メガバンクの貸金庫で起きた十数億円窃盗事件
「銀行の貸金庫なら安全」という常識を根底から揺るがしたのが、メガバンクの元行員による巨額窃盗事件です。『ザ!世界仰天ニュース(100kg級男女が素敵に仰天チェンジ&超有名事件衝撃の3時間SP)(2026年8月25日)』では、女性行員が貸金庫から十数億円の金品を盗み続けた事件を取り上げます。なぜ内部の人間が長期間発覚せずに犯行を続けられたのか、巧妙な手口や金の使い道、その後に変わった貸金庫のルールまで整理します。
この記事でわかること
- メガバンクで起きた貸金庫窃盗事件の概要
- 予備鍵を悪用した具体的な手口
- 長期間にわたり犯行が発覚しなかった理由
- 盗んだ金の使い道と貸金庫ルールの変化
メガバンクの女性行員による窃盗は三菱UFJ銀行で起きた事件
今回の内容と一致するのが、三菱UFJ銀行の練馬支店と玉川支店で起きた貸金庫からの顧客資産窃取事件です。
銀行が2025年1月に公表した資料では、行為者として今村由香理元行員の名前が示されています。当時46歳で、1999年に入行。江古田支店の営業課長を経て、練馬支店では営業課長や営業課支店長代理、玉川支店では営業課支店長代理を務めていました。2024年11月14日に懲戒解雇され、2025年1月14日に窃盗容疑で逮捕されています。
被害品は、顧客が貸金庫に保管していた現金や金(きん)などです。銀行が2025年1月10日時点でまとめた数字では、被害に遭った顧客は約70人、被害総額は約14億円。練馬支店と玉川支店だけで貸金庫の契約者は約1800人いました。
銀行員、それも貸金庫を管理する立場にいた人物自身が内部の仕組みを利用していた点が、この事件を特に深刻なものにしました。
貸金庫を開けた手口は「予備鍵」の悪用だった
事件の大きなポイントが、顧客が鍵を渡したわけではないのに、なぜ貸金庫を開けられたのかという点です。
使われたのは、銀行側で保管されていた貸金庫の予備鍵でした。
予備鍵は封筒に入れて封緘されていましたが、元行員はその封筒を開けて鍵を使用。その後、鍵を封筒へ戻して再び糊付けしていました。つまり、外から見るだけでは予備鍵が使われたことに気づきにくい状態に戻していたのです。
さらに驚くのは、盗むだけではなく、発覚を避けるための行動まで繰り返していたことです。
盗んだ資産の一部を別の顧客への補填に使ったほか、貸金庫の中身について顧客から食い違いを指摘された際には「忘れ物」のように装うこともありました。予定外に顧客が来店した場合には、貸金庫システムへの電源を切り、故障したように見せて利用できない状態にすることもあったとされています。
単純に鍵を盗んで金品を持ち出した事件ではなく、銀行内部の運用を熟知した人物だからこそ可能だった手口だったことが分かります。
なぜ長期間も発覚しなかったのか
ここが、この事件で最も気になるところです。
貸金庫というと、防犯カメラや鍵、入退室記録などで厳重に管理され、行員であっても勝手に触れないイメージがあります。
ところが銀行自身による原因分析では、いくつもの弱点が重なっていました。
貸金庫室は通常の執務フロアとは別の場所にあり、入口の防犯カメラを確認する業務も元行員自身が担当していました。そのため、ほかの職員に気づかれず出入りできる状況が生まれていました。さらに貸金庫室内には防犯カメラが設置されておらず、貸金庫を開閉した記録を確認するルールも十分ではありませんでした。
練馬支店では元行員の在籍期間が比較的長く、営業課内の役割分担も固定化。貸金庫関連の仕事が本人に任される状態になっていました。
つまり「厳重な金庫だから大丈夫」という設備面への安心感だけでなく、特定の担当者に業務が集中し、それを別の人がチェックする仕組みが弱かったことも大きな問題だったのです。
銀行も原因として、貸金庫の管理ルールや運用の不備、支店内での牽制不足、本部側からのモニタリング不足を挙げています。
盗んだ金の主な使い道はFX投資
巨額の金品を何に使っていたのかも、この事件の大きなポイントです。
