日本で流通する野菜の種は約9割が海外で生産されている
スーパーで売られているトマト、キャベツ、ブロッコリー。日本の畑で育てられた野菜でも、その種は海外で生産されていることが珍しくありません。
2026年10月15日放送のNHK総合『コンテナ全部開けちゃいました!〜横浜港編2026〜』では、世界から横浜港へ運ばれるコンテナの中身を通して、日本の産業と海外の意外な関係を紹介します。
その1つが、野菜の種です。
農林水産省の令和7年度の資料では、日本国内で流通する野菜種子の約9割が海外で生産されていることが示されています。
これは、日本の種苗会社が野菜の品種開発をしていないという意味ではありません。日本企業が開発した品種でも、品質のよい種を安定して生産するため、海外の農場を利用しているのです。
世界各地で採種された種は、品質検査や加工などを経て、日本の農家や家庭菜園を楽しむ人々のもとへ届けられます。
この記事でわかること
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日本の野菜種子の約9割が海外生産である理由
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種苗会社が世界各地で種を作る仕組み
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海外で作った種の発芽率や品質を守る技術
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日本で開発した品種と海外で生産した種の違い
野菜の種の約9割が海外で生産される3つの理由

農林水産省の令和7年度の資料では、国内で流通する野菜の種の約9割が国外で生産されていると説明されています。
日本の種苗会社が海外で種を生産するのには、大きく3つの理由があります。
1. 野菜ごとに適した気候で種を作るため
野菜には、それぞれ育ちやすい気温や湿度、日照条件があります。
種を生産する際も同様で、その野菜の原産地に近い気候で栽培した方が、品質のよい種を得られる場合があります。
2. 天候不順による生産リスクを減らすため
1つの地域だけで種を生産すると、台風や干ばつ、病気などによって大きな被害を受ける危険があります。
生産地を複数の国へ分散しておけば、ある地域で不作になっても、別の地域から種を供給しやすくなります。
3. 北半球と南半球の季節の違いを活用するため
日本が冬のとき、南半球の多くの地域は夏です。
こうした季節の違いを利用すれば、1年を通して種を生産する計画を立てやすくなります。
つまり、海外で種を生産するのは、単純に製造費用を安くするためではありません。
品質のよい種を安定して確保し、日本の農業を支えるための仕組みなのです。
日本の種苗会社は品種開発と種の生産を分けている
野菜の種を考えるときに重要なのが、「品種を開発すること」と「販売するための種を大量に作ること」は別の仕事だという点です。
新しい野菜の品種を生み出すためには、長い時間をかけて研究や交配、栽培試験などを行う必要があります。
例えば、甘くて食べやすいトマトや、病気に強いキャベツ、収穫量の多いブロッコリーなどは、品種改良によって生み出されています。
新しい品種が完成しても、それだけでは全国の農家へ種を供給できません。
農家が毎年安定して栽培できるように、販売用の種を十分な量だけ生産する必要があります。
そこで、日本の種苗会社は国内外の採種農家と協力し、販売に必要な種を生産しています。
種が農家へ届くまでの基本的な流れ
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種苗会社が新品種を研究・開発する。
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栽培試験で品種の特徴を確認する。
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野菜の種類に適した採種地を選ぶ。
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国内外の採種農家が種を生産する。
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収穫した種を選別し、品質を検査する。
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種袋などに詰めて農家や販売店へ届ける。
研究開発と種の生産を分担することで、多くの農家へ品質がそろった種を届けられるようにしています。
サカタのタネは世界170か国以上に種を届けている
海外採種の仕組みを理解するうえで、代表的な企業が「サカタのタネ」です。
サカタのタネは1913年に横浜で創業した種苗会社で、野菜や花の品種開発、生産、販売を手がけています。
2026年7月時点では世界23か国に事業を展開し、170か国以上に種を販売しています。
サカタのタネの事業規模
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創業:1913年
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創業地:神奈川県横浜市
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事業展開:世界23か国
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研究拠点:世界22か所
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国内研究拠点:6か所
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海外研究拠点:16か所
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種子の販売先:170か国以上
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海外売上高比率:約80%
同社では、世界各地に採種地を分散させる生産体制を築いています。
理由は、種の生産量と品質を安定させるためです。
野菜の種を生産する畑は、一般的な野菜を収穫する畑とは目的が異なります。
野菜を食べるために収穫するのではなく、花を咲かせ、次の世代の種を実らせて収穫することが目的です。
そのため、通常の農産物生産とは違う栽培管理が必要になります。
