青山学院大学・田崎良佑准教授が進める「知技能ロボット」の現在
2026年10月3日放送のNHK Eテレ「どえらい大学。」では、青山学院大学を特集。相模原キャンパスから、料理、メイク、マッサージなど「2051年の暮らし」を支えるロボット研究が紹介されます。
研究を進めているのが、青山学院大学理工学部機械創造工学科の田崎良佑准教授が率いる「知技能ロボティクス研究室」です。
単に決められた動きを繰り返す機械ではなく、人間が経験によって身につけてきた「技能」を計測・分析し、状況に合わせて動けるロボットへ落とし込もうとしているのが大きな特徴です。
この記事でわかること
- 田崎良佑准教授と知技能ロボティクス研究室の研究内容
- 料理・メイク・マッサージロボットで目指していること
- 人間の「技能」をロボットへ移す仕組み
- 工場から生活支援まで広がってきた研究の歩み
田崎良佑准教授の「知技能ロボット」は人間の技を再現する
青山学院大学は研究内容として、「知能機械/ロボットの動作設計」「生産加工のメカニズム解明とシステム設計」「人間機械協調/共生技術」の3分野を掲げています。
重要なのは、人間の動きを単純にコピーするだけではないことです。
人が現場で行っている臨機応変な判断や職人技能を解析し、環境や材料、工程、作業条件が変化しても、計測した情報をもとにロボット自身が動きを調整できるシステムの構築を進めています。
人なら当たり前のように行っている「状況を見ながら力加減や動きを変える」という行為を、機械で実現しようとしているのです。
炒め調理ロボットはフライパンの動かし方まで研究
「どえらい大学。」で紹介される研究の一つが料理です。
田崎准教授の2026年の研究業績には、「炒め調理ロボットのための食材移動を考慮したフライパンの操作軌道設計」があります。2026年9月の日本ロボット学会学術講演会で発表された研究です。
炒め料理を考えると、この研究の難しさが分かります。
フライパンを動かせば、中の食材も動きます。食材の位置や状態が変わる以上、ロボットアームを決められた軌道で往復させれば完成するという単純な作業ではありません。
人間は食材の状態を見ながら、フライパンの角度、速度、振り方などを自然に変えています。
田崎研究室では、こうした人間の技能を機械で扱える形にする研究を続けています。
工場の自動化から始まったロボット研究が、家庭やサービス分野で必要になる「料理」という複雑な技能へ広がっている点が注目されます。
メイクアップロボットは「化粧する手の動き」を計測する
さらに身近なテーマがメイクです。
田崎研究室では「ロボティックメイク」と呼ばれる自動メイクアップロボットを開発しています。
2026年9月には、メイク用パフを動かした際の動作計測を利用し、肌のスポットをどの程度隠せるかを定量的に評価する研究成果も発表されています。
化粧は、ロボットにとってかなり難しい作業です。
顔は平面ではありません。頬や目元など場所によって形状が異なり、パフを押し付ける力や方向も変える必要があります。
さらに「どれだけ塗ったか」だけではなく、仕上がりも評価しなければなりません。
田崎研究室が扱っているのは、こうした人間なら感覚的に行っている作業です。
2025年にはNHK「あさイチ」でも、田崎研究室のメイクアップロボットとマッサージロボットが紹介されています。
マッサージロボットは人の「手技」をモデル化する
もう一つ研究が進んでいるのがマッサージです。
青山学院大学は、田崎研究室について「人の“手技”をモデル化し、計測—制御—評価を一体化」した研究を進めていると説明しています。目標としているのは、快適さや安心感の向上です。
2026年にも「ロボティックマッサージにおけるマルチモーダルセンシングによる被施術者の状態推定と適応施術」という研究成果が発表されています。
つまり、決まった位置を決まった強さで押し続けるだけではありません。
研究テーマから見えてくるのは、
- 施術を受ける人の状態を計測する
- 複数の情報から状態を推定する
