平均貯蓄2059万円なのに「そんなに持っていない」と感じる理由
「みんな本当に2000万円も貯金しているの?」と驚く数字があります。『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』につながる2025年の家計調査では、二人以上世帯の平均貯蓄が2059万円と過去最多になりました。しかし平均以下の世帯は約3分の2。貯蓄ゼロ世帯まで含めた中央値は1167万円です。「平均」と実際の家計感覚がなぜここまでずれるのかを掘り下げます。
この記事でわかること
- 平均貯蓄2059万円でも約3分の2が平均以下になる理由
- 中央値1167万円と1264万円の違い
- 貯蓄には銀行預金以外も含まれること
- 30代・40代と60代では比較すべき金額が大きく違うこと
平均貯蓄2059万円でも約3分の2の世帯はそこまで持っていない
2025年の二人以上世帯における1世帯当たりの貯蓄現在高は、平均2059万円でした。
前年の1984万円から75万円増え、7年連続の増加。比較できる2002年以降では過去最多です。
ところが、ここには大きな落とし穴があります。
約3分の2の世帯が平均2059万円を下回っています。
つまり「平均が2059万円だから、日本の一般家庭は2000万円くらい貯めている」という理解では実態とかなりずれます。
貯蓄額は所得以上に世帯差が大きく、一部の多額の資産を保有する世帯が平均を押し上げるためです。
平均値を見て「うちは全然足りない」と焦る前に、中央値や年代まで確認する必要があります。
貯蓄ゼロを含めた中央値は1167万円
家計の真ん中を知るうえで参考になるのが中央値です。
中央値とは、貯蓄が少ない世帯から多い世帯まで順番に並べたとき、ちょうど真ん中になる世帯の金額です。
2025年は、
貯蓄を持つ世帯だけの中央値:1264万円
でした。
さらに貯蓄現在高が0円の世帯も含めると、
中央値:1167万円
になります。
平均2059万円と比べると892万円もの差があります。
平均より中央値のほうが「真ん中の家庭はいくらくらい持っているのか」を考える際には分かりやすい数字です。
「貯蓄2059万円」は銀行口座に2059万円あるという意味ではない
もう1つ大きな誤解があります。
家計調査の「貯蓄」は、銀行の普通預金や定期預金だけではありません。
2025年の平均2059万円の内訳を見ると、
- 通貨性預貯金:710万円
- 定期性預貯金:511万円
- 有価証券:440万円
- 生命保険など:369万円
- 金融機関外:29万円
となっています。
通貨性預貯金とは、普通預金など比較的自由に引き出せるお金です。
有価証券には株式や投資信託などが含まれます。
生命保険なども家計調査上の貯蓄に含まれるため、
「平均家庭の銀行口座に現金2059万円が置いてある」
ということではありません。
ここを知らずに自分の普通預金残高だけと比較すると、必要以上に少なく感じてしまいます。
2025年は預金より有価証券の増加が目立った
平均貯蓄が75万円増えた背景を見ると、現金をせっせと貯金しただけではないことも分かります。
普通預金などの通貨性預貯金は前年から18万円増えました。
一方、有価証券は63万円増加しています。
株式や投資信託などは価格が変動します。
そのため貯蓄現在高が増えたからといって、すべてが給料から新しく積み立てられたお金とは限りません。
投資商品の価格上昇なども金融資産全体の金額に影響します。
「日本の家庭は物価高なのに75万円も現金を余分に貯められた」と読むのではなく、金融資産全体の評価額を含む数字として見ることが大切です。
40歳未満の平均貯蓄は994万円で60代は2843万円
平均2059万円を自分と比較するとき、特に重要なのが年齢です。
2025年の世帯主年代別の平均貯蓄は、
- 40歳未満:994万円
- 40~49歳:1381万円
- 50~59歳:1756万円
- 60~69歳:2843万円
- 70歳以上:2471万円
となっています。
40歳未満と60代では1849万円もの差があります。
若い世帯は働き始めてからの年数が短く、結婚、住宅購入、子育てなどで大きなお金が必要になる時期です。
一方、60代は長期間にわたって形成してきた貯蓄があり、住宅ローン返済が進んでいる家庭も増えます。
30代の人が「全世代平均2059万円」と比べて焦る必要がない理由です。
40歳未満は貯蓄が増えても住宅ローンのほうが大きい
若い世代については、貯蓄だけを見ても家計の状態は分かりません。
