新弟子が通う「相撲の学校」相撲教習所で学ぶこと
力士は相撲部屋に入れば、そこで稽古をするだけ――と思われがちですが、実は新弟子には全員が通う「学校」があります。それが東京・両国国技館の敷地内にある相撲教習所です。
2026年9月11日放送のテレビ朝日系「タモリステーション 日本も世界も夢中!大相撲 満員御礼SP」では、タモリさんが普段はなかなか見ることのできない相撲教習所へ潜入。新弟子たちが6か月間にわたり、相撲の基本動作だけでなく、相撲史、書道、運動医学、社会、修行心得などを学ぶ姿に迫ります。さらに2026年には、長くカリキュラムから外れていた「相撲甚句」の授業も9年ぶりに復活しました。
この記事でわかること
- 相撲教習所に通う期間と1日の流れ
- 実技と座学で新弟子が学ぶ授業内容
- 2026年に相撲甚句が9年ぶりに復活した理由
- 講師を務める春日山親方と相撲甚句の内容
相撲教習所は新弟子が6か月通う「相撲の学校」
公式動画:
相教習所は、日本相撲協会に新たに登録された力士を6か月間指導・教育する施設です。
新弟子検査を経て力士として登録されると、相撲部屋での生活と並行して教習所に通い、力士として必要な基礎を身につけていきます。
日本相撲協会の2026年度事業計画では、教習の目的として相撲の基本を身につけるだけでなく、相撲道への理解を深め、一般常識を養うことも掲げられています。
現在の横綱や大関たちも、新弟子時代にはここで学んできました。
相撲の強さだけを磨く場所ではなく、「プロの力士としてどう振る舞うか」を一から身につける場所と考えると、相撲教習所の役割が分かりやすいでしょう。
朝7時から実技、四股や股割りだけでなく土俵上の所作も学ぶ
教習所での1日はかなり早く始まります。
2026年に紹介された教習所の平日の流れでは、朝7時に点呼。その後、国技館の周囲を3周してから実技の稽古へ入ります。
実技では主に、
- 四股
- 股割り
- 相撲の基本動作
- 塵手水
- 仕切り
- 土俵上で必要となる所作
などを身につけます。
単純に筋力をつけたり相撲を取ったりするだけではありません。
大相撲には、塵手水や仕切りをはじめ、長い歴史の中で受け継がれてきた所作があります。プロになった以上、それを正確に身につける必要があるためです。
稽古では経験や実力に応じて土俵を分け、アマチュア相撲で実績を持つ新弟子から相撲未経験者まで、それぞれの段階に合わせた指導が行われています。朝の実技はおよそ2時間に及びます。
実技のあとは約1時間の授業、書道や運動医学まで勉強する
激しい朝稽古が終わっても、相撲教習所の1日は終わりません。
続いて教室へ移動し、約1時間の座学を受けます。
日本相撲協会の2026年度事業計画で挙げられている主な教養講座は、
- 運動医学
- 国語・書道
- 社会
- 修行心得・話し方
- 相撲史
などです。
さらに相撲史教育の一環として、相撲の神様として知られる野見宿禰を祭る野見宿禰神社で境内清掃の奉仕活動も行われています。
ここが普通のスポーツ選手養成施設とは少し違うところです。
相撲は競技である一方、土俵入りや所作、装束など日本の伝統文化と深く結び付いています。そのため、体を鍛えるだけでなく「なぜこの所作をするのか」「相撲にはどんな歴史があるのか」まで学びます。
書道や社会、話し方まで教えるのも、将来、人前に立つ力士として必要な教養を身につけるためです。
稽古と勉強のあとには掃除、風呂、食事まである
朝から実技と座学をこなした新弟子たちは、その後に教室などの掃除を行います。
さらに風呂で汗を流し、食事へ。
日本相撲協会が公開している公式動画でも、稽古、勉強、掃除、昼食までを含めた教習所生活を見ることができます。
相撲部屋が違う力士たちが同じ場所へ集まり、半年間一緒に稽古し、授業を受け、食事をするのも教習所ならでは。
本場所では対戦相手になる可能性がある新弟子たちですが、入門直後には同じ教室で学ぶ「同期」でもあります。
1957年に開設された相撲教習所は、こうして長年にわたり多くの力士を角界へ送り出してきました。
2026年6月に相撲甚句の授業が9年ぶりに復活
そして2026年、相撲教習所に大きな変化がありました。
相撲甚句の授業が9年ぶりに復活したのです。
相撲教習所では2000年から相撲甚句を教えていましたが、2017年に授業が終了。その後はカリキュラムから外れていました。
ところが、相撲甚句を伝統文化として後世へ残していく必要があるとの声が高まり、2026年6月11日に授業が復活しました。
