岐阜城は築70年の鉄筋コンクリート天守を壊さず残す
2026年10月7日放送の「クローズアップ現代」では、戦後に鉄筋コンクリートで再建された天守が老朽化する中、木造復元、耐震補強、解体など、それぞれの地域が迫られている選択を取り上げます。
そのテーマを考えるうえで注目したいのが岐阜城です。金華山の山頂に立つ現在の天守閣は1956年に再建された鉄筋コンクリート造。築70年を迎えた現在、建て替えるのではなく、耐震補強によって現在の姿を次世代へ残す工事が進められています。
2026年5月19日から天守閣は休館中で、リニューアルオープンは2027年11月を予定しています。
この記事でわかること
- 岐阜城天守閣が長期休館している理由
- 7億2292万円で進められる耐震補強等工事
- 外観と最上階からの眺望を残す耐震化の工夫
- 2027年11月のリニューアルと休館中の観光情報
岐阜城天守閣は2027年11月のリニューアルを予定

岐阜城天守閣は、耐震化工事と展示リニューアルのため2026年5月19日から全館休館しています。
現在の予定は次の通りです。
- 岐阜城天守閣休館:2026年5月19日~2027年10月末予定
- 岐阜城資料館休館:2026年4月1日~2027年10月下旬予定
- リニューアルオープン:2027年11月予定
工事用の足場も設置され、2026年8月下旬から2027年4月中旬までは天守が養生シートに覆われるため、外観を見ることもできません。2027年春以降、段階的に足場を撤去する計画です。
広島城が現天守の解体と木造復元を含めて将来像を検討し、名古屋城が木造復元を進めているのに対し、岐阜城は現在の復興天守そのものを耐震改修して残す道を進んでいます。
耐震補強等工事の契約額は7億2292万円
岐阜市議会に提出された工事請負契約では、「岐阜城天守閣耐震補強等工事」の契約金額は7億2292万円です。
契約相手は大日本・岐南特定建設工事共同企業体。2025年度から2027年度にかけて耐震化を進める計画となっています。
岐阜城が直面しているのは、1956年の再建から約70年が経過した建物を、観光施設として安全に使い続けるという課題です。
岐阜市は2021年度に「岐阜城天守閣耐震化計画」を策定。それに基づき、耐震補強だけでなく老朽化した設備の更新や展示リニューアルも一体で進めています。
2026年度当初予算では、耐震補強等工事に3億4332万5000円、天守閣展示室などの改装に4575万円が計上されています。
外観と最上階からの眺望を残しながら強くする
岐阜城の耐震化で興味深いのが、単純にコンクリートの壁を増やせばよいわけではない点です。
岐阜市が設定した耐震性能の目標はIso値0.7。学校施設と同程度の水準を目指しています。
一方、岐阜城には金華山山頂の景観を形づくる建物としての役割があります。さらに最上階から濃尾平野や長良川を見渡せる眺望も、長年親しまれてきた大きな魅力です。
そのため耐震化計画では、外観と4階からの眺望をできるだけ保ちながら補強する方法が選ばれました。
1階から3階には補強袖壁などを設置。4階では窓を壁で塞ぐのではなく、開口部を残しながら格子状の鉄骨フレームを組み込む計画です。
つまり、「地震に強くするため景色が見えなくなる」という方法を避け、天守としての体験も残しながら安全性を高めようとしているのです。
石垣や岩盤を傷つけない耐震補強も必要になる
岐阜城は平地に建つ城ではありません。
標高約329mの金華山山頂に位置し、現在の天守の下には石垣や岩盤があります。しかも金華山一帯の岐阜城跡は2011年に国史跡に指定されています。
そのため、現在の鉄筋コンクリート建物だけを考えて補強することはできません。
耐震化計画では、基礎部分から補強壁を設ける工法などを採用しながら、既存の石垣や岩盤へ影響を与えない施工を行う方針が示されています。
山城の景観、国史跡として残る遺構、1956年に建てられた復興天守。
異なる時代の価値を同時に守りながら現代の耐震性能を持たせることが、今回の改修の難しさでもあります。
1956年の天守は「2代目復興天守」
現在の岐阜城が特別なのは、戦国時代の天守をそのまま再現した建物ではない点にもあります。
岐阜城はかつて稲葉山城と呼ばれ、斎藤道三の居城として知られました。その後、織田信長が1567年に城を攻略し、この地を天下統一を目指す拠点としました。
関ケ原の戦い後、江戸時代を通じて山上に天守はありませんでした。
再び天守が建てられたのは1910年。これが初代の復興天守で、日本最初の模擬天守ともいわれています。
しかし1943年に焼失。その後、市民の浄財によって1956年に現在の2代目復興天守が完成しました。
現在の天守もすでに70年の歴史を持つことになります。
「本物の戦国時代の天守ではないから価値がない」のではなく、戦後の岐阜で市民が再建し、長く町のシンボルとして親しんできた建築そのものにも歴史が積み重なっています。
だからこそ岐阜市は、取り壊して新しい天守を造るのではなく、現在の姿を生かして長寿命化する選択を進めています。
改修後は「眺望」を生かした展示へ
工事は建物を地震に強くするだけではありません。
2027年11月のリニューアルに合わせ、天守閣と資料館の展示も大きく変わる予定です。
展示のコンセプトは「岐阜城の真の姿に迫り、信長公とともに天下を夢見る」。
岐阜城の歴史だけでなく、金華山に築かれた山城ならではの「眺望」を生かし、山上部を見学するための拠点として天守を位置づけます。
信長が見た城下と、現代の岐阜市街を同じ山上から見渡す。
耐震補強によって最上階の開口部を残す設計には、こうした岐阜城ならではの価値を次世代へつなぐ意味もあります。
休館中も金華山山頂には行ける
天守閣は休館していますが、金華山そのものへ行けなくなったわけではありません。
ぎふ金華山ロープウェーの山頂駅側から天守閣手前まで向かうことはできます。また、金華山展望台から岐阜市街や長良川方面の眺望を楽しむこともできます。
ただし登山道には工事に伴う規制があります。
実用情報
- 岐阜城天守閣:休館中
- 休館期間:2026年5月19日~2027年10月末予定
- リニューアル:2027年11月予定
- 現在は足場・養生シートにより天守外観も見えない期間
- ぎふ金華山ロープウェー山頂駅側から天守手前までは移動可能
- めい想の小径・鼻高ハイキングコースは山頂手前で通行止め
- 100名城スタンプ:加藤栄三・東一記念美術館、ぎふ金華山ロープウェー山頂駅へ移設
まとめ
岐阜城では、1956年に市民の力で再建された鉄筋コンクリート造の天守閣を解体せず、耐震補強によって次世代へ残す工事が進められています。
耐震補強等工事の契約額は7億2292万円。2026年5月から天守閣を長期休館し、2027年11月のリニューアルオープンを目指します。
特徴的なのは、強度だけを優先するのではなく、外観や最上階からの眺望、石垣や岩盤、国史跡としての価値まで守ろうとしていることです。
木造で過去の姿をよみがえらせる城がある一方、戦後に生まれた復興天守そのものを歴史として残す城もある。
老朽化する全国の鉄筋コンクリート天守をこれからどう引き継いでいくのか。その別の答えを示す事例が、改修工事中の岐阜城です。
参考リンク
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