ウミガメが海の中で最大76回転!楢﨑友子准教授が発見した不思議な旋回行動
ウミガメが海の中で同じ場所をクルクル回り、最大76回転も続けていたことが、日本の研究チームによって確認されました。
この不思議な行動を明らかにしたのは、現在、名城大学農学部で准教授を務める楢﨑友子(ならざき・ともこ)さんらの研究グループです。
2026年10月11日放送のNHK Eテレ『サイエンスZERO』では、20年以上にわたるウミガメの追跡研究を取り上げ、コモロ諸島で確認された「クルクル行動」の謎に迫ります。
2021年に公表された研究では、アオウミガメが1周約20秒という一定のペースで、最大76回転する様子が記録されました。
しかも、この行動は産卵場所へ戻る途中、その目的地の近くで確認されています。
研究チームは、ウミガメが地球の磁場「地磁気」を利用して進む方向を確かめているという仮説に注目しています。
さらに名古屋港水族館では、2026年7月までに111頭のアカウミガメを太平洋へ放流し、人工衛星による追跡調査を進めています。
この記事でわかること
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ウミガメが最大76回転した「クルクル行動」の観測結果
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楢﨑友子准教授と地磁気を利用した方向感覚の研究
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サメやペンギン、クジラにも確認された旋回行動
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名古屋港水族館が111頭を放流した追跡プロジェクトと現在地の確認方法
ウミガメは1周約20秒で最大76回転していた
東京大学大気海洋研究所が公表したアオウミガメの旋回行動の研究図
2021年3月22日、東京大学大気海洋研究所の楢﨑友子さん、佐藤克文さん、青木かがりさんらの研究グループが、海洋動物の不思議な行動について研究成果を発表しました。
その内容は、大型の海洋動物が海中で連続して旋回するというものでした。
なかでも特に興味深いのが、アオウミガメの行動です。
研究チームは、産卵場所の砂浜で捕獲したウミガメを別の海域へ移動させ、再び元の砂浜へ戻るまでの行動を記録しました。
すると、帰り道の途中で、ウミガメが連続して同じ方向へ旋回する様子が確認されました。
実際に記録された旋回行動
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対象:アオウミガメ
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調査地域:インド洋西部・コモロ諸島周辺
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実験:産卵場所から離れた海へ移し、帰巣行動を調査
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最大連続旋回数:76回転
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1周の時間:約19.9秒
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旋回が確認された場所:産卵場の近く
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旋回後:目的地へ向かう正しい方向へ移動
76回転を約20秒ずつ続けたとすると、合計で約25分間も回転していた計算になります。
しかも、ただ不規則に泳いでいたのではありません。
一定の周期で旋回を繰り返していたことが、記録装置によって明らかになりました。
ウミガメのクルクル行動には地磁気が関係しているという仮説
ウミガメは、遠く離れた海で生活したあと、産卵のために特定の砂浜へ戻ってくる能力を持っています。
しかし、広い海の中には道路標識もなく、人間のように地図やGPSを利用することもできません。
それでも長距離を移動できる理由の1つとして研究されているのが、地磁気を感じ取る能力です。
地磁気とは、地球そのものが持つ磁場のことです。
方位磁石の針が北を向くのも、この地磁気によるものです。
ウミガメなどの海洋動物は、地磁気に含まれる情報を利用して、移動する方向や位置を判断していると考えられています。
楢﨑さんらの研究で注目されたのは、ウミガメが目的地に近づいてから何度も旋回していたことです。
旋回すると、体の向きが次々と変わり、さまざまな方角を向くことになります。
そのため研究チームは、全方向へ体を向けることで、地磁気に関する情報を確かめているという仮説を示しました。
潜水艦でも、精密な地磁気測定のために旋回する方法が知られています。
ウミガメが似たような行動をすることには、興味深い共通点があります。
ただし、ウミガメの旋回が地磁気を測定するための行動だと実証されたわけではありません。
クルクル回る行動が何のために行われているのかは、現在も研究が続くテーマです。
コモロ諸島の実験では産卵場所へ戻るウミガメを追跡
楢﨑さんの研究に関係する重要な場所が、アフリカ大陸の東側、インド洋にあるコモロ諸島です。
特にマヨット島周辺では、アオウミガメの帰巣能力に関する研究が行われてきました。
ウミガメの帰巣行動を調べるには、海の中で動物がどこへ移動したのかを正確に記録する必要があります。
研究チームは、産卵場所へ戻るウミガメに小型の記録装置を取り付け、海中での行動を詳しく調べました。
こうした装置で記録するのは、単に移動した場所だけではありません。
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どの方向へ泳いだか
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どのくらいの深さまで潜ったか
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体の向きがどう変化したか
