ツクツクボウシの合いの手には意味がある!昆虫の求愛歌に隠された驚きの仕組み
夏の終わりから秋にかけて聞こえる「オーシンツクツク」というセミの鳴き声。実は、この鳴き声には決まった順序があり、近くにいる別のオスが「ギーッ」と合いの手を入れるという、複雑なコミュニケーションが隠されています。
2026年10月18日(日)午後11時30分からNHK Eテレで放送される『サイエンスZERO』では、「昆虫たちの恋リア!?“求愛歌”の不思議」を特集します。
登場するのは、ツクツクボウシ、砂浜で鳴き続けるハマスズ、交尾中にも音を出すケシキスイなど。昆虫たちが異性を引きつけるために使う音や、音を感じ取る仕組みに迫ります。
なかでも注目なのが、2026年1月に九州大学が発表したツクツクボウシの研究です。鳴き声の順序を逆にして聞かせると、別のオスが入れる合いの手が大きく減少することが明らかになりました。
番組には、昆虫の音や振動を研究する福島大学の高梨琢磨准教授も出演し、昆虫たちの音によるコミュニケーションを解説します。
※放送後詳しい内容が分かり次第追記します。
この記事でわかること
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ツクツクボウシの鳴き声が途中で変化する理由と4つの構成
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九州大学が発見した「合いの手」と鳴き声の順序の関係
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ハマスズやケシキスイなど、昆虫たちの求愛行動
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福島大学・高梨琢磨准教授の研究と昆虫が音を感じる仕組み
ツクツクボウシの鳴き声は複数のパートで構成されている
ツクツクボウシの鳴き声がパートごとに異なる意味を持つことを初実証 | 研究成果 | 九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)
ツクツクボウシは、夏の終わりから秋にかけて特徴的な鳴き声を響かせるセミです。
ほかのセミと大きく異なるのは、鳴き声が途中で変化することです。
一般的には「ツクツクボーシ」と表現されますが、研究では鳴き声を複数の部分に分けて分析しています。
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導入部分:鳴き始めの短い音
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前半部分:「オーシンツクツク」と聞こえる繰り返し
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後半部分:「ツクリヨーシ」と聞こえる繰り返し
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終奏部分:鳴き終わりの「ジー」という音
オスは前半部分を繰り返した後、後半部分へ移り、最後に終奏部分を鳴らします。
人間の歌に例えると、前奏、主旋律、曲調の変化、終奏があるような構成です。
このような複雑な鳴き方は、ツクツクボウシの大きな特徴になっています。
そして、この鳴き声は単なる音の繰り返しではありません。
2026年に発表された研究によって、鳴き声を構成する部分の順序そのものが、別のオスの行動に影響することが明らかになりました。
九州大学が2026年に発見した鳴き声の順序と合いの手の関係
ツクツクボウシの鳴き声を研究したのは、九州大学大学院システム生命科学府の児玉建さんと、九州大学大学院理学研究院の立田晴記教授らの研究グループです。
研究成果は、2026年1月14日に国際学術誌『Ethology』にオンライン掲載されました。
研究チームが注目したのは、オス同士の鳴き声によるやり取りです。
ツクツクボウシのオスが鳴いていると、近くにいる別のオスが「ギーッ」という音を発することがあります。
この行動は「合いの手」と呼ばれています。
研究チームは、ツクツクボウシが鳴き声のどの部分に反応しているのかを確かめるため、録音した音声を使った実験を行いました。
実験で比較した条件
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通常の順序で鳴き声を再生する
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前半と後半の順序を逆にして再生する
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後半部分の長さを変えて再生する
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合いの手の回数とタイミングを記録する
その結果、通常の順序で再生した場合と比べ、前半と後半を逆にした音声では合いの手が大幅に減少しました。
これは、ツクツクボウシが音の種類だけでなく、鳴き声の順序にも反応していることを示しています。
鳴き声を構成する部分の順序によって、聞き手の行動が変わる現象が昆虫で確認されたのは初めてです。
ツクツクボウシは「ツクリヨーシ」の部分で合いの手を多く入れる
今回の研究では、合いの手が入るタイミングについても重要な発見がありました。
通常の順序で鳴き声を聞かせたところ、別のオスが合いの手を入れる割合は、後半の「ツクリヨーシ」の部分で特に高くなりました。
興味深いのは、後半部分の長さです。
ツクツクボウシの鳴き声では、前半の「オーシンツクツク」が長く続き、後半の「ツクリヨーシ」は比較的短い時間で終わります。
それにもかかわらず、合いの手の多くが短い後半部分に集中しました。
研究では、後半部分を延長していない通常の音声でも、合いの手の半数以上が後半部分で発せられています。
一方、順序を逆にした音声では、前半・後半への反応が減少し、終奏部分への反応が増える変化も見られました。
