伊藤みほさん|デンソーの先端技術研究所を率いる研究者の経歴と仕事
自動車部品大手デンソーの先端技術研究所を率いる伊藤みほさんは、材料研究の専門家から研究組織のトップへとキャリアを広げてきた技術者です。
1994年に日本電装(現在のデンソー)へ入社し、電気自動車用のリチウム電池や自動車用排ガスセンサの研究に携わってきました。2006年には博士号を取得し、2021年から先端技術研究所長を務めています。
2026年10月23日放送予定のメ~テレ『ミライキャスト』では、伊藤みほさんがモビリティの未来をつくる人材について語ります。
現在は材料研究だけでなく、AI、量子技術、半導体、人間研究など幅広い領域を統括しています。
注目したいのは、専門的な研究を続ける道から、多様な研究者の力を引き出すマネジメントへと転じた歩みです。
この記事では、伊藤みほさんの学歴や研究者としての経歴、仕事を変えた重要な転機、デンソーで進めている先端技術研究の内容まで詳しく紹介します。
この記事でわかること
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伊藤みほさんの経歴・学歴と現在の役職
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リチウム電池研究から博士号取得、研究所長に至る歩み
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研究者からマネジメントへ転じたきっかけ
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デンソーで進めるAI・半導体・人間研究と未来のモビリティ開発
伊藤みほさんはデンソー先端技術研究所の所長
伊藤みほさんは、株式会社デンソーの上席執行幹部であり、先端技術研究所の所長を務める研究者です。
デンソーは愛知県刈谷市に本社を置く大手自動車部品メーカーです。自動車の電動化や安全運転を支える技術のほか、半導体、AI、量子コンピューティングなどの研究開発にも取り組んでいます。
その中で伊藤さんが率いる先端技術研究所は、将来の事業につながる新しい技術を生み出す重要な組織です。
研究所では、現在の製品開発に直接必要な技術だけでなく、10年先、20年先の社会で必要とされる技術も視野に入れています。
伊藤さん自身はもともと化学を専門とする研究者でした。しかし現在は、研究所全体の方針を考え、異なる専門分野を持つ研究者たちの力を結びつける仕事を担っています。
伊藤みほさんの主な経歴
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名前:伊藤みほ(いとう みほ)
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出身大学:奈良女子大学
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最終学歴:奈良女子大学大学院理学研究科修了、東北大学大学院工学研究科で博士号取得
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1994年:日本電装株式会社(現在のデンソー)入社
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2006年:自動車用排ガスセンサに関する研究で博士号取得
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2007年以降:研究部門の課長・室長・部長などを歴任
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2021年:デンソー先端技術研究所長に就任
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2025年:名古屋大学未来社会創造機構の客員教授に就任
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2026年:株式会社ミライズテクノロジーズの取締役を兼務
大学と企業の両方で研究に関わりながら、次世代の技術開発を支える立場にあります。
奈良女子大学で化学を専攻したきっかけ
伊藤みほさんが研究者としての道を歩み始めた背景には、高校時代の化学の先生との出会いがありました。
奈良女子大学が2025年に公開した卒業生インタビューでは、中学生までは特別に理科が好きだったわけではなく、むしろ社会科などに関心があったと話しています。
進路を考えるきっかけになったのは、高校で出会った女性の化学教師でした。
当時は女性の職業選択の幅が現在ほど広くなく、教員という仕事も選択肢の一つだったといいます。
その先生の影響で化学への関心が高まり、理科の教員免許を取得できる理学部に進むことを考えるようになりました。
奈良女子大学を選んだ理由には、奈良という土地の歴史や文化への興味もありました。
大学では材料分析を専門とする研究室に所属。有機金属の合成や分析に関わる研究に取り組みました。
研究を進めるためには、他大学の設備や知識を借りなければならない場面もあり、初対面の研究者と協力して実験を進める経験を重ねたそうです。
この経験は、後に企業の研究所で多様な人材をまとめる仕事にもつながっていきました。
専門知識だけでなく、異なる立場の人と協力する力を身につけたことが、伊藤さんの研究者人生における大切な土台になっています。
1994年に日本電装へ入社した理由と最初の研究
大学院を修了した伊藤みほさんは、1994年に日本電装株式会社へ入社しました。
