- 美しさは誰が決めるのか?プラスサイズモデルが問いかけるファッション業界の現実
- イザベル・ムーアとは?オペラ歌手としても活躍するプラスサイズモデル
- オペラ歌手から国際的なモデルへ イザベル・ムーアの経歴
- ファッション業界に残る体型差別 プラスサイズモデルが直面する壁
- ファッションショーのプラスサイズモデルはわずか0.63%という調査結果
- 2010年代に進んだ痩せすぎモデルへの規制とボディポジティブ運動
- 痩身薬オゼンピックの普及と細い体型への回帰
- SNSがつくる美しさの基準と若い世代への影響
- 多様な体型を認めるブランド「Ruby」の取り組み
- 『CUTTING THE CURVE』の制作背景 ニュージーランドから世界へ
- 美しさとは何か イザベル・ムーアが伝えたいこと
- まとめ
- 気になる生活ナビをもっと見る
美しさは誰が決めるのか?プラスサイズモデルが問いかけるファッション業界の現実
2026年10月23日放送のNHK Eテレ『世界のドキュメンタリー』では、「美しさとは プラスサイズモデルの問いかけ」を放送します。
主人公は、サモア系ニュージーランド人のモデル、イザベル・ムーア(Isabella Moore)。オペラ歌手としても活動する彼女のキャリアを通して、ファッション業界に根強く残る体型差別と、美しさの基準が変化していく現実を描きます。
2010年代には、極端に痩せたモデルへの規制が進み、さまざまな体型の人がファッションの世界で活躍する機会が広がりました。しかし、近年の痩身薬の普及やSNSによる美の画一化を背景に、再び細い体型を重視する動きが強まっています。
ニュージーランドで2025年に制作された原題『CUTTING THE CURVE』は、モデルたちが仕事を得るために直面する困難や、容姿と自分の価値を結びつけてしまう社会の構造に迫るドキュメンタリーです。
この記事でわかること
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イザベル・ムーアの経歴とオペラ歌手からモデルへ広がった活動
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プラスサイズモデルが直面する体型差別とファッション業界の変化
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痩身薬やSNSが美しさの基準に与える影響
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『CUTTING THE CURVE』の制作背景と、多様な体型を認めるための取り組み
イザベル・ムーアとは?オペラ歌手としても活躍するプラスサイズモデル
イザベル・ムーアは、ニュージーランド出身のサモア系モデルで、クラシック音楽の訓練を受けたオペラ歌手でもあります。ロンドンを拠点に活動し、ファッション撮影や広告、ランウェイ、音楽公演など、異なる分野でキャリアを築いてきました。
プラスサイズモデルとは、一般的なファッションモデルの標準サイズより大きいサイズの衣服を着用して活動するモデルのことです。国やブランド、モデル事務所によってサイズの基準は異なり、世界共通の明確な定義があるわけではありません。
イザベルは、体の大きさを理由にファッションの表現から排除されてきた人々の存在を可視化する役割も担ってきました。
彼女の活動には、次のような特徴があります。
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名前:イザベル・ムーア(Isabella Moore)
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出身:ニュージーランド
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ルーツ:サモア系
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主な活動拠点:ロンドン
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職業:ファッションモデル、オペラ歌手
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活動分野:広告、ファッションショー、商品撮影、オペラ公演
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出演作品:『CUTTING THE CURVE』(2025年)
