記事内には、広告が含まれています。

最低生計費340万円とは?月28万円の内訳と中流でも生活が苦しい理由【クローズアップ現代で紹介】

クローズアップ現代

年収340万円でも「ふつうの暮らし」が厳しくなる理由

「働いて収入を得ているのに、なぜ毎月こんなに余裕がないのか」。『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』では、平均的な収入を得る層にも広がる生活の苦しさを取り上げます。鍵になる数字が、単身者の最低生計費・年間約340万円。この金額が何を意味するのか、物価や地域差、賃金との関係まで掘り下げます。

この記事でわかること

  • 最低生計費340万円に含まれているもの
  • 「手取り340万円必要」という意味ではない理由
  • 東京と地方で必要な生活費があまり変わらない背景
  • 平均的な収入でも暮らしに余裕が生まれにくい理由

最低生計費340万円は「手取り340万円が必要」という意味ではない

(出典:J-CAST 会社ウォッチ

最初に押さえておきたいのは、年間340万円という数字は、1年間に自由に使える手取り額が340万円必要という意味ではないことです。

最低生計費試算では、食費や家賃だけでなく、税金や社会保険料まで含めて、若い単身者が自立して生活するために必要な費用を積み上げています。

2026年の試算では、宮崎県で女性が月28万5871円、男性が月28万4182円、栃木県でも男女とも月28万円台。東京都北区では女性27万8820円、男性28万8664円となり、いずれも年間ではおおむね340万円前後です。

つまり「毎月28万円を全部生活費として使う」という単純な話でもありません。税金や社会保険料として給与から差し引かれる部分も、生活を成り立たせるために必要な負担として計算されています。

年間340万円という数字だけを見ると高く感じますが、実際には「給与の額面」と「手元に残るお金」を混同しないことが大切です。

最低生計費は食べて寝るだけの「極限節約生活」ではない

この調査でいう最低生計費は、生命を維持できるギリギリの金額を出したものではありません。

調査では、生活に必要な品物やサービスを1つずつ積み上げる「マーケット・バスケット方式」が使われています。

生活実態や持ち物について調べ、家電・家具・寝具・日用品・衣服など300以上の品目も確認。これまでに延べ6万人以上のデータが集められています。

想定されている暮らしには、たとえば次のようなものがあります。

  • 冷蔵庫、洗濯機、掃除機、炊飯器などを持つ
  • 食事は栄養を考えて取る
  • ときどき友人や同僚と食事をする
  • 映画や買い物などを楽しむ
  • 年に数回、旅行や帰省をする
  • スマートフォンなど通信手段を持つ
  • 病気になれば医療を受ける

つまり「ぜいたくをしない代わりに、人との付き合いや娯楽、健康まで全部捨てる」という暮らしではありません。

このため、最低生計費は実際の平均支出額とも、生活保護基準とも別の指標として見る必要があります。

東京と地方で生活費がほとんど変わらない理由

意外なのが、東京と地方で最低生計費に大きな差が出ていないことです。

東京は家賃が高いため、当然生活費も高くなるように思えます。

ところが地方では別の大きな負担があります。自動車です。

2026年の試算では、東京都の家賃は月5万8000円ほど。一方、宮崎県・栃木県・群馬県では家賃が4万円前後に抑えられるものの、自動車関連費として月3万~3万2000円ほどが必要になるとされています。

都市部では、

高い家賃+比較的安い交通費

地方では、

比較的安い家賃+高い自動車維持費

という違いがあり、結果として合計額が近づきます。

「地方なら家賃が安いから生活も安い」と単純には言えないところが、この調査の興味深い点です。

ガソリン代だけでなく、自動車保険、車検、整備、税金、買い替えなども考えると、車が生活必需品となる地域では負担がかなり大きくなります。

340万円まで増えた背景には食費や光熱費の上昇がある

番組で示される最低生計費は、この10年で約50万円増えています。

特に大きいのが、日常生活から避けにくい支出です。

全労連の試算では、2022年以降は食費や水道光熱費などの上昇が目立つとされています。

物価上昇そのものも続いており、2026年7月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比1.9%上昇、生鮮食品を除く総合でも1.8%上昇しました。

