認知症の妻と「2人きりの旅」を続けたハンス・ハンスワイク夫妻
2026年10月5日放送の「世界まる見え!テレビ特捜部」では、キャンピングカーでヨーロッパを旅する高齢夫婦、ハンスとウィルの物語が紹介されます。
2人はオランダのハンス・ハンスワイク(Hans Hanswijk)さんと妻ウィルさん。ウィルさんがアルツハイマー病と診断された後、ハンスさんは妻を施設へ預けるのではなく、キャンピングカー「Ons Campertje」で一緒に旅をする道を選びました。
夫婦の旅は約4年間に及び、その生活はオランダで長編ドキュメンタリーにもなっています。なお、ウィルさんは2025年10月に73歳で亡くなっており、今回紹介されるのは夫妻が一緒に旅をしていた時期の記録です。
この記事でわかること
- ハンス・ハンスワイク夫妻がどんな夫婦なのか
- アルツハイマー病の診断後にキャンピングカー生活を選んだ理由
- 「Ons Campertje」で続けたヨーロッパ旅行とドキュメンタリー
- ウィルさんの死去後、ハンスさんが現在どうしているのか
ハンス・ハンスワイク夫妻は10代から一緒だった
出典:Omroep MAX「Ons campertje」公式紹介
ハンス・ハンスワイクさんと妻のウィルさんはオランダの夫婦です。ウィルさんの本名はウィレミーン(Willemien)で、2人は10代の頃から一緒に歩んできました。
ドキュメンタリー制作時点で結婚47年。長年にわたって人生を共にしてきた夫婦でした。
2人はオランダ南ホラント州のアルフェン・アーン・デン・レイン周辺で暮らし、長い間ギフトショップも営んでいました。
ところが2019年、ウィルさんがアルツハイマー病と診断されます。記憶の状態は次第に変化し、夫であるハンスさんや子どもたちのことが分からなくなることもありました。
今回の「世界まる見え」ではチェコ共和国を旅する2人の姿が登場しますが、チェコ在住の夫婦ではなく、ヨーロッパ各地を移動し続けていたオランダ人夫妻です。番組では「夫のハンス」と「妻ウィル」として紹介されています。
2019年のアルツハイマー病診断が人生を大きく変えた
転機となったのは、やはりウィルさんの診断でした。
2019年10月には、犬の散歩へ出かけたウィルさんがなかなか帰宅できなくなる出来事も起きています。知らない人の助けによって自宅へ戻ることができましたが、夫妻の生活がそれまでと同じではいられなくなっていることを示す出来事でした。
さらに新型コロナウイルス流行による生活の変化も重なります。
自宅で同じ毎日を過ごしていると、ウィルさんが落ち着かなくなることが増えました。そこでハンスさんが思い出したのが、かつて家族旅行で楽しんでいたキャンピングカーでした。
「それなら、もう一度2人で旅に出ればいい」。
ハンスさんは長年営んできた仕事をやめ、キャンピングカーを購入します。
車にはオランダ語で「私たちの小さなキャンピングカー」を意味する「Ons Campertje」という名前を付けました。これが夫妻の新しい家になります。
医師や家族の心配を押してキャンピングカーへ
もちろん、最初から周囲が賛成したわけではありませんでした。
長期間の旅には、体調管理や薬、事故、ハンスさん自身に何か起きた場合など、多くの心配があります。3人の息子たちや医師、ケアマネジャーからも長期旅行を心配する声がありました。
それでもハンスさんが考えたのは、一般的にどんな暮らしが正しいのかではなく、「ウィルが穏やかに過ごせる場所はどこか」ということでした。
キャンピングカーなら常にハンスさんが近くにいます。大勢の人に囲まれる必要もなく、小さな車内は毎日同じ「家」として使えます。
一方、窓の外の景色だけは毎日変わります。
夫妻の場合、この生活がウィルさんに合いました。旅先で散歩するときには手をつなぎ、ウィルさんが何かを指さして楽しそうに話す。少し後にはその出来事を忘れてしまっても、その瞬間には笑顔がありました。