イザベルにとってモデルの仕事は、衣服を美しく見せるだけではありません。これまで十分に表現されてこなかった体型や文化的背景を、ファッションの世界で示す機会でもあります。
オペラ歌手から国際的なモデルへ イザベル・ムーアの経歴
イザベルのキャリアには、音楽とファッションという2つの軸があります。
2013年から2015年にかけてイギリスで音楽を学び、その後も歌手としての活動を続けました。2019年末にはモデルの仕事に重点を置いてイギリスへ戻りましたが、間もなく新型コロナウイルスの感染拡大に直面しました。
2022年末にはクラシック音楽のエージェンシーと契約し、オペラ歌手としての活動も改めて広げていきます。
2024年にニュージーランドのファッションブランド「SABEN」が掲載したインタビューでは、2つの仕事を両立させる難しさを語っています。
モデルの撮影は直前に予定が決まることも多く、一方でオペラの公演は長期的な準備が必要です。ヨーロッパ各地でファッション撮影を行いながら、歌手としての練習や仕事を続けるには、時間だけでなく精神的な切り替えも求められます。
それでも、両方の経験は互いに役立っています。
オペラで培った演技力や人物表現、物語を伝える力は、モデル撮影にも生かされます。反対に、モデルの仕事で身につけた自信や柔軟性は、舞台上で観客に自分を表現する際の力にもなっています。
2024年にはSABENのコレクション「PHASES」のキャンペーンにも登場しました。
イザベルの経歴が示すのは、モデルが体型だけで評価される存在ではなく、多様な経験や表現力を備えた一人の職業人であるということです。
ファッション業界に残る体型差別 プラスサイズモデルが直面する壁
ファッション業界では長い間、細く背の高い体型がランウェイモデルの理想像として扱われてきました。
その結果、体型によって仕事の機会が限られたり、広告やファッション誌に登場できる人が偏ったりする問題が生じています。
体の大きさを理由とする偏見や差別は、英語で「サイズイズム」や「ファットフォビア」と表現されることがあります。容姿全般を基準に人を判断する「ルッキズム」とも深く関わる問題です。
イザベル自身も、2024年のインタビューで、モデルとして十分なランウェイ経験がありながら、ロンドンやミラノのファッションウィークに出演できていないことを明かしました。
その理由について、体のサイズが影響しているのではないかと考えている一方で、確実な理由は分からないとも述べています。
重要なのは、明確に差別的な言葉を向けられる場合だけが問題ではないことです。
モデルを選ぶ段階で特定の体型しか想定されていなければ、ほかの体型のモデルには最初から仕事の機会が生まれません。
また、衣服のサイズ展開が限られている場合、モデルだけでなく一般の消費者も、自分の体に合う服を選ぶことが難しくなります。
誰もがファッションを楽しむためには、広告に登場するモデルの多様化だけでなく、実際に購入できる服のサイズやデザインの充実も必要になります。
ファッションショーのプラスサイズモデルはわずか0.63%という調査結果
体型の多様性をめぐる状況は、ファッションショーの数字からも見えてきます。
プラスサイズモデルで活動家のフェリシティ・ヘイワード(Felicity Hayward)は、「Including the Curve」という活動を通して、主要ファッションウィークにおけるモデルの体型の多様性を記録してきました。
『CUTTING THE CURVE』の共同制作者エブリン・エブリーが紹介した2025年秋冬シーズンの集計では、4大ファッションウィークに登場した12,790ルックのうち、プラスサイズモデルが着用したのは81ルックでした。
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対象:2025年秋冬シーズンの4大ファッションウィーク
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調査したルック数:12,790
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プラスサイズモデルによるルック数:81
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全体に占める割合:0.63%
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前シーズンとの比較:約50%減少
この数字は、モデル個人の人数ではなく、ランウェイで披露されたルックを基準にしたものです。また、プラスサイズの分類基準にも注意が必要です。
