内戦で壊れた「楽園」を丸ごと戻すゴロンゴーザ国立公園
2026年10月4日放送のNHK総合『ダーウィンが来た!』では、アフリカ南東部・モザンビークのゴロンゴーザ国立公園が登場します。
かつてアフリカ屈指の野生動物の楽園だったこの場所では、1977年から1992年まで続いた内戦によって大型哺乳類が激減しました。それから約20年にわたって進められてきたのが、単に動物を増やすだけではなく、捕食者や植物、人々の暮らしまで含めた「生態系そのもの」の復興です。
その成果は数字にも表れています。2024年に実施された航空調査では、調査区域だけで大型動物など11万513個体が確認され、過去最多となりました。
この記事でわかること
- ゴロンゴーザ国立公園で11万513個体が確認された現在の姿
- 内戦によって大型哺乳類の90%以上が失われた経緯
- ヌーやリカオン、ヒョウ、ハイエナを戻してきた復興計画
- 動物だけではなく地域住民まで支える「丸ごと復興」の仕組み
ゴロンゴーザ国立公園では大型動物など11万513個体を確認
公式動画:ダーウィンが来た!「前代未聞!アフリカの楽園 丸ごと復興計画」
2024年10月、ゴロンゴーザ国立公園ではヘリコプターを使った大規模な航空調査が行われました。
調査された面積は国立公園全体の約61%。そこで確認された大型動物などは、合計11万513個体でした。推計値ではなく、実際に観察して数えられた個体数です。
内訳の中心になったのは草食動物で、10万7765個体。さらにワニ2748個体が確認されています。
特に多かったのがウォーターバックです。
- ウォーターバック:6万5332頭
- インパラ:1万6291頭
- イボイノシシ:4663頭
- ニアラ:4188頭
- クーズー:2781頭
- アフリカスイギュウ:1958頭
- ヌー:1519頭
- カバ:1106頭
- アフリカゾウ:873頭
しかも今回の調査ですべての場所を数えたわけではありません。調査区域外にも野生動物が生息しているため、公園全体ではさらに多くの動物が暮らしています。
現在のゴロンゴーザは、内戦直後からは想像できないほど野生動物が戻った場所になっています。
内戦後には大型哺乳類の90〜99%が失われていた
ゴロンゴーザ国立公園は現在約40万ヘクタールに広がる巨大な自然保護区ですが、その歴史には大きな断絶があります。
モザンビークでは1977年から1992年まで内戦が続き、ゴロンゴーザ周辺も戦闘の影響を強く受けました。
野生動物は食料として狩られたり、武器などを調達するための資金源として利用されたりしました。
内戦終結後の1994年に行われた最初の航空調査では、ゾウ、アフリカスイギュウ、カバ、シマウマなど大型哺乳類の個体数が90〜99%減少していたことが確認されています。
つまりゴロンゴーザの復興は、「少なくなった動物を保護する」という規模ではありませんでした。
生態系を構成していた主要な動物そのものが大量に失われた場所から、もう一度自然のつながりを作り直す取り組みだったのです。
2004年から復興が本格化し2008年に共同管理体制へ
大きな転機となったのが2004年です。
野生動物の保護、環境回復、周辺地域への支援などが本格化し、その後2008年にはモザンビーク政府と米国の非営利組織を母体とするゴロンゴーザ・プロジェクトによる共同管理体制がスタートしました。
取り組みの柱になったのは、
- 密猟から野生動物を守るレンジャー活動
- 失われた動物の再導入
- 生態系の科学的な調査
- 森林や生息環境の再生
- 地域住民の教育や医療支援
- 農業や雇用の創出
などです。
重要なのは、昔と同じ種類の動物を集めて放せば終わりではないことです。
草食動物だけ増えれば植物への負担が大きくなります。逆に捕食者が少なければ、一部の草食動物だけが異常に増えてしまうこともあります。
そこでゴロンゴーザでは、生態系を構成する役割そのものを取り戻すことが進められてきました。
ヌーは十数頭から復活しリカオンも25年以上ぶりに戻った
象徴的な例の一つがヌーです。
かつてゴロンゴーザには約6000頭のヌーがいましたが、復興開始当時にはわずか十数頭まで減っていました。
