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右側迷走神経が不安を抑える仕組み オキシトシン研究の現在|フロンティアで会いましょう!

健康

左右の迷走神経には異なる役割がある可能性

2026年9月7日放送のNHK総合『フロンティアで会いましょう!』では、自律神経が「不安の抑制」に関わる最新研究が紹介されます。その内容と合致する研究として注目されるのが、京都府立大学の研究グループによる迷走感覚神経とオキシトシンの研究です。雄マウスの実験では、右側の迷走神経が不安様行動と社会行動、左側が摂食抑制に強く関係するという左右差が示されました。

この記事でわかること

  • 迷走神経が脳へ内臓情報を送る仕組み
  • 右側と左側で異なる働きが示された実験
  • オキシトシンと不安様行動の関係
  • 人の不安治療へ応用するときの重要な注意点

京都府立大学が研究する求心性迷走神経

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出典:京都府立大学 動物機能学研究室

迷走神経は副交感神経の中心的な経路として知られていますが、脳から内臓へ命令を出す神経だけではありません。内臓の状態を脳へ伝える「求心性」の感覚神経が多く含まれています。

胃腸や肝臓、膵臓、心臓などで生じた変化は、迷走感覚神経を通して脳へ送られます。その情報は食欲、代謝、血糖調節だけでなく、気分や社会行動にも影響する可能性があります。

京都府立大学動物機能学研究室は、食事やホルモンによって迷走感覚神経の活動がどう変化し、その信号が摂食、代謝、精神機能をどう調節するのかを研究しています。

研究を発表した射場拳虎さん

研究の筆頭著者は、京都府立大学大学院生命環境科学研究科の射場拳虎さんです。

射場さんは2025年10月、「右側のオキシトシン受容体を発現する迷走感覚神経が創出する抗不安・社会性向上作用」という研究発表で、第78回日本自律神経学会総会の会長賞基礎部門を受賞しました。当時は博士後期課程2年で、同年11月には生物学的精神医学など3学会の合同年会でも若手優秀発表賞を受けています。

研究成果は2025年12月、射場さん、増田雄太さん、北野里佳さん、大林健人さん、岩崎有作教授らの共同研究としてbioRxivに公開されました。

ただし、bioRxivは査読前の論文を公開するプレプリントサーバーです。興味深い成果ではあるものの、査読済みの確立した治療知見とは区別する必要があります。

オキシトシンが迷走神経と脳をつなぐ

オキシトシンは出産や授乳に関係するホルモンとして知られていますが、脳内では摂食、不安、社会行動などの調節にも関与します。

研究グループは、オキシトシン受容体を持つ迷走感覚神経に注目しました。雄マウスへオキシトシンを腹腔内投与すると、迷走感覚神経と視床下部室傍核のオキシトシン神経が活性化しました。

同時に、マウスが不安の少ないときに示す行動が増え、ほかのマウスとの社会的な接触も増加し、摂食量は減少しました。

視床下部のオキシトシン神経を薬理遺伝学的に抑えたり、脳内のオキシトシン受容体を遮断したりすると、これらの変化は確認されなくなりました。

この結果は、末梢でオキシトシンを感知した迷走感覚神経が脳へ信号を送り、視床下部のオキシトシン神経系を介して行動を変化させた可能性を示しています。

右は不安と社会性、左は食欲に関係した

この研究で特に注目されたのが、迷走神経の左右差です。

マウスの右側の迷走神経を横隔膜より下で切断すると、オキシトシン投与による不安様行動の減少と社会的交流の増加が起こらなくなりました。一方、摂食を抑える作用は残りました。

左側を切断した場合は反対に、摂食抑制作用が失われましたが、不安様行動と社会行動への作用は維持されました。

さらに、オキシトシン受容体を持つ迷走感覚神経を左右別々に人工的に活性化すると、右側では不安様行動の減少と社会行動の増加、左側では摂食量の減少が確認されました。

迷走神経を単一の神経経路として考えるのではなく、左右の経路が異なる情報を脳へ伝えている可能性を示す結果です。

「不安様行動」と人間の不安障害は同じではない

マウス研究で用いられる「不安様行動」は、開けた場所を避ける、明るい場所に出ないなど、危険への警戒を反映する行動から評価されます。

人間が感じる不安には、言語、記憶、人間関係、生活環境、精神疾患など多くの要因が関係します。マウスの不安様行動が減ったからといって、人の不安障害に同じ方法が有効だとは限りません。

また、今回の研究は雄マウスを対象としており、雌や人間で同じ左右差が存在するかは確認されていません。

オキシトシンを自己判断で摂取したり、市販の機器で首や耳を刺激したりすれば不安が治るという研究でもありません。オキシトシン製剤や迷走神経刺激には、投与経路、刺激位置、強度、安全性など解決すべき問題があります。

実用情報

現段階では、右側の迷走神経を自分で刺激する方法を試す段階ではありません。首には頸動脈や重要な神経があるため、強く圧迫したり電気刺激を加えたりすることは避けてください。

不安が長期間続く、眠れない、動悸や息苦しさが頻繁に起こる、外出や仕事が難しくなっている場合は、心療内科や精神科などへ相談することが大切です。

呼吸法や生活リズムの調整が一時的な緊張緩和に役立つ場合はありますが、それは今回のマウス研究から直接導かれた治療法ではありません。医療機関で治療を受けている人は、服薬や通院を独断で中止しないでください。

まとめ

京都府立大学の研究では、オキシトシン受容体を持つ迷走感覚神経が脳のオキシトシン神経系へ情報を送り、不安様行動、社会行動、摂食を調節する可能性が示されました。

さらに雄マウスでは、右側の迷走神経が不安と社会性、左側が摂食抑制に強く関係するという左右差が確認されています。

ただし、査読前のプレプリントであり、人間を対象とした治療研究ではありません。将来、狙った神経経路だけを調節する治療につながる可能性はありますが、現時点で家庭用の刺激法やオキシトシンによる不安治療が確立したわけではありません。

参考リンク


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