マンション共用部分が浸水したときの火災保険と補償されないケース
大雨でマンションのエントランスや地下設備が浸水した場合、修理費用は誰が負担するのでしょうか。
2026年10月26日放送のNHK『クローズアップ現代』では、都市部の浸水被害によって生じる「補償の空白」を特集。個人で水災補償に加入していても、マンションの共用部分には適用されない問題が取り上げられる予定です。
実は、自分の部屋とマンション共用部分では、火災保険の契約が別になっていることが一般的です。さらに、水災補償があっても、浸水の深さや損害の程度によって保険金が支払われない場合があります。
自分の火災保険ではマンション共用部分を補償できない?
分譲マンションの火災保険は、大きく分けて2種類あります。
- 専有部分の火災保険: 各区分所有者が契約し、自分の住戸を補償するもの
- 共用部分の火災保険: 主に管理組合が契約し、建物の共有設備などを補償するもの
例えば、豪雨で自宅の床や壁が損傷した場合は、自分が契約している火災保険の水災補償が関係します。
一方、エントランスや共用廊下、エレベーターなどが浸水した場合、通常は管理組合が契約している保険を確認する必要があります。
自分の住戸に水災補償を付けていても、それだけで共用設備の修理費用まで補償されるわけではありません。
なお、共用部分の共有持分まで個人で保険を契約する方式もあります。実際の補償範囲は、管理規約と保険証券で確認することが重要です。
エレベーターや地下駐車場も水災補償の対象になる?
マンション管理組合向けの火災保険では、契約内容に応じて次のような設備が補償対象に含まれます。
- エントランスや共用廊下
- エレベーター設備
- 地下の受変電設備
- 給水ポンプや排水設備
- 機械式駐車場の設備
- 管理室などの共用施設
ただし、共用部分として保険の対象に含まれていることと、浸水被害が補償されることは別問題です。
火災や落雷などが補償される契約でも、水災補償を付けていなければ、豪雨による浸水損害は補償されない可能性があります。
特に地下駐車場やエレベーターの機械設備は、少量の浸水でも故障するおそれがあります。修理や交換が必要になった場合の費用を考えると、事前の補償確認が欠かせません。
浸水45cm以下では保険金が出ないこともある
火災保険の水災補償には、保険金の支払い条件が設定されている場合があります。
例えば、東京海上日動が案内する水災補償の支払い条件には、次のようなものがあります。
- 建物の損害割合が30%以上
- 建物が床上浸水した
- 地盤面から45cmを超える浸水が発生した
これらはいずれかの条件を満たす場合の例であり、契約によって異なります。
注意したいのは、水が入って設備が故障しても、必ず保険金が支払われるわけではないという点です。
例えば、エレベーターの地下ピットが浸水して機器が壊れた場合でも、契約上の浸水基準や損害割合を満たさなければ、補償されない可能性があります。
また、地下室では床面を地盤面とみなす規定がある商品もあります。単純に地上からの水深だけで判断できないため、保険会社への確認が必要です。
水災補償と水濡れ補償は別のもの
火災保険で間違えやすいのが「水災」と「水濡れ」の違いです。
水災補償は、一般に豪雨による洪水、内水氾濫、高潮、土砂災害などで発生した損害に備えるものです。
一方、水濡れ補償は、給排水設備の事故による漏水などで建物や設備が損傷した場合に関係します。
マンションの共用配管から水が漏れた場合と、集中豪雨で地下駐車場に雨水が流れ込んだ場合では、適用される補償が異なります。
水濡れ補償が付いているからといって、豪雨による浸水まで補償されるとは限りません。
また、地震を原因とする津波被害は、通常の火災保険の水災補償では対象外です。
地下の電気設備が浸水すると高層階にも影響する
マンションの浸水被害は、1階や地下に住む人だけの問題ではありません。
2019年の東日本台風では、高層マンションの地下に設置された高圧受変電設備が浸水し、停電によってエレベーターや給水設備が一定期間使用できなくなる被害が発生しました。
これを受け、国土交通省と経済産業省は2020年に「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」をまとめています。
浸水への備えとして考えられるのは、次のような対策です。
- 地下設備の出入口に止水板を設置する
- 電気室への浸水経路を調べる
- 配管や配線の貫通部分に止水対策を施す
- 浸水想定区域と過去の浸水履歴を確認する
高層階の住戸が直接水に浸からなくても、共用設備の停止によって日常生活に大きな影響が出る可能性があります。
管理組合が水災補償に加入していなかった場合
共用部分が浸水し、保険で修理費用を賄えない場合には、管理組合が復旧費用の調達を考えなければなりません。
修繕積立金などの資金を充てることが考えられますが、不足すれば区分所有者からの追加負担を検討する場合もあります。
ただし、費用の負担方法や工事の決定手続きは、管理規約や決議内容などによって異なります。
住民が個別に加入している火災保険だけを頼りにせず、管理組合全体で備えることが重要です。
今すぐ確認したいマンションの保険と浸水リスク
マンションの区分所有者や管理組合の役員であれば、次の項目を確認しておくと安心です。
- 管理組合が共用部分の火災保険に加入しているか
- 水災補償が含まれているか
- 地下設備や機械式駐車場が補償対象か
- 浸水の深さや損害割合による支払い条件は何か
- 免責金額や保険金額に不足がないか
- 万一の修理費用を賄える資金があるか
管理会社や理事会に問い合わせ、保険証券や補償内容の資料を確認することが第一歩です。
また、国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、住所から洪水や内水氾濫などの災害リスクを調べられます。
浸水が想定される地域では、保険だけでなく、止水板などの設備面の対策もあわせて検討する必要があります。
まとめ
マンションの浸水被害では、自分の部屋と共用部分で火災保険の契約が異なる点に注意が必要です。管理組合が水災補償に加入していても、浸水の深さや損害の程度によって保険金が支払われない場合があります。大雨が起きる前に、共用設備の補償範囲と支払い条件を確認しておくことが大切です。
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