドアーズ(スペイン特集!長寿の秘けつを大調査)(2026年8月19日)』では、97歳で毎朝約3km歩く男性、100歳を超えて演奏活動を続ける女性、畑仕事を続ける88歳など、元気に暮らす高齢者の生活が紹介されました。さらに、117歳まで生きたマリア・ブラニャス・モレラさんの体を詳しく調べた研究から、ビフィズス菌をはじめとする腸内環境にも興味深い特徴が見つかっています。ただし、長寿の理由はヨーグルトだけではありません。食事、運動、人とのつながりなどを合わせて見ることが大切です。
この記事でわかること
- スペインの高齢者に見られた元気な生活習慣
- 117歳マリア・ブラニャスさんの腸内細菌の特徴
- 1日3個のヨーグルトと長寿研究の関係
- 日本の食生活にも取り入れやすい腸活の考え方
スペインの長寿の秘けつはヨーグルトだけではない
最初に押さえておきたいのは、「ヨーグルトを毎日食べれば長生きできる」と証明されたわけではないということです。
スペインで暮らす高齢者を見ると、むしろ共通しているのは、年齢を重ねても日常生活の中で体や頭を使い、人と関わりながら食事を続けていることでした。
カストリージョ・デ・ムルシアで暮らす97歳のトマス・ビジャベルデさんは、毎朝約1時間30分かけて約3kmを歩きます。
バルセロナのモンセラット・トレント・イ・セラさんは100歳になってもプロのオルガン奏者として活動し、毎日約4時間練習しています。
88歳のトニ・ロドリゲスさんは約400平方メートルの畑で10種類ほどの野菜を育て、家族の食卓を支えていました。
つまり特別な健康法を短期間行うというより、
- 日常的に歩く
- 手や頭を使う
- 野菜を育てて食べる
- 家族と食卓を囲む
- 年齢を重ねても役割を持つ
といった習慣を長く続けていることが特徴です。
「健康のために何かを始めなければ」と考えると難しく感じますが、歩く、料理する、趣味を続けるなど、生活そのものを活動量につなげている点は参考にしやすいところです。
117歳マリア・ブラニャスさんの体を調べて分かったこと
長寿研究で特に興味深い存在が、1907年生まれで117歳まで生きたマリア・ブラニャス・モレラさんです。
研究チームは血液や唾液、尿、便などを調べ、遺伝子だけでなく、たんぱく質、代謝物、免疫、腸内細菌、エピジェネティクスと呼ばれる遺伝子の働きを調節する仕組みまで幅広く分析しました。
その結果、年齢相応の老化の特徴を持ちながらも、加齢に伴って増えやすい病気から体を守る方向に働く特徴が複数見つかりました。
さらに注目されたのが腸内細菌です。
高齢になるにつれて減る傾向があるビフィズス菌が、マリアさんの腸内では非常に多く見つかりました。ビフィズス菌が多い状態は、100歳以上の長寿者を対象とした過去の研究でも報告されています。
ただし、この研究は極めて長寿だった1人を詳細に調べたものです。研究チーム自身も、同じ特徴が一般の人の寿命を延ばすと判断するには、より多くの人を長期間調べる研究が必要としています。
1日3個のヨーグルトとビフィズス菌の関係
マリアさんの食生活で特に話題になったのがヨーグルトです。
晩年の約20年間の食生活を調べた研究では、マリアさんは1日におよそ3個のヨーグルトを食べていました。
研究で挙げられているヨーグルトには、一般的なヨーグルトの発酵に利用される菌が含まれていました。これらは腸内でビフィズス菌が増える環境に関係する可能性があります。
ここで気をつけたいのが因果関係です。
研究チームも、マリアさんのビフィズス菌が多かった理由を「ヨーグルトだけ」とは断定していません。
長期間にわたり比較する研究を行ったわけではないため、
ヨーグルトを食べた → ビフィズス菌が増えた → 117歳まで生きた
という一直線の関係が証明されたわけではありません。
マリアさんには遺伝的な特徴、炎症の少なさ、代謝の特徴、食生活、身体活動など複数の要素がありました。
「1日3個」という数字だけをまねするより、毎日の食生活全体を見ることのほうが重要です。
発酵食品と一緒に食物繊維を取ることが大切
腸内環境を考える場合、ヨーグルトや納豆などの発酵食品だけに目を向けないこともポイントです。
腸内細菌にとって重要な栄養源のひとつが食物繊維です。
