最低賃金1500円で働き方はどう変わる?
時給が上がるのはうれしい一方で、「いつから1500円になるのか」「扶養内で働ける時間は減るのか」と気になる人も多いのではないでしょうか。『みみより!解説 最低賃金1500円 目標の行方は(2026年7月21日)』でも取り上げられ、今後の暮らしや企業経営への影響が注目されています。大切なのは、1500円がすぐ全国一律で始まる制度ではないことです。現在地と今後の流れを整理します。
この記事でわかること
- 最低賃金1500円が始まる時期
- 現在の最低賃金との差
- 月収・年収や扶養への影響
- 中小企業が直面する課題
※放送後詳しい内容が分かり次第追記します。
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最低賃金1500円はいつから?すぐ全国一律になるわけではない
最初に押さえておきたいのは、最低賃金1500円が2026年に全国一律で始まるわけではないということです。
政府が掲げているのは、2020年代に最低賃金の全国平均を1500円にするという目標です。「全国平均」とは、各都道府県の最低賃金と働く人の人数をもとに計算した全国加重平均を指します。
つまり、目標が達成された時点でも、すべての都道府県が同じ1500円になるとは限りません。東京都など賃金水準が高い地域は1500円を超え、地方では1500円を下回っている可能性があります。
「最低賃金1500円」という言葉だけを見ると、ある日から全国で一斉に切り替わるように感じます。初めて知ると少し驚きますが、実際には地域ごとに毎年少しずつ改定されていく仕組みです。
また、2026年度の具体的な引き上げ額は、2026年7月20日時点ではまだ決まっていません。
中央最低賃金審議会では6月26日から審議が始まり、7月23日にも目安に関する小委員会が予定されています。その後、都道府県ごとの審議を経て、地域別の最低賃金が決まります。
現在の最低賃金はいくら?1500円までの差は大きい
2025年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で時給1121円です。前年度の1055円から66円上がり、5年連続で過去最大の引き上げ額を更新しました。
最も高い東京都は1226円、最も低い地域でも1023円となり、初めてすべての都道府県で1000円を超えています。
全国平均1121円から1500円までは、あと379円あります。
単純に計算すると、約34%の引き上げが必要です。数年間で到達するには、今後も大幅な引き上げを続けなければなりません。
たしかに、働く側から見れば早く上げてほしいところです。しかし、急激に上げすぎれば、企業が人件費の増加に耐えられない可能性もあります。
個人的には、1500円という数字だけでなく、賃上げを無理なく続けられる環境を同時につくれるかが、いちばん大事だと感じます。
時給1500円になると月収と年収はいくらになる?
時給1500円になった場合、収入がどの程度になるのかを勤務時間別に見てみましょう。
以下は、1年を52週として計算した、おおよその金額です。交通費、残業代、賞与などは含めていません。
| 働き方 | 月収の目安 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| 1日4時間・週3日 | 約7万8000円 | 約93万6000円 |
| 1日5時間・週4日 | 約13万円 | 約156万円 |
| 1日6時間・週5日 | 約19万5000円 | 約234万円 |
| 1日8時間・週5日 | 約26万円 | 約312万円 |
たとえば、1日5時間、週4日働く場合は年収約156万円です。同じ勤務時間でも、現在の時給が1100円なら年収は約114万4000円なので、年間では約41万6000円の差になります。
時給が数百円上がるだけでも、1年間では大きな違いになります。生活費の負担が増えている家庭にとって、これは決して小さな金額ではありません。
一方、表の金額は税金や社会保険料を引く前の収入です。実際に使える金額を知りたい場合は、時給だけでなく手取り額まで確認する必要があります。
パートの扶養内勤務はどう変わる?
最低賃金が上がったとき、特に注意したいのが扶養内で働いている人です。
時給が上がれば、同じ時間だけ働いても年収が増えます。そのため、これまでと同じシフトを続けると、自分が意識していた年収の基準を超える可能性があります。
たとえば、年収を約130万円以内に抑えたい場合、時給1500円で働ける時間は年間約866時間です。
1年を52週として計算すると、週約16時間40分になります。
1日5時間働くなら、週3日では年間約117万円ですが、週4日になると約156万円です。週3日から週4日に増やすだけで、年収が大きく変わります。
実際に選ぶなら、ここは勤務先と早めに確認したいところです。
ただし、「年収の壁」は1つではありません。税金に関する基準、社会保険に関する基準、勤務先が独自に設けている配偶者手当の基準は、それぞれ別です。
さらに、社会保険の加入条件も見直しが進んでいます。2025年に成立した年金制度改正法では、短時間労働者に設けられていた月額8万8000円以上という賃金要件や、勤務先の企業規模要件を段階的に撤廃する方針が示されました。
今後は「年収をいくらに抑えるか」だけでなく、週20時間以上働くかどうかが、より重要になる可能性があります。
収入を抑えるより社会保険に入った方がよい場合もある
社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料が給与から引かれるため、一時的に手取りが減ることがあります。
そのため、扶養内勤務を続けるためにシフトを減らしたいと考える人もいるでしょう。その判断自体は、家庭の事情によっては自然なものです。
ただし、社会保険への加入には負担だけでなく、次のような面もあります。
- 将来受け取る厚生年金が増える
- 病気やけがで働けないときに傷病手当金の対象になり得る
- 出産で仕事を休んだときに出産手当金の対象になり得る
- 被扶養者ではなく自分自身の社会保険に加入できる
目先の手取りだけを見ると「加入しない方が得」に見えることがあります。しかし、保障内容や将来の年金まで含めると、必ずしもそうとは限りません。
たしかに、制度が複雑なので迷います。勤務時間を減らす前に、会社の担当者へ社会保険の加入条件と手取りの見込みを確認しておくと安心です。
最低賃金が上がっても生活が楽になるとは限らない
最低賃金の引き上げは、働く人の収入を底上げする重要な仕組みです。
ただし、時給が上がった分だけ生活が楽になるとは限りません。食料品や光熱費、家賃などの値上がりが賃金の上昇を上回れば、実際に買える物やサービスは増えないからです。
確認したいのは、金額としての賃金ではなく、物価を考慮した実質的な生活水準です。
また、勤務先によっては、人件費を抑えるために次のような対応が取られる可能性もあります。
- 1人当たりの勤務時間を短くする
- 採用人数を減らす
- セルフレジや注文端末を導入する
- 営業時間や営業日を見直す
- 商品やサービスの価格を上げる
時給が上がってもシフトが減れば、月収が思ったほど増えないケースもあります。
給与明細を見るときは、時給だけでなく、実際に働いた時間、総支給額、社会保険料、税金、手取り額を比べることが大切です。
中小企業や店舗にはどのような負担が生じる?