三菱UFJ銀行が公表した資料では、窃取した資産の主な資金使途はFX投資だったとされています。FXは外国為替証拠金取引のことで、少ない資金でも大きな金額を動かせる一方、相場が逆方向へ動けば大きな損失につながることがあります。
一度盗んで終わるのではなく、失った資金を埋めるためにさらに別の貸金庫へ手を伸ばすような状態が続けば、被害額は急速に膨らみます。
この事件では、盗んだ別の顧客の資産を使って不足分を補う行為まで行われていました。巨額化した背景を理解するうえで、窃盗と補填を繰り返す構造は重要な部分です。
被害額が「14億円」「17億円」「18億円」と違う理由
この事件を調べると、被害額について複数の数字が出てきます。
三菱UFJ銀行が2025年1月に発表した資料では、1月10日時点の被害総額は約14億円でした。これは顧客からの申し出や元行員の供述、写真、メモ、現金の帯封などを照合し、銀行側が被害内容を確認していた段階の数字です。
その後、捜査や裁判が進む中では17億円を超える規模が報じられ、2025年8月の公判では本人が「100人くらいからの18億円分に手を付けた」という趣旨の供述をしています。
一方、裁判で実際に起訴された窃盗額は事件全体の被害額とは同じではありません。
2026年3月の控訴審では、約3億9000万円相当の金品を盗んだとして窃盗罪に問われた事件について、東京高裁が一審の懲役9年を支持し、控訴を棄却しています。
「被害総額」と「刑事裁判で起訴された金額」を分けて考えると、数字が違って見える理由が分かりやすくなります。
今村由香理元行員は山崎由香理被告として裁判を受けた
事件発覚時や銀行の公表資料では今村由香理という名前でしたが、その後の裁判では山崎由香理被告として報じられています。
一審の東京地裁は懲役9年の実刑判決を言い渡し、被告側が控訴しました。その後、2026年3月24日の東京高裁判決でも一審判決が支持され、控訴は棄却されました。
事件発覚時の「十数億円もの金品がなくなった」という衝撃だけでなく、貸金庫を管理する立場を利用して長期間犯行を続けたこと、利用者が銀行の安全性を信頼して財産を預けていたことが、事件の重大さをより大きくしています。
事件後は貸金庫の管理方法そのものが変わった
この事件を受け、三菱UFJ銀行は貸金庫の予備鍵を支店だけで管理する方法を見直し、予備鍵の本部一括保管を含む管理強化を打ち出しました。入退室や貸金庫の開閉管理、支店内や本部によるチェック体制も強化しています。
さらに貸金庫をめぐるルールは銀行1社だけの問題ではなくなりました。
金融機関向けの監督指針には、貸金庫へ入室する際の複数人による確認、予備鍵の本部などでの一括管理、開閉記録の保存、防犯カメラ、生体認証などによる管理体制が盛り込まれています。
もう1つ大きく変わったのが現金の保管です。
三菱UFJ銀行は2026年2月1日から貸金庫規定を改定し、貸金庫へ格納できないものに現金を追加しました。すでに現金を入れている利用者にも、来店時などに取り出すよう求めています。
「銀行の貸金庫だから何を入れても安全」という考え方から、何を保管するのか、銀行側がどのように管理するのかまで含めて安全性を考える仕組みへ変わっているのです。
貸金庫を利用している人が確認しておきたいこと
この事件から分かるのは、頑丈な金庫や鍵だけでは安全を守り切れないということです。
特に重要なのは、誰が予備鍵を管理するのか、誰が貸金庫室へ入ったのか、いつ開閉されたのかという「人と記録」の管理です。そのため現在の監督指針では、複数人での確認や開閉記録、防犯カメラ、生体認証といった仕組みが重視されています。
また、三菱UFJ銀行では現金を貸金庫へ入れることができなくなっています。これまで貸金庫を「自宅に置きたくない現金の保管場所」と考えていた人にとっては、かなり大きな変更です。
今回の事件は、巨額窃盗そのものだけでなく、長年当たり前だと思われていた銀行の貸金庫というサービスの安全管理を見直すきっかけになった事件でもあります。
参考リンク
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