初回は約50分。新弟子たちは相撲甚句の基本となる**「枕唄」と「当地興行」**を実際に歌って学んでいます。授業は月2回のペースで行う予定とされました。
単なる懐古的な復活ではなく、「次の世代へ誰が伝えるのか」という角界の課題から生まれた授業再開でした。
相撲甚句は「どすこい、どすこい」で知られる約200年の伝統
相撲甚句とは、力士が独特の節回しで歌う民謡の一種です。
基本は七七七五の4句で構成され、その合間に周囲の力士が、
「どすこい、どすこい」
と合いの手を入れます。
幕末から明治時代にかけて流行した甚句を、力士たちが余興として歌ったことが現在の相撲甚句につながったとされています。
現在でも地方巡業などでは、化粧まわしを締めた力士が土俵上に並び、美声自慢の力士が歌う相撲甚句が人気の演目になっています。
日本相撲協会も巡業の代表的な催し物として相撲甚句を紹介しています。
歌詞も一種類ではありません。
巡業で訪れた土地への感謝や別れを歌うもの、相撲にまつわるもの、祝いの席で披露されるものなど、さまざまな甚句が受け継がれています。
講師は元関脇・勢の春日山親方
復活した相撲甚句の授業を任されたのが、**春日山親方(元関脇・勢)**です。
勢は現役時代から角界屈指の美声の持ち主として知られ、相撲甚句の名手でもありました。
2026年6月11日の初授業では自ら歌って見本を示しながら、新弟子に「枕唄」と「当地興行」を指導しています。
春日山親方が授業で重視したのは、歌の上手下手だけではありません。
相撲甚句には分かっているだけでも約200年の歴史があり、力士自身が歌い継がなければ途絶える可能性があります。
だからこそ、新弟子の段階からその文化に触れてもらうことに意味があります。
相撲甚句が復活した背景には「聞いたことがない若い力士」の増加
9年ぶりの復活には、現代の大相撲ならではの事情もありました。
相撲甚句は現在も地方巡業などで披露されていますが、すべての若い力士が巡業に参加できるわけではありません。
教習所長を務める出羽海親方は、巡業に出られず、相撲甚句そのものを聞いたことがない若い力士も増えているという趣旨を説明しています。
そこで、入門した新弟子が必ず学ぶ教習所に相撲甚句を戻せば、伝統に触れる力士そのものを増やせます。
2026年6月の授業では、初めて相撲甚句を歌う教習生もいました。
教習所で覚えた若い力士の中から、将来の地方巡業で相撲甚句を披露する新たな歌い手が生まれる可能性もあります。
「相撲協会錬成歌」と相撲甚句は別のもの
相撲教習所には、相撲甚句とは別に**「日本相撲協会錬成歌」**という歌もあります。
これはいわば相撲教習所の校歌にあたる存在。
力士は教習所でこの歌を習い、入所式や卒業式などでも歌われてきました。
1978年、当時の春日野理事長だった元横綱・栃錦のもとで作られたもので、相撲の伝統や厳しい修行を歌っています。
一方の相撲甚句は、より古い歴史を持つ民謡・余興文化です。
同じ「力士が歌うもの」でも、
- 日本相撲協会錬成歌=教習所の校歌に近い存在
- 相撲甚句=巡業などで歌い継がれる伝統芸能
と考えると違いが分かりやすくなります。
相撲教習所の基本情報
相撲教習所について整理すると、次のようになります。
- 場所:東京・両国国技館の敷地内
- 対象:日本相撲協会に新たに登録された力士
- 教習期間:6か月
- 内容:実技と教養講座
- 実技:四股、基本動作、土俵上の所作など
- 教養:相撲史、運動医学、社会、書道、修行心得など
- 相撲甚句:2026年6月に9年ぶりに授業復活
- 相撲甚句講師:春日山親方(元関脇・勢)
タモリさんが「タモリステーション」で足を踏み入れるのは、横綱や大関を含め、多くの力士たちが新弟子時代に力士としての基礎を学んできた場所です。
まとめ
相撲教習所は、入門した新弟子が6か月間にわたって「力士になるための基礎」を学ぶ学校です。
朝から四股や基本動作、土俵上の所作を稽古し、その後は相撲史、運動医学、書道、社会、修行心得などを勉強します。
そして2026年には、2017年以来途絶えていた相撲甚句の授業が9年ぶりに復活。講師には元関脇・勢の春日山親方が就任しました。
相撲甚句を知らない若い力士が増える中、新弟子の段階から約200年続く文化を直接教えることで、次の世代へ残していこうという取り組みです。
強くなることだけではなく、礼儀、歴史、所作、さらには歌まで学ぶ。
「タモリステーション」で紹介される相撲教習所は、大相撲という伝統文化そのものを次世代の力士へ受け渡す場所でもあります。
参考リンク
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