「中流の年収はいくら?」平均575万円より中央値451万円が実感に近い
「自分の収入は中流なのか」と考えても、基準になる金額が分かりにくいものです。『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』からもう1つ掘り下げたいのが、日本の中流をどの所得水準で見るかという問題です。最新調査では世帯の平均所得は575万2000円ですが、真ん中に位置する中央値は451万円。この124万円の差に、平均だけでは見えない日本の家計が表れています。
この記事でわかること
- 日本の中流を「年収○万円」と簡単に決められない理由
- 平均所得575万円と中央値451万円の違い
- 年代によって世帯所得の平均が大きく違うこと
- 平均所得が増えても55.4%が生活を苦しいと感じる理由
日本の「中流」は年収575万円ではなく中央値451万円から見ると分かりやすい
(出典:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」 所得の分布状況)
最初に結論を言うと、日本には「年収○万円から○万円までが中流」という1つの公的な基準があるわけではありません。
そのうえで一般的な家庭の所得水準を知りたいなら、平均所得だけでなく中央値451万円を見ることが大切です。
2025年国民生活基礎調査で示された2024年の1世帯当たり平均所得は575万2000円。
一方、すべての世帯を所得の低い順に並べ、ちょうど真ん中になる中央値は451万円でした。
差は124万2000円あります。
つまり、世帯所得575万円を「普通の家庭の収入」と考えると、実際の真ん中よりかなり高く見積もることになります。
なぜ平均575万円なのに61.5%の世帯が平均以下になるのか
一見すると不思議です。
平均が575万2000円なら、その半分くらいの家庭が平均より上、半分が下になりそうに感じます。
しかし実際には、61.5%の世帯が平均所得575万2000円以下です。
理由は所得の分布が左右対称ではないためです。
最も割合が大きい所得帯を見ると、
- 100万円以上200万円未満:12.2%
- 200万円以上300万円未満:13.5%
- 300万円以上400万円未満:13.0%
- 400万円以上500万円未満:9.6%
- 500万円以上600万円未満:9.1%
となっています。
200万円台、300万円台に多くの世帯が集中する一方、1000万円、1500万円、2000万円以上という高所得世帯も存在します。
たとえば9世帯が400万円で、1世帯だけ2000万円なら、
400万円×9世帯+2000万円=5600万円
平均は560万円です。
しかし10世帯のうち9世帯は平均以下になります。
平均所得が「多数派の所得」と一致しない理由はここにあります。
中央値451万円は「個人の年収451万円」という意味ではない
ここもかなり重要です。
451万円は、会社員1人の給与年収ではありません。
世帯全体の所得の中央値です。
夫婦共働きなら2人の所得などが含まれますし、高齢者世帯では年金なども所得に含まれます。
同じ調査では、1世帯当たりの平均所得575万2000円に対して、世帯人員1人当たりの平均所得は259万2000円となっています。
そのため、
「自分の会社員年収が451万円だから、日本のちょうど真ん中」
と単純には判断できません。
個人の給与と世帯所得は別の数字です。
特に結婚して共働きになれば、個人の給与がそれほど変わらなくても世帯所得は大きく上がります。
OECDの「中間所得層」は中央値の75%から200%が目安
「中流」を所得から考えるとき、国際的によく使われる考え方もあります。
OECDでは、中間所得層を各国の所得中央値の75%以上200%以下に位置する人たちとして分析しています。
ただし、ここで注意したいことがあります。
OECDが使うのは、税金などを考慮した**可処分所得を世帯人数に合わせて調整した「等価可処分所得」**です。
一方、国民生活基礎調査の451万円は世帯の所得中央値。
この2つは違う数字なので、
451万円×75%=約338万円
451万円×200%=902万円
として「338万~902万円が日本の中流」とそのまま決めることはできません。
考え方として「中央値を中心に中間層を見る」ことは参考になりますが、451万円を直接OECD基準に当てはめないことが大切です。
