世界遺産の石像を接着剤で再生!日本のボンド技術が歴史を守っていた
2026年10月11日放送のNHK総合『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』では、宇宙開発から世界遺産の修復まで、さまざまな現場で活躍する接着剤の秘密が取り上げられます。
接着剤の意外な活用事例の1つが、カンボジアの世界文化遺産「アンコール遺跡群」の保存修復です。
この壮大な遺跡を守るため、日本の接着剤メーカー「コニシ株式会社」が技術協力してきました。
コニシの土木開発プロジェクトチームは1996年、アンコール遺跡群の修復事業に参加。エポキシ樹脂系接着剤を活用し、砕けた石像の再生や、砂岩を使った建造物の補強に貢献しました。
特徴的なのは、新しい材料で遺跡をつくり直すのではなく、長い歴史を刻んだ本来の石材をできる限り残すという考え方です。
この記事でわかること
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アンコール遺跡群の修復に使われたコニシの接着技術
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1996年に日本のメーカーが修復事業へ参加した経緯
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エポキシ樹脂系接着剤と砂岩粉末を組み合わせる技術
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世界遺産の石像や建造物を保存するための修復方法
アンコール遺跡群の修復に使われたのはコニシのエポキシ樹脂系接着剤
アンコール遺跡群の保存修復に使用されたのは、コニシ株式会社が手がけるエポキシ樹脂系接着剤です。
コニシは、黄色い容器でおなじみの「ボンド 木工用」を販売する日本の接着剤メーカーです。
家庭用の接着剤だけでなく、住宅、橋梁、トンネル、コンクリート構造物などを補修する専門的な接着技術も手がけています。
アンコール遺跡群では、その技術が貴重な石材の保存に役立ちました。
主な活用方法は次のとおりです。
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砕けた石像の破片を接着して再生する
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エポキシ樹脂系接着剤に砂岩粉末を混ぜる
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石材の継ぎ目を補強する
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元の石材を使った建造物の修復を支える
従来は、割れてしまった石材を取り除いたり、コンクリートで外観を固めたりする方法が採られていました。
しかし、接着剤を活用することで、破損した石材そのものを再び利用できるようになったのです。
世界遺産の修復では、見た目を元に戻すだけでは十分ではありません。
当時の人々が加工した石材や、長い年月を経て残された建造物の構造を、後世へ引き継ぐことが重要になります。
1996年にコニシがアンコール遺跡群の修復事業へ参加
アンコール遺跡群は、カンボジア北西部のシェムリアップ周辺に広がる歴史的な建造物群です。
9世紀から15世紀にかけて栄えたクメール王朝の寺院や都市遺構が残されており、有名なアンコール・ワットもその一部です。
ところが、カンボジアでは内戦などの影響によって、1970年に遺跡の修復作業が中断されました。
その後も建造物の劣化や崩壊が進み、貴重な文化財をどのように守るかが国際的な課題となりました。
1992年、アンコール遺跡群はユネスコの世界文化遺産に登録されると同時に、危機遺産にも登録されます。
カンボジア政府からの要請を受け、日本政府も保存修復事業へ協力することになりました。
1994年には、日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)が結成されます。
そして1996年、第9次調査団の修復技術班に、コニシの土木開発プロジェクトチームが参加しました。
このとき、日本の建設補修技術と接着剤の専門知識が、世界遺産の保存という新たな分野で活用されることになったのです。
砕けた石像を捨てずに再生する接着技術
アンコール遺跡群には、砂岩でつくられた建造物や石像が数多く残されています。
長年の風雨や地盤の変化などによって、石材には亀裂が生じ、破損した部分もありました。
こうした文化財の修復では、単純に壊れた部分を新しい石材と交換すればよいわけではありません。
何百年も前の人々が加工した石材は、それ自体が歴史を伝える貴重な資料だからです。
コニシが提供したエポキシ樹脂系接着剤は、破損した石材同士を接合するために役立ちました。
割れて分かれてしまった石像の部材も、接着技術によって再び一体化させることが可能になります。
これまでなら取り除かれていた石材を残し、元の姿に近づけながら保存できるようになったことは、大きな技術的進歩でした。
遺跡を単につくり直すのではなく、残されたものを生かして修復する。
そのための重要な道具が接着剤だったのです。
砂岩粉末を混ぜることで修復部分を目立たなくする
アンコール遺跡群の保存修復で、もう1つ重要な役割を果たしたのが、エポキシ樹脂系接着剤に砂岩粉末を混ぜる技術です。
石材の継ぎ目や破損部分を補強する際、接着剤だけを使用すると、周囲の砂岩との色や質感の違いが目立つ場合があります。
そこで、砂岩の粉末を接着剤へ混ぜ合わせることで、周囲との違和感を抑えながら補強できるようにしました。
この技術には、次のような特徴があります。
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エポキシ樹脂系接着剤で石材の接合部を補強する
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砂岩粉末を混合して周囲の石材になじませる
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既存の石材をできる限り再利用する
