湯山昭『お菓子の世界』はお菓子を音で描いた26曲のピアノ曲集
2026年9月21日放送の『グレーテルのかまど』では、作曲家・湯山昭さんのピアノ曲集『お菓子の世界』が取り上げられます。
シュー・クリーム、バウムクーヘン、柿の種、プリン、ドーナッツ――。身近なお菓子から世界のお菓子までを、ピアノのリズムや響きで表現したユニークな作品です。
しかも、この曲集の出発点となった「お菓子のベルト・コンベヤー」は、もともとNHKの番組のために書かれた1曲でした。そこから反響を呼び、連載を経て1974年に1冊のピアノ曲集へと発展しています。
この記事でわかること
- 『お菓子の世界』の楽譜価格と基本情報
- 収録されている全26曲
- 「お菓子のベルト・コンベヤー」から始まった誕生秘話
- 楽譜・CD・公式演奏動画で楽しむ方法
『お菓子の世界』の楽譜は1700円・全72ページ
現在販売されている『湯山 昭:お菓子の世界[改訂版]』は、全音楽譜出版社のピアノ曲集です。
- 商品名:湯山 昭:お菓子の世界[改訂版]
- 作曲:湯山昭
- 解説/運指:井内澄子
- 価格:1700円
- 判型:菊倍判
- ページ数:72ページ
- ISBN:978-4-11-178460-8
- 発売日:1974年5月15日
全音楽譜出版社では「音物語コレクション」の1冊として現在も販売されています。世界のお菓子を題材にしながら、曲ごとに異なる音楽のスタイルを盛り込んでいるのが大きな特徴です。
公式には「柿の種」では日本的な響き、「チョコ・バー」や「チューインガム」ではジャズ調の表現が取り入れられていることも紹介されています。
『お菓子の世界』全26曲一覧
『お菓子の世界』は、番号が付けられた21曲に、序曲1曲、間奏曲3曲、終曲1曲を加えた全26曲で構成されています。
- 序曲「お菓子のベルト・コンベヤー」
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- シュー・クリーム
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- バウムクーヘン
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- 柿の種
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- ショートケーキ
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- ホット・ケーキ
- 間奏曲1「むしば」
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- ウエハース(子守歌)
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- ドロップス
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- チョコ・バー
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- バースデー・ケーキ
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- クッキー
- 間奏曲2「どうしてふとるのかしら」
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- ヌガー
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- ソフトクリーム
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- ボンボン
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- 鬼あられ
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- マロン・グラッセ
- 間奏曲3「くいしんぼう」
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- 金平糖
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- プリン
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- ポップ・コーン
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- チューインガム
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- 甘納豆
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- ドーナッツ
- 終曲「お菓子の行進曲」
洋菓子だけではなく、柿の種、鬼あられ、金平糖、甘納豆といった日本のお菓子が同じ曲集に並んでいるのも面白いところです。
そして「むしば」「どうしてふとるのかしら」「くいしんぼう」という3つの間奏曲が挟まることで、単純にお菓子の名前を並べただけではない、一つの物語のような流れが生まれています。
始まりはNHK『ピアノのおけいこ』の新曲だった
『お菓子の世界』誕生の原点は、現在のような26曲のピアノ曲集ではありませんでした。
湯山昭さん本人がJASRACのインタビューで明かしているところでは、序曲「お菓子のベルト・コンベヤー」は、もともとNHK『ピアノのおけいこ』の新曲として作曲した作品でした。