- その結果に応じて施術を変える
という方向性です。
さらに研究室では、VRとロボットを組み合わせた「HANARE」というマッサージシステムも開発しています。
VR空間に現れる2人のアバターと現実空間の2台のロボットを同期させ、アバターの動きに合わせてロボットがマッサージ。視覚と触覚を合わせることで、単なる自動施術とは異なる体験を作ろうとしています。
原点の一つは「人でなければできない」鋳造技術だった
料理や美容、マッサージだけを見ると、田崎准教授は生活支援ロボットを専門にしてきた研究者のように見えます。
しかし研究をたどると、もう一つ重要な柱があります。
それが「鋳造」です。
田崎准教授は「鋳造ロボットシステムの知技能実装に関する研究」に取り組み、2024年度には日本鋳造工学会の「日下賞」を受賞しました。
鋳造では材料の温度や流れ、熱管理、機械設計など複数の条件が製品品質を左右します。
条件が刻々と変化するため、従来は「人でなければできない」と考えられてきた複雑な工程が存在しました。
そこで熟練技術者の技能をロボットへ実装し、複雑な調整を自動化することで、品質を安定させる研究が進められています。さらに熟練者の技能を次世代へ伝えるための技術としても期待されています。
ここに現在の料理やメイク、マッサージ研究へつながる考え方が見えてきます。
対象は違っても、「人が経験によって身につけた技能をどう機械へ移すか」というテーマは共通しています。
工場の職人技から人の暮らしを支えるロボットへ
田崎研究室が目指している領域はかなり広くなっています。
現在、青山学院大学が研究分野として挙げているのは、
- 次世代生産プロセス
- ヒトの運動能力アシストシステム
- 医療・介護・リハビリ向けロボット
- 人間と機械の協調・共生技術
などです。
2024年には世界最大級のロボット国際会議「ICRA 2024」にも田崎研究室が出展し、生活支援ロボットを展示しました。会議には世界各国から7,000人を超える研究者、技術者、企業関係者が来場しています。
研究対象が工場だけに閉じていないところがポイントです。
料理をする。
化粧をする。
体をほぐす。
こうした作業には、人が長い経験の中で身につけてきた感覚的な技能が大量に含まれています。
だからこそ、それをロボットに任せるには「腕を動かす」以上の研究が必要になります。
田崎良佑准教授と知技能ロボティクス研究室の基本情報
田崎良佑准教授は、青山学院大学理工学部機械創造工学科で知技能ロボティクス研究室を率いています。
- 氏名:田崎良佑
- 所属:青山学院大学理工学部機械創造工学科
- 研究室:知技能ロボティクス研究室
- 学位:博士(工学)
- 専門:ロボット工学、システム制御工学、生産工学・加工学など
- 所在地:神奈川県相模原市中央区淵野辺5-10-1
- 主な研究対象:生産ロボット、生活支援、医療・介護・リハビリ、メイク、マッサージ、調理など
青山学院大学相模原キャンパスを拠点として、人間が持つ「知能」と「技能」を機械へ取り込む研究が続けられています。
まとめ
2026年10月3日のNHK Eテレ「どえらい大学。」で紹介される青山学院大学の知技能ロボット。その研究を進める田崎良佑准教授は、単純に人間の代わりに動くロボットではなく、人が経験から身につけた「技能」を機械へ実装する研究を続けています。
その対象は、鋳造などのものづくりから、料理、メイク、マッサージ、医療・介護・リハビリへと広がってきました。
特に2026年には、炒め調理に必要なフライパン操作、メイク時のパフの動作、施術される人の状態に合わせるロボティックマッサージなど、生活に直結する研究成果が相次いでいます。
「人にしかできない」と考えられてきた細かな作業を、どうすればロボットが理解し、状況に合わせて実行できるのか。
田崎研究室が取り組んでいるのは、人とロボットが一緒に暮らす未来へつながる研究です。
参考リンク
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