青木ヶ原樹海を生んだ貞観大噴火と1200年の森の再生
2026年10月17日放送のテレビ東京『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』では、出川哲朗さんとキングコングの西野亮廣さんが、富士山麓を電動バイクで巡る途中、山梨県の青木ヶ原樹海に入ります。
ところが、樹海に入った直後に出川さんと熊谷ディレクターのバッテリーが切れ、西野さんが1人で充電場所を探す展開になります。
青木ヶ原樹海は、富士山の北西麓に約3000ヘクタールもの広さで展開する森林です。
この森が誕生するきっかけとなったのは、西暦864年に始まった富士山の「貞観大噴火」でした。
大量の溶岩が大地を覆い、周辺に広がっていた巨大な湖を分断。その後、溶岩の上にはコケや植物が少しずつ根を下ろし、約1200年かけて現在の森が形成されました。
驚くことに、森を支える土壌の厚さはわずか十数cmほど。豊かな緑の下には、今も約1200年前の溶岩が広がっています。
この記事でわかること
-
青木ヶ原樹海が864年の富士山噴火で誕生した経緯
-
わずか十数cmの土壌に豊かな森が育った理由
-
貞観大噴火が西湖と精進湖を生み出した歴史
-
青木ヶ原樹海の散策コース・所要時間・アクセス
青木ヶ原樹海は864年の貞観大噴火から生まれた
公式動画:青木ヶ原樹海 ~この森は「命」と「光」に満ちている。(山梨県公式YouTube「山梨チャンネル」)
青木ヶ原樹海は、山梨県の富士河口湖町と鳴沢村にまたがる広大な森林です。
富士山の北西麓に位置し、富士箱根伊豆国立公園の豊かな自然を代表する場所として知られています。
青木ヶ原樹海の基本情報
-
所在地:山梨県南都留郡富士河口湖町・鳴沢村
-
面積:約3000ヘクタール(約30平方km)
-
森林が育ち始めた時期:約1200年前
-
地形の起源:西暦864年に始まった貞観大噴火
-
土壌の厚さ:十数cm程度
-
主な樹木:ツガ、ヒノキ、ミズナラなど
-
自然環境:富士箱根伊豆国立公園
今では木々が密生する森林ですが、約1200年前にはまったく異なる景色が広がっていました。
当時の富士山北西側には、森林や湖などの自然が存在していました。
しかし864年、富士山の北西斜面で大規模な噴火が発生します。
火口から大量の溶岩が流れ出し、山麓の広い範囲を覆いました。
この溶岩が冷えて固まった場所に、長い年月をかけて植物が育ったものが現在の青木ヶ原樹海です。
貞観大噴火は西湖と精進湖の地形も変えた
青木ヶ原樹海の誕生に大きく関わった「貞観大噴火」は、富士山の噴火史でも重要な出来事です。
噴火は864年に始まり、866年初頭にかけて大量の溶岩を流しました。
当時、富士山の北西側には「剗の海(せのうみ)」と呼ばれる大きな湖が存在していました。
ところが、富士山から流れ出した溶岩が湖へ流入し、その大部分を埋めてしまいます。
さらに、溶岩によって湖が分断され、現在の西湖と精進湖が形成されました。
貞観大噴火によって起きた主な変化
-
富士山北西斜面から大量の溶岩が流出
-
広い範囲の地表が溶岩に覆われた
-
剗の海が分断され、西湖と精進湖が成立
-
冷え固まった溶岩台地に新たな植物が定着
-
約1200年かけて青木ヶ原樹海が形成された
この噴火で流出した溶岩は「青木ヶ原溶岩」と呼ばれています。
樹海だけでなく、西湖や精進湖の湖岸でも、その溶岩を確認できます。
現在の富士五湖周辺の美しい景観は、富士山の火山活動が長い時間をかけて作り上げてきたものなのです。
黒い溶岩の上にコケが広がり、新しい命が芽吹いた
火山の噴火直後、溶岩に覆われた大地は植物が育ちにくい環境でした。
冷えて固まった溶岩は硬く、表面には凹凸があり、植物の成長に必要な土壌も十分ではありません。
しかし、時間の経過とともに岩の表面にはコケやシダなどが定着していきました。
さらに、風によって運ばれた種子や鳥が運ぶ種子が芽吹き、少しずつ植物の種類が増えていきます。
