大口病院の連続殺人事件|「呪われた4階」で何が起きていたのか
2026年10月20日放送の『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)では、神奈川県横浜市の大口病院で2016年に発生した連続点滴中毒死事件が取り上げられます。
わずか3か月で48人もの入院患者が亡くなり、「呪われた4階」と呼ばれるようになった病棟。元気だった患者の容体が突然悪化し、血尿や呼吸困難などの異常が相次ぐなか、点滴袋から不審な泡が発見されました。
事件を起こしたのは、患者の命を守る立場にあった女性看護師でした。裁判では3人の殺害が認定され、患者の死亡時に遺族への対応を避けたいという犯行動機も明らかになっています。
事件発覚の経緯、被害者、使われた消毒液、犯行動機、裁判の結末に加え、横浜市による検証で浮かび上がった病院の安全管理上の問題まで整理します。
※放送後詳しい内容が分かり次第追記します。
この記事でわかること
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旧大口病院の4階病棟で48人が死亡した経緯と、殺人が認定された3人の被害者
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泡立つ点滴の中身と、患者に現れた血尿などの異常
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元看護師・久保木愛弓が殺人に至った動機と逮捕までの経緯
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無期懲役判決の理由と、事件前の通報に対する病院・行政の対応
大口病院で48人が死亡した「呪われた4階」の真相
3か月で48人…患者を殺害したのは誰だ?(前編)【ザ!世界仰天ニュース】
公式動画:日テレ公式チャンネル(2024年9月24日放送分)
事件の舞台となったのは、横浜市神奈川区大口通130番地にあった医療法人財団慈啓会の大口病院です。
同院は内科や整形外科などを診療科目とし、一般病床42床、療養病床43床の計85床を備えていました。高齢者や終末期の患者も入院する医療機関でした。
2016年7月から9月にかけて、この病院の4階病棟では48人もの入院患者が死亡しました。短期間に死亡が相次いだことで、病棟は「呪われた4階」と呼ばれるようになりました。
しかし、重要なのは、48人全員が殺害されたと認定されたわけではないということです。
後の刑事裁判で殺人の被害者として認定されたのは、次の3人です。
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興津朝江さん:当時78歳、2016年9月16日死亡
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西川惣蔵さん:当時88歳、2016年9月18日死亡
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八巻信雄さん:当時88歳、2016年9月20日死亡
この3人の死亡には、点滴に混入された消毒液が関係していました。
さらに、別の患者への使用が予定されていた未使用の点滴袋5袋にも消毒液が混入されており、殺人予備罪の対象となりました。
捜査段階では、元看護師が20人ほどに対する犯行を認める供述をしたと報じられています。しかし、亡くなった患者の多くは既に火葬されており、殺人を立証するための証拠が残っていないケースがありました。
そのため、病棟で確認された48人の死亡と、刑事裁判で殺人と認定された3人の死亡は、明確に区別する必要があります。
患者に現れた血尿と突然の容体悪化
事件の異常さを物語るのが、患者の体に現れた突然の変化です。
2016年9月16日に死亡した興津朝江さんは、退院に向けた準備が進んでいた患者でした。
ところが、容体が急変し、血尿などの異常な症状が現れました。搬送先で治療を受けたものの、その後亡くなっています。
当初は病死として扱われましたが、後に発覚した点滴への異物混入事件を受け、興津さんの死亡についても捜査が進められました。
興津さんは既に火葬されていましたが、病院に保存されていた血液が重要な証拠となりました。検査によって消毒液の成分が検出され、殺人事件として立件されることにつながりました。
同じ病院では、9月18日に西川惣蔵さん、9月20日に八巻信雄さんも死亡しました。
八巻さんが亡くなった際には、点滴袋に異常があることを看護師が発見しています。
この点滴の異常が、病院で相次いでいた死亡の原因を解き明かす決定的な手掛かりになりました。
泡立つ点滴の正体は消毒液「ヂアミトール」
事件解明の重要な証拠となったのは、不自然に泡立つ点滴袋でした。
2016年9月20日、八巻信雄さんの容体が急変した際、使用していた点滴袋の中身が泡立っていることに看護師が気付きました。
点滴袋には注射針で刺したような小さな穴も確認され、異物混入の疑いが強まりました。
捜査で明らかになったのが、点滴に混入されていた消毒液「ヂアミトール」です。
ヂアミトールは、界面活性剤を含む消毒液です。本来の用途で適切に使用するためのものであり、患者の血管内に投与する薬剤ではありません。
犯行では、この消毒液が点滴を通じて患者の体内に入り、中毒死を引き起こしました。
消毒液に含まれる界面活性剤の性質は、点滴袋で確認された泡立ちを理解する手掛かりにもなります。
