世界遺産シャークベイで育つ塩と日本を結ぶ半世紀の物語
2026年10月7日放送の「世界で開け!ひみつのドアーズ」では、日本の暮らしを支えるオーストラリアの塩づくりが取り上げられます。
舞台となるのは、西オーストラリア州のシャークベイで操業する巨大塩田「シャークベイ・リソーシズ(Shark Bay Resources)」。海水を太陽と風の力で濃縮し、塩になるまでには2〜3年もの時間がかかります。
この塩田には、日本との半世紀以上にわたる関係があります。現在の運営会社Shark Bay Salt Pty Ltdは三井物産の完全子会社で、ここでつくられる塩は日本を中心とするアジア市場へ送り出されています。
この記事でわかること
- シャークベイ・リソーシズの場所と巨大な塩田の規模
- 海水から塩になるまで2〜3年かかる天日塩の仕組み
- 1973年から続く三井物産とシャークベイ塩田の関係
- オーストラリアの塩が日本の暮らしに欠かせない理由
シャークベイ・リソーシズは70平方キロの巨大塩田
公式動画:Shark Bay Salt「Video Gallery」
シャークベイ・リソーシズは、西オーストラリア州のシャークベイ地域にある天日塩田です。
塩田が建設されたのは1960年代半ばで、塩の出荷は1967年に始まりました。施設全体は約130平方キロ、そのうち実際に塩づくりに使われる池だけでも約70平方キロあります。
70平方キロという規模も驚きですが、この土地には塩づくりに適した大きな特徴があります。
シャークベイの海水は、外洋に比べて塩分濃度が約50%高いのです。
さらに雨が少なく、晴天が多い乾燥した気候に加えて、太陽と穏やかな風があります。海水から水分を蒸発させて塩をつくる天日製塩には、非常に恵まれた環境です。
シャークベイは1991年に世界遺産へ登録された地域でもあります。広大な海域にはジュゴンやイルカなどが生息し、豊かな海洋生態系でも知られています。
海水が塩になるまで2〜3年かけて太陽と風で育てる
シャークベイの塩づくりが特徴的なのは、巨大な機械で短時間に水分を飛ばすのではなく、自然の力を長期間利用することです。
三井物産オーストラリアは、シャークベイとオンズローにある塩田では、海から取り込んだ水を太陽と風の力によって2〜3年かけて天日塩にすると説明しています。
シャークベイ・リソーシズでは、まず潮の満ち引きを利用して海水をUseless Inletにある蒸発池へ入れます。
ここには約64平方キロもの蒸発池があり、時間をかけて水分を蒸発させながら海水の塩分濃度を高めていきます。
十分に濃縮された塩水は、そこから約20kmに及ぶ水路を通ってUseless Loopへ送られます。
Useless Loopには、大きさや形の異なる37の結晶池があります。
ここでさらに水分が蒸発すると塩の結晶が成長します。その後、塩は収穫され、洗浄され、巨大な貯塩場へ運ばれます。
敷地内には専用の積出港まであり、完成した塩を船に積み込んで日本をはじめとするアジア各地へ送り出せるようになっています。
つまり、海から入ってきた水が数多くの池を移動しながら少しずつ濃縮され、最終的に真っ白な塩へ変わっていくのです。
日本との関係が大きく深まったのは1973年
シャークベイ塩田そのものは1960年代に建設され、1967年にはすでに塩の出荷を始めていました。
日本との結びつきが大きく深まったのは1973年です。
三井物産は、日本とアジアの塩需要を満たすため、オーストラリア企業との「Shark Bay Salt Joint Venture」に出資。西オーストラリア州での天日塩事業に本格的に加わりました。
その後、三井物産は2005年に同事業を100%取得しています。
現在のShark Bay Salt Pty Ltdは三井物産の完全子会社で、シャークベイ・リソーシズと、さらに北にあるオンズロー・ソルトという2つの大規模塩田を所有・運営しています。
シャークベイで生産される塩は、とくに食品関連用途でも利用され、日本のほかマレーシア、台湾、韓国、フィリピン、シンガポール、インドネシアなどへ販売されています。
半世紀以上前に始まった日本とシャークベイの関係が、現在の日本の塩の安定供給にもつながっています。
日本で使う塩は食卓より工業用途の量が圧倒的に多い
「塩」と聞くと、料理に振ったり、みそやしょうゆ、漬物などに使ったりするイメージがあります。
しかし、日本で必要とされる塩の大部分は食卓以外で使われています。
財務省の2025年度塩需給実績では、日本への塩の供給量は約773万トンでした。
内訳は、
- 国内産:約84万トン
- 外国産:約689万トン
となっており、日本の塩供給が海外に大きく支えられていることが分かります。
需要では、生活用が約11万トン、業務用が約194万トンなのに対し、かせいソーダやソーダ灰などを製造する「ソーダ工業用」は約572万トンに達しています。
大量の塩が必要になる理由の一つが化学工業です。
塩を原料として生産される塩素やかせいソーダは、合成皮革、塩化ビニル、ウレタンなどにつながり、バッグや衣類、壁紙など身近な製品にも姿を変えて使われています。
オーストラリアから届く塩は、単に日本の食卓を支えているだけではありません。
目には見えにくいところで、日本の産業や日常生活そのものを支える重要な原料になっています。
自然を利用する塩づくりとシャークベイの環境保全
シャークベイの天日製塩では、海水を取り込み、太陽と風によって水分を蒸発させます。
2〜3年という長い時間は必要ですが、自然エネルギーを利用して塩を結晶化させることが大きな特徴です。三井物産オーストラリアでは、この製法について、塩の生産工程での炭素排出が非常に少ないとしています。
一方で、シャークベイは世界的にも貴重な自然環境を持つ地域です。
Shark Bay Saltでは環境保全活動も進めており、シャークベイ・リソーシズでは西オーストラリア大学の研究者らとともに、Useless Loop周辺で海草藻場の再生研究にも取り組んでいます。
巨大な産業施設と世界的に貴重な海洋環境が隣り合う場所だからこそ、安定した塩の生産と環境保全を両立させる取り組みも重要になっています。
シャークベイ塩田の基本情報
- 名称:Shark Bay Resources
- 所在地:Useless Loop、西オーストラリア州
- 運営:Shark Bay Salt Pty Ltd
- 親会社:三井物産株式会社
- 塩田建設:1960年代半ば
- 塩の出荷開始:1967年
- 施設全体:約130平方キロ
- 操業中の池:約70平方キロ
- 蒸発池:約64平方キロ
- 結晶池:37
- 濃縮塩水を運ぶ水路:約20km
- 製法:太陽と風を利用した天日製塩
- 製造期間:2〜3年
まとめ
シャークベイ・リソーシズでは、塩分濃度の高い海水を巨大な蒸発池へ取り込み、太陽と風の力を利用しながら2〜3年もの歳月をかけて塩を育てています。
約70平方キロに及ぶ池、約20kmの水路、37の結晶池、巨大重機による収穫、専用港からの船積みまで、普段スーパーで見る一粒の塩からは想像しにくいほど大規模な産業です。
そして、日本との関係は1973年に三井物産が事業へ参画したことで大きく深まりました。現在では三井物産の完全子会社が塩田を運営し、日本を含むアジアへ塩を送り続けています。
食卓だけではなく、食品製造や化学工業にも大量の塩を必要とする日本。その暮らしの裏側を、西オーストラリアの海と太陽、風、そして現地の生産者たちが支えています。
参考リンク
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