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建造物の歴史的な外観を保ちながら保存する
世界遺産の修復では、補強の強さだけでなく、外観への影響も考えなければなりません。
現代の材料で強固に補修できたとしても、周囲の古い石材と大きく異なる見た目になれば、遺跡本来の姿が損なわれてしまいます。
コニシの接着技術は、強度と景観の両方を考慮した修復に役立てられました。
バイヨン寺院では壊れた石材を接着して再利用
アンコール遺跡群のなかでも、日本が長年にわたって修復を支援してきたのが、アンコール・トムにあるバイヨン寺院です。
バイヨン寺院は、巨大な人面塔が立ち並ぶことで知られる歴史的建造物です。
12世紀末から13世紀にかけて建設された寺院で、長い年月のなかで基礎部分の劣化や建造物の不安定化が進みました。
日本国政府アンコール遺跡救済チームは、1995年から1999年にかけて行われた第1期事業で、バイヨン寺院や王宮前広場の保存修復に取り組みました。
特にバイヨン寺院の北経蔵では、建物の基礎に問題が見つかりました。
1996年の調査によって、長年にわたる土壌の流出が基礎の不均等な沈下につながっていたことが判明します。
修復では、基礎の地盤を締め固める作業に加え、建造物を構成していた石材の再利用が進められました。
ユネスコの記録にも、破損した石材を接着剤で補修し、再利用したことが記されています。
北経蔵の修復は1999年8月に完了しました。
この事業は、失われかけていた建造物を守るとともに、古い材料を生かす保存修復の実例となりました。
エポキシ樹脂系接着剤が石材の修復に向いている理由
エポキシ樹脂系接着剤は、一般的に主剤と硬化剤を混ぜることで化学反応が起こり、硬化するタイプの接着剤です。
コニシが販売する製品にも、こうした2液混合型の接着剤があります。
主な特徴は、硬い材料同士の接着に適しており、耐久性や耐水性に優れていることです。
製品によって硬化までの時間や粘度が異なるため、使用する材料や作業内容に合わせて選ぶことができます。
例えば、コニシのエポキシ樹脂系接着剤には、家庭用の小容量タイプから、建物の外壁やコンクリートを補修する業務用製品まであります。
ただし、エポキシ樹脂系接着剤であれば、どの製品でも文化財修復に使用できるわけではありません。
遺跡の保存修復では、石材の状態や周囲の環境、接着後の耐久性などを専門家が検討し、適切な材料と方法を選びます。
アンコール遺跡群で使用された接着剤も、一般家庭向けの製品と同じものだと決めつけることはできません。
重要なのは、接着剤メーカーが培った技術を、歴史的建造物の保存という特殊な目的に応用したことです。
日本とカンボジアが30年以上続けてきた保存修復
アンコール遺跡群の保存修復は、一度工事を終えれば完了するものではありません。
石造建築は長い年月を経て少しずつ劣化し、気候や周辺環境の影響も受け続けます。
そのため、継続的な調査と保存修復が必要です。
日本とカンボジアによるバイヨン寺院の保存事業は、1994年の開始から2024年に30周年を迎えました。
2024年12月には、カンボジアのシェムリアップで記念シンポジウムが開催されています。
この取り組みでは、日本の技術者が修復するだけでなく、カンボジアの専門家や作業員への技術継承も重視されてきました。
保存対象となる寺院の構造を調べ、劣化の原因を分析し、伝統的な建築技術と現代の科学技術を組み合わせる方法が採られています。
2025年のユネスコの報告では、バイヨン寺院の中央塔や内側回廊の浮き彫りなどが、保存修復活動の対象として挙げられています。
1996年にコニシが参加した接着技術の活用も、こうした長期的な国際協力の歴史の一部です。
世界遺産修復に使われた接着剤の実用情報
アンコール遺跡群の修復に関係する情報を整理します。
接着技術の基本情報
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技術提供企業:コニシ株式会社
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修復参加年:1996年
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対象:カンボジア・アンコール遺跡群
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接着剤の種類:エポキシ樹脂系接着剤
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主な用途:石像の再生、砂岩の接合部補強
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特徴:砂岩粉末を混ぜた補強技術
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関連修復事業:日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)の保存修復事業
接着剤の取り扱いについて
コニシでは家庭用から産業用まで、用途の異なるエポキシ樹脂系接着剤を取り扱っています。
購入の際は、接着する材料、耐水性、硬化時間などに合った製品を選ぶ必要があります。
なお、アンコール遺跡群の修復に使われた接着剤の具体的な商品名や配合は、ここで紹介した企業資料では特定されていません。
文化財修復用の接着技術を、家庭用製品によってそのまま再現することはできません。
まとめ
カンボジアの世界文化遺産「アンコール遺跡群」の保存修復には、日本の接着剤メーカーであるコニシの技術が活用されてきました。
1996年に修復事業へ参加したコニシは、エポキシ樹脂系接着剤を利用し、砕けた石像の再生や砂岩の補強に貢献しました。
石材を新しいものに交換するのではなく、残された歴史的な部材をできる限り生かすという考え方が、修復技術の中心にあります。
また、日本とカンボジアによるバイヨン寺院の保存事業は30年以上にわたり続けられ、技術者の育成や歴史的建造物の研究にもつながっています。
身近な木工用ボンドで知られる日本企業の技術が、遠く離れた世界遺産を守る仕事にも役立っているのです。
参考リンク
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