作曲後に実際にピアノを弾いていると、「何かが次々と目の前を通り過ぎていく」というイメージが浮かんだといいます。
そこから思い浮かんだのがベルトコンベヤーでした。
キャラメルが流れるコンベヤー、その向こうにはドロップス、さらにチョコレート――。色とりどりのお菓子が次々と流れていく光景から、「お菓子のベルト・コンベヤー」というタイトルが生まれました。
まさに今回の『グレーテルのかまど』で、ヘンゼルが「お菓子のベルトコンベヤー」に挑戦する理由につながる作品です。
テレビ放送の反響から26曲の『お菓子の世界』へ
「お菓子のベルト・コンベヤー」がテレビで放送されると、大きな反響がありました。
それを受けて全音楽譜出版社から、同社の小冊子「ゼンオンニュース」で「お菓子」をテーマにした楽譜を連載する話が持ち込まれます。さらに連載終了後には曲集として出版する計画もあり、湯山さんはその依頼を引き受けました。
こうして1曲から始まったアイデアが、「シュー・クリーム」「バウムクーヘン」「ショートケーキ」「プリン」などへ次々と広がっていきます。
曲名についても湯山さんだけで決めたのではなく、当時の全音楽譜出版社の担当者と話し合いながら決めていったことが本人のインタビューで語られています。
そして1974年、ピアノ曲集『お菓子の世界』として刊行されました。
お菓子ごとに音楽のスタイルまで変わる
『お菓子の世界』が長くピアノ教材として演奏されてきた理由の一つが、曲ごとにまったく違う表情を持っていることです。
カワイ名古屋が開催した湯山昭さん本人による公開講座でも、21曲のお菓子の曲は「様々なスタイルやリズム」を学べるように作られていると紹介されています。
例えば、
- 「柿の種」では日本的な響き
- 「チョコ・バー」ではジャズ調
- 「チューインガム」でもジャズ的な感覚
- 「ウエハース」では子守歌
というように、お菓子の姿や食感、雰囲気を単純なメロディーではなく、リズムや和音、音楽のスタイルそのものへ置き換えています。
子ども向けの親しみやすい題材でありながら、演奏する側は幅広い音楽表現に触れられる作品になっています。
英語タイトルには「甘い」と「組曲」の言葉遊びも
『お菓子の世界』には英語版もあり、タイトルは「CONFECTIONS A Piano Sweet」です。
ここにも湯山さんらしい遊びがあります。
湯山さんによると「Sweet=甘い」と、同じ発音を持つ「Suite=組曲」を掛けたタイトルになっています。英語版の楽譜も全音楽譜出版社から刊行されており、2020年3月15日に発売されました。
お菓子というテーマが、曲名だけでなく曲集全体のネーミングにまで貫かれています。
1994年の改訂でも曲の音自体は変わっていない
現在流通しているのは『お菓子の世界[改訂版]』です。
カワイ名古屋が2010年に開催した湯山昭さんの公開講座では、1994年に改訂が行われたことが紹介されています。
ただし、作品そのものの音が書き換えられたわけではありません。
変更されたのは主に、
- アーティキュレーション
- フィンガリング
- ペダリング
といった演奏上の指示です。
そのため、昔この曲集を習った人が現在の改訂版を手に取っても、基本となる音楽そのものは受け継がれています。
湯山昭は「あめふりくまのこ」も作曲した音楽家
湯山昭さんは1932年9月9日、神奈川県平塚市生まれ。東京藝術大学音楽学部作曲科で池内友次郎に師事し、1955年の卒業後、本格的な作曲活動に入りました。
作品分野はピアノ曲だけではありません。
「あめふり くまのこ」をはじめとする子どもの歌、合唱曲、歌曲、室内楽、管弦楽曲など幅広い作品を手掛けてきました。1970年には芸術祭大賞、1973年と1976年には日本童謡賞を受賞し、2003年には旭日小綬章を受章しています。
子どもに親しまれる音楽を数多く生み出してきた作曲家だからこそ、「お菓子」という身近な世界を本格的なピアノ作品へ変えることができたともいえます。
楽譜・CD・公式演奏動画の実用情報
『お菓子の世界』は、現在も楽譜を購入できるだけでなく、音源でも楽しめます。
全音楽譜出版社は公式YouTubeで収録曲の演奏動画を公開しており、番組でもキーワードになる序曲「お菓子のベルト・コンベヤー」も聴くことができます。
公式動画:全音楽譜出版社「序曲 お菓子のベルト・コンベヤー」
日本コロムビアからは、堀江真理子さんのピアノ演奏によるアルバム『湯山昭 ピアノ曲集「お菓子の世界」』も発売されています。26曲すべてを収録し、公式ページでは価格2515円と案内されています。
「楽譜を見ながら弾く」「まず演奏を聴いてお菓子のイメージを味わう」という2通りの楽しみ方ができる作品です。
まとめ
湯山昭さんの『お菓子の世界』は、1974年に刊行された全26曲のピアノ曲集です。
その始まりは、NHK『ピアノのおけいこ』のために作った「お菓子のベルト・コンベヤー」。放送への反響をきっかけに、お菓子を題材とした作品の連載へ発展し、やがて現在まで演奏され続ける1冊になりました。
シュー・クリームやプリンといった甘いお菓子から、柿の種、鬼あられ、甘納豆まで登場し、それぞれをリズムや響き、音楽様式で描き分けているところが最大の魅力です。
『グレーテルのかまど』でお菓子そのものだけではなく「音楽になったお菓子」が取り上げられるのは、こうした誕生の物語があるからこそ。序曲から終曲まで聴いてみると、1冊まるごと「音で味わうお菓子箱」のような作品になっています。
参考リンク
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