それでも、世界的なファッションショーにおいて、多様な体型の表現がまだ限られていることを示す具体的な資料となっています。
フェリシティ・ヘイワードも本作に参加し、ロンドンのファッション業界で起きている変化について語っています。
2010年代に進んだ痩せすぎモデルへの規制とボディポジティブ運動
ファッション業界の体型に関する考え方が変化した背景には、モデルの健康を守るための取り組みがあります。
代表的な例が、フランスで2017年に施行されたモデルの健康状態に関する規制です。
フランスでは、モデルとして活動する際に医師による健康証明を求める仕組みが整えられました。健康状態の確認では、BMI(体格指数)も考慮されます。
ただし、すべてのモデルに一律のBMI下限値を設定した制度ではありません。体格指数を含めた総合的な健康状態を医師が評価する仕組みです。
こうした動きと並行して広がったのが、「ボディポジティブ」と呼ばれる考え方です。
ボディポジティブは、体型や外見について社会が設けてきた狭い基準を問い直し、多様な体を尊重する運動として発展してきました。
ファッションの分野でも、大きいサイズのモデルに加え、年齢や肌の色、障害の有無など、さまざまな背景を持つ人を広告やランウェイに登場させる動きが広がりました。
しかし、広告に多様なモデルを起用することと、業界全体の価値観や採用の仕組みが変わることは同じではありません。
一時的な流行として多様性を取り入れても、流行が変われば以前の状態に戻ってしまう危険があります。
『CUTTING THE CURVE』は、こうした変化を長年経験してきたモデルたちの視点から描いています。
痩身薬オゼンピックの普及と細い体型への回帰
本作で取り上げられる大きなテーマの一つが、痩身薬の普及とファッション業界の関係です。
特に注目されるのが、「オゼンピック(Ozempic)」などに代表されるGLP-1関連薬です。
オゼンピックは、成分名をセマグルチドとする2型糖尿病治療薬です。GLP-1受容体作動薬には、肥満症治療を目的として承認された製剤もありますが、薬ごとに適応症や使用条件は異なります。
医療上の必要性に基づいて使用することと、外見の流行に合わせて体重を減らすことは、区別して考える必要があります。
共同制作者のエブリン・エブリーは、本作を構想し始めた2022年頃と制作が進んだ時期とでは、ファッション業界を取り巻く空気が変化したと語っています。
当初は多様な体型を受け入れる動きに勢いがありましたが、制作中には細い体型への関心が再び高まっていきました。
イザベルも、体型の流行が変化することで、自分のモデルとしての仕事や生活に影響が及ぶ不安を語っています。
ここで注意したいのは、痩身薬がファッション業界の変化を単独で引き起こしたと断定できるわけではないということです。
SNSの流行、ブランドの方針、ファッションショーのキャスティングなど、複数の要素が関わっています。
ドキュメンタリーが投げかけるのは、薬そのものの評価にとどまりません。
社会が細い体を理想とすることで、本人の健康状態や意思とは別に、体を変える圧力が生まれていないかという問題です。
SNSがつくる美しさの基準と若い世代への影響
現代の身体イメージを考えるうえで、SNSも欠かせない存在です。
InstagramやTikTokなどでは、ファッションや美容に関する画像や動画が次々と表示されます。自分の関心に近い投稿を繰り返し見ることで、特定の外見を理想として意識する機会も増えていきます。
美しく加工された写真や、細い体型を強調する動画ばかりに触れていると、実際には多様な体型が存在するにもかかわらず、美しさには決まった形があるように感じられることがあります。
アメリカ心理学会(APA)は、2023年に公表した青少年のSNS利用に関する勧告で、外見に関する社会的比較に注意を促しました。
外見を他人と比較するSNS利用や、自分の写真への反応を過度に気にする行動は、特に少女において、身体イメージの悪化や摂食に関する問題、抑うつ症状との関連が報告されています。
ただし、SNSの利用そのものが必ず悪影響をもたらすわけではありません。利用する内容や本人の状況によって、その影響は異なります。
モデルやファッションブランドが多様な体型を発信することは、従来の狭い美の基準を見直すきっかけにもなります。
問題は、SNSの存在だけではなく、そこで繰り返し提示される美しさの基準を、唯一の正解として受け止めてしまうことにあります。
多様な体型を認めるブランド「Ruby」の取り組み
ファッション業界の中には、体型の多様性を一時的な流行ではなく、継続的な取り組みとして位置づけるブランドもあります。
ニュージーランドのファッションブランド「Ruby」は、その一例です。