また、患者に現れた血尿などの異常は、通常の病状悪化とは異なる原因を疑うきっかけになりました。ただし、血尿だけで毒物混入を断定できるわけではなく、実際の事件では検査結果など複数の証拠が重要な役割を果たしました。
元看護師・久保木愛弓はなぜ患者を殺害したのか
事件で逮捕されたのは、大口病院の4階病棟に勤務していた元看護師の久保木愛弓です。
久保木は事件当時20代で、患者の看護を担当していました。
患者の命を守る職業に就いていた久保木が犯行に至った背景には、患者が死亡した際に遺族への対応を求められることへの強い不安がありました。
大口病院には終末期の患者も多く、患者が亡くなった場合、その時間帯に勤務していた看護師が家族への説明や対応に関わることがありました。
久保木は、患者家族から強く叱責される場面を経験し、遺族に対応することに強い恐怖を抱くようになったと裁判で説明しています。
その後、勤務中に患者が亡くなることを避けたいと考え、患者の点滴に消毒液を混入する犯行へと進んでいきました。
特に衝撃的だったのは、自分の勤務時間外に患者が死亡するように仕向けるという目的です。
興津さんや八巻さんの事件では、後に使用される予定の点滴袋にあらかじめ消毒液を混入していました。
一方、西川さんの事件では、投与中の点滴に消毒液を混入したとされています。
患者の体調や治療の必要性ではなく、自分が遺族に対応しなくて済む状況を優先していたのです。
裁判所は、犯行動機そのものについて身勝手で酌むべき点がないと評価しました。
職場環境への不適応や対人関係の困難が犯行に至る背景として検討されたことと、患者を殺害する行為が正当化されることは、まったく別の問題です。
事件発覚前から病院で起きていた不審なトラブル
大口病院では、2016年9月の連続中毒死事件が発覚する以前から、院内の安全を脅かす出来事について複数の通報が寄せられていました。
横浜市が2017年3月にまとめた「横浜市の医療安全業務に関する検証報告書」には、当時の通報内容と行政の対応が記録されています。
主な経緯は次のとおりです。
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2016年7月5日:患者のカルテ紛失や看護師のエプロン切り裂きについて通報
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8月12日:病院の書類や勤務管理に関する疑惑が寄せられる
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同日:4階病棟で看護師の飲み物に漂白剤らしき物が混入されたという通報
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8月26日:飲み物への異物混入をめぐる対応や勤務管理について追加の通報
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9月2日:横浜市が大口病院に定期立入検査を実施
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9月20日:点滴への異物混入について通報
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9月23日:患者の中毒死事件が報道される
これらの通報は、病棟で何らかの重大な問題が起きていることを示していました。
特に、看護師の飲み物に漂白剤らしき物が混入されたという情報は、人の生命にも関わり得る深刻な内容でした。
ただし、通報されたすべての出来事について、久保木が関与したと刑事裁判で認定されたわけではありません。
事件以前から複数のトラブルが報告されていたという事実と、それぞれの行為の実行者が誰だったかという問題は、分けて考える必要があります。
横浜市の立入検査で見逃された危険
横浜市は事件発覚前の2016年9月2日に、大口病院への定期立入検査を実施していました。
この際、それまでに寄せられた通報について病院側に確認しています。
病院側は問題が解決済み、あるいは事実の誤認だという趣旨の説明を行い、市は再発防止の徹底や警察への相談を助言する対応にとどまりました。
その後、事件が発覚したことで、横浜市は10月11日に臨時立入検査を実施しました。
この検査では、点滴などの薬剤管理方法、夜間の勤務体制、ナースステーションの運用、患者の安全対策などが確認され、必要な改善が求められました。
さらに、横浜市医療安全業務検証委員会による検証では、事件前の行政対応について課題が指摘されました。
委員会は、カルテの紛失について最初の通報段階で病院に事実確認を行うべきだったと評価しています。
また、エプロンの切り裂きや飲み物への異物混入についても、単なる職員間のトラブルではなく、職員や患者の生命に関係する危険を予見すべきだったとしました。
短期間に複数の通報が集中していたにもかかわらず、病院側の回答を受けて対応を終えていた点も問題とされました。
一連の検証から浮かび上がったのは、個別の不審な出来事を一つずつ処理するだけでは、病院全体に潜む危険を見逃してしまうという課題です。
2018年に久保木愛弓を逮捕|発覚から約2年の捜査
2016年9月に点滴への異物混入が発覚した後、神奈川県警は殺人事件として捜査を進めました。
しかし、事件の捜査には大きな難しさがありました。
病院には多くの高齢患者や終末期の患者が入院していたため、死亡した患者について、病気による死亡なのか、外部から加えられた毒物による死亡なのかを区別する必要があったのです。
