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Thinkerのロボットハンド「Think Hand F」うずら卵もつかむ近接覚センサーと導入事例|アンパラレルド

アンパラレルド

Thinkerのロボットハンドは「近接覚センサー」とエッジAIで人の指先のような動きを実現

2026年10月14日放送の『アンパラレルド~ニッポン発、世界へ~』では、大阪発のロボット開発企業「Thinker(シンカー)」が登場します。

Thinkerが開発したのは、人間が指先で探るように物をつかめるロボットハンド「Think Hand F」です。

金属部品や細いプラスチック、さらには壊れやすいうずらのゆで卵まで、形や硬さが異なる物を器用につかむ技術を実現しています。

その秘密は、赤外線で対象物との距離や傾きを測定する「近接覚センサー」と、その場で情報を処理する「エッジAI」にあります。

すでに自動車部品の梱包工程などで活用され、これまで自動化が難しかった作業をロボットに任せる取り組みが進んでいます。

この記事でわかること

  • Thinkerのロボットハンド「Think Hand F」の特徴と仕組み

  • 近接覚センサーとエッジAIが実現する器用な動き

  • 自動車部品やレンズの製造現場での導入事例

  • 藤本弘道CEOと中野基輝CTOがロボット開発に取り組んだ背景

Think Hand Fはうずら卵もつかめるロボットハンド

公式動画:『アンパラレルド』Thinker出演回の予告映像

「Think Hand F」は、Thinkerが開発した近接覚センサー付きのロボットハンドです。

最大の特徴は、対象物の形状や位置に合わせて指先の動きを調整し、物をつかめることです。

従来の産業用ロボットは、決められた位置にある部品を、あらかじめ設定された動作でつかむ作業を得意としてきました。

しかし、部品がランダムに積まれていたり、置く位置が少しずれていたりすると、うまくつかめない場合があります。

柔らかい物や壊れやすい物を扱う作業にも課題がありました。

Think Hand Fでは、指先に組み込まれた「インテリジェントフィンガー」が対象物の状態を読み取り、位置や姿勢を補正します。

そのため、部品が多少ずれていても、ロボット自身がつかみやすい位置を探せます。

Think Hand Fの主な仕様

  • 製品名:Think Hand F

  • 開発企業:株式会社Thinker

  • 本体寸法:102×82×98mm(グリッパー部を除く)

  • 本体重量:250g(グリッパー部を除く)

  • 可搬重量:最大800g(対応ロボット・指定グリッパー使用時)