この結果から、ツクツクボウシは、鳴き声の進行に応じて合いの手を入れるタイミングを調整していることがわかります。
合いの手は協力か妨害か、繁殖との関係は研究途中
ツクツクボウシの合いの手には、いくつかの役割が考えられています。
一つは、オス同士が協力して鳴くことで、メスに存在を知らせるという考え方です。
もう一つは、別のオスの鳴き声を邪魔するための行動という考え方です。
さらに、ほかのオスの鳴き声に引き寄せられたメスに、自分の存在を知らせる「スニーキング戦略」との関係も研究されています。
スニーキングとは、別のオスの求愛行動を利用して、交尾の機会を得ようとする戦略です。
ただし、これらは合いの手の役割についての仮説であり、どれが正しいのかは確定していません。
2026年の九州大学の研究で明らかになったのは、鳴き声の順序によって別のオスの応答が変化するという事実です。
合いの手がメスの行動や繁殖成功にどのような影響を与えるのかについては、さらに研究が必要とされています。
筑波大学の研究ではオス同士の合いの手に規則性を発見
ツクツクボウシの音声コミュニケーションは、九州大学だけでなく筑波大学でも研究されています。
筑波大学の研究では、オス2匹を近くに置き、互いに発する音のタイミングを詳しく分析しました。
その結果、23組のうち19組で、一方のオスが鳴いたときに別のオスが合いの手を入れる行動が確認されました。
さらに、安定して合いの手を発する23匹のうち22匹では、相手の鳴き声に対して規則的なタイミングで応答することがわかりました。
これは、合いの手が偶然発せられる音ではなく、相手の鳴き声と時間的に関係していることを示しています。
一方で、相手の鳴き声を効率よく妨害するという仮説が支持された個体は、23匹のうち2匹にとどまりました。
この研究からも、ツクツクボウシの合いの手を単純な妨害行動と決めつけることはできません。
ハマスズは砂浜で長時間鳴き続ける小さなコオロギ
今回の『サイエンスZERO』では、ツクツクボウシのほかに「ハマスズ」という昆虫も登場します。
ハマスズは、砂浜などの海岸環境に生息する小型のコオロギの仲間です。
番組では、長時間にわたって鳴き続ける求愛行動に注目します。
コオロギの仲間では、オスが前ばねをこすり合わせることで音を発する種類が多く知られています。
このような音は、交尾相手となるメスを引きつけるために使われます。
ただし、鳴き続けることには危険も伴います。
音によって同じ種類のメスに存在を知らせる一方、音を手がかりに獲物を探す捕食者や寄生生物にも、居場所を知られる場合があるためです。
昆虫にとって求愛の音を出すことは、繁殖の機会を得るための重要な行動であると同時に、危険と隣り合わせの行動でもあります。
ケシキスイは交尾中にも音を出し続ける昆虫
番組では、ケシキスイの仲間が交尾中にも音を発する行動も取り上げられます。
ケシキスイは甲虫の仲間で、花や樹液、果実、菌類など、種類によってさまざまな場所で生活しています。
昆虫の音によるコミュニケーションは、交尾相手を呼び寄せる段階だけで行われるものではありません。
交尾の前後や交尾中にも、音や振動を利用する種類が存在します。
今回の特集では、交尾中にも音を出し続けるケシキスイの行動を、昆虫の求愛戦略の一つとして紹介します。
ツクツクボウシのように遠くまで響く鳴き声だけでなく、体の振動や小さな音を使うコミュニケーションにも注目です。
福島大学・高梨琢磨准教授が昆虫の音と振動を解説
今回の番組には、福島大学食農学類の高梨琢磨准教授が出演します。
高梨准教授は、昆虫が発する音や振動、それを感じ取る仕組みなどを研究している研究者です。
昆虫の音は、人間が耳で聞く鳴き声だけではありません。
昆虫のなかには、植物の茎や枝などを通じて振動を伝え、相手とコミュニケーションする種類もいます。
空気中を伝わる音と、物体を通じて伝わる振動では、情報が伝わる仕組みが異なります。
また、昆虫の音を感じる器官は、人間の耳と同じ位置にあるとは限りません。
例えば、コオロギの仲間では前脚に鼓膜器官を持つ種類が知られています。
昆虫の体は小さいものの、音や振動を使って相手の存在を認識し、行動を変化させる仕組みが発達しています。
番組では、こうした音による求愛、音を感じ取る感覚器、天敵との関係などを高梨准教授が解説します。
昆虫の鳴き声研究は音を再生する実験で進められている
昆虫の鳴き声の役割を確かめる方法の一つが、録音した音を聞かせる「プレイバック実験」です。
この方法では、実際の昆虫の鳴き声を録音し、必要な部分を編集した音声をスピーカーで再生します。
研究者は、その音を聞いた昆虫の行動を記録します。
例えばツクツクボウシの研究では、鳴き声の前半と後半を入れ替えることで、合いの手の回数が変わるかを比較しました。
実験の重要な点は、鳴き声の構成要素を変えながら、昆虫の反応を確かめられることです。
自然のなかで昆虫が鳴いている様子を観察するだけでは、何に反応したのかを特定することが難しい場合があります。
しかし、再生する音声の条件を変えれば、音の順序や長さなどが行動に与える影響を調べることができます。
2026年の九州大学の研究は、この方法によって、昆虫が鳴き声の順序に応じて行動を変えることを示しました。
まとめ
2026年10月18日放送の『サイエンスZERO』では、昆虫たちの求愛歌に隠された複雑なコミュニケーションが取り上げられます。
なかでもツクツクボウシは、鳴き声の順序を聞き分け、別のオスが合いの手を入れるタイミングや回数を変えることが研究で明らかになりました。
九州大学の研究では、通常の鳴き声と順序を逆にした鳴き声を比較し、合いの手が大幅に減少する現象を昆虫で初めて確認しています。
さらに、砂浜で長時間鳴くハマスズ、交尾中にも音を出すケシキスイなど、昆虫ごとに異なる求愛行動も紹介されます。
身近な虫の鳴き声は、単なる季節の音ではなく、生き残りと繁殖のために使われる重要な情報なのです。
参考リンク
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