当時の日本電装は、現在の株式会社デンソーです。
就職活動では、地元の愛知県から通える企業を中心に検討していました。
その中で関心を持ったのが、日本電装の研究開発に対する考え方でした。
伊藤さんはRISE-Aのインタビューで、デンソーの社是にある「研究と創造に努め 常に時流に先んず」という言葉に引かれたと振り返っています。
大学で学んだ化学が自動車部品メーカーでどのように役立つのか、入社前には明確なイメージを持っていなかったそうです。
しかし、研究開発部門に配属されて最初に担当したのは、電気自動車向けリチウム電池の研究でした。
具体的には、電池内部でイオンの移動を担う電解質の難燃化や、電池の劣化を抑える研究に取り組みました。
リチウム電池は電気自動車の性能や安全性を左右する重要な部品です。
特に電池の寿命や熱に対する安全性は、実用化を進めるうえで欠かせない課題となります。
大学で培った化学や材料分析の知識が、思いがけず自動車分野で直接役立つことを知った経験は、伊藤さんにとって重要な出来事でした。
当初は自分の研究分野とは異なる仕事になると考えていましたが、実際には専門性を生かせる場所がありました。
研究を続けるうちに仕事そのものへの関心が深まり、長く研究開発に携わることになったのです。
2006年に東北大学で博士号を取得
伊藤みほさんはデンソーで働きながら研究を続け、2006年に東北大学大学院工学研究科で博士号を取得しました。
博士号取得につながったのは、自動車用排ガスセンサに関する量子論的研究です。
排ガスセンサは、自動車のエンジンから排出されるガスの状態を検知するために使われる部品です。
例えば酸素濃度を検知するセンサは、エンジンの燃焼制御や排出ガスの浄化に重要な役割を果たします。
こうしたセンサには、化学反応や材料の性質を正確に理解することが求められます。
伊藤さんは、その材料の振る舞いを基礎的な理論から研究していました。
博士号を取得した当時は、研究者として専門性を深め、特定分野のスペシャリストとして仕事を続けたいと考えていたそうです。
奈良女子大学のインタビューによると、伊藤さんは仕事を続けながら出産・育児も経験しています。
一人目の子どもを32歳で出産した後に博士号を取得したことも、自身の歩みとして紹介しています。
仕事と家庭の両立を経験しながら学びを続け、専門的な研究を博士論文としてまとめたことは、その後のキャリアを支える大きな実績となりました。
研究者から研究所長へ転じた重要な転機
伊藤みほさんの経歴で特に興味深いのが、研究に専念するスペシャリストから、研究者をまとめるマネジメントへと進んだことです。
博士号取得後、伊藤さんは課長や室長、部長といった役職を経験しました。
当初から研究所長を目指していたわけではありません。
本人は研究を深く追究する仕事を続けたいと考えていましたが、新人教育や部下の指導を任される機会が増えていきました。
その中で、個人で研究成果を出すこととは異なる喜びを知ったといいます。
自分自身が研究に使える時間は減っても、部下が成果を上げることに新しいやりがいを感じるようになりました。
研究テーマに向き合う仕事と、人を育てて組織として成果を生み出す仕事。
この2つの間で葛藤しながら、徐々にマネジメントの道へ進んでいきました。
2021年に先端技術研究所長へ就任した際には、本人にも戸惑いがあったことをRISE-Aのインタビューで語っています。
しかし、所長という立場になったことで、個人の研究だけでは実現できない規模の仕事を進められるようになりました。
異なる専門性を持つ研究者を結びつけ、チーム全体で大きな課題に挑戦することが、現在の伊藤さんの重要な役割です。
デンソー先端技術研究所で取り組むAI・半導体・量子技術
伊藤みほさんが統括するデンソー先端技術研究所は、1991年に設立された研究組織です。
当初から半導体、材料、人工知能などの研究に取り組んできました。
現在は、自動車の性能向上にとどまらず、社会全体の課題を解決するための技術開発も重視しています。
主な研究領域は次のとおりです。
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材料設計:新しい材料の発見や機能の解明
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物理化学:化学反応や物質の性質を利用した技術開発
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機械学習:自動運転やロボットを支える認知・判断・制御技術
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半導体:次世代の車載システムを支えるデバイス技術
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量子・最適化:複雑な問題を効率的に解く計算技術
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HMI:人と自動車が情報をやり取りする技術
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人間研究:脳活動や感情、身体の状態を理解する研究
これらは、それぞれ独立した研究に見えても、実際には深く関係しています。
例えば自動運転では、周囲の状況を感知するセンサ、膨大なデータを処理する半導体、状況を判断するAIなどが必要です。
さらに、自動車を利用する人の状態まで考えれば、人間の認知や感情を理解する研究も重要になります。
