「小湊鉄道」という名前なのに終点は小湊ではない
テレビ朝日系「1泊家族 特別企画!秘境ローカル鉄道の車窓からクイズ!」が2026年9月5日に放送されます。舞台となるのは、千葉県市原市の五井駅から上総中野駅までを結ぶ小湊鉄道。番組では「39キロにわたる歴史あるローカル線」「開通100周年」という点も取り上げられます。
ところが路線図を見ると、少し不思議なことに気づきます。「小湊鉄道」という名前でありながら、列車は現在の鴨川市にある安房小湊まで行きません。
実はここには、開業から100年を迎えた小湊鉄道の「完成しなかった計画」が関係しています。
この記事でわかること
- 小湊鉄道の現在の営業区間と距離
- 小湊まで線路を延ばす計画が実際に存在したこと
- 上総中野が終点になった経緯
- 100年たった現在も残る小湊鉄道の特徴
小湊鉄道は現在、五井から上総中野まで39.1kmを走る

現在の小湊鉄道線は、JR内房線と接続する五井駅から上総中野駅まで39.1km、全18駅です。全線が非電化で、ディーゼル車が房総の里山を走っています。
五井を出発した列車は、市街地から次第に田園地帯へ入り、高滝、里見、飯給、月崎、養老渓谷などを経て上総中野へ向かいます。
「1泊家族」の番組表にある「39キロ」という数字は、この39.1kmの営業キロを指していると考えてよいでしょう。
しかし地図を見ると、上総中野から太平洋側の安房小湊まではまだかなり距離があります。
当初は本当に「小湊」まで線路を延ばす予定だった
小湊鐵道の公式100周年年表を見ると、1913年11月26日に五井~鶴舞~小湊の鉄道敷設免許が認可されています。
つまり「小湊鉄道」という会社名は単なる地名のイメージではありません。
最初から小湊方面を目指す鉄道として計画されていたのです。
会社は1917年に設立され、1925年3月7日にまず五井~里見間25.7kmを開業。翌1926年に里見~月崎、1928年には月崎~上総中野まで線路を伸ばしました。
ここまで来れば、次は小湊へ――となりそうですが、その先は実現しませんでした。
上総中野から安房小湊までの鉄道免許は1936年に取り消された
公式年表には決定的な記録があります。
1936年10月28日、上総中野~安房小湊間の鉄道免許が取り消されています。
そのため、小湊鉄道は「小湊」を目指して造られた名前を残したまま、上総中野が終点となりました。
一方、1934年には国鉄木原線が大多喜から上総中野まで開業。現在では、この木原線をルーツとするいすみ鉄道と小湊鉄道が上総中野駅で接続します。
結果として上総中野は、房総半島の内陸部で2つのローカル線が出会う駅になりました。
「小湊まで行かない小湊鉄道」という現在の姿は、途中で終わった当初計画そのものを100年近く名前に残しているともいえます。
開業100周年は2025年3月7日だった
小湊鉄道が開業100周年を迎えたのは2025年3月7日です。
1925年3月7日に五井~里見間が営業を開始してからちょうど100年となり、2025年には記念イベントや機関庫見学、キハ200形の運転体験、記念グッズ販売などが展開されました。
会社自体の設立はさらに古く、1917年5月19日です。つまり2026年現在、小湊鐵道株式会社は創立から109年を迎えていることになります。
昔の駅舎や橋梁がそのまま観光資源になっている
小湊鉄道の魅力は「古そうに見えるように造った観光鉄道」ではなく、本当に長い年月使われてきた鉄道施設が現在も残っていることです。
2017年には駅舎や橋梁、発電所など22施設が国の登録有形文化財となり、2018年には「小湊鐵道とその沿線の景観」が「ちば文化資産」に登録されています。
そこへ房総里山トロッコやイベント列車、レールバイクなど新しい観光企画が加わっています。
100年前の鉄道設備と最新の観光企画が同居している点が、小湊鉄道ならではの特徴です。
実用情報|小湊鉄道を実際に利用する際の注意点
小湊鉄道ではSuica・PASMOなど交通系ICカードは利用できません。JRから五井駅へICカードで来た場合は五井駅の乗り換え改札でJR分を精算し、小湊鉄道線内は別途乗車券を購入します。
沿線で何度も途中下車する場合には、1日フリー乗車券があります。
- 大人:2,000円
- 小人:1,000円
- 発売当日のみ有効
- 小湊鉄道線内で何度でも乗り降り可能
なお、2026年9月5日時点では豪雨被害の影響が残っています。公式発表では五井~月崎間を列車運転、月崎~上総中野間は列車を運休して代行バスを運行する予定です。観光前には必ず最新の運行状況を確認してください。
まとめ
小湊鉄道は現在、五井~上総中野間39.1kmを走るローカル線ですが、会社設立当初は現在の鴨川市にある小湊方面まで線路を延ばす構想がありました。
実際に敷設免許も取得していましたが、上総中野~安房小湊間の免許は1936年に取り消され、路線は上総中野で止まりました。
だからこそ現在も残る「小湊鉄道」という名前には、完成しなかった房総横断計画の痕跡が刻まれています。
9月5日放送の「1泊家族」で100年の歴史や車窓が気になった人にとって、知っておくと沿線を見る目が少し変わるエピソードです。
参考リンク
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