  • 電源電圧:DC5V

  • サンプリングレート:最大200Hz

  • 使用温度:0~40℃

Think Hand Fは、単体で自由に歩き回る人型ロボットではありません。

協働ロボットのアームなどに取り付け、部品の取り出しや搬送、組み立てなどに使用する産業用の装置です。

近接覚センサーは0.1mm単位で物との距離を読み取る

Thinkerの技術を支えているのが、独自開発の「近接覚センサー」です。

近接覚とは、物に触れる前から対象物との距離や向きを認識するための技術です。

Thinkerの「TK-01シリーズ」には、赤外線とエッジAIが組み込まれています。

4つの赤外線モジュールから得られる情報を使って、対象物との距離や傾きを推定します。

近接覚センサー「TK-01N」の主な性能

  • 測距範囲:1.5~20.0mm

  • 距離分解能:0.1mm

  • 測角範囲:マイナス20度~プラス20度

  • 角度分解能:0.5度

  • 最大応答速度:約5ミリ秒

  • センサー部重量:約3g

  • 電源電圧:DC5V

このセンサーの重要な役割は、カメラでは確認しにくい指先付近の状態を把握することです。

例えば、カメラで部品の位置を確認しても、実際につかむ直前には、ロボット自身の指がカメラの視界を遮る場合があります。

また、透明な物や光沢の強い部品は、通常の画像認識だけでは位置や形状を把握しにくいことがあります。

Thinkerの近接覚センサーは、こうした対象物への対応を可能にしています。

ただし、あらゆる素材を測定できるわけではありません。赤外線が十分に反射しない黒色の物や、表面に細かい凹凸がある素材などは、検出が難しい場合があります。

精密な赤外線測定とAIによる判断を組み合わせたところに、Thinker独自の技術があります。

エッジAIはクラウドを使わず瞬時に動きを判断する

Think Hand Fのもうひとつの重要な技術が「エッジAI」です。

エッジAIとは、取得した情報を離れたクラウドサーバーへ送って処理するのではなく、機器の近くでAIによる判断を行う仕組みです。

ロボットハンドが物をつかむ瞬間には、対象物の位置や傾きがわずかに変化することがあります。

その変化にすぐ対応するためには、センサーの情報を短い時間で処理しなければなりません。

Thinkerでは、近接覚センサーから取得した情報をもとに、ロボットの指先がどの方向へ動けばよいかを判断しています。

Think Hand Fが物をつかむ基本的な流れ

  1. 近接覚センサーが対象物との距離や角度を測定する。

  2. エッジAIが対象物の状態を判断する。

  3. ロボットがつかみやすい位置や姿勢へ動きを補正する。

  4. 指先が対象物をつかむ。

  5. 把持の成功・失敗を確認し、必要に応じてつかみ直す。

通常のロボットでは、作業対象や位置が変わるたびに、動きを細かく設定し直す必要がある場合があります。

Think Hand Fは、その調整の一部をロボット自身が行えることが特徴です。

これによって、さまざまな形状の部品を扱う製造現場でも、事前の設定作業を減らせます。

開発の原点は大阪大学の小山佳祐による近接覚センサー研究

Thinkerの技術は、大学での研究成果をもとに発展してきました。

中心となるのが、共同創業者の小山佳祐さんです。

小山さんは電気通信大学で近接覚センサーの研究を始め、その後、東京大学大学院での研究活動などを経て、大阪大学大学院基礎工学研究科に所属しています。

研究を通じて、人間の手のように周囲の状態を認識しながら物をつかむ技術を追求してきました。

この研究成果を製品として社会へ送り出すため、2022年8月12日に株式会社Thinkerが設立されました。

2023年には、カメラを使わずにランダムに積まれた部品をつかむロボットハンドの製品化を進めることを発表しています。

当初から重要な課題だったのは、ロボットに細かい動作をすべて教え込む必要を減らすことでした。

産業用ロボットを導入するには、作業工程に合わせたプログラミングや調整が必要になることがあります。

Thinkerは、人が指先の感覚を頼りに位置を調整するように、ロボット自身が対象物の状態を認識して動く技術を開発してきました。

大学の研究成果を製造現場で使える製品へ発展させたことが、Thinkerの事業の出発点です。

藤本弘道CEOは着るロボットの事業経験を生かしてThinkerを創業

Thinkerの代表取締役CEOを務めるのが藤本弘道さんです。

藤本さんは1970年に大阪で生まれ、奈良県で育ちました。

大阪大学大学院工学研究科で原子力工学を学び、修了後は松下電器産業(現在のパナソニック)に入社しました。

その後、着用型ロボットを開発する「ATOUN」を創業します。

ATOUNでは、約19年間にわたって着るロボットの事業に取り組みました。

着用型ロボットは、作業者の体に装着して動作を補助し、身体への負担を減らすことを目指す技術です。

藤本さんは2022年5月に株式会社SHIN-JIGEN、同年8月に株式会社Thinkerを創業しました。

新たに取り組んだのは、人間の身体を補助するロボットから、物を扱う作業を支援するロボットへの展開です。

