丹下健三が設計した「船の体育館」解体をめぐる決断と保存への挑戦
世界的建築家・丹下健三が設計した香川県高松市の旧香川県立体育館。船のような独特の外観から「船の体育館」と呼ばれ、長く地域の人々に親しまれてきた建物が、解体の危機に直面しています。
2026年10月10日放送の『テレメンタリー2026』「動かぬ針路~『船の体育館』解体~」では、約10億円をかけて解体を進める香川県と、民間資金による保存・再生を提案する建築家たちの対立が取り上げられます。
2026年4月に始まった解体工事は、住民訴訟に伴う耐震性調査のため、9月15日から10月14日まで一時中断しています。しかし、県は10月15日から工事を再開する方針を表明しました。
一方、旧香川県立体育館再生委員会の長田慶太委員長は、建物を民間で取得して再生する道を模索し、耐震性の鑑定結果が出るまで解体を再開しないよう求めています。
この記事でわかること
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旧香川県立体育館の解体中断と10月15日の再開方針
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丹下健三が1964年に完成させた「船の体育館」の建築的価値
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長田慶太委員長が進める民間資金100%の保存・再生計画
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香川県が解体を選んだ理由と住民訴訟の争点
旧香川県立体育館は10月14日まで解体中断、県は15日の再開を表明
公式動画:『テレメンタリー2026』「動かぬ針路~『船の体育館』解体~」予告/KSB瀬戸内海放送
旧香川県立体育館の解体工事は、2026年10月8日時点で一時中断しています。
現在の状況は次のとおりです。
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解体工事着手:2026年4月10日
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工事中断開始:2026年9月15日
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中断期間終了:2026年10月14日
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県が示す工事再開日:2026年10月15日
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中断の目的:建物の耐震性に関する現地調査
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裁判の争点:建物の安全性と解体費用の公金支出
10月6日、香川県議会の文教厚生委員会で、県教育委員会の淀谷圭三郎教育長は、中断期間が終われば直ちに工事を再開する方針を改めて示しました。
一方、再生委員会は、調査で得られたデータを専門家が鑑定するには2~3か月かかるとして、結果が出るまで工事を再開しないよう求めています。
現在の対立は、単に建物を残すか壊すかだけではありません。建物の危険性をどのように判断し、その判断が確かめられる前に解体を進めてよいのかという問題にも及んでいます。
丹下健三が1964年に完成させた「船の体育館」の建築的価値
旧香川県立体育館は、1964年8月10日に完成しました。
設計を手がけたのは、広島平和記念公園や国立代々木競技場などで知られる建築家・丹下健三です。
建物の基本情報は次のとおりです。
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正式名称:旧香川県立体育館
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通称:船の体育館
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所在地:香川県高松市福岡町2丁目18-19
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竣工:1964年8月10日
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意匠設計:丹下健三
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構造設計:岡本剛
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家具デザイン:剣持勇
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構造:鉄筋コンクリート造、吊り屋根構造
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延床面積:4,707平方メートル
最大の特徴は、大きな船を陸上に浮かべたような独特の形状です。
屋根を吊る構造によって、柱の少ない大きな室内空間を実現しています。外側からは巨大なコンクリートの曲線が目を引き、内部では吊り屋根による大胆な構造を体感できる建築でした。
丹下健三は、同じ1964年に国立代々木競技場も完成させています。どちらも吊り屋根を用いた、戦後日本の建築技術を象徴する作品です。
船の体育館は建物だけでなく、周囲の庭や家具にもデザイン上の特徴があります。剣持勇が手がけたテーブルや椅子は、香川県立ミュージアムにも収蔵されています。
2017年には、米国のワールド・モニュメント財団が発表した「2018 World Monuments Watch」に選ばれました。
これは保存が危ぶまれる重要な文化遺産に国際的な関心を集める取り組みです。船の体育館は、地域の体育施設という役割を超えて、近代建築の保存を考えるうえで重要な存在となっています。
2014年の閉館から解体決定までに起きた変化
約50年間にわたって利用されてきた旧香川県立体育館ですが、建物の老朽化や耐震性の問題が表面化しました。
2014年に閉館し、体育館としての役割を終えます。
香川県はその後、建物の再利用を検討しました。
2021年度には民間事業者を対象としたサウンディング型市場調査を実施。建物の特徴や保存活用の選択肢を示し、民間による利用方法の提案を募りました。
しかし県は、財政支援なしで持続的に運営できる具体的な事業の実現は難しいと判断します。
また、建物西側の道路が大規模地震時の緊急輸送路に指定されていることも、安全性を考えるうえで大きな問題となりました。
県は2023年2月に解体方針を固めました。
