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リガクのX線分析装置がすごい理由|半導体検査と北川進教授のMOF研究を支える技術【知られざるガリバー〜エクセレントカンパニーファイル〜】

技術・サイエンス

リガクのX線分析装置が「見えない世界」を測る仕組みと強さ

2026年9月12日放送のテレビ東京系『知られざるガリバー〜エクセレントカンパニーファイル〜』に登場するのが、X線分析・計測装置メーカーの「リガク」です。最新半導体の品質管理から、2025年ノーベル化学賞につながった北川進教授のMOF研究まで、一見まったく違う世界を同じ「X線で物質を見る技術」が支えています。創業75年を迎えたリガクが、なぜ世界の研究・製造現場で存在感を持っているのか。その仕組みと強さを詳しく見ていきます。

この記事でわかること

  • リガクがX線分析装置で強い理由
  • X線回折で原子・分子の構造がわかる仕組み
  • 最新半導体の検査にリガクの技術が必要とされる理由
  • 北川進教授のMOF研究とリガクのX線分析装置との関係

リガクはX線回折装置で国内トップクラスの分析機器メーカー

リガク・ホールディングス株式会社

出典:リガク公式「XTRAIA XD-3300」

リガクは東京都昭島市に本社を置く理科学機器メーカーです。1951年に理学電機株式会社として創立され、翌1952年には世界で初めて回転対陰極型X線発生装置「ロータフレックス」を開発。1954年には日本初の自動記録式X線回折装置「ガイガーフレックス」を開発するなど、早い時期からX線分析技術を積み上げてきました。

現在の主力は、X線回折装置、蛍光X線分析装置、半導体計測装置、X線CT、単結晶構造解析装置などです。研究室だけで使われる特殊な装置の会社というより、「研究で生まれた分析技術を工場の量産工程へ持っていく」ことを得意とする企業と考えるとわかりやすいでしょう。

特にX線回折機器(XRD)は、2023年の市場データで国内トップ、海外でも2位のシェアとされています。2024年12月期には売上の73%を海外が占めており、日本発ながら世界市場を相手にする企業です。近年の公式情報では世界約2,000人規模の従業員を抱え、136の国と地域の顧客に展開しています。

『知られざるガリバー』がリガクを取り上げる理由も、この「一般消費者にはあまり知られていないのに、最先端産業の裏側では欠かせない」という立ち位置にあります。

X線回折は物質が持つ「指紋」を読み取る技術

リガクの中心技術であるX線回折、略してXRDは、物質にX線を当て、そのX線が原子の周囲にある電子によって散乱・干渉した結果を測定する方法です。

結晶では原子が規則正しく並んでいます。そこへ特定の角度からX線を当てると、原子の並び方に応じてX線が強め合う角度が現れます。この現象を記録すると、その物質特有の「回折パターン」が得られます。

リガクはこのパターンを「物質に固有な指紋」と説明しています。未知の試料から得られた回折パターンを既知のデータと比較すれば、どのような結晶が含まれているのかを調べられるわけです。さらに詳しく解析すれば、結晶構造、原子間隔、結晶の向き、ひずみなどもわかります。

そのためX線分析は、大学の基礎研究だけに使われる技術ではありません。半導体、電池、医薬品、鉄鋼、セメント、電子部品など、物質の構造や成分を正確に知る必要がある産業に広く入り込んでいます。

つまり、完成品を壊さずに「中で何が起きているか」を探れることが大きな魅力なのです。

最新半導体では目に見えない汚染や薄膜の異常まで調べる

今回の番組で特に注目されるのが半導体分野です。

スマートフォンや生成AI、データセンター向けの半導体は、微細化だけでなく構造の三次元化も進んでいます。HBMや3D DRAM、先端ロジックでは、何層もの極薄膜を正確に積み重ねる必要があります。

ここで少しでも膜厚や材料組成、ひずみが設計値から外れると、性能や製造歩留まりに影響します。

リガクの高分解能X線回折装置「XTRAIA XD-3300」は、200mm・300mmウェーハに対応し、X線反射率で膜厚・密度・粗さを、高分解能X線回折で膜厚・組成・ひずみ・結晶性などを非破壊で測定できます。40μmまで絞ったX線ビームを使えるため、パターンが形成されたウェーハ上の小さな領域も狙って測定できます。

さらに別の方法である全反射蛍光X線分析「TXRF」は、半導体ウェーハ表面のごく微量な元素汚染を調べる技術です。

X線の入射角を非常に浅くすると表面で全反射が起こり、X線が基板深くまで入り込みません。リガクによると、この条件での理論的な浸透深さは約5nm。基板から出る余計な信号を抑えながら、表面に付着した微量元素を高感度で検出できます。

「半導体をX線で検査する」と聞くと、病院のレントゲンのように内部写真を撮るイメージがありますが、実際には目的によって複数のX線技術を使い分けています。

表面汚染を見る、薄膜の厚さを見る、結晶のひずみを見る、結晶欠陥を可視化する。こうした測定の積み重ねが、スマートフォンやAI半導体の安定生産につながっています。

北川進教授のMOF研究にもリガクの装置が使われてきた

もう一つ、今回の放送で大きなキーワードとなるのが「MOF」です。

京都大学の北川進教授は、Richard Robson教授、Omar M. Yaghi教授とともに「金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks=MOF)の開発」で2025年ノーベル化学賞を受賞しました。

