1mmほどの三角形が集まり、離れると色鮮やかな絵になる鈴木雅史の世界
2026年9月13日放送のNHK Eテレ「no art,no life」では、群馬県高崎市で制作を続ける鈴木雅史さんが登場します。鈴木さんが10Hという非常に硬い鉛筆で描くのは、わずか1mmほどの小さな三角形。その三角を気の遠くなるほど繰り返し、さらに色を加えていくことで、大きな鳥や模様が浮かび上がります。番組では制作期間1年にも及ぶ作品と、その創作現場が紹介されます。
この記事でわかること
- 鈴木雅史さんが描く「極小三角アート」の制作方法
- 10H鉛筆を使い、作品完成まで数か月から1年を費やす理由が見える制作工程
- 2025年に「闘う鳥」で有坂隆二賞を受賞した実績
- 鈴木さんが所属するNPO法人工房あかねと高崎市での創作環境
鈴木雅史は1mmほどの三角を無数に描き続けるアーティスト
公式動画:凄まじい集中力で三角形の点描画を描く|鈴木 雅史(とちぎアートサポートセンターTAM掲載)
鈴木雅史さんは1993年生まれ、群馬県高崎市在住のアーティストです。
作品最大の特徴は、大きな画用紙を極端に小さな三角形で埋め尽くしていくことです。
NHKの今回の番組情報では、その三角形は「わずか1ミリ」と紹介されています。一方、2025年の「Viewing展2025」で鈴木さんを紹介した、とちぎアートサポートセンターTAMのプロフィールでは「2ミリ位」と記載されています。
作品や測り方による違いも考えられるため、すべての三角が正確に1mmと決まっているとまでは確認できません。ただ、肉眼では細部を追うのが難しいほど小さな三角形を大量に描くことが、鈴木作品の核であることは共通しています。
しかも、単純に鉛筆で小さな模様を並べて終わりではありません。
TAMによると、まず10Hの鉛筆で大きな画用紙を三角形で埋めていき、その作業が終わったあと、小さな形を淡い色鉛筆で塗っていきます。
パステルカラーを含むさまざまな色が重なり、近くで見れば無数の三角、離れて見れば鳥などの大きなイメージが現れる作品へ変化していきます。
10H鉛筆はどれほど硬いのか
番組で特に印象的なのが「10H」という鉛筆です。
一般的な鉛筆ではHBやB、2Bなどがよく知られていますが、Hは「Hard」を意味し、数字が大きくなるほど芯が硬く、線は淡くなります。武蔵野美術大学の造形ファイルでも、Hから10Hへ数字が大きくなるにつれて硬度が増すと説明されています。
つまり10Hは、かなり硬い部類の鉛筆です。
鈴木さんは、この硬い鉛筆を使って小さな三角形を延々と積み重ねていきます。
Viewing展の選考委員・有坂隆二さんは作品を間近で確認し、紙そのものが約1mmの三角形状にへこんでおり、そこへ色鉛筆で色が付けられていることに注目しています。
単に「線で三角を描く」というより、硬い鉛筆を使うことで紙の表面そのものにも細かな痕跡が積み上がっていることが、鈴木作品を近距離で見る面白さのひとつです。
作品完成まで数か月、番組では制作期間1年の作品も登場
鈴木さんの作品を特徴づけているもうひとつの要素が、圧倒的な制作時間です。
普段はクリーニング店で働いており、制作できる時間には限りがあります。その中で、大きな画用紙を小さな三角で少しずつ埋めていくため、TAMでは1作品に数か月をかける制作スタイルが紹介されています。
さらに2026年9月13日の「no art,no life」では、「制作期間はなんと1年」と紹介されています。
1日で完成形を一気に描き出す作品ではありません。
小さな三角を描く。
また三角を描く。
画面を埋めてから色を加える。
その途方もない繰り返しの先で、ようやく大きな形が姿を現します。
近くから見る場合と、数歩離れた場所から見る場合で作品の印象が大きく変わるのも、この制作方法ならではです。
中学時代から絵を描き2015年ごろ草間彌生作品から刺激
鈴木さんと絵の関係は最近始まったものではありません。
TAMのプロフィールによると、中学生のころから美術部に入り、風景画やデッサンを描いていました。
そして2015年ごろ、草間彌生さんの作品を見たことが大きな刺激になったと紹介されています。