香川県が重視したのは、建物の文化的価値だけでなく、地震が起きたときの周辺道路や住民の安全、耐震改修に必要な費用、そして将来にわたる維持管理の負担でした。
長田慶太委員長が提案した民間資金100%の再生計画
解体計画が進む中、保存・再生に向けて新たな動きを起こしたのが、建築家らでつくる旧香川県立体育館再生委員会です。
中心となる人物が、建築家の長田慶太委員長です。
再生委員会は2025年7月18日、旧体育館を民間で取得し、保存・再利用するための協議を香川県に申し入れました。
提案の大きな特徴は、民間資金100%による再生を目指すことです。
建物を取得したうえで耐震改修などを行い、新たな用途へ転用する構想を示しています。
具体的には、次の2案が検討されています。
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ブックラウンジ併設ホテル案:宿泊機能と書籍、カフェなどを組み合わせる計画
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1棟ホテル案:建物全体を宿泊施設として活用する計画
1棟ホテル案には、新たな床を設け、建物中央に光庭を整備するなど、既存の構造を生かしながら新しい空間をつくる発想が盛り込まれています。
再生委員会は事業収支の試算も公表し、民間事業として成立する道を示しました。ただし、これらは事業化に向けた検討案であり、ホテルの開業が決まっているわけではありません。
2025年8月には、事業者の出資・参画意向を示す追加資料も提出しました。
さらに2026年9月には、新たに3社が旧体育館の買い取り意思を表明したことも明らかになっています。
再生委員会の活動は、建物の文化的価値を訴える保存運動から、民間が取得して事業として再生するための具体的な提案へと広がってきました。
香川県が民間再生案を受け入れず解体を進める理由
民間による再生案が示されても、香川県は解体方針を変えていません。
県教育委員会は2025年8月、再生委員会から提出された意向表明書について、具体的な事業主体や安全確保の計画が十分に明確ではないなどの理由を示しました。
県は、それまでの検討経緯に加え、建物の老朽化と耐震性の不足を重視しています。
2026年10月6日の県議会でも、県教育委員会は2012年の耐震診断だけでなく、屋根の落下や建物の老朽化など、複数の安全上のリスクがあることを説明しました。
一方、再生委員会は、既存の耐震診断の取り扱いにも問題があると主張しています。
県が危険性を理由に解体を進めるのに対し、再生委員会は専門家による検証を踏まえて判断すべきだと訴えているのです。
この違いが、保存・再生に向けた協議と工事再開をめぐる対立の中心にあります。
解体費用の支出差し止めを求めた住民訴訟と耐震調査
保存を求める活動は、司法の場へと進みました。
2025年11月、長田慶太委員長は香川県を相手取り、解体工事費用の支出差し止めを求める住民訴訟を起こしました。
主な争点は、旧体育館の耐震性と、解体のために公金を支出することの妥当性です。
2026年4月に県が解体工事に着手すると、植栽や池などの外構の撤去が進み、6月には内装の解体も始まりました。
その一方で、裁判では建物の状態を直接調べる必要性が議論されていました。
そして9月、高松地方裁判所からの要請を受け、香川県が1か月間の工事中断に応じることになります。
この期間に行われるのは、コンクリートの圧縮強度や地盤などの調査です。現地で得られたデータをもとに、専門家が建物の耐震性能を鑑定することになります。
ただし、工事を一時中断したことは、保存が認められたことを意味しません。解体費用の支出差し止めについても、最終的な司法判断が下されたわけではありません。
10月15日の工事再開をめぐる県と再生委員会の対立
10月6日、旧香川県立体育館再生委員会は、県教育委員会の説明に対する声明を公表しました。
再生委員会は、1か月の中断期間について合意したのは、現地調査を実施するためであり、その後の解体再開まで承認したものではないと主張しています。
また、2012年の耐震診断書に関する技術的な指摘にも言及し、鑑定を早期に実施する必要性を訴えました。
これに対し香川県は、安全確保を急ぐ立場から10月15日の工事再開方針を維持しています。
裁判所が関与する耐震調査が行われながら、その鑑定結果が出る前に建物本体の解体が進むことになれば、保存・再生をめぐる状況は大きく変わります。
この問題は、老朽化した公共建築の安全を誰がどのように判断するのか、そして文化的価値のある建築を残す選択肢をどこまで検討するのかという課題を浮かび上がらせています。
旧香川県立体育館の所在地と現在の見学状況
旧香川県立体育館は、香川県高松市福岡町にあります。
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施設名:旧香川県立体育館
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通称:船の体育館
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所在地:香川県高松市福岡町2丁目18-19
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施設の状況:2014年から閉館
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現在の用途:一般利用なし
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解体工事:2026年10月14日まで一時中断
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工事再開方針:2026年10月15日
現在は閉館した建物であり、観光施設や一般公開施設として利用できる状態ではありません。
建物を見に行く場合も、工事区域や立入禁止区域には入らず、現場の安全管理に従う必要があります。
まとめ
旧香川県立体育館「船の体育館」は、丹下健三が1964年に完成させた、戦後日本を代表するモダニズム建築の一つです。
2014年の閉館後、香川県は老朽化と耐震性の問題から解体を決定しました。一方、長田慶太委員長を中心とする再生委員会は、民間資金による取得と再生という別の道を提案しています。
2026年10月現在、解体工事は耐震性調査のため一時中断していますが、県は10月15日の再開を表明し、再生委員会は鑑定結果が出るまでの中断継続を求めています。
安全性と文化的価値、税金の使い道、民間による再利用の可能性。船の体育館をめぐる問題には、これから全国各地の公共建築が直面する課題が凝縮されています。
参考リンク
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