一人暮らしの生活費17万円台でも「家賃込み」と考えると危ない
1人なら生活費はそれほどかからないと思っていても、実際に部屋を借りると想像以上にお金が残らないことがあります。『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』からもう1つ掘り下げたいのが、一人暮らしに毎月いくら必要なのかという問題です。2025年の平均支出は17万円台ですが、特に「住居費」の読み方には注意が必要です。
この記事でわかること
- 一人暮らしの平均生活費17万3042円の内訳
- 34歳以下では月17万7542円かかっていること
- 平均住居費が2万~3万円台と安く見える理由
- 物価高で単身世帯が実際に減らしている支出
一人暮らしの平均生活費は月17万3042円
(出典:CDエナジーダイレクト)
2025年の単身世帯の消費支出は、1世帯当たり1か月平均17万3042円でした。
前年より支払った金額は名目で2.1%増えています。
ところが物価変動の影響を取り除くと、消費支出は実質1.5%減。しかも実質減少は3年連続です。
つまり、
財布から出ていく金額は増えている
↓
それでも実際に買えるモノやサービスは減っている
という状況です。
「去年と同じように暮らしているだけなのにお金が残らない」という感覚が生まれやすい理由が、この数字にも表れています。
34歳以下では平均17万7542円かかる
若い一人暮らしに近い数字もあります。
2025年の家計調査では、34歳以下の単身世帯の消費支出は月17万7542円でした。
主な内訳は次の通りです。
- 食料:4万1992円
- 住居:3万5060円
- 光熱・水道:8291円
- 家具・家事用品:5895円
- 被服・履物:6013円
- 保健医療:6735円
- 交通・通信:2万640円
- 教養娯楽:2万4242円
- その他:2万8513円
若い世代でも、食費・住居・交通通信だけで約9万8000円になります。
さらに教養娯楽や医療、衣服、日用品などを加えれば17万円台になるわけです。
ここだけを見ると、
「手取り20万円なら2万円以上残せる」
と思うかもしれません。
しかし、この平均値には非常に大きな注意点があります。
住居費3万5060円を「平均家賃」と考えてはいけない
34歳以下の住居費は月平均3万5060円。
「今どき家賃3万5000円で住めるの?」
と違和感を覚える人もいるでしょう。
この数字は賃貸住宅を借りている人だけの平均家賃ではありません。
家計調査は世帯が実際に支払った費用を集計する調査です。
持ち家の場合、家賃を払っていないからといって「この家を借りたら月8万円」といった架空の家賃を生活費へ加えることはありません。
総務省も、家計調査では実際に支払った借家・借間の家賃などのみを計上し、持ち家の「帰属家賃」は含めないと説明しています。
さらに単身世帯には、
持ち家
民営借家
公営住宅
会社などの給与住宅
といった異なる住居形態があります。
そのため全体を平均すると、一般の不動産情報で見るワンルームの家賃よりかなり低くなることがあります。
3万5060円は「34歳以下ならこの家賃で探せばいい」という基準ではありません。
単身世帯全体では住居費が月2万1667円まで下がる
さらに驚くのが、年齢を限定しない単身世帯です。
2025年の単身世帯全体では、
住居費は月2万1667円
でした。
一人暮らしの平均生活費17万3042円の中に含まれる住居費が、わずか2万円台です。
その背景には、単身世帯全体の平均年齢が58.6歳と高いこともあります。
住宅ローンを払い終えた持ち家に1人で住んでいる人なども含まれるため、これから賃貸住宅を借りる20代・30代の生活費とは条件が違います。
だからこそ、
「一人暮らし平均17万3042円だから、自分も17万円あれば大丈夫」
とは考えないほうが安全です。
実際に家賃を払う人は、自分が住みたい地域の家賃を別に確認して家計を組み立てる必要があります。
全国平均17万円台と「東京で20万円以上かかる」は矛盾しない
全国平均を見ると生活費は17万円台。
一方、都市部で実際に一人暮らしをしていると、
「20万円では全然余裕がない」
ということも珍しくありません。
これは、住居費の違いを考えれば不思議ではありません。
たとえば統計上の住居費が3万5000円でも、実際の家賃が7万円なら、それだけで約3万5000円上乗せされます。
17万7542円
+家賃差3万5000円