植物が枯れて分解されると、その有機物が次の植物の生育を支えます。
こうして長い年月をかけて森林が発達していきました。
ただし、約1200年もの時間が経過した現在でも、青木ヶ原樹海の土壌は十数cm程度の厚さしかありません。
そのため、木々は普通の森林のように地中深くまで根を伸ばすことが難しく、溶岩の表面を這うように根を広げています。
黒い溶岩の上に鮮やかな緑色のコケが広がり、その上を木の根が複雑に張り巡らされる独特の風景は、こうした厳しい環境によって生まれたものです。
青木ヶ原樹海は1200年たっても若い森
青木ヶ原樹海は「原生林」と呼ばれていますが、森林の成り立ちという点では比較的若い森です。
日本各地には、数千年以上にわたって形成されてきた森林もあります。
それに対して、青木ヶ原樹海は約1200年前の溶岩流を出発点として発達しました。
現在の樹海では、ツガやヒノキなどの針葉樹が多く見られます。
標高や気候の条件から、本来は落葉広葉樹がよく育つ地域ですが、溶岩質で栄養や水分が乏しい土壌のため、針葉樹が発達しているのが特徴です。
森林内にはソヨゴ、アセビ、ミズナラ、フジザクラ、カエデなどの広葉樹も生育しています。
青木ヶ原樹海で見られる主な植物
-
ツガ:樹海を代表する常緑針葉樹
-
ヒノキ:溶岩の上に根を広げて生育
-
ミズナラ:森の中に見られる落葉広葉樹
-
ソヨゴ:常緑の広葉樹
-
コケ植物:溶岩や倒木を覆う緑のじゅうたん
-
ギンリョウソウ:葉緑素を持たない白い植物
コケに覆われた倒木や複雑に絡み合う木の根は、青木ヶ原樹海を象徴する風景です。
森の中では、植物が枯れたり倒れたりすることも、次の世代の植物が育つための重要な過程となっています。
倒木が新しい木を育てる「倒木更新」
青木ヶ原樹海では、倒れた木が次の世代の木々を育てる「倒木更新」という現象が見られます。
倒木更新とは、森林内で倒れた樹木の上に種子が落ち、そこで新しい木が芽生えて成長することです。
倒木は長い時間をかけて分解され、若い植物の成長を支える場所になります。
青木ヶ原樹海は、土壌が薄く、植物が根を張るのが難しい環境です。
そのような場所では、倒木の上が新しい命の育つ場所となることがあります。
枯れた木が朽ち果て、その上に新しい木が育つ。
一見すると倒木が多く荒れた森林にも見えますが、そこには自然の中で生命が受け継がれていく仕組みがあります。
2023年には、山梨県が開催した青木ヶ原樹海ショートムービーコンテストで、「倒木更新と新しい命」をテーマにした作品が最優秀賞に選ばれました。
樹海は完成したまま変わらない森ではなく、今も新しい命が生まれ続ける場所なのです。
樹海は野鳥や哺乳類が暮らす豊かな生態系
青木ヶ原樹海には、さまざまな動物も生息しています。
苔むした地面や倒木、岩の隙間、密生する木々など、多様な環境が生き物のすみかになっています。
青木ヶ原樹海で確認されている動物
-
哺乳類:シカ、キツネ、イノシシ、ノウサギ、イタチ、リスなど
-
野鳥:シジュウカラ、コガラ、エナガ、アカゲラ、コゲラ、ウグイスなど
-
その他:溶岩洞穴に暮らすコウモリ、昆虫、土壌生物など
特に野鳥の種類が豊富で、遊歩道を散策しながら鳥の声を聞くこともできます。
森にはさまざまな高さの木々があり、枝や幹、地面付近など、それぞれ異なる場所で生き物が活動しています。
また、樹海の地下には溶岩洞穴が点在し、コウモリなどの生息場所にもなっています。
溶岩の上に植物が育ち、植物が森を作り、その森が動物たちの暮らす環境になる。
青木ヶ原樹海は、火山活動によって変化した大地に生態系が発達していく過程を感じられる場所です。
青木ヶ原樹海の散策は70〜90分のモデルコースがおすすめ
青木ヶ原樹海には遊歩道が整備されており、一般の人も自然散策を楽しめます。
山梨県の公式観光情報では、「西湖コウモリ穴」から出発し、西湖畔の根場浜へ向かうモデルコースを紹介しています。
