終活のお金は「どこに何があるか」を見える形にすることから
終活のお金で最初に手をつけたいのは、財産を急いで減らしたり動かしたりすることではなく、自分の銀行口座や財産を把握できる状態に整えることです。『明日から使える あかるい終活(3)お金をすっきり明瞭に(2026年8月17日)』では、銀行口座の整理やエンディングノートへの記録、相続税の基準などが取り上げられます。元気なうちに整理しておけば、自分自身のお金の管理にも、家族の将来の手続きにも役立ちます。
この記事でわかること
- 終活で銀行口座を整理する意味
- エンディングノートに残しておきたいお金の情報
- 相続税がかかる金額の基本的な考え方
- エンディングノートと遺言書の大切な違い
終活のお金整理は銀行口座の一覧を作るところから始める
最初にやっておきたいのが、自分名義の銀行口座をすべて洗い出すことです。
普段使っている給与振込口座や生活費の口座なら覚えていても、昔作った地方銀行や信用金庫、ネット銀行などは、そのままになっていることがあります。
家族が困るのは、残高そのものより「どこの金融機関と取引しているのか分からない」という状況です。
エンディングノートには、少なくとも次のような情報を整理しておくと分かりやすくなります。
- 金融機関名
- 支店名
- 預金の種類
- 通帳やキャッシュカードの保管場所
- 給与・年金などが入金される口座
- 電気・ガス・通信費などが引き落とされる口座
法務局が作成しているエンディングノートも、自分に何かあったときに家族が判断や手続きを進められるよう、必要な情報を残しておくものと位置づけています。
お金を「いくら持っているか」だけではなく、どこにあるのか、何に使っている口座なのかまで分かるようにしておくことが大切です。
使っていない銀行口座を整理すると自分自身にもメリットがある
銀行口座の整理は、亡くなった後のためだけに行うものではありません。
例えば5つの口座を持っていても、日常生活で実際に使っているのが2つなら、残り3つについて「今後も必要なのか」を考えるきっかけになります。
口座が増えるほど、
「どこにいくら残っているのか」
「どの口座から何が引き落とされているのか」
「このキャッシュカードはまだ必要なのか」
といったことが分かりにくくなります。
長年使っていない口座があれば、残高や自動引き落としなどを確認したうえで、必要に応じて整理する方法もあります。
特に生活費、年金、公共料金、クレジットカードなどが複数の口座に分散している人は、一度紙に書き出すだけでもお金の流れがかなり見えやすくなります。
終活という言葉から「亡くなった後の準備」を想像しがちですが、こうした整理はこれからのお金を管理しやすくする作業でもあります。
家族が銀行口座を知らないと相続手続きが複雑になりやすい
口座名義人が亡くなった場合、預金を相続するためには金融機関で手続きが必要になります。遺言書や遺産分割協議書などの有無によって必要書類も変わり、金融機関によって具体的な手続きが異なる場合があります。
つまり、家族が本人の銀行口座を把握していなければ、その前段階として「どこの銀行に口座があるのか」を確認する作業から始めなければなりません。
そこで役立つのが、エンディングノートです。
家族にすべてのお金の管理を任せる必要はありません。それでも、
「○○銀行を使っている」
「通帳はここに保管している」
という手掛かりが残っているだけで、状況は大きく変わります。
また、本人名義の口座から公共料金などを引き落としている場合には、死後に名義や引き落とし口座の変更が必要になることがあります。相続手続きだけでなく、日常生活を引き継ぐためにも口座情報は重要です。
エンディングノートには財産全体をまとめておく
整理したいのは銀行預金だけではありません。
例えば、
- 預貯金
- 株式・投資信託などの金融商品
- 生命保険
- 不動産
- ローンや借入金
など、自分に関係する財産や負債をまとめておくと、全体像が分かりやすくなります。
相続では、預貯金などのプラスの財産だけを見るわけではありません。相続とは亡くなった人の財産などの権利・義務を引き継ぐことであり、負債が関係する場合もあります。
そのため、「貯金はいくらある」という情報だけでは十分とはいえません。
自分自身にとっても、
資産はいくらあるのか
毎月どこからお金が出ていくのか
ローンなどはいくら残っているのか
を整理する機会になります。
終活を始めるなら、まず財産を動かすよりも財産の棚卸しから始める方が取り組みやすいでしょう。
相続税は「3000万円を超えたら必ずかかる」わけではない
相続税について特に間違えやすいのが、「財産がいくらあったら相続税がかかるのか」という点です。
相続税には基礎控除があります。
基礎控除額は、
3000万円+600万円×法定相続人の数
で計算します。正味の遺産額がこの基礎控除額を超える場合に、相続税の申告・納税が必要になるのが基本です。
例えば法定相続人が、
| 法定相続人 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3600万円 |
| 2人 | 4200万円 |
| 3人 | 4800万円 |
| 4人 | 5400万円 |
となります。
そのため、「相続財産が3000万円を超えた=相続税が発生する」と単純に判断することはできません。
また、相続税を計算するときの財産には預貯金だけではなく、不動産なども関係します。
自宅や土地、預貯金、金融商品などを含めた財産全体を見る必要があるため、終活で財産一覧を作っておくことは、相続税を考えるうえでも意味があります。
相続税が必要な場合は申告期限にも注意する
基礎控除額を超えて相続税の申告が必要になる場合には、期限があります。
原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税を行います。
10か月と聞くと長く感じますが、相続が始まると、
相続人の確認、財産の把握、遺言書の確認、遺産分割、預貯金や不動産の手続きなど、多くのことが重なります。
どこに財産があるのか分からない状態では、その確認だけにも時間がかかります。
だからこそ、生前に財産の所在をまとめておくことが、残された家族の負担を減らすことにつながります。
エンディングノートと遺言書は同じものではない
終活を始めるときに、ぜひ知っておきたい違いがあります。
エンディングノートと遺言書は別のものです。
エンディングノートは、銀行口座や財産、家族への希望など、自分に関する情報を伝えるには便利ですが、遺言書と同じ法的効力を持つものではありません。
一方、法律に沿って作成された遺言書では、誰にどの財産を相続させるかなどについて意思を残すことができます。
例えば、
「長男に自宅を相続させたい」
とエンディングノートに書くことと、法律上有効な遺言書として残すことは意味が違います。
この違いはかなり重要です。
エンディングノートは家族への情報整理、遺言書は法的な意思表示と考えると分かりやすいでしょう。
お金の終活は「残す金額」より「分かる状態」にすることが大切
終活というと、「財産をどう相続するか」という大きな問題から考えてしまいがちです。
しかし、最初から難しいことをする必要はありません。
まず机の上に通帳や金融関係の書類を集めて、
「自分はどこの銀行を使っているのか」
を書き出すだけでも立派なスタートになります。
そこから不要な口座を見直し、保険、金融商品、不動産、借入金などへ少しずつ範囲を広げていけば、自分のお金の全体像が見えてきます。
エンディングノートも一度に完成させる必要はありません。銀行口座の欄から始めて、分かるところを少しずつ埋めていけば十分です。
終活のお金整理で大切なのは、財産を急いで動かすことではなく、自分にも家族にも「どこに何があるのか分かる状態」を作っておくことです。
それが将来の相続手続きを助けるだけでなく、これから自分が使えるお金を把握し、暮らし方を考える材料にもなります。
参考リンク
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