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どのような速度や周期で旋回したか
これらを組み合わせることで、海の中で何をしていたのかを立体的に解析できます。
従来の衛星追跡では、移動経路の大まかな位置を把握できても、細かい動きまでは捉えにくい面がありました。
しかし、小型の記録装置を使うことで、秒単位で体の向きを調べられるようになりました。
その結果、ウミガメが繰り返し旋回していることが明らかになったのです。
楢﨑友子准教授はウミガメの行動を記録装置で研究
楢﨑友子さんは、名城大学農学部生物環境科学科に所属する准教授です。
海洋動物の行動や生態を研究しており、特に「バイオロギング」と呼ばれる技術を利用しています。
楢﨑友子さんの研究情報
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名前:楢﨑友子(ならざき・ともこ)
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所属:名城大学農学部生物環境科学科
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職名:准教授
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研究分野:動物行動学、動物生理学
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主な研究対象:ウミガメなどの海洋動物
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研究手法:バイオロギング
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2021年:海洋動物の旋回行動に関する研究を発表
バイオロギングとは、動物に小型のカメラやセンサーなどを取り付け、その動物自身の行動を記録する研究方法です。
人間が直接観察できない海中の行動を調べるために利用されています。
楢﨑さんは、東京大学大気海洋研究所での研究などを通じ、海洋動物がどのように移動し、餌を食べ、周囲の環境を利用しているのかを調べてきました。
2022年には名城大学の研究紹介で、ウミガメにカメラを取り付けて海洋ごみの誤飲リスクを調べる研究について説明しています。
研究の対象には、岩手県三陸沿岸、沖縄県石垣島や黒島などに生息するアオウミガメも含まれています。
同じ種類のウミガメでも、暮らす海域によって移動距離や生活の仕方が異なることに注目しています。
サメ・ペンギン・クジラにもクルクル回る行動が確認された
2021年の研究で驚かされたのは、旋回するのがウミガメだけではなかったことです。
研究チームは、異なる種類の大型海洋動物に取り付けたデータロガーの記録を解析しました。
その結果、調べたすべての種類で、連続して円を描くような旋回行動が見つかりました。
旋回行動が確認された動物
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アオウミガメ
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イタチザメ
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ジンベイザメ
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キングペンギン
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ナンキョクオットセイ
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アカボウクジラ
イタチザメでは、水深0.8mから129.3mまでのさまざまな深さで旋回が確認されています。
一方、キングペンギンやナンキョクオットセイの旋回は、水面付近で確認されました。
しかも、旋回が起こる状況は動物によって異なります。
餌を探す海域で回る個体もいれば、繁殖場所へ移動する途中で回る個体もいました。
このため、すべての動物が同じ目的で旋回しているとは限りません。
しかし、これほど異なる動物に似た行動が見られたことは、海洋動物の行動を理解するうえで重要な発見でした。
名古屋港水族館は2026年までに111頭のアカウミガメを放流
ウミガメの移動を調べる研究は、日本の水族館でも進められています。
その代表例が、愛知県名古屋市の名古屋港水族館です。
名古屋港水族館は、海外の研究機関などと共同で、アカウミガメの回遊経路を追跡する「STRETCH(ストレッチ)」プロジェクトに参加しています。
STRETCHは、海水温の変化がウミガメの回遊にどのような影響を与えるのかを調べる研究です。
2023年から、若いアカウミガメに発信機を取り付け、北太平洋での移動を人工衛星から追跡しています。
2026年までの主な実績
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2023年:25頭を放流
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2024年:28頭を放流
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2025年:28頭を放流
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2026年:30頭を放流
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4年間の合計:111頭
2026年の放流が行われたのは、日本時間7月10日です。
30頭のアカウミガメは、商船三井の自動車船「LIBERTY ACE」に乗って太平洋へ運ばれました。
名古屋港金城ふ頭から出発し、約10日間の船旅を経て放流されています。
この調査で使用するのは、甲羅に取り付けた位置情報の発信機です。
人工衛星からウミガメの位置を追跡し、どのような海域を移動しているのかを記録します。