最低賃金の影響を強く受けるのは、パートやアルバイトを多く雇っている小売業、飲食業、宿泊業、介護・福祉などです。
最低賃金が上がると、対象となる従業員の給与だけでなく、すでに最低賃金を上回っている従業員の賃金も見直す必要が出てきます。
たとえば、新人の時給が1500円になったのに、経験を積んだ従業員が1520円のままでは、責任や経験に見合わないと感じられるかもしれません。
そのため、企業は全体の賃金表を調整する必要があり、実際の人件費負担は最低賃金で働く人の分だけでは済まないことがあります。
特に地方の小さな店舗では、都市部ほど商品価格を上げにくい場合があります。値上げをすれば客離れが心配ですが、価格を据え置けば人件費を支払う余力がなくなるという難しさがあります。
働く人の賃金を上げることは欠かせません。一方で、地域のスーパーや飲食店が閉店してしまえば、働く場所だけでなく生活に必要なサービスも失われます。
この両方をどう守るのかが、1500円目標の大きな課題です。
企業が賃上げを続けるために必要なこと
最低賃金を継続的に上げるには、企業が賃金の原資を確保できなければなりません。
政府は、中小企業への支援として、価格転嫁の促進、省力化投資、事業承継、人材育成などを進める方針を示しています。
特に重要なのが価格転嫁です。
原材料費や人件費が上がった分を、商品やサービスの価格へ適切に反映できなければ、企業の利益が減ってしまいます。
下請け企業の場合は、自社だけで販売価格を決められないこともあります。取引先が値上げを認めなければ、賃金を上げたくても上げられません。
また、省力化も欠かせません。
セルフレジや予約システムを導入し、少ない人数でも運営できるようになれば、従業員1人当たりに多くの賃金を配分しやすくなります。
ただし、設備を導入するにも費用がかかります。補助金があっても、申請や導入後の運用を負担に感じる小規模事業者は少なくありません。
個人的には、賃上げを求めるだけでなく、小さな会社でも支援制度を簡単に利用できる仕組みが必要だと感じます。
最低賃金はどのように決まる?
地域別最低賃金は、政府が一方的に「今年はいくら」と決めるものではありません。
まず、労働者側、使用者側、公益を代表する委員で構成された中央最低賃金審議会が、都道府県ごとの引き上げ額の目安を審議します。
その後、各都道府県の地方最低賃金審議会が、地域の賃金や物価、企業の状況などを踏まえて金額を検討します。
最終的には、審議会の答申や異議申出の手続きを経て、各都道府県の労働局長が決定します。
判断する際に考慮される主な要素は、次の3つです。
- 労働者の生活に必要な費用
- 地域で実際に支払われている賃金
- 通常の企業が賃金を支払える能力
働く人の生活だけでなく、企業が現実に支払えるかどうかも考慮されます。
1500円は政府が掲げる目標ですが、毎年の具体的な金額は、こうした仕組みの中で決められます。
自分の最低賃金を確認するときの注意点
最低賃金は原則として、年齢や雇用形態に関係なく適用されます。
正社員だけでなく、パート、アルバイト、学生、外国人労働者なども対象です。
確認するときは、勤務先の本社所在地ではなく、実際に働いている都道府県の最低賃金を見ます。
また、月給制の場合も最低賃金と無関係ではありません。月給を1時間当たりの金額に換算し、地域別最低賃金を下回っていないか確認します。
ただし、通勤手当、家族手当、時間外手当、休日手当、深夜手当、賞与などは、最低賃金との比較に含めないものがあります。
「手当を含めれば最低賃金を超えている」と思っていても、計算対象から除かれる手当を引くと下回っている可能性があります。
実際に確認するなら、次の順番がわかりやすいでしょう。
- 働いている都道府県の最低賃金を確認する
- 給与明細で基本給と対象になる手当を確認する
- 1時間当たりの賃金に換算する
- 社会保険の加入条件を勤務先に確認する
- シフト変更後の年収と手取りを試算する
時給が上がること自体は歓迎したい変化です。ただし、扶養、社会保険、勤務時間、手取りは連動しています。
最低賃金のニュースを見たときは、「1500円になるか」だけでなく、自分の地域ではいつ、いくらに変わるのかを確認することが大切です。
参考リンク
- 厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
- 厚生労働省 最低賃金の決め方
- 厚生労働省 中央最低賃金審議会
- 厚生労働省 目安に関する小委員会
- 厚生労働省 年金・社会保険の加入対象の拡大
- 内閣官房 新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版
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