40歳未満は「貯蓄より負債が多い」が珍しくない
住宅を買い、子育てを始め、収入も少しずつ増えていく30代。それでも家計全体では大きな借金を抱える時期でもあります。『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』につながる2025年の家計データでは、世帯主40歳未満の二人以上世帯で貯蓄994万円に対して負債1882万円。住宅ローンを中心に、若い世帯ほど「資産はあるのに余裕がない」構造が見えてきます。
この記事でわかること
- 40歳未満世帯の負債が平均1882万円になる理由
- 貯蓄994万円あっても負債超過になる仕組み
- 負債がある40歳未満世帯だけを見ると平均2927万円になること
- 住宅ローン返済世帯が抱える貯蓄と負債の実態
40歳未満は貯蓄994万円に対して負債1882万円
(出典:住宅金融支援機構) 住宅金融支援機構
2025年の二人以上世帯を世帯主の年代別に見ると、40歳未満の平均貯蓄現在高は994万円でした。
一方、負債現在高は1882万円です。
差し引くと、
994万円-1882万円=マイナス888万円
となります。
つまり平均的には、貯蓄などの金融資産より負債のほうが888万円多い状態です。
40~49歳でも貯蓄1381万円に対して負債1483万円となり、50歳未満では負債が貯蓄を上回っています。50代になると貯蓄1756万円、負債743万円となり、関係が逆転します。
これは若い世代ほど浪費しているという意味ではありません。
大きな理由は住宅です。
40歳未満の負債1882万円の大部分は住宅・土地
40歳未満世帯の負債1882万円のうち、住宅・土地のための負債は1768万円です。
単純に割合を計算すると約94%を占めます。
家計全体でも住宅・土地関連の負債は大きく、2025年の二人以上世帯では平均負債675万円のうち620万円、**91.9%**が住宅・土地関連でした。
つまり若い家庭が抱える負債の中心は、日常の買い物やカード利用というより住宅購入に伴う借入です。
30代前後は、
結婚
住宅購入
出産
子育て
車の購入
など、大きなお金が動きやすい時期です。
将来の資産になる住宅を取得するためにローンを組めば、預金がある家庭でも家計上は大きな負債を抱えます。
「借金が多い=生活が破綻している」とは限らないところが重要です。
負債がある40歳未満世帯だけなら平均2927万円
数字を見るときに特に注意したいのが、1882万円と2927万円の違いです。
1882万円は、負債がない家庭も含めた40歳未満の二人以上世帯全体の平均です。
一方、実際に負債を持つ世帯だけに限定すると、平均負債現在高は2927万円になります。
そのうち住宅・土地のための負債は2749万円。
同じ負債保有世帯の貯蓄現在高は1029万円なので、
1029万円-2927万円=マイナス1898万円
です。
2024年の負債超過額1831万円からさらに拡大しています。
住宅ローンを抱えている若い世帯に限って見ると、「数百万円の借金」ではなく、2000万~3000万円規模の負債を抱えながら暮らしている家庭が平均像になることが分かります。
40~49歳は67.0%が何らかの負債を抱えている
負債の金額だけでなく、どのくらいの家庭が借入をしているのかも重要です。
2025年の負債保有世帯の割合は、
40歳未満:64.3%
40~49歳:67.0%
50~59歳:53.7%
60~69歳:26.5%
70歳以上:10.4%
となっています。
最も高いのは40代です。
40代は住宅ローン返済に加え、子どもの教育費が増え始める家庭も多い年代です。
収入そのものは20代や30代より増えていても、
住宅ローン
教育費
食費
保険
車
税・社会保険料
などの支出が同時に膨らむ可能性があります。
「給料は昔より高いのに、なぜ余裕がないのか」という中流世帯の感覚を考えるうえで、負債を無視することはできません。
住宅ローン返済世帯の負債は平均2076万円
さらに住宅ローンを返済している家庭だけを見ると、より実態が分かります。
二人以上の勤労者世帯のうち持ち家世帯では、住宅ローンを返済中の世帯主の平均年齢は47.0歳。
平均貯蓄現在高は1300万円でした。
一方、負債現在高は2076万円です。
差し引くと776万円の負債超過になります。