青木ヶ原樹海の散策モデルコース
-
スタート地点:西湖コウモリ穴
-
ゴール地点:西湖・根場浜
-
徒歩所要時間:約70〜90分
-
遊歩道の見学料金:無料
-
有料ガイドツアー:西湖コウモリ穴案内所で案内
散策コースには、樹齢約300年のツガの巨木が並ぶ場所や、溶岩の造形が見られる場所があります。
また、途中には野鳥や植物を紹介する案内板も設けられています。
西湖畔へ抜けると視界が開け、天候によっては富士山の姿を見ることもできます。
アクセス方法
河口湖駅からは「西湖・青木ヶ原周遊」バスを利用できます。
-
出発:河口湖駅
-
下車:西湖コウモリ穴
-
バス所要時間:約36分(公式モデルコースの目安)
-
帰路:根場入口バス停から河口湖駅へ
青木ヶ原樹海は広い森林であり、散策する場所によって距離や所要時間が異なります。
初めて訪れる場合は、整備された遊歩道を利用するか、ネイチャーガイドが同行するツアーを利用すると、自然の特徴を詳しく学べます。
樹海の自然を守るために遊歩道から外れないことが大切
青木ヶ原樹海を訪れる際に注意したいのが、森林の自然環境を傷つけないことです。
森林には豊かな緑が広がっていますが、その土台となる土壌は非常に薄く、木々の根も溶岩の表面に広がっています。
そのため、人が不用意に歩き回ると、コケや植物の根が傷ついてしまいます。
山梨県では、自然環境を守るために次のようなルールを設けています。
青木ヶ原樹海の散策ルール
-
登山道や遊歩道から外れない
-
コケや植物を踏み荒らさない
-
樹木、植物、溶岩、岩石などを採取しない
-
木の皮を剥いだり枝を折ったりしない
-
森林内でたき火や野営をしない
-
ゴミは持ち帰る
特に、溶岩の上を這うように広がった木の根は、樹木が生きるための重要な部分です。
わずかな環境変化でも木が倒れてしまうことがあるため、植物や土壌を保護することが欠かせません。
森の美しさを楽しむだけでなく、約1200年かけて育まれた自然を次の世代へ残すための行動が求められます。
2026年も青木ヶ原樹海の魅力を伝える取り組みが進む
山梨県では、青木ヶ原樹海を自然観光資源として保護しながら、その価値を広く伝える活動を進めています。
2025年度には「青木ヶ原樹海魅力再発見事業」が実施され、自然・歴史・文化・食を組み合わせた観光体験づくりが進められました。
その一環として、2025年9月には地元のネイチャーガイドや観光・飲食関係者などが参加する「樹海ミライカイギ」が発足しました。
2025年11月には、三湖コース、精進湖コース、西湖コースの3つの体験イベントを実施し、74人が参加しています。
さらに2026年には、青木ヶ原樹海の豊かな自然と生命の営みを伝えるリーフレットや紹介映像が公開されています。
富士山を眺める観光だけでなく、噴火から生まれた土地を実際に歩き、植物や動物が育つ過程を学ぶ体験も大切にされています。
約1200年前の噴火から始まった森の歴史を、これからの観光や自然保護につなげる取り組みです。
まとめ
『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』で出川哲朗さんたちが電動バイクで走る青木ヶ原樹海は、西暦864年に始まった富士山の貞観大噴火によって生まれた溶岩台地の上に広がる森林です。
噴火によって大地が溶岩で覆われ、その後、コケや植物が少しずつ育ち、約1200年かけて現在の姿になりました。
今も土壌の厚さは十数cmほどしかなく、木々は溶岩の上に複雑に根を張って生きています。
その一方で、森林には多くの植物や動物が暮らし、倒木から新しい木が育つなど、生命の営みが続いています。
青木ヶ原樹海は、富士山の大噴火によって姿を変えた大地に、自然がどのように命を取り戻してきたのかを伝える場所です。
参考リンク
気になる生活ナビをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント