便潜血検査が陽性でも「もう1度検便」はしない
大腸がん検診を受けて「便潜血陽性」と判定されたとき、痔を理由に様子を見たり、もう1度検便して確かめようとしたりする人がいます。『あしたが変わるトリセツショー(緊急対策!「大腸がん」切り札プレゼント)(2026年9月3日)』で重要なテーマの1つとなるのが、検診後の精密検査まで受け切ることです。陽性の意味と、その後に必要な検査を整理します。
この記事でわかること
- 便潜血検査が1日分だけ陽性だった場合の対応
- もう1度便潜血検査をするのが適切でない理由
- 痔があっても精密検査が必要な理由
- 大腸内視鏡検査まで受けることが重要な理由
便潜血陽性はもう1度検便せず精密検査へ進む
大腸がん検診では一般的に、2日分の便を使った便潜血検査が行われます。
ここで覚えておきたいのが、2日とも陽性にならなければ精密検査にならないわけではないことです。
1日分だけでも陽性なら、精密検査の対象です。
そして、陽性だった後に「念のため、もう1度便潜血検査をしてみよう」という方法は、精密検査の代わりにはなりません。
理由は、大腸がんやポリープから毎日必ず出血するとは限らないからです。
最初の検査では血液が検出されても、次の日には出血しておらず陰性になることがあります。
そのため、
「2回目は陰性だったから大丈夫」
とは判断できません。
便潜血検査は大腸がんを確定する検査ではなく、詳しく調べる必要がある人を見つける入口の検査と考えると分かりやすいでしょう。
痔があっても「痔の血だろう」で終わらせない
便潜血検査で陽性になったとき、特に迷いやすいのが痔のある人です。
「昔から痔があるから、その血が混じっただけでは?」
と考えたくなります。
しかし、痔があるからといって、便潜血陽性の原因を痔だけと判断することはできません。
大腸がんや大腸ポリープでも出血するため、どこから出血したのかを便潜血検査だけで区別することはできないからです。
日本消化器がん検診学会も、痔の有無にかかわらず便潜血が陽性になれば精密検査を受ける必要があるとしています。
特に危ないのは、
「痔がある」
↓
「だから陽性になった」
↓
「内視鏡検査は必要ない」
と自己判断してしまうことです。
痔があることと、大腸に別の病変がないことは同じ意味ではありません。
便潜血陽性でも大腸がん確定ではない
一方で、陽性という結果を見て、
「大腸がんになった」
と考える必要もありません。
便潜血検査は、便の中に含まれるヒトの血液成分を調べる検査です。陽性は「血液が検出された」という意味であり、「大腸がんが確定した」という診断ではありません。
国立がん研究センターがまとめた2024年度版の大腸がん検診ガイドラインでは、現在使われている**便潜血検査免疫法の感度は84%、特異度は92%**とされています。
感度84%とは、大腸がんがある人のうち検査で陽性になる割合を示す指標です。
一方で、がんがなくても陽性になる人はいます。
同ガイドラインでは、免疫法について大腸がん1例を発見するために必要となる精密検査数を示すNNSは13と算出されています。
これは「陽性者13人に必ず1人ががんになる」という個人の確率を表した数字ではありませんが、陽性だから即がん確定ではない一方、精密検査を省略できる結果でもないことがよく分かります。
精密検査は全大腸内視鏡検査が基本になる
便潜血検査で陽性になった場合、精密検査として基本になるのが全大腸内視鏡検査です。
肛門から内視鏡を入れ、
直腸
↓
結腸
↓
大腸の奥
まで観察します。
便潜血検査との大きな違いは、大腸の中を直接見ることができる点です。
疑わしい病変が見つかった場合には組織を採取して調べることができ、病変によっては内視鏡による切除につながることもあります。
内視鏡を大腸全体に通すことが難しい場合などには、状況に応じて別の方法が検討されることがあります。
ただし、
便潜血検査 → 陽性 → もう1度便潜血検査
という流れは、精密検査にはなりません。
豊橋市も2026年度の大腸がん検診案内で、便潜血検査の再検査は精密検査として不適切と明記しています。
大腸がん検診は「陽性を見つけて終わり」ではない
大腸がん対策で大きな課題になっているのが、検診だけ受けて精密検査まで進まない人がいることです。
国立がん研究センターが示した令和2年度のデータでは、大腸がん検診で精密検査が必要になった人の**精密検査受診率は71.4%**でした。
同じデータでは、
- 乳がん検診:90.1%
- 肺がん検診:83.4%
- 胃がん検診:81.2%
- 子宮頸がん検診:76.7%
- 大腸がん検診:71.4%
となっており、5つのがん検診の中で大腸がんが最も低くなっています。
つまり、およそ3割が精密検査までつながっていない計算です。
せっかく便潜血検査で「詳しく調べたほうがよい」というサインを拾えても、その先の検査を受けなければ早期発見の機会を逃してしまいます。
大腸がん検診は、
便を提出するところがゴールではなく、必要な人が精密検査まで受けるところまでが一連の流れ
なのです。
2026年は「精密検査を受けていない人」にも自治体から案内が届く
2026年の取り組みが興味深いのは、まだ大腸がん検診を受けていない人だけが対象ではないことです。
自治体によっては、検診で要精密検査となったにもかかわらず、その後の検査を受けていない人にも受診を促しています。
松江市では、2025年度の大腸がん検診で精密検査が必要と判定され、その後精密検査を受けていない人へ受診勧奨の手紙を発送しています。
高槻市でも、大腸がん検診または精密検査の未受診者へ、受診を促すはがきを送付します。
ここは今回の大規模な取り組みの中でも重要なポイントです。
「検診を受ける人を増やす」だけではなく、
陽性になった人を精密検査までつなげる
ところまで対象が広がっています。
最近大腸内視鏡を受けたばかりでも自己判断しない
少し迷うのが、
「数か月前に大腸内視鏡を受けて異常なしだったのに、今回の便潜血検査が陽性になった」
というケースです。
この場合については、直近の大腸内視鏡検査後に便潜血陽性となった際、再度内視鏡が必要かどうかについて一律の方針は定められていません。
そのため、自分で「最近見てもらったから大丈夫」と決めるのではなく、前回内視鏡検査を担当した医師などに相談することが勧められています。
過去に異常がなかったことと、今回の陽性結果を無視してよいことは別です。
血便や便が細くなる症状があるなら検診ではなく受診する
便潜血検査についてもう1つ間違えやすいのが、「便に血が付いているから大腸がん検診を受けよう」という考え方です。
がん検診は基本的に自覚症状がない人を対象に、病気を早く見つけるためのものです。
血便のほか、
- 便が以前より細くなった
- 腹痛が続く
- 下痢と便秘を繰り返す
- 残便感が続く
- 貧血を指摘された
- 原因の分からない体重減少がある
といった症状がある場合は、次の検診まで待つのではなく医療機関を受診することが大切です。
大腸がん検診で覚えておきたいのは、とてもシンプルです。
陰性なら定期的な検診を続ける。
陽性なら精密検査へ進む。
症状があるなら検診を待たず受診する。
特に「もう1度検便して陰性なら安心」という判断をしないことが、せっかく見つかった早期発見のチャンスを生かすために重要です。
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