なお、楢﨑さんらが研究するアオウミガメの旋回行動と、STRETCHで追跡するアカウミガメの回遊経路は、それぞれ異なる研究です。
ウミガメの追跡から地球温暖化による回遊ルートの変化を調べる
STRETCHの研究では、地球温暖化による海水温の変化が重要なテーマとなっています。
アカウミガメは、日本周辺で生まれたあと、成長段階に応じて広い太平洋を移動することで知られています。
なかには、北米大陸に近い海域まで長距離を移動する個体もいます。
しかし、いつ、どのような環境条件で海を横断するのかについては、解明されていない部分があります。
そこで注目されているのが「熱回廊仮説」です。
これは、海水温などの条件がそろったときに、アカウミガメが通常とは異なる海域へ移動できる経路が生まれるという考え方です。
名古屋港水族館の2026年8月の発表では、追跡した一部の個体が、従来の回遊経路を外れて寒流の影響を受ける冷たい海域へ進入したことが確認されています。
こうした記録を長期間蓄積することで、海水温や海流の変化と回遊ルートの関係を詳しく調べられます。
ウミガメの追跡は、動物の生態研究だけでなく、将来の海洋環境を考えるための重要なデータにもなっています。
STRETCH公式サイトではウミガメの現在地を地図で確認できる
STRETCHでは、発信機を取り付けたウミガメの移動記録を一般にも公開しています。
公式ページには、2023年から2026年までの放流個体について、移動経路を示す地図が掲載されています。
地図で確認できる内容
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ウミガメが通過した海域
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個体ごとの移動経路
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記録された緯度・経度
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位置情報の記録時刻
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年ごとの回遊ルート
地図に表示されている色分けされた軌跡を選ぶと、それぞれのウミガメの移動記録を確認できます。
ただし、発信機の状態や衛星システムの都合によって、位置情報の更新に時間がかかる場合があります。
地図が常にリアルタイムの現在位置を示しているわけではありません。
それでも、研究中のウミガメが海をどのように移動しているのかを、自分で確かめられる貴重な資料です。
サイエンスZEROの放送情報と研究資料
テレビ放送
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番組名:サイエンスZERO
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放送回:ウミガメ大追跡!未知の生態を解き明かせ
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放送日:2026年10月11日(日)
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放送時間:23:30〜翌0:00
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放送局:NHK Eテレ
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ゲスト:斉藤知己さん(高知大学イノベーションセンター教授)
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司会:井上咲楽さん、浅井理さん
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再放送:10月13日(火)15:05〜15:35
研究の中心情報
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研究者:楢﨑友子さん(名城大学農学部准教授)
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観測対象:アオウミガメなどの大型海洋動物
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主な発見:最大76回転の連続旋回行動
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研究成果発表:2021年3月
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論文掲載誌:iScience
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論文名:Similar circling movements observed across marine megafauna taxa
まとめ
ウミガメが海中で何度もクルクル回る行動は、楢﨑友子准教授らの研究によって明らかになった興味深い発見です。
2021年に発表された研究では、アオウミガメが1周約19.9秒のペースで最大76回転していたことが確認されました。
しかも、旋回は産卵場所へ戻る途中、その目的地の近くで行われていました。
研究チームは、地磁気を利用して進む方向を確かめる行動という仮説を示していますが、その役割の解明は現在も続いています。
また、名古屋港水族館では2023年から2026年にかけて合計111頭のアカウミガメを放流し、回遊ルートと海水温の関係を研究しています。
人間が直接見ることのできない海の中で、ウミガメがどのように方向を確かめ、何千kmもの旅を続けているのか。
小型の記録装置と人工衛星による追跡技術が、その不思議な能力を少しずつ明らかにしています。
参考リンク
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