対照的なのが住宅ローン返済のない持ち家世帯です。
こちらは世帯主の平均年齢57.1歳で、貯蓄2338万円に対して負債371万円。
住宅ローンを返している時期と返済が終わった時期では、同じ「持ち家世帯」でも家計の姿がまったく違います。
貯蓄平均2059万円を見て焦る必要はない
家計の話では「日本人の平均貯蓄は2000万円を超えている」という数字も出てきます。
2025年の二人以上世帯の平均貯蓄現在高は2059万円で、比較可能な2002年以降で最多となりました。
しかし、約3分の2の世帯はこの平均額を下回っています。
0円の世帯も含めた中央値は1167万円です。
さらに年代差があります。
40歳未満の平均貯蓄は994万円なのに対し、60代では2843万円、70歳以上では2471万円。
すべての年代を一緒にした2059万円と、住宅を購入したばかりの30代世帯を比較してもあまり意味がありません。
「平均貯蓄2000万円もない」と焦るより、
自分と同じ年代
同じ家族構成
住宅ローンの有無
を近づけて比較したほうが、家計の状態を判断しやすくなります。
負債が大きくても年収が高ければ安心とは限らない
興味深いことに、所得が高くなるほど負債も大きくなる傾向があります。
二人以上の勤労者世帯を年間収入が低い順に5つに分けると、最も所得が低いグループでは平均負債421万円。
最も所得が高いグループでは1465万円でした。
収入が高いほど住宅の購入価格が高くなったり、大きな住宅ローンを組めたりするためです。
そのため、
「借金が多いから貧しい」
とも、
「年収が高いから家計は安全」
とも単純には言えません。
大切なのは負債の総額だけでなく、
毎月の返済額
金利
完済予定年齢
生活防衛資金
教育費
老後資金
まで含めて見ることです。
住宅ローンは「資産を買う借金」でも返済額は毎月の生活を圧迫する
住宅ローンには、カードローンなどとは違う特徴があります。
借入と引き換えに住宅という資産を取得するためです。
たとえば3000万円借りても、同時に3000万円前後の価値を持つ住宅を手に入れているのであれば、「3000万円分生活に使って消えてしまった」という話ではありません。
一方、家計という視点では毎月の返済が必要です。
住宅価格が上がれば借入額も膨らみやすくなります。
住宅金融支援機構の2025年度調査でも、住宅購入者の年齢、世帯年収、購入資金、融資額などが継続して調査されており、住宅取得と家計負担は長期的に考える必要があります。
住宅を買えたことと、毎月余裕を持って暮らせることは別です。
30代・40代が見るべきなのは「貯金額」より純貯蓄額
家計を確認するときは預金残高だけを見ると、少し安心してしまうことがあります。
たとえば貯蓄1000万円なら、かなり蓄えているように見えます。
しかし住宅ローンが2500万円残っていれば、
1000万円-2500万円=マイナス1500万円
です。
これが純貯蓄額の考え方です。
もちろん自宅の市場価値はこの計算に含まれていないため、純資産そのものとは異なります。
それでも、金融資産と負債のバランスを見る数字としては役立ちます。
40歳未満の負債保有世帯では2025年の純貯蓄額がマイナス1898万円でした。
若い時期にマイナスになること自体は、住宅ローンを組めば珍しくありません。
重要なのは、
ローン残高が毎年減っているか
貯蓄を増やせているか
急な出費に対応できる現金があるか
です。
「中流なのに余裕がない」は負債まで見ると分かりやすい
年収や貯蓄額だけを見ると、30代・40代の世帯はそれほど困っていないように映ることがあります。
しかし家計にはもう一方に負債があります。
40歳未満の二人以上世帯では、
貯蓄994万円
負債1882万円
負債を持つ家庭だけなら、
貯蓄1029万円
負債2927万円
です。
住宅を所有し、一定の貯蓄と収入があり、外から見れば「中流」といえる家庭でも、住宅ローンや教育費などを考えれば自由に使えるお金はそれほど多くないことがあります。
「資産を持っているのに生活は苦しい」という一見矛盾した状況は、年収や貯金だけではなく、負債を含めた家計全体を見ることで理解しやすくなります。
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