コクーンタワーは、窓拭きのための仕組みまで建物の形と一体で設計されている
2026年9月21日放送のNHK総合「ニッポンふきにくいビル名鑑」で舞台となるのは、東京・西新宿のモード学園コクーンタワーです。
地上50階、高さ203.65m。下から上まで外壁がまっすぐではなく、中央がふくらみ上部へ向かって絞られる「繭」のような高層ビルを、いったいどうやって清掃しているのでしょうか。
その答えは、屋上部分に組み込まれたY字型のレール、中央のターンテーブル、伸縮・旋回するアームを組み合わせたゴンドラ設備にあります。しかも、この清掃設備を動かせるようにすること自体が、屋上の構造設計にも影響しています。
この記事でわかること
- コクーンタワーの窓をどうやって拭いているのか
- Y字型レールと回転アームの仕組み
- なぜビル全体が「繭」の形をしているのか
- 地上50階、高さ203.65mの校舎が生まれた背景
コクーンタワーの窓拭きはY字レールからゴンドラを吊るす仕組み

出典:TANGE建築都市設計「Mode Gakuen Cocoon Tower」公式プロジェクト写真
コクーンタワーの窓清掃で重要な役割を果たすのが、最上部に設置されたゴンドラ用の設備です。
構造設計を担当したArupの資料によると、屋上付近にはY字型に配置されたレールがあり、その中央には方向を変えるためのターンテーブルが設けられています。
このレール上を「ゴンドラハンガー」と呼ばれる設備が移動します。そしてアームを伸ばしたり旋回させたりすることで、ゴンドラを建物の各外壁面へ送り出せる構造になっています。
一般的な四角い高層ビルなら、屋上からゴンドラをほぼ垂直に降ろしていく方法をイメージしやすいでしょう。
ところがコクーンタワーは、途中が大きくふくらみ、上へ行くほど再び細くなります。見る方向によって外壁の位置も大きく変わるため、単純に同じ位置からゴンドラを下ろすだけでは建物全体をカバーできません。
そこで「レールで移動する」「方向を変える」「アームを伸ばす」「アームを旋回させる」という複数の動きを組み合わせ、特殊な外形へ対応できるようになっています。
清掃用アームを回すため屋上の構造まで工夫されている
さらに興味深いのは、窓拭き設備が単に後から屋上へ取り付けられたものではないことです。
ゴンドラを支えるアームが屋上付近を大きく旋回できるよう、最上部は空間を確保する必要がありました。
Arupの構造資料では、このアームの動きを妨げないため、上部の屋根などを支える構造を3組の交差する柱に集約。アームと同じ高さにある外周部分には、移動を可能にするための開閉構造も採用されています。
つまりコクーンタワーでは、
- 繭型の外観を成立させる
- 高層校舎として安全性を確保する
- 屋上設備を納める
- 将来にわたって外壁を清掃できる
という条件を同時に解決する必要がありました。
「窓をどう拭くか」という日常的なメンテナンスまで、建築そのものと切り離せない設計になっているわけです。
繭の形には「社会へ飛び出す学生を包む」という意味がある
コクーンタワーがこの形になった理由は、単に西新宿で目立つ高層ビルを造るためではありません。
設計を手掛けたTANGE建築都市設計によると、「COCOON」は英語で「繭」を意味します。
これから社会へ出ていく若者を包み、育てる学校を「繭」に重ね合わせたことが、建物の基本コンセプトになりました。
外から見ると1つの大きな楕円形のタワーですが、内部には3つのタワーが組み合わされる構成が採用されています。それぞれに教室や実習室を設けながら、その間を廊下や開放的な空間でつなぎ、学生同士が交流できる場所をつくっています。
高層ビルの中へ単純に教室を積み上げたのではなく、「学校らしいつながり」を縦方向の建築でどう実現するかが大きなテーマだったのです。
実は「3階建ての学校」を縦に積み上げる発想だった
コクーンタワー内部の設計で特徴的なのが、3階分をひとまとまりとして考える発想です。
一般的な低層の学校なら、上や下の階へ簡単に移動でき、ほかの教室や学生の様子も感じることができます。
しかし50階規模の超高層校舎では、各階を完全に独立させると学生同士のつながりが薄くなります。
そこでTANGE建築都市設計は、内部を「3階建ての学校を縦に積み重ねたもの」と考えました。3層ごとに学生が集まれる開放的な空間を設け、高層ビルでありながらキャンパスらしい交流が生まれる構成を目指しています。
外側の大胆なデザインだけでなく、「学校としてどう機能するか」が繭型の内部に組み込まれているところが、コクーンタワーの大きな特徴です。
中央を太く、足元と上部を細くしたのにも理由がある
コクーンタワーは、足元が細く、中央部分が大きくふくらみ、最上部へ向かって再び絞られています。
この形にも機能的な理由があります。
敷地の限られた西新宿で、足元を細くすれば地上部分に空間を確保できます。一方、数多くの教室が必要になるため、中間部分には大きな床面積が必要です。
そこで中央をふくらませ、最上部では再び細くすることで、必要な床面積と建物全体のシルエット、構造上の安定性を組み合わせました。
奇抜な外観を先に決めたのではなく、学校として必要な機能や敷地条件を調整していった結果として、現在の繭型へたどり着いています。
各階で微妙に高さが違うのもコクーンタワーならでは
繭型の建物には、建設コストという別の問題もありました。
楕円形の断面を持つため、すべての階を同じ高さにすると、階ごとに必要な外装部材の寸法が変わってしまいます。
そこで採用されたのが、外装パネル側をできるだけ共通化し、逆に各階の高さを少しずつ調整するという方法です。
TANGE建築都市設計によれば、そのためコクーンタワーでは階によって階高が微妙に異なり、階段1段の高さにも違いがあります。
外から眺めただけでは分からない部分ですが、特徴的な外観を現実的なコストで造るための工夫が、内部の寸法にまで及んでいます。
コクーンタワーは地上50階・高さ203.65m
モード学園コクーンタワーは2008年に完成しました。
主な建築概要は次の通りです。
- 所在地:東京都新宿区西新宿1-7-3
- 竣工:2008年
- 地上:50階
- 高さ:203.65m
- 延床面積:80,865.42平方メートル
- 設計:TANGE建築都市設計
- 構造設計:Arup
- 施工:清水建設
TANGE建築都市設計の公式資料では高さ203.65m、地上50階とされています。現在は西新宿を代表する高層建築の1つとして知られています。
コクーンタワーへのアクセス
コクーンタワーは新宿駅西口側にあり、東京モード学園の案内では新宿駅から徒歩2分。地下街ともつながっています。
- 所在地:東京都新宿区西新宿1-7-3
- 最寄り:新宿駅
- 東京モード学園案内:新宿駅西口から徒歩2分
学校施設のため、観光施設のように自由に校内を見学する建物ではありません。外観を眺めるだけでも、中央がふくらんだ形や白い斜めのラインなど、一般的な超高層ビルとの違いがよく分かります。
まとめ
モード学園コクーンタワーの窓拭きは、屋上付近に設けられたY字型レールとターンテーブル、伸縮・旋回するアームを備えたゴンドラ設備によって行えるよう設計されています。
高さ203.65m、しかも中央がふくらむ繭型。普通の四角い高層ビルとは異なる外壁を維持するため、清掃設備の動線まで建物の構造に組み込まれていました。
そして、その複雑な形そのものも「これから社会へ飛び出す学生を包み育てる繭」という学校の思想から生まれています。
「ニッポンふきにくいビル名鑑」では、普段は外からしか見る機会の少ないコクーンタワーを、窓拭き職人という珍しい視点から見ることで、200m級の建築を維持する技術と、その裏側にある設計思想の両方が見どころになりそうです。
参考リンク
- TANGE建築都市設計|Mode Gakuen Cocoon Tower Project Story
- Arup|The Arup Journal 2009 Issue 2
- 東京モード学園|施設・設備・コクーンタワー
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