サカタのタネでは、品目に適した気候や、ほかの品種との交雑を避けるための距離などを考慮して採種地を選んでいます。
世界中の農場と協力する体制が、日本の野菜生産にもつながっています。
野菜の種を作るには花を咲かせる必要がある
普段スーパーで購入している野菜の姿と、種を生産するために育てた植物の姿は、必ずしも同じではありません。
例えば、春菊は通常、食用の葉や茎を収穫します。
しかし種を作る場合は、収穫せずに育て続け、花を咲かせます。
その後、花から種が成熟するまで管理し、採種を行います。
キャベツやブロッコリーなどでも、販売する野菜を生産するのと、次の栽培に使用する種を生産するのとでは目的が異なります。
また、種苗会社では、開発した品種の特徴を次の世代にも受け継がせる必要があります。
意図しない別品種との交雑や、異なる種の混入を防ぐことも重要です。
そのため、採種地では品種の隔離距離や栽培時期などを細かく管理します。
種の生産は単に作物を育てるだけでなく、次の栽培に使える品質を確保する専門的な仕事なのです。
海外で作られた種は発芽率や病気の検査を受ける
海外で種を作ると聞くと、品質に違いがあるのではないかと気になる人もいるでしょう。
しかし、海外生産だから品質が低いということではありません。
サカタのタネなどの種苗会社では、海外の採種地でも栽培管理を行い、生産された種について品質検査を実施しています。
主な検査には次のようなものがあります。
発芽検査
種が適切な条件で発芽するかを確認します。
発芽する割合だけでなく、健全な苗に育つかも重要な評価対象です。
純潔度検査
種の中に土や砂、茎、雑草の種などが混ざっていないかを確認します。
良質な種を選別するための検査です。
品種純度検査
本来の品種とは異なる種が混入していないかを調べます。
DNA検査や実際に栽培する試験などが利用されます。
種子健全性検査
病原菌などによる汚染を確認します。
種に付着した病原体が栽培先に持ち込まれることを防ぐためにも重要です。
こうした検査を経て、基準を満たした種が商品化されます。
サカタのタネでは、国際種子検査協会(ISTA)が定める国際的な検査手法も利用しています。
種苗会社が品質管理に力を入れる理由は、農家がまいた種が確実に発芽し、目的の品種として育つことが野菜生産の出発点だからです。
横浜港に届くコンテナから見える日本農業と世界のつながり
野菜の種が海外で生産されているという事実は、日本の農業が国際物流によって支えられていることも示しています。
海外の採種地で収穫された種は、日本へ輸送され、品質管理や流通の仕組みを通して農家へ届けられます。
国際輸送では、コンテナが重要な役割を果たしています。
今回の『コンテナ全部開けちゃいました!〜横浜港編2026〜』では、アイ・シー・ネット株式会社の志和地弘信さんが取材に協力し、野菜の種がコンテナで運ばれてくる理由について説明します。
アイ・シー・ネットは、国際開発や海外事業支援などに取り組む企業です。
横浜港は、日本を代表する国際貿易港の1つです。
港へ届く貨物というと、自動車や工業製品、大量の食品などをイメージしがちですが、野菜の種のように日本の食料生産を支える物資も国際物流に関係しています。
小さな種は、そのまま食卓に並ぶ商品ではありません。
しかし、その種が農家に届かなければ、次の野菜を栽培することが難しくなります。
普段は目にする機会が少ない種の輸送も、毎日の食生活と深く結び付いているのです。
海外生産の種でも日本で育てれば国産野菜になる
種の生産地と野菜の産地は、混同しやすい点です。
例えば、日本の種苗会社が開発した品種の種を海外で生産し、その種を日本の農家が購入したとします。
そして、日本国内の畑で野菜を栽培して収穫した場合、種が外国で生産されていても、収穫された野菜は国産野菜です。
区別したい3つの情報
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品種の開発地:野菜の品種を研究・育成した場所
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種の生産地:販売用の種を採種した場所
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野菜の生産地:実際に野菜を育て、収穫した場所
この3つは必ずしも同じ国とは限りません。
種の生産地が海外であることと、スーパーで販売される野菜の産地表示が外国産になることは別の問題です。
日本の野菜生産は、国内の栽培技術だけでなく、世界各地の採種農家や種苗会社との協力によって成り立っています。
実用情報|家庭菜園の種袋で確認できる生産地と品質
家庭菜園用の野菜の種を購入する際にも、パッケージを見ることで生産地や品質に関する情報を確認できます。
種袋で確認したい項目
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野菜の種類・品種名
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生産地
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発芽率
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有効期限
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種をまく時期
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栽培に適した地域
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種子の消毒・処理に関する表示
生産地が外国と表示されていても、それだけで品質に問題があるという意味ではありません。
種苗会社は品種に適した採種地を選び、国内生産の種と同様に品質管理を行っています。
家庭菜園では、種の生産国だけで判断せず、発芽率、有効期限、地域に適した種まき時期なども確認することが大切です。
まとめ
日本で流通する野菜の種は、約9割が海外で生産されています。
その理由は、野菜ごとに適した気候で良質な種を作り、天候不順や病気によるリスクを分散しながら、安定した供給を続けるためです。
日本の種苗会社が開発した品種でも、販売用の種を海外で生産することがあります。
世界各地の採種農家が種を育て、品質検査や国際物流を経て日本へ届けられ、国内の農家が野菜を栽培します。
小さな1粒の種の背景には、世界の農業技術と物流がつながる大きな仕組みがあります。
参考リンク
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