MOFは金属イオンと有機分子を組み合わせ、内部に無数の小さな空間を作った結晶性材料です。

その空間へ特定の分子を出し入れできるよう設計できるため、二酸化炭素の回収、ガスの貯蔵、化学反応の触媒、水の回収など、多彩な応用が期待されています。

北川教授は1990年代から、内部にガスを取り込んでも構造を維持できる多孔性材料の研究を進め、1997年にはガスを出し入れできる開いた通路を持つ構造を実現。さらにMOFが柔軟に形を変える可能性も示しました。

こうした研究では「作った結晶の中で、金属と有機分子が本当に想定通り並んでいるのか」を確認しなければなりません。そこで重要になるのがX線による結晶構造解析です。

リガクは、北川研究室が長年にわたり同社の単結晶構造解析装置や粉末X線回折装置を利用し、物質の精密な構造解析や多孔性材料の研究を進めてきたことを公式に明らかにしています。

ノーベル賞を取るのは研究者ですが、その発見を「原子レベルで確かめる道具」がなければ、研究成果を積み上げることはできません。

今回の番組がリガクとMOFを結び付けて紹介するのは、この研究インフラとしての役割があるからです。

X線源から検出器・ソフトまで自社で作れることがリガクの強み

リガクの競争力を理解するうえで重要なのが、装置を構成する主要技術を広く自社で持っていることです。

リガクが内製している代表的な要素には、X線を発生させる「X線源」、X線を集めたり整えたりする「光学素子」、X線を捉える「検出器」、測定結果を意味のあるデータへ変換する「解析ソフトウェア」があります。

単に部品を集めて分析装置を組み立てているわけではありません。X線の発生から測定、解析までを一つの技術体系として作り込めることが特徴です。

リガク自身も、こうしたX線要素部品の内製によって装置性能の向上、開発期間の短縮、量産化を実現し、それが競争力につながっていると説明しています。

半導体向け「XTRAIA XD-3300」も、X線光学系、検出器、解析ソフトウェアまで一貫して自社開発した装置です。

研究者から「こんなものを測りたい」という要求が出たとき、装置全体を自社で改良できる。この柔軟さが、新しい研究分野から量産工場まで技術を広げる「Lab to Fab」というリガクの戦略につながっています。

千分の1ミリの精度と手作業の微調整が最先端装置を支える

番組では、リガクのものづくりについて「千分の1ミリ単位の精度」が取り上げられます。千分の1ミリは1μm、つまり0.001mmです。

興味深いのは、これほど高度な分析装置であっても、最後まで自動機械だけで完成するわけではないという点です。

X線を発生させ、狙った位置へ正確に送り、非常に弱い信号を検出する装置では、それぞれの要素が高精度に組み合わされなければ性能を発揮できません。

番組では、自社部品の加工だけでなく、技術者による手作業での微調整にも焦点が当てられます。デジタル解析や自動化が進んだ最先端装置の性能を、最終的には熟練したものづくりが支えている構図です。

1952年に世界初の回転対陰極型X線発生装置を生み出した企業が、75年後にはAI時代の先端半導体やノーベル賞研究まで支えている。その歴史が一本につながっているところもリガクの面白さです。

リガクの会社・製品情報

株式会社リガクの本社・東京工場は東京都昭島市松原町3-9-12にあります。ほかに大阪工場、山梨工場を持ち、海外にも米国、欧州、アジアなどに開発・販売・サービス拠点を展開しています。

分析装置は一般向け家電のように店頭販売される商品ではなく、用途や構成によって仕様が変わります。公式製品ページでは固定価格ではなく「見積りを依頼する」「製品について質問する」という形になっており、研究機関や企業が測定したい対象に応じて装置を選ぶ仕組みです。

また『知られざるガリバー』のリガク回は2026年9月12日18時から18時30分までテレビ東京系列で放送予定。リガク公式によると、放送後はTVerで1週間の見逃し配信が予定され、テレ東BIZでも配信されます。

まとめ

リガクが「知られざるガリバー」と呼べる理由は、単純に高性能なX線分析装置を作っているからではありません。

X線源、光学素子、検出器、解析ソフトウェアまで重要技術を幅広く自社で持ち、研究室で培った分析技術を半導体などの量産現場へ広げてきました。その一方で、北川進教授のMOF研究のような最先端科学も支え続けています。

スマートフォンの半導体とノーベル化学賞。一見すると無関係な二つをつないでいるのが、「目では見えない物質の構造をX線で正確に測る」というリガクの技術です。

番組で登場する千分の1ミリの加工や手作業による微調整を見ると、原子・分子レベルを分析する最先端科学が、実は極めて地道な日本のものづくりによって支えられていることも見えてきます。

参考リンク


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