なら、単純計算で21万円を超えます。
家賃8万円、9万円の地域ならさらに増えます。
もちろん他の支出も人によって異なるため、この足し算がそのまま必要生活費になるわけではありません。
ただ、「全国平均」と「都市部で部屋を借りる人の実感」が大きく違う理由として、住居費の平均方法は知っておきたいところです。
食費は単身世帯で月4万9321円まで上がっている
一人暮らしで大きな負担になっているのが食費です。
2025年の単身世帯全体では、食料への支出が月平均4万9321円でした。
一方、物価変動の影響を除いた実質では前年より4.2%減少しています。
これは重要な変化です。
単純に、
「みんな節約して食費を減らした」
と考えるだけでは足りません。
食品価格が上がれば、以前と同じ金額を払っても買える量は少なくなります。
食費として多くのお金を出しながら、実質的な消費は減るということが起こります。
一人暮らしでは食品を家族で分けられず、少量の商品を購入することも多いため、食費を抑えにくい場面もあります。
交通・通信も実質8.5%減少している
2025年の単身世帯では、交通・通信への支出は月平均1万9334円でした。
実質では前年より8.5%減少しています。
被服・履物も実質7.6%減。
住居も実質9.6%減となっています。
反対に、その他の消費支出は実質11.4%増えました。
家計全体では項目ごとの動きがかなり異なります。
生活費が高くなったとき、人は食事そのものを完全になくすことはできません。
そのため、
洋服を買う回数を減らす
外出を減らす
大きな買い物を先送りする
といった形で調整することになります。
単身世帯の実質消費が3年連続で減っているという数字は、こうした「使わないことで家計を守る」状況とも重なります。
働く単身世帯では平均生活費が約19万1500円になる
単身世帯全体には高齢者や無職世帯も含まれます。
そこで、仕事をしている単身・勤労者世帯だけを見ると状況が変わります。
2025年の1か月平均消費支出は約19万1500円。
食料が約4万5800円、その他が約3万6500円、住居が約3万300円となっています。
さらに年代別では、
34歳以下:約17万9200円
35~59歳:約20万5700円
となります。
仕事をしている35~59歳の単身者では、月20万円を超える支出が平均になっています。
「一人なら生活費は15万円程度」と一律に考えると、かなり窮屈になる人が出てくる理由です。
最低生計費340万円と月17万円台は比較する数字が違う
ここまでの記事を読んできた人なら、
「一人暮らしの実際の平均支出が17万円台なら、年間340万円必要という最低生計費は高すぎない?」
と思うかもしれません。
この2つは調査の考え方が違います。
家計調査の17万3042円は、実際の世帯が1か月に使った消費支出の平均です。
しかも平均年齢58.6歳で、持ち家の人なども含まれます。
一方、最低生計費は、若い単身者が自立して社会生活を送るために必要と考える品物やサービスを積み上げ、さらに税・社会保険料なども考慮して算出するものです。
したがって、
平均的に実際いくら使っているか
と、
一定の生活水準を維持するにはいくら必要か
は別の問いです。
むしろ両者に差があること自体が、「必要と思う生活より実際の支出を削って暮らしている人がいる」という問題を考える材料になります。
一人暮らしの予算は「17万円+自分の家賃」で考えないほうがいい
生活費を組むときには、統計の平均額をそのまま使うより、自分の固定費から逆算したほうが現実的です。
まず確認したいのは、
実際の家賃
食費
光熱費
スマートフォン・ネット
交通費
保険・医療
日用品
です。
そのうえで、
娯楽
洋服
交際費
旅行
家電の買い替え
など年間を通じて発生する費用を加えます。
特に見落としやすいのが、毎月発生しない支出です。
冷蔵庫が壊れた
帰省した
結婚式に出席した
歯の治療をした
といった支出は、平均的な月だけを見ていると予算から漏れます。
生活費17万7542円という数字は、一人暮らしの家計を考える出発点にはなります。
ただし一番重要なのは、家賃3万5060円という統計上の平均を、自分が実際に払う家賃と置き換えて考えることです。
そこを間違えなければ、「一人暮らしを始めてみたら思ったより毎月残らない」という失敗をかなり減らせます。
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