イザベルは2025年のインタビューで、体型の多様性を大切にするブランドとしてRubyの名前を挙げています。
『CUTTING THE CURVE』には、Rubyのデザイナーであるエミリー・ミラー=シャルマ(Emily Miller-Sharma)も登場しています。
エミリーが重視するのは、体を良い・悪いと評価する対象にしないという考え方です。
これは「ボディ・ニュートラリティ」とも呼ばれる考え方とつながっています。
自分の体を常に美しいと思うことを求めるのではなく、外見だけで人間としての価値を決めないという立場です。
ファッションにおいても、誰の体が美しいかを選別することより、さまざまな人が服を着て自分らしく過ごせる環境を整えることに重点を置きます。
こうした姿勢は、モデルの起用方法だけでなく、ブランドがどのような人を顧客として想定しているかという問題にもつながります。
『CUTTING THE CURVE』の制作背景 ニュージーランドから世界へ
今回NHKで紹介される『CUTTING THE CURVE』は、ニュージーランドの制作会社Notable Picturesが手がけた作品です。
現地では2025年8月25日から、公共放送RNZを通じて全6回の短編ドキュメンタリーシリーズとして公開されました。
制作の中心となったのは、映画監督・プロデューサーのジュリア・パーネル(Julia Parnell)と、ファッションジャーナリストのエブリン・エブリー(Evelyn Ebrey)です。
企画の出発点には、エブリンが2022年に執筆したプラスサイズモデルに関する記事がありました。
モデルの多様性を扱った記事をきっかけに、ファッション業界の変化を映像で描く企画へと発展していきました。
エブリンは以前からイザベルを取材しており、彼女の経験を通して問題を伝えることを提案しました。
パーネルとともに企画を育て、約2年にわたる準備を経て作品が実現しています。
撮影はニュージーランドのオークランドやイギリスのロンドンなどで行われ、ニューヨークのファッション事情にも視野を広げています。
作品にはモデル本人のほか、デザイナーや業界関係者も参加しました。
制作陣が重視したのは、華やかな衣服やショーを映すことだけではありません。
ファッション業界で働く人々が経験する仕事上の不安や拒絶、自己評価の揺れなどを、本人の言葉で伝えることでした。
監督のパーネルは、観客が自分自身をどのように見ているのか、そしてその評価が社会や産業によってどれほど形づくられているのかを考えるきっかけにしたいと語っています。
美しさとは何か イザベル・ムーアが伝えたいこと
イザベルは2025年10月のインタビューで、ドキュメンタリーを通して伝えたい最も重要な考えとして、**「体は流行ではない」**というメッセージを示しています。
ファッションの流行は変わります。洋服のデザインや色、素材だけでなく、理想的とされる体型も時代によって変化してきました。
しかし、人間の体そのものを流行に合わせて価値づけることには、大きな問題があります。
ある時期には歓迎されていた体型が、数年後には仕事を得にくい理由になる。そんな状況では、モデルとしての能力や経験よりも、その時々の美の基準が優先されてしまいます。
イザベルが問いかけているのは、単に大きな体型を美しいと認めてほしいということだけではありません。
そもそも、人の価値を容姿や体のサイズで判断しなければならないのか、という根本的な問題です。
モデルとしての活動は、これまでファッションの世界から疎外されてきたと感じる人々に、自分と似た体型の人も活躍していることを示す機会になっています。
一方で、本人自身も仕事上の評価や社会の期待に影響を受けてきました。
そうした経験を率直に語ることで、美しさを追求する産業と、そこに関わる一人ひとりの尊厳について考える作品となっています。
まとめ
『世界のドキュメンタリー 美しさとは プラスサイズモデルの問いかけ』は、サモア系ニュージーランド人モデルのイザベル・ムーアを中心に、ファッション業界に残る体型差別と、美しさの基準が再び変わり始めている現実を取り上げます。
2010年代にはモデルの健康を守る規制や、体型の多様性を尊重する運動が広がりました。しかし、痩身薬の普及やSNSの影響、業界のキャスティング方針の変化などを背景に、細い体型が再び重視される動きもあります。
オペラ歌手とモデルという2つの世界で活動してきたイザベルの経験は、外見だけでは測れない人間の価値を浮かび上がらせます。
ファッションを楽しむ自由と、誰もが自分の体を尊重される社会。その両立を考えるドキュメンタリーです。
参考リンク
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