子育て世帯の平均所得857万円でも暮らしが苦しい理由
世帯の所得が800万円を超えていれば、生活にはかなり余裕があるように見えるかもしれません。ところが『クローズアップ現代(中流クライシス 〜“ふつうの暮らし”はどこへ〜)(2026年9月2日)』につながる最新データを見ると、児童のいる世帯の平均所得は857万3000円なのに、61.5%が生活を「苦しい」と回答しています。子育て世帯で何にお金がかかっているのか、借入金や教育費まで含めて見ていきます。
この記事でわかること
- 平均所得857万3000円でも61.5%が「苦しい」と答える実態
- 857万円を「夫1人の年収」と考えてはいけない理由
- 子育て世帯の54.3%に借入金があること
- 小学校から高校まで実際にかかる教育費
平均所得857万3000円でも子育て世帯の61.5%が「苦しい」
まず結論から見ると、所得が800万円を超える世帯が多いからといって、子育て家庭に十分な余裕があるとはいえません。
2025年国民生活基礎調査では、2024年の「児童のいる世帯」の1世帯当たり平均所得は857万3000円でした。
全世帯の575万2000円を約282万円上回ります。
ところが生活意識では、児童のいる世帯の**61.5%**が「大変苦しい」または「やや苦しい」と回答しています。
全世帯の55.4%より6.1ポイント高い数字です。
「800万円以上あるのになぜ苦しいのか」という疑問は、857万円という数字の意味と、子育て家庭特有の支出を分けて考えると見えてきます。
857万円は「夫の年収857万円」という意味ではない
ここは特に間違えやすいところです。
857万3000円は1人の会社員が得ている給与年収ではなく、1世帯当たりの所得です。
夫婦それぞれに収入があれば、それらを含めた世帯全体の所得になります。
さらに調査でいう所得には給与だけでなく、事業所得、公的年金、社会保障給付なども含まれます。
児童のいる世帯では総所得857万3000円のうち、稼働所得が797万8000円、雇用者所得が750万7000円となっています。
そのため、
「子育て家庭では年収857万円の会社員が普通」
という意味ではありません。
夫婦2人で働いて世帯として800万円台になる家庭と、1人で800万円台を得る家庭では、働き方も保育や家事に使える時間も大きく違います。
平均575万円でも61.5%の世帯は平均以下になっている
「平均」という数字にも注意が必要です。
全世帯では平均所得が575万2000円ですが、所得の低い順に並べた真ん中にあたる中央値は451万円です。
平均と中央値の差は124万2000円あります。
さらに、全世帯の61.5%が平均所得575万2000円以下です。
これは、一部の所得が高い世帯によって平均値が上に引き上げられるためです。
所得分布を見ると、
- 200万円以上300万円未満:13.5%
- 300万円以上400万円未満:13.0%
- 100万円以上200万円未満:12.2%
が大きな割合を占めています。
つまり「平均所得=一般的な家庭の収入」と考えると、実際の生活感覚からずれることがあります。
子育て世帯の857万3000円という数字についても、平均だけを見て家計の余裕を判断しないことが大切です。
子育て世帯の54.3%には借入金がある
子育て家庭の家計を考えるうえで、かなり大きな数字があります。
児童のいる世帯では、**54.3%が「借入金がある」**と回答しています。
さらに、1世帯当たり平均借入金額は1226万2000円でした。
全世帯では借入金がある世帯は23.5%、平均借入金額は362万5000円です。
子育て世帯は借入金がある割合も、その金額も全世帯よりかなり大きくなっています。
年収や所得だけを見ると余裕がありそうでも、
毎月いくら返済する必要があるのか
によって実際に使えるお金は変わります。
所得800万円の家庭でも、住居、車、教育、日々の生活費などの固定支出が大きければ、自由に使えるお金が多いとは限りません。
公立でも小学生1人に年間33万6265円の学習費がかかる
(出典:三菱UFJ銀行「共働き世帯の年収」)
子育て家庭で避けられない大きな支出の1つが教育費です。
訂正後の子供の学習費調査では、保護者が子ども1人に1年間で支出した学習費総額は次のようになっています。
- 公立小学校:33万6265円
- 公立中学校:54万2475円
- 公立高校:59万7752円
- 私立小学校:182万8112円
- 私立中学校:156万359円
- 私立高校:103万283円
学習費総額には学校教育費だけでなく、給食費や塾・習い事などの学校外活動費も含まれます。
公立だけを選んでも、小学校から高校まで継続的に支出が発生します。
兄弟姉妹がいれば、同じ時期に2人分、3人分の教育費が重なることもあります。
「子どもが大きくなれば保育料がなくなるから楽になる」と単純にはいかず、成長に伴って別の支出へ移っていくところが子育て家計の難しさです。
子育て世帯の「苦しい」は3年前より6.8ポイント上昇
生活の苦しさは以前から高かったものの、数字はさらに上がっています。
前回の大規模調査にあたる2022年では、児童のいる世帯で「苦しい」と答えた割合は**54.7%**でした。
2025年は61.5%なので、6.8ポイント上昇しています。
同じ期間に全世帯でも51.3%から55.4%へ上昇しました。
子育て世帯では、それ以上の幅で「苦しい」が増えています。
所得だけを見ると状況は反対です。
児童のいる世帯の平均所得は、2021年の785万円から2024年には857万3000円まで増えています。
所得金額は増えたのに、生活を苦しいと感じる家庭も増えた。
この2つが同時に起きていることが重要です。
平均所得857万円という数字だけでは生活水準を判断できない
子育て家庭の生活を見るとき、「年収800万円なら十分」「500万円なら苦しい」といった1本の線で区切るのは難しくなっています。
家庭によって、
住居費
子どもの人数
教育費
車の有無
借入金
働く人数
税・社会保険料
が違うからです。
さらに児童のいる世帯では、平均所得が857万3000円ある一方で、61.5%が生活を苦しいと感じ、54.3%には借入金があります。
「平均以上稼いでいるのだから余裕があるはず」と外から判断するだけでは、家計の実態は見えません。
母子世帯では82.1%が生活を「苦しい」と回答
さらに厳しい状況にあるのが母子世帯です。
2025年の生活意識では、母子世帯の**82.1%**が生活を「苦しい」と回答しました。
平均所得は345万3000円。
児童のいる世帯全体の857万3000円とは500万円以上の差があります。
母子世帯では「貯蓄がない」割合も21.8%となっています。
子育て世帯という大きなくくりの平均値だけでは、こうした家庭ごとの差も隠れてしまいます。
「中流なのに苦しい」の正体は収入ではなく残るお金にある
今回の数字で最も印象的なのは、
平均所得857万3000円
↓
それでも61.5%が生活を苦しいと感じている
という組み合わせです。
大切なのは所得の額面だけではありません。
そこから住居費、税金、社会保険料、食費、教育費、交通費、借入金の返済などを支払ったあと、毎月いくら残るのかです。
子どもがいる家庭では、将来の高校・大学進学に備えた貯蓄まで必要になります。
「生活できている」と「将来に備えながら余裕を持って暮らせる」の間には、大きな差があります。
平均所得857万円なのに6割以上が苦しいという数字は、まさに現在の「中流クライシス」を象徴するデータといえます。
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