ゴロンゴーザ国立公園で進む「生態系丸ごと復興」の現在
2026年10月4日放送のNHK総合「ダーウィンが来た!」では、モザンビークの「ゴロンゴーザ国立公園」が舞台となります。内戦によって大型哺乳類の約9割が姿を消した土地で、2004年から動物だけでなく捕食者、森林、地域社会まで含めて生態系を立て直してきた壮大な復興プロジェクトです。
現在は大型動物が10万頭を超えるまでに回復。絶滅危惧種のリカオンを再導入するなど、「減った動物を増やす」だけではない生態系全体の再生が続いています。
この記事でわかること
- ゴロンゴーザ国立公園がある場所と現在の規模
- 大型動物が約9割消失してから10万頭超へ復活した経緯
- リカオンなど捕食者を戻す「生態系丸ごと復興」の仕組み
- 現地を訪れる場合の入園料や宿泊施設
ゴロンゴーザ国立公園はモザンビーク中部の巨大な自然保護区
公式動画:Gorongosa: A Journey of Transformation & Tourism
ゴロンゴーザ国立公園は、アフリカ南東部のモザンビーク中部・ソファラ州にあります。
公園の面積は約40万ヘクタール。草原、森林、川、湖、山地など異なる環境がつながり、多様な動植物が生息する場所です。ゴロンゴーザ・プロジェクトでは、確認された生物が約8,000種に達し、そのうち約200種は科学的に新たに記録された種としています。
1960年代には、アフリカでも特に野生動物が豊かな場所として知られていました。
ところがモザンビークでは長期間にわたって内戦が続き、ゴロンゴーザも激戦地となります。動物は食料や資金源として大量に殺され、公園側の資料では大型哺乳類の95%以上を失ったとされています。
10月4日の「ダーウィンが来た!」では、この土地で進められてきた「楽園丸ごと復興計画」が取り上げられます。
大型動物は1万頭未満から10万頭超へ回復
ゴロンゴーザ復興の数字で特に大きいのが、大型動物の回復です。
ゴロンゴーザ・プロジェクトが本格的に始まった約20年前、公園に残っていた大型動物は1万頭未満でした。
2025年に公園側が公表した数字では、大型動物は10万頭を超えています。単純な頭数では約10倍に増え、プロジェクト側は一部について内戦前の水準を上回るまでになったとしています。
重要なのは、動物を大量に外部から運び込んだだけではないことです。
ゴロンゴーザでは、
- 密猟を抑えるレンジャー活動
- 生息地の保護
- 必要な動物の再導入
- GPSなどを使った個体追跡
- 獣医師による健康管理
- 生態系の長期調査
などを組み合わせています。
守られる環境を整えたことで、外部から再導入していない動物の中にも自然繁殖で数を回復した種があります。
リカオンを戻して捕食者まで復活させた
今回の放送で大きなポイントになるのが、リカオンです。
英語では「African Wild Dog」や「Painted Wolf」と呼ばれる、まだら模様の体を持つイヌ科の肉食動物です。
ゴロンゴーザでは内戦後にリカオンが姿を消していましたが、2018年4月、14頭の群れを公園へ再導入しました。これはモザンビークで初めて行われたリカオン再導入でもあります。
その後、リカオンは繁殖。
2019年の公式更新では、最初の14頭から約40頭へ増えたことが報告され、さらに別の15頭も新たに導入されました。
なぜ草食動物だけでなく、ライオンやリカオン、ハイエナ、ヒョウといった肉食動物まで戻す必要があるのでしょうか。
理由は、捕食者も生態系を構成する重要な存在だからです。
肉食動物がいなくなると、特定の草食動物だけが増えすぎたり、生息場所や行動パターンが変化したりして、植物を含めた生態系全体のバランスが崩れることがあります。
ゴロンゴーザでは大型肉食動物の回復を独立した保全事業として進め、ライオンの監視、リカオンの再導入、ヒョウやハイエナの復帰などを行ってきました。
つまり「動物園のように動物を増やす」のではなく、食べる側と食べられる側の関係まで復元することが、ゴロンゴーザの大きな特徴です。
復興が始まったのは2004年
ゴロンゴーザが再び動き出した大きな転機は2004年です。
モザンビーク政府と米国の非営利組織側によって、公園の再建に向けた取り組みが始まりました。
その後2008年、モザンビーク政府とカー財団が長期的な共同管理契約を締結。「ゴロンゴーザ・プロジェクト」として野生動物の復元だけでなく、周辺地域の教育、医療、農業、雇用なども一体的に進める体制が作られました。2018年には共同管理契約がさらに25年間延長されています。