40歳未満の平均貯蓄は994万円ですが、平均負債は1882万円。
貯蓄より負債が888万円多い状態です。
ただし、負債の大部分は住宅・土地のための借入です。
つまり、
貯金がないから借金をしている
という単純な構造ではありません。
住宅という資産を取得するため、数千万円の住宅ローンを抱えている家庭が多いことが数字に表れています。
50歳未満では負債が貯蓄を上回り、50歳以上になると貯蓄が負債を上回るという大きな変化もあります。
人生のどの段階にいるのかによって、「十分な貯蓄」の意味は変わります。
年収681万円に対して平均貯蓄は約3年分
2025年の二人以上世帯の年間収入は平均681万円でした。
平均貯蓄2059万円を年間収入で割った「貯蓄年収比」は302.3%です。
単純に見ると、平均貯蓄は年収の約3年分に相当します。
ただし、これも「3年間まったくお金を使わず貯金した」という意味ではありません。
住宅購入前から積み立ててきた預金、保険、有価証券などを長期間蓄積した結果です。
さらに60代では平均年間収入646万円に対して貯蓄2843万円、貯蓄年収比は440.1%。
70歳以上では年間収入442万円に対し貯蓄2471万円で、559.0%まで上がります。
現役時代に蓄えた資産を老後に保有している世帯が多いため、全世代平均を押し上げる要因になります。
「2000万円問題」と平均貯蓄2059万円は同じ意味ではない
平均貯蓄が2059万円と聞くと、「老後2000万円問題」を思い出す人もいるでしょう。
しかし、この2つをそのまま結びつけることはできません。
平均貯蓄2059万円は、40歳未満から70歳以上までを含む二人以上世帯の金融資産の平均額です。
「老後に全員が2059万円必要」という数字ではありません。
老後に必要な金額は、
持ち家か賃貸か
住宅ローンが残っているか
受け取る年金額
夫婦か単身か
医療や介護費
生活水準
などで大きく変わります。
若いうちから「2000万円に届いていないから危険」と考えるのではなく、自分の年代と将来の支出に合わせて考えるほうが現実的です。
200万円未満の世帯も15.5%ある
平均値だけでは見えないもう1つの数字があります。
2025年の貯蓄額別分布では、**200万円未満の世帯が15.5%**を占めています。
一方、4000万円以上の世帯も15.2%あります。
両端にかなり多くの世帯が存在しています。
200万円未満
↓
数百万円
↓
1000万円台
↓
2000万円台
↓
4000万円以上
と家庭ごとの差が非常に大きいため、平均を1本出しただけでは「普通」が分かりにくいのです。
平均2059万円という数字を見て違和感を持つのは、不思議なことではありません。
貯蓄が過去最高でも暮らしが楽とは限らない
興味深いのは、平均貯蓄が比較できる2002年以降で最高になっている一方、生活の苦しさを訴える世帯も多いことです。
この2つは矛盾しているように見えます。
しかし貯蓄は「これまで蓄えてきた資産」、生活の余裕は「現在の収入と支出」の問題です。
老後のための貯蓄が2000万円あったとしても、
住宅ローン
教育費
食費
電気代
社会保険料
など毎月の負担が大きければ、気軽にその貯蓄を取り崩すことはできません。
さらに株式や保険まで含む金融資産は、スーパーでの買い物にそのまま使える現金とも違います。
資産があることと、毎月自由に使えるお金が多いことは別です。
この違いが、中流層の「数字では豊かに見えるのに生活には余裕がない」という感覚につながります。
自分の貯金を比べるなら平均2059万円より3つを見る
自分の家計を知りたいとき、全世代の平均2059万円だけと比較するより、
中央値
同じ年代の平均
住宅ローンなどの負債
を見るほうが分かりやすくなります。
2025年なら、貯蓄ゼロを含めた中央値は1167万円。
40歳未満の平均は994万円、40代は1381万円、50代は1756万円です。
そして若い世代では住宅ローンによる負債も大きくなります。
「平均2059万円ないから遅れている」と考えるより、
生活費何か月分の現金があるか
住宅ローンは無理なく返せているか
毎月貯蓄を続けられているか
将来必要になる教育・住宅・老後資金に備えられているか
を確認するほうが、自分の家計には役立ちます。
日本の平均貯蓄が過去最高になったという数字の裏には、平均より少ない世帯が約3分の2を占めるという、まったく別の現実があります。
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