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生活保護の不正受給はどれくらい?2万5907件の内訳と通報で見つかる割合【クローズアップ現代で話題】

クローズアップ現代

生活保護の不正受給は実際どれくらいあるのか

「自分たちも苦しいのに、公的支援を受ける人だけが守られている」。そんな感情がなぜ生まれるのでしょうか。『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』からもう1つ掘り下げたいのが、生活保護をめぐる不正受給と世論です。最新の件数や金額、どんな不正が多いのかを見ると、イメージだけでは分からない実態が見えてきます。

この記事でわかること

  • 生活保護の不正受給の最新件数と金額
  • 最も多い不正受給の内容
  • 生活保護を利用している世帯の実像
  • なぜ受給者への批判が強まりやすいのか

生活保護の不正受給は令和6年度2万5907件・約114億円

(出典:厚生労働省「被保護人員・保護率・被保護世帯数の年次推移」

生活保護をめぐって「不正受給はどれくらいあるのか」と気になる人は多いでしょう。

令和6年度に生活保護法第78条が適用された不正受給は2万5907件、金額は114億337万円でした。1件当たりでは約44万円です。

直近5年間を見ると次のように推移しています。

  • 令和2年度:3万2090件・約126億円
  • 令和3年度:2万7891件・約110億円
  • 令和4年度:2万4683件・約106億円
  • 令和5年度:2万3786件・約97億円
  • 令和6年度:2万5907件・約114億円

令和6年度は前年より増えています。

一方、平成28年度には4万4466件、約168億円だったため、長い期間で見ると件数は約42%少なくなっています。

「ずっと増え続けている」という動きではなく、減少してきた中で令和6年度に増加へ転じた形です。

最も多いのは働いて得た収入を申告しなかったケース

不正受給という言葉から、架空の身分を使ったり、働けるのに働かなかったりするケースを思い浮かべるかもしれません。

実際の内訳では、かなり違った姿が見えてきます。

令和6年度で最も多かったのは稼働収入の無申告で1万3357件、全体の51.6%でした。

続いて、

  • 稼働収入の過少申告:2559件、9.9%
  • 年金などの無申告:3199件、12.3%
  • 保険金などの無申告:540件、2.1%
  • 預貯金などの無申告:292件、1.1%

となっています。

稼働収入の無申告と過少申告を合わせると**61.5%**です。

つまり、不正受給として処理されたケースの中心は「実際には収入があったのに正しく申告しなかった」というものです。

生活保護では働くこと自体が禁止されているわけではありません。

就労収入などがある場合、その収入などを踏まえて保護費が決まります。そのため収入を正確に申告する必要があります。

不正受給の発見は「通報」より行政の照会・調査が圧倒的に多い

ここはかなり意外な数字です。

令和6年度に不正受給が判明したきっかけを見ると、

  • 照会・調査:2万2962件、88.6%
  • 通報・投書:1599件、6.2%
  • その他:1346件、5.2%

でした。

不正受給というと「近所の人からの通報で発覚する」という印象を持ちやすいですが、実際には約9割が行政側の照会や調査で確認されています。

生活保護の決定や継続にあたっては、預貯金、不動産、保険、年金、就労収入などの確認が行われます。

収入申告に疑問がある場合には勤務先などへの調査も行われ、不正受給に該当すれば生活保護法第78条に基づいて徴収する仕組みがあります。

制度は「申告した内容をそのまま信用してお金を払い続ける」構造ではありません。

生活保護世帯の55%以上は高齢者世帯

生活保護を考えるとき、もう1つ知っておきたいのが「誰が利用しているのか」です。

2026年5月の被保護者は197万237人、被保護実世帯数は164万1803世帯でした。

世帯の内訳を見ると、最も多いのは高齢者世帯です。

**高齢者世帯は90万3908世帯で55.3%**を占めています。

さらに障害者・傷病者世帯が41万6045世帯、25.5%あります。

生活保護利用者をひとくくりにして「働かない人」と考えると、実態からかなり離れてしまいます。

高齢になって十分な収入を確保できない人や、病気・障害などによって働くことが難しい世帯が大きな割合を占めています。

「働いている自分より生活保護の方が得」という対立は研究では単純に確認されていない

生活が苦しくなると、

「自分は働いて税金や社会保険料を払っている」
「それなのに支援を受ける人がいる」

という不公平感が生まれることがあります。

ここから「低所得で働く人ほど生活保護受給者を批判するのではないか」という考え方も出てきました。

しかし2016年の意識調査を分析した研究では、ワーキングプアが生活保護受給者を非難するという単純な対立構造を裏付ける結果は得られませんでした

就労しながら貧困状態にあること自体が、生活保護制度を厳しくしてほしいという考えにつながっているとは確認できなかったのです。

これはかなり重要な点です。

「自分も生活が苦しいから、支援を受ける人を攻撃する」という単純な話ではありません。

不正受給が多いと思うほど「制度を厳しくしてほしい」という意識につながりやすい

では、何が生活保護への厳しい見方につながるのでしょうか。

全国から無作為抽出した調査データを分析した研究では、不正受給が多いという認識が強い人ほど、生活保護制度の厳格化を支持する傾向が確認されています。

興味深いのは、「自分や身近な人が生活保護を利用した経験がある人」は、不正受給が多いという認識が低い傾向も確認されたことです。

制度から遠くにいる人ほど、個別の生活事情よりも「不正をする人がいる」という情報から制度全体をイメージしやすくなる可能性があります。

ただし、不正受給が実際に存在することも事実です。

大切なのは、

不正受給は厳正に対処すること

と、

生活に困窮する人が制度を利用すること

を分けて考えることです。

「なぜ貧しくなったか」と「誰が助けるべきか」は別の問題

貧困をめぐる意識については、さらに面白い研究があります。

人は「なぜその人が貧困になったのか」という原因についての責任と、「そこから抜け出すために誰が責任を負うべきか」という問題を必ずしも同じようには考えていません。

たとえば、

「本人にも原因はあった。でも社会として支える必要はある」

という考え方もあれば、

「本人に原因はなくても、最終的には自分で解決するべきだ」

という考え方もあります。

生活保護制度を厳しくすべきだという意識についても、単純な所得の高低だけでは説明できず、こうした自己責任をどこまで求めるかという価値観が関係しています。

生活が苦しい人同士が対立しているように見えても、その背景には収入だけでは測れない社会保障への考え方があります。

中流層の生活苦と生活保護の問題を同じものとして考えないことが大切

平均的な収入があっても、物価、家賃、社会保険料などの負担が重なれば家計は苦しくなります。

だからといって、生活保護を利用する人への支援を減らせば、中流層の可処分所得がそのまま増えるわけではありません。

生活保護は、資産や能力などを活用しても生活に困窮する人に対し、最低限度の生活を保障し、自立を支えるための制度です。

一方、中流層が感じている「働いても暮らしが楽にならない」という問題は、賃金、物価、税、社会保険料、住宅費など別の要因を含んでいます。

不正受給2万5907件という数字だけを見るのではなく、約9割が行政の照会・調査で発見されていること、高齢者世帯が生活保護世帯の半数以上を占めていること、働く低所得者と受給者の単純な対立が研究で確認されていないことまで一緒に見ると、生活保護をめぐる景色はかなり変わってきます。


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