数%という数字だけを見ると小さく感じます。

しかし、食品、電気、日用品などは毎月買うものです。

1回の値上げが数十円、数百円でも、それが多くの商品に重なり、さらに何年も続けば、家計ではかなり大きな差になります。

節約で減らしやすい娯楽費よりも、食べる・住む・移動する・電気を使うといった削りにくい費用が上がっていることが、暮らしの圧迫感につながります。

「平均年収があるのに苦しい」が起きるのは収入と支出の基準がずれているから

2025年の国民生活基礎調査では、1世帯当たりの平均所得は575万2000円でした。

それでも、自分たちの暮らしを「苦しい」と答えた世帯は55.4%。2022年の51.3%から上昇しています。

ただし、ここで注意したいのは「平均所得575万円」と「単身者の最低生計費340万円」を直接比較できないことです。

575万円は世帯単位の平均です。夫婦2人で働く家庭、子どもがいる家庭、高齢者世帯なども含まれます。

一方の340万円は若い単身者を想定した試算です。

それでも重要なのは、所得額だけでは生活の余裕を判断できなくなっているという点です。

収入が増えても、

食費が増える
光熱費が増える
社会保険料を負担する
住居費がかかる
地方なら車が必要になる

という状態では、可処分所得、つまり実際に自由に使えるお金は思ったほど増えません。

「年収だけ見ると低所得ではないのに、生活には余裕がない」という中流層が生まれやすくなります。

月28万円という数字が「高すぎる」と感じられること自体が問題を映している

最低生計費が月28万円前後と聞くと、「そんなにもらっていない」「それなら十分いい生活では」という反応が出るのも自然です。

ただ、この数字には興味深い意味があります。

月28万円前後が特別なぜいたくではなく、税・社会保険料、家賃、食費、交通費、医療、交際、最低限の娯楽まで含めた金額として積み上がっている一方で、実際にはそれより低い収入で生活している人も多いからです。

つまり、「必要額が高すぎる」と感じる背景には、必要額そのものだけでなく、現在の賃金水準との隔たりがあります。

全労連の試算では、月約28万円を賃金で確保するためには、月173.8時間働く場合で時給約1600円、月150時間なら約1800円が必要とされています。

この数字は労働団体による試算であり、公的に定められた「生活に必要な最低年収」ではありません。

それでも、家計を食費だけでなく住居・移動・人付き合い・健康まで含めて考えたとき、どの程度の収入が必要になるのかを考える材料にはなります。

結婚や子育てをためらう背景にも「自分1人で精いっぱい」という問題がある

単身で暮らすだけでも年間約340万円が必要という試算は、その先の人生にも影響します。

結婚すれば家賃や光熱費を共有できるため、単純に生活費が2倍になるわけではありません。

一方で子どもが生まれれば、食費、衣服、保育、教育、住居など新たな支出が加わります。

問題になるのは、「現在の暮らしを維持するだけで精いっぱい」という感覚が強いと、将来の大きな決断に慎重にならざるを得ないことです。

結婚、出産、住宅購入などは、数か月ではなく何年、何十年という単位で家計に影響します。

そのため収入額だけではなく、毎月どれだけ余裕を残せるのか、将来の支出増に耐えられるのかが重要になります。

支援を受ける人と働く人を対立させない視点も重要になる

もう1つ重要なのが、生活への不満が公的支援を受ける人へ向かう問題です。

「自分も苦しいのに、なぜあの人は支援されるのか」という感情は、生活に余裕がなくなるほど生まれやすくなります。

しかし、働いている人の生活が苦しいことと、生活保護や福祉などを必要とする人への支援は、本来別の問題です。

ゲストの駒村康平さんは慶應義塾大学経済学部教授で、専門は社会政策。社会保障や年金、最低所得保障などを長く研究しています。

社会保障には、困窮した人を助けるだけでなく、病気、失業、障害、高齢化など誰にでも起こり得るリスクを社会全体で支える役割があります。

生活に余裕のない層が増えるほど、誰が得をしているかを争うより、働いて得られる収入と生活に必要な費用の差がなぜ広がっているのかを見ることが重要になります。

最低生計費340万円は「自分はいくら必要か」を考える出発点になる

340万円という数字は、すべての人に当てはまる家計の正解ではありません。

家賃2万円の人と8万円の人では必要額が違います。車が必要な地域と公共交通だけで暮らせる地域でも違います。

実家暮らし、住宅ローン、奨学金、子育て、持病などによっても家計は大きく変わります。

大切なのは「年間340万円必要らしい」と数字だけを覚えることではなく、

家賃はいくらか
食費はいくらか
車はいくらかかるか
税・社会保険料を含めるとどうなるか
急な出費に備えられるか

と、自分の暮らしを項目ごとに考えてみることです。

2025年の国民生活基礎調査で半数を超える世帯が暮らしを「苦しい」と感じていることを考えると、生活の余裕がなくなっている感覚は一部の人だけのものではありません。

最低生計費340万円という数字は、単なる家計の目安というより、働いて得る収入と「ふつうに暮らすための費用」がどこまで離れているのかを考える数字といえます。


気になる生活ナビをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました