古河ロックドリルの油圧クローラドリルは岩盤に穴を開ける巨大な働く車
巨大な岩盤に、直径数cmから15cm以上もの穴を開ける特殊な重機があります。それが、古河ロックドリル株式会社の「油圧クローラドリル」です。
主に砕石場や鉱山で使用され、硬い岩盤に火薬を装填するための穴を開ける役割を担っています。削岩技術と油圧機構を組み合わせ、巨大な岩を効率よく採掘するために欠かせない機械です。
2026年10月16日放送のテレビ東京系『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』では、古河ロックドリルの油圧クローラドリルが紹介されます。
古河ロックドリルは、1977年に国産初の油圧クローラドリルを開発したメーカーです。2023年の公表資料では、国内シェア約65%という実績も持っています。
さらに2025年には、岩盤に直径64~89mmの穴を開けられる新型機「HCR A70」を発売。打撃数は毎分2,250~2,500回に達します。
普段は目にする機会が少ない重機ですが、道路やコンクリートなど、私たちの暮らしを支える建設資材の生産に深く関わっています。
この記事でわかること
-
油圧クローラドリルの用途と岩盤に穴を開ける仕組み
-
1977年に国産初の機械を開発した古河ロックドリルの歴史
-
HCR A70の大きさ・打撃数・最新技術
-
砕石場や鉱山での役割と安全性を高める独自技術
油圧クローラドリルは発破のための穴を掘る専用重機
公式動画:古河機械金属「MADE by FURUKAWA 油圧クローラドリル編」
油圧クローラドリルは、砕石場や鉱山などで岩盤に穴を開けるための自走式機械です。
巨大なドリルを備えた車体がキャタピラー式の足回りで移動し、作業する位置まで進んで穴を開けます。
掘削する目的の1つが、岩盤を爆破するための火薬を装填する穴を作ることです。
砕石場では、次のような工程で岩石を採取しています。
-
油圧クローラドリルで岩盤に穴を開ける
-
開けた穴に発破用の火薬を装填する
-
安全を確保して発破する
-
破砕された岩石を集める
-
岩石を細かく砕いて砕石などの製品にする
ドリルそのものが山を爆破するわけではありません。
硬い岩盤を効率よく破砕するため、あらかじめ決められた位置に穴を開けることが重要な仕事です。
穴の大きさは、使用する火薬の量や採掘できる岩石の量にも関わります。
そのため、採掘現場の規模や岩盤の状態に合わせて、適切な機械が選ばれています。
岩を砕く秘密は油圧による高速打撃と回転
油圧クローラドリルの特徴は、油圧による強力な打撃と回転を組み合わせて岩盤を掘削することです。
機械の中心となる装置は「油圧ドリフタ」と呼ばれています。
油圧ドリフタは、ドリルの先端へ打撃力と回転力を伝える重要な部分です。
硬い岩盤にドリルの先端を押し当て、連続した打撃で岩を細かく砕きながら穴を掘り進めます。
単純にドリルを回転させるだけではありません。
強い打撃を繰り返し与えることで、硬い岩石に穴を開けていく仕組みです。
古河ロックドリルの「HCR A70」に搭載されている油圧ドリフタ「HD709」は、毎分2,250~2,500回という高速打撃を実現しています。
1秒間に換算すると、約38~42回もの打撃を繰り返していることになります。
こうした技術によって、人の力では難しい硬い岩盤の掘削が可能になっています。
1977年に国産初の油圧クローラドリルを開発
古河ロックドリルの歴史を語るうえで重要なのが、1977年です。
同社はこの年、国産初の油圧クローラドリルを開発しました。
油圧クローラドリル「HCRシリーズ」は、その後も改良を重ねながら、国内外の砕石場や鉱山で使用される機械へと成長しています。
ただし、古河の削岩技術の歴史は1977年よりもさらに古く、足尾銅山で培われた技術にまでさかのぼります。
その象徴が、国産初のさく岩機である「足尾式さく岩機 A・S・D型」です。
古河ロックドリルは、こうした日本の鉱山開発を支えてきた削岩技術を継承しています。
鉱山で岩石を掘削する技術は、その後、砕石場や大規模土木工事にも活用されるようになりました。
現在の油圧クローラドリルには、長年培われた機械技術に加えて、電子制御や稼働状況を管理するICT技術も取り入れられています。
国内シェア約65%を支えるHCRシリーズ
古河ロックドリルの油圧クローラドリルは、国内の砕石場や鉱山で広く使用されています。
古河機械金属が2023年に公表した資料では、油圧クローラドリルの国内シェアは約65%とされています。
国内で高いシェアを獲得してきた主力製品が「HCRシリーズ」です。
HCRシリーズには、掘削する穴の大きさや作業現場の規模に応じて、複数の機種があります。
代表的な機種と掘削できる穴の直径は次のとおりです。
-
HCR A70:64~89mm
-
HCR1200-DVI:64~102mm
-
HCR L90-E5:76~127mm
-
HCR L110-E5:102~152mm
小規模な砕石現場から大型鉱山まで、それぞれの作業に適した機械を用意しています。
特に大型機の「HCR L110-E5」は、直径152mmまでの穴に対応する機種です。
穴の大きさが変わると、採掘作業に必要な条件も変わります。
そのため、単に大きな機械ほど優れているのではなく、現場の目的に合った性能が求められるのです。
2025年登場のHCR A70は重量約11tの新型機
HCRシリーズの中で注目したいのが、2025年9月に国内販売が始まった「HCR A70」です。
従来の「HCR900-DSV」の後継機として開発されました。
HCR A70は、扱いやすさを重視したエントリーモデルで、狭い作業現場でも使いやすい車体構造を採用しています。
HCR A70の主な仕様
-
製品名:HCR A70