伊藤さんは、材料や半導体といったハードウェアの基礎研究だけでなく、それを制御するソフトウェアや人間との関係も含めて、研究全体を見渡す仕事をしています。
音・風・香りと脳科学を活用する安全運転研究
デンソーの先端技術研究で特徴的なのが、人間の感覚や脳の働きに注目していることです。
伊藤みほさんは奈良女子大学のインタビューで、安全運転のための研究に音、風、香りなどの感覚刺激や脳計測を取り入れていると説明しています。
従来の自動車安全技術では、衝突を防ぐブレーキ制御や、周囲の障害物を認識するセンサなどが中心的な役割を果たしてきました。
一方、人間研究では、運転者自身の状態を理解することに注目します。
例えば、運転中に注意力が低下したり、疲労が蓄積したりすることは、安全に関わる重要な要素です。
そうした状態を科学的に把握し、適切な方法で人に働きかけることが研究課題になります。
音や風、香りなども、人に刺激を与えるための手段として研究されています。
ただし、特定の刺激によって必ず眠気が解消する、事故が防げるといった効果が確立されたわけではありません。
伊藤さんが目指しているのは、従来の車両制御技術と人間への理解を組み合わせ、より安全で快適な移動環境を実現することです。
この研究領域は、自動車を単なる機械としてではなく、人の生活や身体と深く関わる存在として捉える点に特徴があります。
2026年には研究所に新しい共創拠点が誕生
デンソー先端技術研究所では、2026年7月1日に新しい社外共創エリア「Komenoki d.o.c.(DENSO Open Co-lab)」の運用を開始しました。
大学やスタートアップ、企業など、異なる組織の研究者が協力するための場所です。
拠点は大きく2つのエリアで構成されています。
RX-Lab
データを活用した研究機能を集め、外部の研究者や別拠点と連携しながら研究を進める協働ラボです。
RX-Base
研究所の所員と外部パートナーが集まり、交流やアイデア創出を進める共創オフィスです。
デンソーでは、研究活動そのものを変革する取り組みを「RX(Research Transformation)」と呼んでいます。
重要なのは、個々の研究者が優れた技術を持つだけでなく、それぞれの技術や知識を組み合わせることです。
例えば、材料研究とAIを組み合わせれば、従来とは異なる方法で新しい材料を探す研究につながります。
また、異業種の企業と協力することで、自動車分野で培った技術を新しい用途に展開することも目指せます。
伊藤さんが大学時代から経験してきた、異なる専門分野の人との協働が、現在は研究組織全体の仕組みに広がっているのです。
伊藤みほさんが重視する多様な人材と研究組織づくり
伊藤みほさんは、研究者一人ひとりの個性を生かすことを重要視しています。
奈良女子大学のインタビューでは、研究所の人材配置を考える際にも、専門性だけではなく、人と人との組み合わせを意識していると語っています。
同じ専門分野の研究者が集まれば、研究を深める力が生まれます。
一方、異なる専門分野の研究者が交流すると、これまでになかった視点や発想につながることがあります。
伊藤さんは、このような多様性から生まれる新しい発想を大切にしています。
それは性別や年齢の違いだけを指すものではありません。
研究経験、専門知識、仕事への考え方、物事の捉え方など、さまざまな違いを組織の強みにするという考え方です。
伊藤さん自身も、研究者として専門性を深める道から、組織全体の力を引き出す仕事へと移った経験があります。
その過程で、自分が成果を出す喜びに加え、他の研究者の成果を支えることにも価値を見いだしました。
研究所長として目指しているのは、異なる個性を持つ研究者が、それぞれの力を最大限に発揮できる組織です。
名古屋大学客員教授として次世代の研究人材育成にも関わる
伊藤みほさんは、2025年から名古屋大学未来社会創造機構の客員教授も務めています。
研究開発の現場を率いるだけでなく、大学と企業をつなぐ活動にも関わっています。
名古屋大学では、女子学生や博士課程への進学を考える学生に向けた講演にも登壇しています。
企業で研究者として働くことや、博士号を持つ人材が産業界で活躍する意義などを伝えてきました。
伊藤さん自身も企業に就職してから博士号を取得した経験があります。
そのため、大学院修了後に企業へ就職する道だけでなく、企業で働きながら専門性を深めていくキャリアを示す存在でもあります。
博士課程で身につけるのは、特定の技術に関する専門知識だけではありません。
課題を設定し、研究計画を立て、得られた結果を検証する力も重要です。
こうした能力は、研究所だけでなく、製品開発や新規事業など幅広い仕事で生かされます。
伊藤さんが長年にわたって取り組んできた材料研究、博士号取得、研究組織のマネジメントという経験は、これから研究者を目指す人にとって参考になるキャリアの一例です。
まとめ
伊藤みほさんは、デンソー先端技術研究所の所長として、次世代の自動車技術や社会課題の解決につながる研究開発を率いる人物です。
奈良女子大学で化学を学び、1994年に日本電装へ入社。リチウム電池や排ガスセンサの研究を経て、2006年に博士号を取得しました。
当初は専門分野を深める研究者を目指していましたが、部下の指導や組織の運営を経験する中で、マネジメントの仕事にも価値を見いだすようになりました。
2021年からは研究所長を務め、現在はAI、半導体、量子技術、人間研究など幅広い分野を統括しています。
材料研究者として積み重ねた専門性と、多様な人材の力を結びつける組織づくり。
この2つを生かして未来のモビリティ技術を支えていることが、伊藤みほさんの仕事の大きな特徴です。
参考リンク
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