これは夫妻自身が選択した暮らしであり、認知症の人すべてにキャンピングカー生活が適しているという意味ではありません。夫妻の物語で重要なのは、診断後も本人が心地よく過ごせる方法を夫婦で探し続けたことです。
「Ons Campertje」でヨーロッパを約4年間旅した
最初はオランダ国内で試しにキャンピングカー生活を行い、その後フランス、スペイン、ポルトガルなどへ旅を広げていきました。
ノルウェー、ブルガリア、スペイン、バルカン半島など、夫妻の旅先はヨーロッパ各地へと広がります。
アルツハイマー・ネーデルラントが2024年に紹介した際にも、夫妻は寒い季節になるとスペインへ移動するなど、キャンピングカーそのものを生活拠点にしていました。毎朝と夜には息子たちへ連絡し、GPSなども利用しながら旅を続けていました。
そして夫妻の生活を長期間追ったのが、ドキュメンタリー映画「Ons campertje」です。
監督はディニー・ファン・ホフテン(Diny van Hoften)。Omroep MAXとD2D Mediaによる作品で、2025年にはオランダ映画祭「Nederlands Film Festival」に選出されました。映画祭登録版の上映時間は1時間10分です。
作品では華やかな旅行だけではなく、介護を続けるハンスさんの孤独や、少しずつ変化していく妻との関係も描かれています。
記憶は失われても、その瞬間の安心感や笑顔まで失われるわけではない。
ハンスさんは妻の中に昔のウィルさんを感じられる瞬間を探しながら、旅を続けていきました。
ウィルさんは2025年10月に73歳で死去
夫妻の旅には、その後、大きな節目が訪れました。
2025年9月に2人は最後の旅からオランダへ戻り、翌10月、ウィルさんは73歳で亡くなりました。
長年続いたキャンピングカーでの旅は、そこで終わりました。葬儀の日には、ハンスさんが「Ons Campertje」でウィルさんを火葬場へ送り届けています。夫妻にとって本当に最後のドライブになりました。
ハンスさんはその後、キャンピングカーを手放してはいません。
2026年には再び1人で旅を始めています。自宅で1人で過ごすよりも、キャンピングカーで各地を巡り、人と出会う生活を続ける道を選びました。
助手席に妻の姿はありませんが、長い旅で積み重ねた思い出とともに、「Ons Campertje」は今も走り続けています。
ドキュメンタリー「Ons campertje」の作品情報
作品名は「Ons campertje」。
監督はディニー・ファン・ホフテン、制作はOmroep MAXとD2D Mediaです。2025年のNederlands Film Festivalで上映され、2026年2月25日にはオランダのNPO 2でも放送されました。
「世界まる見え」で描かれるハンスとウィルの物語の背景をさらに知りたい人にとって、この夫妻を長期間追った作品は重要な記録になっています。
まとめ
「世界まる見え!テレビ特捜部」で登場するキャンピングカー夫婦は、オランダのハンス・ハンスワイクさんと妻ウィルさんです。
ウィルさんが2019年にアルツハイマー病と診断された後、ハンスさんはキャンピングカー「Ons Campertje」を購入。2人は約4年間にわたりヨーロッパ各地を旅しました。
旅の目的は遠くへ行くことそのものではありませんでした。
長く一緒に生きてきた妻が、自分のことを夫だと分からなくなったとしても、その日その瞬間を一緒に楽しく過ごすこと。その時間を守るために選んだのが、キャンピングカーでの暮らしでした。
ウィルさんは2025年10月に亡くなりましたが、2026年現在、ハンスさんは「Ons Campertje」で1人旅を続けています。夫妻の旅は、認知症とともに生きる家族のあり方を描いたドキュメンタリーとしても残されています。
参考リンク
Nederlands Film Festival「Ons campertje」作品情報
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