そこで2007年に180頭が導入されました。その後個体数は増え続け、2024年の航空調査では1519頭が確認されています。
さらに重要なのが肉食動物です。
2018年には14頭のリカオンが放されました。ゴロンゴーザから姿を消して25年以上が経過しており、モザンビーク国内では初めてとなるリカオンの再導入でした。
その後、ヒョウやハイエナの再導入も進められています。
2024年だけでも、
- クロウシェイズシマウマ:32頭
- ヒョウ:2頭
- ハイエナ:7頭
が新たに移されています。
ハイエナは獲物を捕らえるだけでなく、死骸を食べることで分解を促し、水質汚染や虫の大量発生を防ぐ役割も担います。
1種類の動物を復活させるのではなく、それぞれが持つ「生態系での仕事」を取り戻していくわけです。
動物が増えれば昔の楽園に戻ったわけではない
11万を超える動物が確認された現在でも、ゴロンゴーザの復興は完成したわけではありません。
2024年の調査では、草食動物全体の数は1960〜1970年代に記録された水準を上回っています。
しかし、その顔ぶれは昔とは大きく異なります。
現在はウォーターバックなど比較的小型の草食動物が非常に多く、一方でアフリカスイギュウ、ヌー、シマウマといった大型草食動物は、歴史的な構成と比べるとまだ少ない状態です。
特にウォーターバックはゴロンゴーザを象徴する存在になっています。
2024年には6万5332頭が確認され、調査された大型草食動物の中で圧倒的な割合を占めました。
ここで重要になるのがライオンやリカオンなどの捕食者です。
捕食者は草食動物を食べるだけでなく、草食動物の移動や採食場所にも影響を与えます。ゴロンゴーザでは肉食動物の回復によって、増えすぎた一部の草食動物とのバランスを再び作ることが期待されています。
「動物がたくさんいる」状態から、「さまざまな生きものが互いに影響しながら暮らす」状態へ。
ここにゴロンゴーザの復興計画の難しさがあります。
人々の暮らしまで復興計画に組み込まれている
ゴロンゴーザのもう一つの特徴が、国立公園の外で暮らす人々を自然保護から切り離していないことです。
公園周辺には約20万人が暮らしています。
そこで教育、医療、農業支援などを進め、自然を守ることが地域の雇用や生活の改善にもつながる仕組みを作っています。
国立公園の保全部門では300人以上が働き、その99%がモザンビーク人です。
密猟対策、動物の管理、再導入、保全技術、人と野生動物の共存などを現地の人たち自身が担っています。
自然保護区だけを囲って動物を守るのではなく、
「動物が戻る」
↓
「自然が回復する」
↓
「観光や雇用が生まれる」
↓
「地域住民にも自然を守るメリットが生まれる」
という循環を作ろうとしているのです。
これが、ゴロンゴーザで進む「楽園丸ごと復興」の大きな特徴です。
ゴロンゴーザ国立公園の基本情報
- 所在地:モザンビーク共和国ソファラ州
- 面積:約40万ヘクタール
- 復興活動の本格化:2004年
- 政府との共同管理開始:2008年
- 2024年の航空調査:11万513個体を確認
- 主な動物:ゾウ、ライオン、カバ、アフリカスイギュウ、ウォーターバック、ヌー、リカオン、ヒョウ、ハイエナなど
- 現在も野生動物の再導入、密猟対策、科学研究、地域支援を継続
ゴロンゴーザは「一度失われた自然を、人間の手でどこまで取り戻せるのか」を世界規模で検証している場所ともいえます。
まとめ
ゴロンゴーザ国立公園では、内戦によって大型哺乳類の90%以上が失われるという壊滅的な状況から、生態系の再建が続けられてきました。
2024年の航空調査では大型動物など11万513個体が確認され、動物の数だけを見れば劇的な回復を遂げています。
しかし、本当の目的は数字を増やすことではありません。
草食動物、ライオンやリカオンなどの捕食者、森林、水、そして周辺で暮らす人々まで含め、それぞれのつながりを再び機能させることです。
20年以上をかけてもなお続いている巨大な復興計画だからこそ、ゴロンゴーザは「自然は一度壊れたら終わりなのか」という問いに対する、非常に興味深い実例になっています。
参考リンク
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