年代別では30代646万円・40代761万円・50代814万円
「自分は451万円より上だから中流以上」と考える前に、もう1つ見たいのが年代です。
世帯主の年齢別に1世帯当たり平均所得を見ると、
- 29歳以下:364万3000円
- 30~39歳:646万9000円
- 40~49歳:761万8000円
- 50~59歳:814万6000円
- 60~69歳:617万円
- 70歳以上:405万円
となっています。
最も高いのは50代です。
働き始めたばかりの20代と、夫婦ともにキャリアを重ねた50代では、同じ所得額でも位置づけが違います。
さらに50代は収入が高くなりやすい一方、住宅ローンや大学進学など大きな支出が重なる家庭もあります。
所得が高い年代=生活に最も余裕がある年代とも限りません。
30代の平均646万円も1人で稼ぐ年収とは限らない
年代別の数字を見る場合も、「年収」と「世帯所得」を混同しないことが重要です。
30代の646万9000円は、
30代会社員の平均給与が646万円
という意味ではありません。
世帯主が30~39歳の家庭について、世帯全体の所得を平均した数字です。
共働きなら、
夫400万円
妻250万円
という家庭でも世帯としては650万円になります。
逆に1人で650万円を稼いでいる世帯と、夫婦2人で650万円を得ている世帯では、働く人数も生活環境も違います。
「自分は平均より少ない」と落ち込む前に、比較している統計が個人なのか世帯なのかを見ることが大切です。
平均所得は2023年536万円から575万円へ増えた
所得そのものは直近で大きく増えています。
全世帯の平均所得は、
2022年:524万2000円
2023年:536万円
2024年:575万2000円
となりました。
2023年から2024年では7.3%増です。
数字だけならかなり明るい変化に見えます。
中央値も前年の410万円から451万円へ上昇しました。
平均だけが一部の高所得世帯に押し上げられたわけではなく、家計の真ん中を示す中央値も上昇しています。
それでも「生活が楽になった」という声ばかりにはなっていません。
所得が増えても55.4%が生活を「苦しい」と回答
2025年の生活意識調査では、
大変苦しい:23.2%
やや苦しい:32.2%
合わせて**55.4%**の世帯が生活を「苦しい」と答えました。
半数を超えています。
ここが「中流クライシス」を理解するうえで非常に重要な数字です。
所得が増えていることと、生活の負担感が強いことは同時に起こり得ます。
収入が5%増えても、
食品
電気・ガス
家賃
住宅ローン
社会保険料
教育費
車関連費
などが増えれば、自由に使えるお金まで同じ割合で増えるとは限りません。
前の記事で取り上げたエンゲル係数や最低生計費にもつながる問題です。
「平均より下だから低所得」とはならない
平均所得575万円より低いと、自分は日本の中でも所得が低いのではないかと感じるかもしれません。
しかし、平均以下の世帯は**61.5%**あります。
つまり平均以下であること自体は珍しくありません。
さらに、所得400万円の単身世帯と、所得400万円で子どもが2人いる世帯では生活の余裕が違います。
持ち家で住宅ローンを払い終えた家庭と、都市部で家賃10万円を支払う家庭でも違います。
所得額だけではなく、
世帯人数
住居費
子どもの人数
借入金
車の必要性
税・社会保険料
まで見なければ、本当の生活水準は分かりません。
「中流なのに苦しい」は矛盾していない
以前なら、「中流」という言葉には、
安定した仕事
住宅
結婚
子育て
時々の旅行
老後への貯蓄
といった生活像が重なっていました。
ところが現在は、一定の所得があっても、そのすべてを無理なく実現できるとは限りません。
平均所得575万2000円に対し中央値451万円。
平均以下の世帯が61.5%。
さらに生活が苦しいと答える世帯が55.4%です。
「中流かどうか」を判断するとき、年収だけを見る時代ではなくなっています。
生活費を支払ったあとに貯蓄できるか、将来の結婚・子育て・住宅・老後を選択できる余裕が残るか。
そこまで含めて考えたときに、「所得では中間層に見えるのに暮らしには余裕がない」という中流クライシスの姿が見えてきます。
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