草間彌生さんの表現と鈴木さんの三角形作品を直接結びつける本人の説明までは確認できないため、「草間作品を見て現在の画風になった」と断定することはできません。
ただ、細かな形を繰り返しながら巨大な画面へ展開していく鈴木さんが、2015年ごろに草間作品との出会いから強い刺激を受けたことは、その後の創作を知るうえで重要な経歴です。
「闘う鳥」でViewing展2025の有坂隆二賞を受賞
鈴木雅史さんの代表的な実績として確認できるのが、2025年の「Viewing展2025」です。
出品作品のタイトルは「闘う鳥」。
作品情報では素材は鉛筆、サイズは「460×540」と記録されています。
第10回栃木県障害者芸術展「Viewing展2025」には252人から407点の応募があり、その中から258点が展示されました。そして5人の選考委員それぞれが選考委員賞を選び、鈴木さんの「闘う鳥」が有坂隆二賞に選ばれています。
この「闘う鳥」も、遠くから見る姿と近くから見る姿がまったく違います。
選考委員コメントでは、最初は通り過ぎそうになったものの、近づいて見ることで紙を覆う無数の小さな三角形に気づき、作品の前から離れられなくなった様子が語られています。
鈴木作品の面白さを象徴するエピソードです。
鈴木雅史の所属はNPO法人工房あかね
Viewing展2025の公式プロフィールでは、鈴木雅史さんの所属先として「NPO法人工房あかね」が明記されています。
工房あかねは群馬県高崎市を拠点に、障害のある人たちの芸術活動を支援しているNPO法人です。
高崎市公式サイトによると2000年6月に設立され、絵画教室、展覧会の開催、アートティーチャーの派遣、企業への作品起用に向けた企画などを行っています。
工房あかねが運営する「アート・オン」は、表現活動支援を得意とする通所事業所です。
特徴的なのは、作品を完成させることだけを目的にしていない点です。公式サイトでは、基本的に指導や干渉をせず、一人ひとりが心地よく過ごせる環境を整えながら、その人自身の表現を引き出すことを重視していると説明されています。
今回の番組では「群馬県高崎市のアトリエに通う」と紹介されています。
鈴木さんがNPO法人工房あかねに所属していること、同法人が高崎市本町で「アトリエART・ON」を運営していることまでは確認できます。ただし、番組で撮影された「アトリエ」がART・ONそのものであると明記した一次情報は現時点では確認できないため、同一施設とは断定しません。
工房あかね・アトリエART・ONの場所
NPO法人工房あかねとアトリエART・ONの所在地は、公式サイトで群馬県高崎市本町10-1 イチカワビル4階と案内されています。
JR高崎駅西口から徒歩約25分、JR北高崎駅から徒歩約20分。バスの場合は「本町2丁目」から徒歩約1分など複数のアクセス方法が案内されています。
なお、ここは鈴木さんの作品を常設展示する美術館として案内されている施設ではありません。作品を見たい場合は、展覧会などの開催情報を工房あかねや関連する芸術支援団体から確認するのが適切です。
まとめ
鈴木雅史さんは1993年生まれ、高崎市在住。中学生のころから絵を描き、現在は10Hという硬い鉛筆を使って、1〜2mmほどの極小三角を大きな画面いっぱいに積み重ねる独自の表現を続けています。
普段はクリーニング店で働きながら限られた時間で制作し、作品によっては数か月、今回の「no art,no life」で紹介される作品では1年もの時間を費やしています。
2025年には「闘う鳥」がViewing展2025の有坂隆二賞を受賞しました。
近づけば小さな三角の集合体、離れれば色鮮やかな鳥や模様になる。その両方を行き来して初めて全貌が見えてくるところに、鈴木雅史さんの作品ならではの魅力があります。9月13日の番組で「虫眼鏡のご準備を」と紹介されているのも納得できる、細部そのものが主役となるアートです。
参考リンク
とちぎアートサポートセンターTAM「Viewing展2025 選考委員賞作品」 / NPO法人工房あかね公式サイト / 高崎市公式「工房あかね」
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