さらに、多くの患者の遺体は既に火葬されていました。
死亡前の検査資料や点滴など、残された証拠を一つずつ確認することが捜査の重要な課題となりました。
事件発覚から約1年10か月が経過した2018年7月、神奈川県警は元看護師の久保木を殺人容疑で逮捕しました。
その後も捜査が続けられ、3人の入院患者を殺害した事件と、別の患者に使われる予定だった5袋の点滴に消毒液を混入した行為について起訴されました。
久保木は2021年10月に始まった裁判員裁判の初公判で、起訴された事実を認めています。
長期間の捜査を経て、医療従事者が職務上の立場を利用して患者を殺害した事件の実態が、刑事裁判で明らかになりました。
死刑求刑から無期懲役へ|2024年に判決が確定
久保木愛弓の裁判では、3人の患者を殺害した事実に加え、刑事責任能力と量刑が大きな争点となりました。
2021年10月22日、検察側は死刑を求刑しました。
患者を守るべき看護師という立場を利用し、複数の患者を計画的に殺害したことが厳しく問われました。
一方、弁護側は犯行当時の精神状態が判断や行動に影響していたと主張しました。
2021年11月9日、横浜地方裁判所は久保木に無期懲役を言い渡しました。
裁判所は犯行時に完全責任能力があったと認定し、3人の生命を奪った行為の重大性を認めました。
そのうえで、犯行動機が形成された過程や更生の可能性などを考慮し、死刑を選択することには慎重な判断を示しました。
検察側と弁護側の双方がこの判決を不服として控訴しました。
2024年6月19日、東京高等裁判所は双方の控訴を棄却し、1審の無期懲役判決を支持しました。
東京高裁は、3人が殺害された結果の重大性や犯行の計画性などから死刑の選択も十分に考えられる事件としながらも、1審が示した量刑判断を不合理とはいえないとしました。
その後、双方が上告せず、2024年7月4日付で無期懲役判決が確定しました。
事件と裁判の主な記録は以下のとおりです。
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事件発生:2016年9月
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現場:神奈川県横浜市神奈川区の旧大口病院
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逮捕:2018年7月
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被告人:元看護師・久保木愛弓
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有罪認定:殺人3件、殺人予備5件
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1審判決:2021年11月9日、横浜地方裁判所
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控訴審判決:2024年6月19日、東京高等裁判所
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確定した刑:無期懲役
大口病院事件が残した医療安全の課題
大口病院の事件は、単に看護師個人が起こした重大犯罪としてだけでなく、病院という組織が患者の安全をどのように守るべきかという問題を残しました。
病院では事件以前から、職員の持ち物へのいたずらや異物混入などの不審な出来事が報告されていました。
それらの情報が十分な危機意識をもって扱われなかったことは、横浜市の検証でも問題とされています。
入院患者は、治療や日常生活の多くを医療従事者に委ねています。患者自身が点滴の安全性を確認したり、院内で起きている問題を把握したりすることには限界があります。
だからこそ、医療機関には薬剤の適切な保管・管理だけでなく、異常な出来事を速やかに報告し、組織的に対応できる仕組みが求められます。
また、職員が強い精神的負担や業務上の困難を抱えた場合に、相談や支援につなげる職場環境も重要です。
もちろん、そうした職場の問題が殺人行為を正当化することはありません。
大口病院事件は、個人の犯罪責任を明確にすることと、組織として患者の安全を守る体制を整えること、その両方の重要性を示しています。
まとめ
2026年10月20日放送の『ザ!世界仰天ニュース』で取り上げられる大口病院の連続点滴中毒死事件は、2016年に横浜市で発生した重大な殺人事件です。
3か月で48人もの入院患者が死亡した4階病棟では、点滴に混入された消毒液によって3人が殺害されたことが刑事裁判で認定されました。
元看護師の久保木愛弓には無期懲役判決が確定しています。犯行の背景にあったのは、患者が死亡した際の遺族への対応を避けたいという身勝手な動機でした。
また、事件前には院内の異物混入や職員間のトラブルに関する通報が複数寄せられており、行政による事実確認や危険への対応にも課題があったことが分かっています。
病院という命を守る場所でなぜ事件が起きたのか。そして、異常を知らせる情報があったにもかかわらず、なぜ重大な事態を防げなかったのか。
この事件が投げかけた問いは、医療現場における安全管理と、組織として危険を見逃さない仕組みの大切さにつながっています。
参考リンク
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