この仕組みが重要なのは、国立公園の中だけを豊かにしても、自然保護が長続きするとは限らないからです。
周辺地域で貧困が深刻になれば、森林伐採や密猟など自然への圧力が強まる可能性があります。
そこでゴロンゴーザでは、
- 野生動物保護
- 学校教育
- 医療
- 農業支援
- 地域雇用
- エコツーリズム
を同じ復興プロジェクトの中で進めています。
動物だけでなく約20万人が暮らす地域も支える
ゴロンゴーザ・プロジェクトが特徴的なのは、「人間を自然から排除する」という考え方ではない点です。
公園周辺には多くの住民が暮らしています。
公式プロジェクトでは約60万ヘクタールに及ぶ周辺地域を持続可能な開発地域として扱い、20万人以上の生活と自然保護を両立させる取り組みを進めています。
教育支援や医療だけでなく、農業や観光によって地域で仕事を生み出すことも柱です。
旅行者がゴロンゴーザを訪れ、宿泊やサファリを利用することも、自然保護と地域雇用を支える仕組みの一部になっています。
ゴロンゴーザが「公園丸ごとの復興」ではなく「生態系丸ごとの復興」と呼べる理由は、動物、植物、人間社会まで一続きとして考えているところにあります。
2025年には世界的な生物多様性保全賞を受賞
こうした取り組みは世界的にも評価されています。
ゴロンゴーザ・リストレーション・プロジェクトは2025年、BBVA Foundation Worldwide Award for Biodiversity Conservationを受賞しました。
受賞時には、約20年間にわたる野生生物の回復だけでなく、生物多様性保全と地域住民の生活向上を一体化したモデルが評価されています。
研究面でもゴロンゴーザは巨大なフィールドになっています。
公園では科学者が野生動物の個体数、捕食関係、植生、昆虫、魚類などを調査。これまでに約8,000種が記録され、約200種が科学的に新たに確認されたとされています。
自然を元に戻して終わりではなく、「復活する生態系がどのように変化していくのか」を長期間観察できる研究場所でもあるのです。
ゴロンゴーザ国立公園は一般旅行者も訪問できる
ゴロンゴーザは研究者だけが入れる保護区ではありません。
一般旅行者向けのサファリや宿泊施設も運営されています。
公園公式サイトでは宿泊施設として、
- Muzimu Lodge
- Chicari Camp
- Expedition Camp
- Montebelo Gorongosa Lodge & Safari
- キャンプ場
などを案内しています。宿泊やアクティビティは事前予約が推奨されています。
国際旅行者向けの1日当たり保全入園料は、公式料金ページで次のように案内されています。
- 大人:20米ドル
- 10~17歳:10米ドル
- 10歳未満:無料
この料金はレンジャー雇用や野生動物保全プログラムなどに利用されます。為替などによって変更される場合があるため、実際に訪問する際は最新料金の確認が必要です。
実用情報
ゴロンゴーザ国立公園の基本情報です。
- 国:モザンビーク共和国
- 地域:中部ソファラ州
- 面積:約40万ヘクタール
- 本格的な復興開始:2004年
- 政府とカー財団による共同管理開始:2008年
- 大型動物:10万頭超
- 主な動物:ゾウ、ライオン、カバ、各種アンテロープ、リカオン、ハイエナ、ヒョウなど
- 国際旅行者の保全入園料:大人1日20米ドル
- 宿泊:ロッジ、サファリキャンプ、キャンプ場あり
旅行については事前予約が推奨されており、道路状況や季節によって現地への移動条件も変わります。
まとめ
ゴロンゴーザ国立公園は、内戦によって大型哺乳類の大部分を失ったモザンビークの国立公園です。
しかし2004年から本格的な再建が始まり、現在では大型動物が10万頭を超えるまで回復しました。
特に注目されるのが、草食動物だけを増やすのではなく、リカオンをはじめとする肉食動物も戻し、捕食関係まで含めて生態系を再構築していることです。
2026年10月4日の「ダーウィンが来た!」では、約20年かけて進められてきたこの壮大な復興計画と、ゴロンゴーザで再び増えている野生動物の現在が紹介されます。
参考リンク
・NHK「ダーウィンが来た!」公式サイト
・ゴロンゴーザ国立公園公式サイト
・ゴロンゴーザ・リストレーション・プロジェクト 2025年発表
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