MOTOMAN NEXTとは?安川電機のAIロボットができること
MOTOMAN NEXT(モートマン ネクスト)は、安川電機が開発・販売する、自分で作業の状況を認識して動作を計画できる産業用AIロボットのシリーズです。形や位置が毎回違う物にも対応することを目指し、食品の箱詰めや部品の仕分け、細かな組立工程など、これまで人の判断が必要だった作業の自動化に取り組んでいます。
2026年11月6日放送予定のテレビ東京系『ガイアの夜明け』では、安川電機のフィジカルAI開発が取り上げられます。MOTOMAN NEXTは同社の代表的なAIロボットですが、今回の放送でこの機種が映るかどうかは未公表です。ここでは、公表されている製品仕様や実際の活用例から、その実力と導入方法を紹介します。
MOTOMAN NEXTと従来の産業用ロボットの違い
これまでの産業用ロボットは、人が教えた位置や動作を正確に繰り返す「ティーチングプレイバック方式」を得意としてきました。しかし、対象物が毎回違う場所にあったり、柔らかく形が変わったりすると、同じ動作ではうまく扱えません。
MOTOMAN NEXTには、カメラなどで周囲の状態を捉えるマシンビジョン、障害物を避けながら動作経路を考えるパスプランニング、物に触れた状態を判断する力覚などのサービスが用意されています。「何をするか」という目的に対し、そのときの状態に応じた動きを選べることが特徴です。
2023年から販売が始まったシリーズで、現在は複数の可搬重量・リーチのモデルが展開されています。AIを備えた機械だから何でも任せられるという意味ではなく、具体的な作業に合うロボット本体、ハンド、カメラ、制御プログラムを組み合わせる必要があります。
NEX4からNEX35までの種類とスペック
公式製品ラインアップには、可搬質量4kg・リーチ550mmのNEX4、7kg・920mmのNEX7、10kg・1,100mmのNEX10、20kg・1,550mmのNEX20、35kg・2,060mmのNEX35が掲載されています。
人と近い場所での作業を想定したNHC12もあり、可搬質量は12kg、リーチは1,410mmです。ロボットコントローラにはYNX1000が用意されています。数字は「腕の長さ」ではなく、メーカーが公表する最大リーチです。扱う物の重さ、設置場所、必要な作業範囲によって適した機種は変わります。
価格はいくら?一般購入できる?
MOTOMAN NEXTシリーズの販売価格は、機種共通の定価としては公表されていません。 価格を確認するには、安川電機の製品窓口から使用目的や導入する機種、周辺設備を含めた見積もりを依頼する必要があります。
購入するのは一般家庭向けの家電ではなく、工場や事業所で使う産業用設備としてです。ロボット本体のほか、つかむためのハンド、画像認識装置、安全対策、工程の設計や設置調整などが必要になる場合があります。仕様の確認や資料請求は安川電機のMOTOMAN NEXT製品ページから行えます。
価格だけで機種を選ぶのではなく、「どの物を」「何個」「どの速度で」「どの場所に」運ぶのかを整理して相談すると、導入するロボットと周辺機器を検討しやすくなります。
GoogleのGemini Roboticsと組み合わせると何ができる?
安川電機は2026年7月15日、Google DeepMindの生成AIモデルGemini Robotics ER 1.6とMOTOMAN NEXTを連携させる「エージェンティック・ロボットシステム」の開発を発表しました。
例えば「この部品を仕分けてほしい」という目的を伝えると、生成AI側が作業の手順を組み立て、MOTOMAN NEXT側が対象物の位置を見つけ、障害物を避ける経路やつかむ力を調整します。AIの役割を「何をするか考える頭脳」、ロボットの役割を「安全かつ正確に動く身体」と分けた構成です。
このシステムでは、作業中に物を落とした場合などにも、状況を認識して復帰する機能が開発されています。ただしGemini Robotics連携がすべての市販モデルに最初から搭載されているとは限りません。 特定の連携システムとして発表された技術であり、購入時の標準仕様や提供条件は個別の確認が必要です。
ソフトバンクと実証した「柔らかい物を扱う」技術
2026年7月13日には、安川電機とソフトバンクがフィジカルAIによる柔軟な物体の取り扱いを実証したと発表しました。対象の一つは、細い電線を束ねたワイヤーハーネスです。
ケーブルや布、袋のような物は、持ち上げた瞬間に形が変わったり、ねじれたりします。決まった位置をつかむだけでは安定しにくいため、ロボットにとって難しい作業です。両社はMOTOMAN NEXTを使い、ソフトバンクのGPUクラウド上の学習・評価環境も活用して、柔軟物を安定して扱うことと開発工程の効率化を確認しました。
これは実証段階の成果です。全国の工場で同じ仕組みがすでに標準導入されているという意味ではありません。
トヨタのGR KART工房では実際の生産工程に導入
実用化の具体例が、GAZOO Racingと安川電機が共同開発したAI溶接システムです。2026年9月、愛知県蒲郡市の蒲郡GR KART工房で、MOTOMAN NEXTを使ったパイプフレームの溶接技術が生産工程に導入されました。
この技術では、組み付けたフレームのすき間や状態を認識して溶接条件を判断するだけでなく、溶接後の外観、音、各種データを分析して品質確認や補正まで行います。職人の経験に頼ってきた判断工程を自動化する仕組みで、発表された実例は実生産ラインへの導入です。
2024年に開発された「SFA工法」では、従来2〜3週間かかっていた競技車両のロールケージ製作期間を3日へ短縮した実績も発表されています。ただし、この短縮値は先に開発されたSFA工法に関する実績であり、2026年に導入されたAIロボット単独の効果を表す数字ではありません。
MujinやToroboとどう違う?
同じフィジカルAIでも、目指す作業は異なります。MOTOMAN NEXTは、産業用ロボットアームを中心に、AIで作業の幅を広げるシリーズです。一方、東京ロボティクスのToroboは、2本の腕と力制御による多様な接触作業を研究する人型ロボットです。構造や用途は、Toroboの価格と性能を紹介した記事で詳しく解説しています。
物流倉庫でさまざまな段ボールを店舗別に積み付ける仕組みについては、MujinのAI物流ロボットを紹介した記事で説明しています。どちらもAIと現実の機械を組み合わせますが、対象となる作業と制御の仕組みは同じではありません。
まとめ
MOTOMAN NEXTは、安川電機が2023年から販売する自律機能付き産業用AIロボットです。NEX4からNEX35などの機種があり、価格は個別見積もりとなります。Gemini Roboticsとの連携や柔軟物の実証に加え、GR KART工房の溶接工程ではすでに実用化されています。
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