-
メーカー:古河ロックドリル株式会社
-
発売:2025年9月
-
車体質量:10,990kg
-
掘削できる穴の直径:64~89mm
-
打撃数:毎分2,250~2,500回
-
エンジン出力:155kW
-
搭載ドリフタ:HD709
-
主な用途:国内の砕石場・鉱山
重量は約11tと、大型トラックにも匹敵する質量があります。
それでも、従来モデルより車体後方の張り出しを100mm短縮し、狭い場所での取り回しやすさを高めました。
さらに、環境対応のディーゼルエンジンを搭載し、燃料消費量の低減にも取り組んでいます。
大型重機に求められるのは、掘削する力だけではありません。
燃料効率、操作性、安全性、整備のしやすさも重要な性能なのです。
ドリルが岩に挟まれるトラブルを防ぐ独自技術
硬い岩盤を掘削する作業では、ドリルの先端が岩石に挟まれて動かなくなる場合があります。
これは「ジャミング」と呼ばれる現象です。
特に、岩石が崩れやすい地層や破砕帯では、掘削中にドリルが挟まれることがあります。
古河ロックドリルのHCR A70には、このトラブルを抑える「アンチジャミング機能」が搭載されています。
回転圧の異常やドリル先端の目詰まりを検知すると、ドリフタを自動的に後退させる仕組みです。
これによって、ドリルが岩盤に挟まれたままになる状況を回避し、安定した掘削を支えています。
さらに、HD709には「デュアルダンパ」と呼ばれる衝撃緩衝装置も搭載されています。
強い打撃によって発生する衝撃エネルギーを緩和し、ドリルへ加える力を適切に調整する技術です。
この仕組みは、ロッドなどの部品の摩耗や損傷を抑えることにもつながっています。
岩盤の変化に合わせて掘削を自動制御するiDS
油圧クローラドリルには、岩盤の状態に合わせて掘削を支援する技術もあります。
その1つが「iDS(インテリジェントドリリングシステム)」です。
岩盤は、どこを掘っても同じ硬さというわけではありません。
硬い部分や割れ目の多い部分など、掘り進む場所によって状態が変化します。
iDSは、こうした岩盤の変化に応じて掘削条件を自動的に調整し、適切な状態を保つ技術です。
これにより、穴が曲がることを抑え、正確で効率的な掘削を支援しています。
また、対応機種には「iMS(インテリジェントモニタリングシステム)」も搭載されています。
機械の稼働状況やメンテナンス情報をモニターに集約して表示する仕組みです。
ただし、これらの機能はHCRシリーズのすべての機種に搭載されているわけではありません。
機種ごとに仕様が異なるため、装備の確認が必要です。
運転席にも転倒・落下物への安全対策がある
採石場や鉱山では、平らな場所ばかりで作業するわけではありません。
岩石が露出した場所や、地面に大きな凹凸がある場所でも重機を動かします。
こうした現場では、機械の操作性能だけでなく、運転者を守る構造も重要になります。
HCR A70の運転席には、ROPSとFOPSに対応したキャビンが標準装備されています。
-
ROPS:機械が転倒した際に運転者を保護する構造
-
FOPS:落下物から運転者を保護する構造
さらに、前面ガラスにはデフロスターも装備されています。
ガラスの結露を抑えることで、ドリルで穴を開ける位置を確認しやすくしています。
重機を安全に操作するためには、車体の安定性だけでなく、運転席から作業場所を正確に確認できることも欠かせません。
2026年には東南アジア向けHCR Aシリーズも発売
古河ロックドリルの技術は、日本国内だけでなく海外にも展開されています。
2026年8月には、東南アジアの砕石市場向けに新たな「HCR Aシリーズ」の販売を開始しました。
発売されたのは、次の3機種です。
-
HCR A70-F
-
HCR A80-F
-
HCR A80-E
これらは、長年蓄積してきた削岩技術を生かしながら、信頼性や整備性の向上を目指して開発された機械です。
主要部品や車体のレイアウトを共通化することで、品質と生産性の向上にも取り組んでいます。
また、クボタ製のディーゼルエンジンや、HD700シリーズの油圧ドリフタを搭載しています。
日本で生まれた削岩技術が、海外の資源開発やインフラ整備を支える機械にも活用されているのです。
油圧クローラドリルの実用情報・製品情報
油圧クローラドリルは、一般家庭向けの商品ではなく、砕石場や鉱山などで使用する産業用機械です。
メーカー・製品情報
-
メーカー:古河ロックドリル株式会社
-
代表的な製品:HCRシリーズ
-
国内向け新型機:HCR A70
-
用途:砕石場・鉱山・大型土木工事など
-
主な作業:岩盤への発破孔の掘削
-
製品情報:古河ロックドリル公式サイトで公開
-
販売価格:機種や仕様によって異なるため、メーカーへの問い合わせが必要
なお、古河ロックドリルの公式サイトには、HCRシリーズの各機種について製品カタログが掲載されています。
機体の詳しい寸法や対応する穴の大きさなどは、製品別に確認できます。
まとめ
古河ロックドリルの油圧クローラドリルは、砕石場や鉱山で硬い岩盤に穴を開けるための特殊な重機です。
1977年に国産初の油圧クローラドリルを開発して以来、HCRシリーズとして進化を続けてきました。
2025年発売のHCR A70は、毎分2,250~2,500回の高速打撃によって、直径64~89mmの穴を開けることができます。
さらに、ドリルが岩に挟まれるトラブルを防ぐ技術や、運転者を守る安全構造、稼働状況を遠隔で確認するICT技術も取り入れられています。
普段の暮らしでは見かける機会が少ない機械ですが、砕石や鉱物の採掘を通じて、建設資材の供給を支えている重要な働く車です。
参考リンク
気になる生活ナビをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント