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愛知製鋼AUS305-H2とは|水素で割れにくいステンレスの仕組みとMIRAI採用

水素でも折れにくい鋼の秘密という文字と、光を反射するステンレス製配管・継手を描いた技術記事用アイキャッチのイメージ画像 テクノロジー・科学

AUS305-H2は水素脆化を抑える愛知製鋼の高圧水素用ステンレス鋼

AUS305-H2は、愛知製鋼が開発した高圧水素用ステンレス鋼です。独自の成分調整により、水素環境で金属がもろくなる「水素脆化」の影響を抑え、燃料電池自動車の高圧水素系部品などに採用されています。2026年10月27日放送のテレビ愛知『開発現場へ行こう!』でも、愛知製鋼の水素に強いステンレス鋼開発が紹介されます。どんな材料なのか、通常のステンレスとの違い、MIRAIへの採用や水素ステーションへの用途を解説します。

愛知製鋼のAUS305-H2とは|モリブデンを使わない独自の鋼材

高圧水素用ステンレス鋼「AUS305-H2」は、JIS規格のSUS305を基礎に、成分を高圧水素環境向けに調整した特殊な鋼材です。愛知製鋼の公式発表によると、2020年12月に発売されたトヨタの第2世代燃料電池自動車「MIRAI」の高圧水素系部品に採用されました。

大きな特徴は、比較的高価なレアメタルのモリブデンを使用していないことです。従来、同社が初代MIRAI向けに採用していた「AUS316L-H2」と比べ、独自の成分設計によって優れた強度と耐水素脆化特性を両立し、資源の使用量やコストの削減に役立てています。

水素用の鋼材では強度だけでなく、部品に加工しやすいことも重要です。2020年の発表では、快削元素を加えることで切削加工性にも配慮したと説明されています。ここでいうAUS305-H2は、家の流し台や食器などに使う一般的なステンレスと、そのまま置き換えられるものではありません。高圧水素機器の条件に合わせた工業材料です。

なぜ水素で金属が割れやすくなる?水素脆化の仕組み

水素は分子としては軽い気体ですが、金属材料の内部に侵入すると、条件によっては材料の粘り強さが下がったり、き裂が進みやすくなったりします。この現象が水素脆化です。高圧ガス保安協会は、水素脆化を水素によって材料の見かけ上の靭性が低下する現象と説明しています。

水素を高圧で貯めたり配管で送ったりする機器は、内圧の力を繰り返し受けます。そのため通常の大気中で十分に強い金属であっても、同じ性能を高圧水素の中で維持できるとは限りません。部品の材料を選ぶ際は、高圧水素環境での引張試験や疲労試験などで評価する必要があります。

ステンレスならすべて水素に強いわけでも、水素があると必ず割れるわけでもありません。鋼の成分、微細な組織、温度、圧力、負荷のかかり方によって影響は異なります。愛知製鋼はこの違いを利用し、水素環境でも必要な延性(引っ張ったときに伸びる性質)を持つ鋼材を設計しました。

水素脆化と似た言葉に「水素侵食」がありますが、これは高温高圧条件で鋼の内部にメタンが生まれ、微細なき裂が形成される別の現象です。水素を扱う設備では、温度や圧力、使用部位に応じて異なる劣化を考慮しなければなりません。

MIRAIから水素ステーションへ|AUS305-H2の使い道

AUS305-H2は、自動車そのものの車体外板ではなく、高圧水素が流れる部品の素材に使われています。愛知製鋼が2020年に発表した採用先は、トヨタの燃料電池自動車「MIRAI」の水素充填口などです。

さらに同社は2025年11月、AUS305-H2の固溶化熱処理材を水素ステーション向けに商品化したと発表しました。水素ステーションの機器は、高圧の水素を車へ送り込むため、材料の耐久性や信頼性が欠かせません。用途ごとに加工条件や求められる強度が違うため、同じ鋼材でも適切な熱処理や部品設計が必要です。

同社の製品情報には、高圧水素用ステンレス鋼「AUS316L-H2」が燃料電池車の高圧水素部品に加え、水素ステーションの充填ノズルやバルブなどの素材として用いられる事例も掲載されています。AUS305-H2とAUS316L-H2は別の鋼種なので、製品ページに並ぶすべての採用例がAUS305-H2の実績という意味ではありません。

愛知県では水素を使う移動手段の導入も進んでいます。実際に乗れる車両や地域の動きについては、名古屋のAICHI H2水素タクシーの仕組みと利用方法でも紹介しています。車を走らせる取り組みの裏側には、こうした素材技術の積み重ねがあります。

まとめ

AUS305-H2は、愛知製鋼がSUS305を基に開発した高圧水素用ステンレス鋼です。モリブデンを使わず水素脆化への耐性と強度を両立し、トヨタMIRAIの高圧水素系部品に採用されました。2025年には水素ステーション向けの熱処理材も商品化。水素社会を支えるのは、車や燃料だけでなく、見えない部分の金属材料でもあります。


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