Thinkerでは、専門技術者だけでなく、幅広い人が扱えるロボットの実現を目指しています。

現在は奈良女子大学と大阪工業大学の客員教授も務めています。

中野基輝CTOは9年間のロボット要素技術開発を経験

2026年10月14日の番組には、藤本弘道CEOとともに中野基輝CTOも出演します。

中野さんは、着用型ロボットを開発していたATOUNで要素技術部門を率いてきた技術者です。

約9年間にわたり、ロボットの基盤となる技術の開発や実装に携わりました。

その後、生活に関係するロボットプロジェクトを複数手がけ、Thinkerの創業に参画しています。

博士(情報科学)の学位を持ち、現在は最高技術責任者として開発を担っています。

Thinkerのロボットハンドは、近接覚センサーだけで完成するわけではありません。

センサーが取得した情報を処理する仕組みや、実際に指先を動かす機構、協働ロボットとの連携が必要になります。

研究成果を実際の機械へ組み込み、製造現場で利用できる状態にするためには、こうした複数の技術を統合することが重要です。

Thinker Model Aは部品の取り出し作業を自動化する

Thinkerはロボットハンド単体に加えて、「Thinker Model A」という協働ロボットパッケージも展開しています。

Thinker Model Aは、Think Hand Fとカメラシステムを組み合わせた製品です。

さまざまな部品がランダムに積まれた状態から、必要な部品を1つずつ取り出す「ばら積みピッキング」に対応しています。

Thinker Model Aの特徴

  • ロボット本体・ロボットハンド・カメラ・基本プログラム入りPCを組み合わせた製品

  • 基本プログラムの作成が不要

  • 初期の画像登録作業が不要

  • 高額な3Dカメラを使わずに対象物の状態を把握

  • ランダムに積まれた部品の取り出しに対応

  • 複数の協働ロボットに対応するモデルを展開

また、2025年6月モデルでは、同年1月モデルと比べて対象物の登録時間を20分の1に短縮したと発表しています。

ロボットの操作や設定に必要な専門知識を減らし、導入の負担を下げることを目指した製品です。

自動車部品の梱包やレンズ検査でも導入が進んでいる

Thinkerの技術は、すでに実際の製造現場で活用されています。

代表的な事例が、自動車用補修部品の梱包工程です。

那須梱包株式会社では、部品を1つずつ袋へ投入し、包装機で封をする作業にThinker Model Aを導入しました。

従来は作業者が部品を取り出して袋へ入れ、包装機を操作していました。

導入後は、ロボットがランダムに積まれた部品を1つずつ取り出し、所定の袋へ投入する作業を担っています。

包装機と連動させることで、梱包作業の自動化につなげています。

もうひとつの活用例が、レンズの検査工程です。

レンズは傷がつきやすく、トレーがわずかにたわむだけでも、ロボットによる取り出しが難しくなる場合があります。

Thinker Model Aは、レンズを傷つけないように取り出して検査工程へ運び、検査後に静かに置く作業に活用されています。

さらに、自動車のワイヤーハーネスをコネクタへ接続する作業でも、手探りによって位置を調整する技術の検証が進められています。

硬い金属部品だけでなく、精密部品や形状の変わりやすい部品まで扱えることが、技術の活用範囲を広げています。

実用情報|Thinkerの会社概要と製品の問い合わせ先

株式会社Thinker

  • 会社名:株式会社Thinker(シンカー)

  • 設立:2022年8月12日

  • 代表取締役CEO:藤本弘道

  • CTO:中野基輝

  • 共同創業者:小山佳祐

  • 大阪オフィス:大阪府大阪市西区京町堀2丁目5-16 うつぼGIZAビル9階

  • 開発拠点:奈良県奈良市左京6丁目5-2

  • 電話:06-4980-0465

主な製品

  • Think Hand F:近接覚センサーを搭載したロボットハンド

  • Thinker Model A:ばら積みピッキング用協働ロボットパッケージ

  • TK-01シリーズ:赤外線とエッジAIを組み合わせた近接覚センサー

製品は産業用途向けで、導入するロボットや作業工程に応じて構成が異なります。

製品の購入・導入相談はThinkerの公式サイトから受け付けています。

まとめ

Thinkerの「Think Hand F」は、近接覚センサーとエッジAIによって、人が手探りするような動きを実現した産業用ロボットハンドです。

赤外線で対象物との距離や角度を測定し、その情報をもとに指先の位置を調整することで、形や置かれた場所が異なる部品にも対応できます。

この技術の原点には、大阪大学の小山佳祐さんらによる近接覚センサーの研究がありました。

藤本弘道CEOと中野基輝CTOらが加わり、研究成果を実際の製造現場で使える製品へ発展させています。

自動車部品の梱包やレンズの検査工程などでは、すでに活用が進んでいます。

人間が自然に行っている「物を探りながらつかむ」という動作を機械に再現させることが、Thinkerのロボット技術の大きな特徴です。

参考リンク


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