食物繊維は小腸でほとんど消化されず大腸まで届き、一部が腸内細菌によって利用されます。そこで短鎖脂肪酸などが作られ、腸内環境に関わっています。
食物繊維を取りやすい食品には、
- 野菜
- 豆類
- 海藻
- きのこ
- 果物
- いも類
- 穀類
などがあります。
そのため、ヨーグルトだけを単独で食べ続けるより、野菜や豆、果物などさまざまな食品を組み合わせるという考え方のほうが、普段の食事には取り入れやすいでしょう。
スペインの食卓にも、トマト、ジャガイモ、インゲン豆、ニンニク、魚介類など多様な食材が登場します。
「特定の健康食品を追加する」のではなく、腸内細菌のエサになる食品まで含めて食事を考えるという点が重要です。
101歳でも家族と同じ食事を楽しむ生活
カストリージョ・デ・ムルシアで暮らすディオニシア・オルテガさんは101歳。1日3食をとり、家族と同じ食卓を囲んでいます。
ここには栄養だけでは測れない大切な要素があります。
年齢が上がると食欲が落ちたり、食べる量が減ったりする人もいます。さらに1人で食べる機会が増えると、食事そのものが簡単になってしまうこともあります。
ディオニシアさんの場合は、家族と一緒に食べる環境が生活の中に残っています。
食事は栄養を摂取するだけでなく、人と話し、生活のリズムを整える時間でもあります。
スペインの高齢者の暮らしを見ていると、「何を食べるか」だけでなく、誰と、どんな生活の中で食べ続けるかも健康長寿を考える手掛かりになっています。
100歳でも毎日4時間オルガンを弾く生活
100歳のオルガン奏者モンセラットさんの生活も象徴的です。
プロとして演奏を続け、毎日約4時間練習しています。
オルガン演奏では、楽譜を読み、手だけでなく足も使い、音を聞きながら次の動きを判断します。
単に「趣味を持つ」というだけではなく、長年培ってきた技術を今も使い続けているわけです。
年齢によって活動をすべて減らすのではなく、自分のできる範囲で仕事や趣味、家事などを続けることは、体を動かす機会にもなります。
97歳で歩くトマスさん、88歳で畑を耕すトニさん、100歳で演奏するモンセラットさん。
3人に共通するのは、日常の中に「今日もやること」がある生活です。
2040年にスペインが世界有数の長寿国になるという予測
スペインが長寿国として関心を集める背景には、将来予測もあります。
195の国と地域を対象にした研究では、2040年の平均寿命について、スペインは85.8歳になるという予測が示されました。
このモデルでは、スペイン、日本、シンガポール、スイスなどが85歳を超える国になると予測されています。
ただし、これは未来が確定しているという意味ではありません。
平均寿命は医療だけでなく、喫煙率、肥満、血圧、食生活、所得、教育など数多くの要素によって変化します。
「スペインには長寿になる特別な食品がある」というより、食事、活動、人とのつながりなどを含めた生活環境全体を見る必要があります。
日本で取り入れるなら特別な健康法より毎日の組み合わせ
スペインの高齢者とマリアさんの研究を合わせて見ると、1つの食品や健康法だけを長寿の秘けつと考えないほうが自然です。
取り入れやすいのは、
発酵食品+食物繊維を含む多様な食事+無理のない運動+人との交流+続けられる役割や趣味
という組み合わせです。
ヨーグルトなら必ず1日3個食べる必要はありません。納豆やその他の発酵食品を食生活に取り入れる方法もあります。
運動についても、97歳の男性と同じ3kmを歩く必要はありません。買い物や散歩、家事、庭仕事など、自分の体力に合わせて動く機会を作る方法があります。
スペインの100歳を超える人たちから見えてくるのは、「長寿のために特別なことをする」というより、食べる、動く、人と関わる、好きなことを続けるという日常を途切れさせないことです。
マリアさんの研究で見つかったビフィズス菌も興味深い発見ですが、それだけを切り取らず、生活全体を見ることが長寿研究を理解するうえで大切です。
参考リンク
- 117歳長寿者のマルチオミクス研究|Cell Reports Medicine・PMC
- 2040年までの平均寿命予測研究|The Lancet・PMC
- 食物繊維の必要性と健康|健康日本21アクション支援システム
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